吉永さん家のガーゴイル / 田口仙年堂
吉永さん家のガーゴイル
双葉が商店街の福引で当てたのは、門番型自動石像だった。高性能なセンサーがついていて、石像なのに動くし話もする。不眠不休でも活動できるのは優秀だとは思うが、一般家庭の吉永家に門番なんて必要ない。新聞屋さんも郵便屋さんも追い払ってしまうような門番なら、なおさらである。
怒り狂った双葉は、チェーンソーで攻撃したり、ガーゴイルを景品として供出した骨董屋「兎轉舎」に直談判するとなど、何とかガーゴイルを追い払おうとするが……
男前な 9歳の女の子の双葉と、女の子みたいな兄の和己、たくましきパパ、優しそうで強いママ。そんな吉永家とガーゴイルの交流を描いた物語です。吉永家にガーゴイルがきたという話から始まり、隣家に泥棒が入った話や双葉のクラスメイトの家の盲導犬の話、双葉が誘拐される話など、6編の短編が収録されていますが、連作短編という感じですね。
いやあ、いいなあ。ほのぼのとしてコミカルで、ほろりとさせるところもありと、魅力たっぷりです。
個人的に一番好きなのは、盲導犬エイバリー少尉の話です。泥棒に向かって吠えなかったことで、双葉のクラスメイトである美森が傷ついて、という展開でしたが、吠えなかった理由が非常に納得できるもので、ここで終わっても、温かいお話だったと思います。
でも、ここからさらに話が続くから、いいんですよね。信じたいとハーネスを手に取った美森の気持ちに目が潤んでしまいましたが、命令違反とわかっていながら決断した少尉の気持ちと、美森の叫びを読んだらもう……。
心から泣きました。
三話目の隣のおばあちゃんとの話も良かったなあ。自分の役割以上のことをしていなかったガーゴイルが、隣家のおばあちゃんの好意に戸惑って、いろいろ考えるところがいいですね。年長者(?)である狛犬の言葉が胸に響きました。
少しずつ成長していくガーゴイルと吉永家の人々、特に反発していた双葉との交流を読んでいると、心が温かくなりますね。家族だけじゃなく、町内の人との触れ合いもほのぼのとした雰囲気に包まれていて、とても素敵でした。手にとって良かったなと本気で思える作品です。
素晴らしくオススメな第5回えんため大賞受賞作。
吉永さん家のガーゴイル 2
「わたしはどんなトラップでも破って見せよう。どんなセキュリティシステムでも、どんな門番でも」
黒いタキシードにマント、そしてシルクハットという格好で、警官を出し抜く怪盗百色は、世界最強のセキュリティシステムと裏の世界で噂されている、吉永家の門番ガーゴイルに挑戦してきた。
生身の人間とは思えないほどの身のこなしと手品による幻惑で、吉永家に侵入しようとする百色に対してガーゴイルは……
吉永家(というかガーゴイル)にちょっかいを出していた怪盗百色が、不思議な力を持つ少女の梨々と出会って……というお話。
吉永家に侵入しようとする男と、吉永家を守るガーゴイルの争いが楽しくて楽しくて。真面目に戦っているのに、他人の都合を優先するところとか見てると、ふたりとも優しい人だなあと、ほのぼの。
どちらかというと、ガーゴイルや吉永家の面々はやや脇に回って、百式と梨々の話がメインなんですが、いやあ、百色がかっこいいですね。根っからのエンターテイナーな感じをかもし出しつつ、弱き者に対して優しさを見せるところは、まさに義賊。それでいて、自分は悪人と悪ぶるところに、深い思いを感じますね。いや、実際悪者なんだけどさ。
そんな怪盗と梨々の交流には、心に触れるものがありました。仲良くなるきっかけの手品も素敵でしたが、公園でのふたりのシーンが特に良かったです。実はひとりぼっち同士だったというふたりの心の告白に、胸を痛めたものの、一度離した手を再び取り合う姿に、心が温かくなりました。この情景はイメージ化されて、心に焼きついてしまいましたよ。
これだけでも目じりが熱くなったんですが、元気になったら何がしたい?という質問に対する梨々の答えを聞いたら、もう……
最後は怪盗らしくカッコ良く決めてくれて、さらに家族の温かい迎えがあってと、温かさ満点ですね。
百色や梨々は今後も出てくるのかなあ。出てきて欲しいなあ。
吉永さん家のガーゴイル 3
兎轉舎のお姉さんに頼まれて、双葉が植物としゃべれるヘルメット型の機械「イーハトーブ式交換装置」を被ったら、ちょっとした事故で外れなくなってしまった。
外すための鍵を作り直すのに 1週間かかるといわれ、しかたなしにそのまま学校へと向かった双葉だが……
植物も生きている。子供のころからよく聞かされる言葉ですが、意思の疎通が図れないと実感できないですよね。同じように思っていた双葉が、植物の気持ちを理解していく展開がとてもいいです。
また、植物たちがいい雰囲気で。
さすがの双葉もこういう相手には敵わないですね。世話をする姿が微笑ましいです。
特にハナ子との交流には、心温まるものがありました。ほんと、いいなー。
植物と話ができるというのはとてもメルヘンですが、そのままで終わりにしないところが奥深いですね。捻りすぎると残酷になってしまうところを、バランスよく抑えていました。
のめり込む双葉に対して、危険を諭すガーゴイルのセリフには、惚れ惚れしますね。1巻のころとは「守る」という言葉の意味合いが変わってきている気がします。ふたりの、特に双葉の成長が著しいなあ。
複雑な気持ちになりながらも、焦点を間違えなかった双葉が良かったです。
最後は普通にハッピーエンドかと思ったら、さらに気持ちを持っていってくれましたね。笑顔で歌う姿に、じわじわ溢れ出てくるのを止めることができませんでした。
面白くて、温かくて、泣ける物語に、心が洗われました。
吉永さん家のガーゴイル 4
過去の夢が見られる装置 ― 記憶発掘寝台を使ったまま、兎轉舎のおねーさんが目覚めない。外から起こせないならば内から起こせばいいという東宮の案に賛同したガーゴイルたちは、イヨの夢の中へ―過去へ入り込んだ。
それはガーゴイルが誕生した昭和二年の日本だった……
双葉と和己とガーゴイルが、ガーゴイルの誕生に関わる 3人の男女と出会うお話です。タイムスリップものっぽいですが、夢の中のお話でもあるので、SFというよりも、いつものハートフルさを過去の情景で、という感じですね。とても素敵な青春物語です。
何ていうか、夢というものの語り方が魅力的なんですよね。馬鹿なことをやってると思えることでも、どこまでも真っ直ぐに突き進んでいく姿に胸を打たれます。こういう人たちが、ガーゴイルを作ったのかと思うと、嬉しくなってきますね。
立場と夢と恋と、多くのものに挟まれた雅臣の姿には、どうにもならない歯がゆさを感じますが、見守るという選択を通し続けた想いに、切なさと温かさを感じます。「敵になる」なんて、最後の最後まで優しいんだから。双葉が怒りはもっともだと思いますが、これも想いのひとつですよね。
もし、あのとき、雅臣が想いを告げたらどう答えたんだろう。とは無粋な想像かしら。
雰囲気が雰囲気だけに、コミカルな要素は若干薄くなったものの、それでも笑いあり、涙あり、ほのぼのとさせてくれて、最後に感動を見せてくれる展開に酔いしれました。
本編とまるで関係ない巻頭カラー漫画も、楽しくて楽しくて。
やっぱりガーゴイルはいいな。
吉永さん家のガーゴイル 5
御色町総出で行うさくら祭り。総出とはいえ、一週間ほどやるので、のんびりとしたお祭りだった。去年までは。南口側に優先権があるお祭りに、北口のデパートの支配人が割り込んできたのだ。
伝統を守ろうとする南口側に吉永家は協力しようとしたが、パパだけは、旧友の支配人がいる北口に協力すると言い出して……
いやあ、今回も素敵でした。金の力 vs 人の力によるお祭り対決なんですが、今までちょろっとしか登場していなかったパパ、ママがメインとなるお話でした。ママが南口に協力してくれないパパに対して、落ち込む姿が何とも切ないです。最強なのに精神的には弱かったんだなあ。言い訳すら聞こうとしないのは、怒っているというよりも、何を言われるか怖いと思ったんでしょうね。そんな吉永家の分裂に、門番としてどうすれば良いか戸惑うガーゴイルが印象的でした。
お祭りが始まってからの町の人たちのはっちゃけっぷりはさすがで、採算度外視で動いていく姿は、おいおいと思いつつ、ムキになっていく様が楽しい。ただ、加熱するあまり、肝心の桜が置いてけぼりにされているところは悲しかったですね。このあたりのさりげない描写がうまいです。
敵?となる北口側のお祭り騒ぎのプロフェッショナル「ゴールデンボーイズ」のノリが素敵でした。いや、素敵なのはボスだけど。ミスしたら厳しくしかりつけ、拳まで振るいながら、フォローを忘れないところに愛を感じます。ベッタベタだけど、いいなあ。
彼らの終盤の行動には疑問がないわけでもないけど、派手に散るってのは何かわかる気がします。何となく江戸っ子っぽい。
最後の戦いはこれぞガーゴイルという展開でしたね。オールスター大集合なところがとても良かったですが、それ以上に、良かったのがパパとママのラブラブっぷりです。共に戦う姿に感動し、パパの告白に胸を打たれ、ママの涙に涙しました。パパの一人勝ちな結果に大満足。
さりげなく縁の下で動いたオシリスにグッジョブ!と喝采したいです。次も期待大ですね。
吉永さん家のガーゴイル 6
新入生歓迎の公演項目が未だ決まらない演劇部。和巳がちょこっと口出ししたら、あれよあれよのうちに決まって、気がつけば和巳まで参加することに。
流されたとはいえ、約束した以上、頑張らなくてはと練習に励む和巳だが、その矢先に演劇部へ脅迫状が届いた。「シバイヲ チュウシ セヨ」と。
このままでは公演が中止になると思った和巳は、ガーゴイルに演劇部の護衛を頼んだが……
8年前に学校で起きた事件を題材にした劇から発生した脅迫状を巡る物語。1巻から出続けていたけど、何かと脇に回っていた和巳にスポットライトがあたるんですが、いやあ、素晴らしい。とても良かったです。
役者として参加するなんて、和巳のお人好しっぷりが存分に発揮されてますね。あのツッコミの切れ味は貴重なので、見抜いた林吾を褒めたくなります。まあ、お兄ちゃんとしての気持ちもあったのかもしれませんが。林吾の妹であり演劇部舞台監督の桃ちゃんのさりげない好意が素敵。今まであまりなかったラブ方面が、ちらほら出てきて楽しいですね。
そんな楽しき演劇部の様子と共に、ミステリー仕立てで犯人探しが始まるわけですが、途中で、あっ、と気づいたとき、いや、気づかされたときと言ったほうがいいかな、思わず戸惑ってしまいました。はじめから提示されていたわけか。
事件の悲しさもさることながら、脅迫状を書いたことの心境を聞かされるにつれて切なくなりましたが、そんな中でも、きっちりと救いをもたらしてくれるから素晴らしいです。
今回は脇役に回ったガーゴイルでしたが、罪にもいろいろなものがあるということや、護るということについての意識も変わっていったのではないでしょうか。護ると救うを使い分けるガーくんがステキです。成長する姿が見れるのは嬉しいですね。
脅迫状の犯人探しと過去の事件の絡み合うという非常に王道なストーリィ展開でしたが、それにガーゴイルシリーズらしい演劇部としての団結な話も加わって、とても面白かった。文句なしで傑作ですね。ここまで続きながら、まだまだ成長していくシリーズになっていて嬉しい限り。
吉永さん家のガーゴイル 7
学校の授業で、将来なりたい職業は何かという問いに対して、梨々が質問を投げかけた。「怪盗になるにはどうしたらいいんですか?」
双葉に猛反対され、大喧嘩するはめになったが、百色のような怪盗になりたい気持ちはかわらない。
そんなおりに、梨々の保護者である百色の行方がわからなくなり、梨々はひとりで百色を追い始めたが……
二巻から再び登場。今度は主役となった梨々が、怪盗になりたいと言い出してからの騒動を描いたお話です。
怪盗になるといったら、周囲の人が反対するのは当たり前なんですが、実際には、怪盗というより百色のようになりたい、百色の力になりたいという気持ちなんですよね。梨々からしたら百色はヒーローだから、憧れる気持ちはよくわかります。なりたい職業といわれて、パッと門番を思い浮かべる双葉にも、同じような気持ちがあるんだろうなあ。
百色が消息を絶ってからの梨々の行動は、良くも悪くも真っ直ぐで、子供らしい無謀さを感じましたが、困難に突き当たり、後悔する姿が印象的でしたね。
そのシーンがあっただけに、自分のやってることの恐ろしさを感じて、それでも怪盗を名乗る決意をしたシーンは最高でした。百色に因んで自ら名乗った梨々の怪盗ネームのセンスに拍手したくなります。
前作とは打って変わってアクショ梨々ンシーン満載で、ガーゴイルの強さが光りますが、それ以上にカッコよかったのは、梨々の憧れのおじさんでした。頼りになるところを見せて、過ちはしっかり正し、たっぷりな優しさを見せてくれたら……。
ごめんなさいという梨々の言葉にグッときますね。
これだけでも素敵なのに、ガーゴイルとの対決シーンもあるんだもんなあ。カッコよすぎてたまりません。応じるガーくんも素敵でした。
そういえば、今回はデュラハンも良かったですね。かつては無機質な感じとは打って変わり、騎士のように頼れる存在になっていました。梨々の言葉に信頼を感じますね。百色、白色、そして白騎士のつながりを感じられるこのチームは最高です。
展開として前作のほうが好みですが、今作も負けず劣らず傑作でした。とっても満足。
さてさて、次はどんな物語が待ってくれてるんだろう。
楽しみだなあ。
吉永さん家のガーゴイル 8
夏の夜なら墓場で遊ぶ、という双葉たちだが、はしゃぎすぎて墓石をドミノ倒ししてしまった。ターミネーターのような住職に叱られ、ようやく家に帰ってきたら、ガーゴイルの様子がおかしい。いきなり倒れたり、女性のスカートの中に入ったりしている。
どうやらガーゴイルに霊が憑いてしまったらしい。それも、不良老人の佐々尾のジーサンに……
ガーゴイルが、一昨年亡くなったお隣の佐々尾さん家のジーサンに取り憑かれたので、何とかしようというお話です。久しぶりにガーゴイルと双葉に焦点があたってきましたね。憎まれ口を叩きながら、師匠とも言うべきジーサンに出会えたときの双葉の態度が一番印象的でしたが、昔話をいろんな人にせがむ姿とか見てると、双葉っぽいなあと、微笑みたくなります。やっぱり自分の育った町が好きなんだろうなあ。
ジーサンがガーゴイルから離れないのは、何か理由があるからだ、ってことで、双葉やらガーゴイルがいろいろ手を尽くしているところに、幽霊たちの自警団が出てきてという展開なんですが、ちょっとごちゃごちゃした感じを受けました。面白くはあるんだけど、普通のドタバタで、いまいち引き込まれない。
と思っていたんですが、嘗めてました。
ジーサンの心残りがなんとなくわかってきた終盤。
見事でした。
いや、意外性のある話ではないです。むしろ予想通りと言ってもいいかもしれない。いつも通りと言ってもいいかもしれない。それでも、バーサンとのやり取りで、やられました。
このためだけに、盛り上がりを抑えていたんじゃないかと思うぐらいに、一気に波が押し寄せてきました。こぼれる涙を止めることができません。あー、この感想書いてるだけで、また涙出てきた。ちくしょー。やってくれるぜ。
歳を取ったとき、隣にいてくれる人がいるとしたら、こういう関係になりたいですよね。
いやあ、いい話を読みました。佐々尾さん家のおばあちゃんには、これからも元気でいてほしいですね。
そういえば、和巳がまるで活躍しなかったというか、出てたっけ?ってぐらい空気薄かったので、そろそろ活躍させてあげてください。
吉永さん家のガーゴイル 9
ちょっとした事故で、守るべき御色町の人を傷つけてしまったガーゴイルは、全機能を停止してしまった。慌てて双葉たちが兎轉舎に連れて行くと、過去にも同じようなことがあり、それに囚われているのだとイヨは言う。
心の中に閉じこもってしまったガーゴイルを取り戻すため、双葉とイヨは記憶発掘装置で、昭和20年の日本へと移動するが……
ガーゴイルといえども、たまには羽目を外すことがあって、それがよりによってな結果を生んで、さらにはと、まさかこんな展開になるとは予想もしていませんでした。
騒がしい存在ではないのに、いないというだけで食卓の雰囲気が暗くなる感じが伝わってきます。もう、完全に家族なんですよね。
以前にも過去への旅はありましたが、今回は戦争真っ只中、しかも終戦間際ということは、日本本土まで被害が及んでいるときということで、双葉が戸惑う様子が伝わってきます。
一番印象的だったのは、決して涙を見せないと誓った双葉が、イヨに縋りつくシーンでした。あーもう、胸が苦しくなってしかたないです。こういうとき、いつも助けてくれていたガーゴイルが、今回は頼りにならないのは、なんとももどかしかったですね。
それでも、ひとたび子供たちが集まれば、ガキ大将っぷりを見せてくれるところが、とても双葉らしくて良かったです。この明るさは、間違いなく街の人たちにとって、大きな財産だと思いました。
過去に行かず、残る決意をした和巳のところにも、いろいろ問題がおきてて、ケルプ、オシリス、百色すら手を焼く相手が出現して、これがまたやっかいそうですね。でもなんで、あんなに?う~ん。謎だ謎だ。
さあ、これからってところで、いきなり後書きが出てきて、あ、あれ?上下巻なの?と、やられた気分でいっぱい。さっそく下巻に取り掛からないと。
そうそう。特別短編として、田口仙年堂の別シリーズ「コッペとBB団」から「コッペとひみつのへや」が収録されています。コッペ大好きっ子としては、嬉しい限り。
たかがトイレの話なのに、とても BB団らしくて微笑ましいったらないですね。首領さんがかっこよかったです。今度は長編で読みたいな。
吉永さん家のガーゴイル 10
前作続き、心の中に閉じこもってしまったガーゴイルを引き上げるために、ガーゴイルの過去とガーゴイルを狙うものの正体が明らかになって、というお話です。
過去に捕らわれ、なかなか「今」を思い出せないガーゴイルですが、双葉とのやり取りは、どことなく今と似ていて、ちょっとほっとします。双葉の石像たちの扱い方は、乱暴なように見えるけれど、親しみを感じますね。
とはいえ、外に出れば戦争。目の前で起きる悲劇はきついものがあります。足がすくんでも、逃げたいと思っても、それでも動こうとした双葉の行動こそ、勇気ですよね。
始めてみる涙は切ないですが、ユキ姉ちゃんのフォローが良かったです。
上巻となる前作では、過去の話が多かったですが、下巻では現代の話も多かったです。敵がこれほどまでにガーゴイルを憎むのはなぜかという話には、予想どおりであってもひきつけられましたが、今回は何と言っても、ケルプが良かった。
ガーゴイルと対立することが多いけど、町を守りたいという気持ちは同じなんですよね。力についての捉え方が以前とは異なるところに成長を感じます。守ることと攻撃すること。過去と現在の石像たちの大きな違いは、このふたつを理解していることでしょうね。先を見据えた覚悟が素敵でした。
それでも最も盛り上がったところは、やはり過去の物語でした。大きな力の前で、己の力では届かない現実を迎えた双葉がガーゴイルの名を呼び続ける姿には、涙が止まらなかったし、それに応えて復活したガーゴイルとのやり取りは、素晴らしかったです。やっぱりこの二人が揃うといいですよね。
おかえりなさいと言いたくなりました。
戦争の悲劇と、そこから生まれたすれ違いの物語もひとまず終了しましたが、百色の予想通り、裏に人がいましたか。それもこんなところから。まだまだ、何かをやってくる気まんまんのようですが、御色町は負けないよ!
彼については、気まずいものがあるかもしれませんが、いつか家族の元へ戻ってきてくれたらいいな。
そういえば、上巻から続いていた巻頭カラー漫画「怪盗白色危機一髪」が、まさか本編とつながりがあるとは思わなかったです。スギ花粉を使うセンスに大爆笑。白色の今後の活躍にも期待ですね。
吉永さん家のガーゴイル 11
一年の四分の三は入院している吾郎は、病院のクリスマスイベントなんて毎年同じでつまらないと言い出した。毎年頑張ってる看護婦さんたちの気持ちを思った双葉が、ふざけるなと爆発していたら、いつの間にやら、ガーゴイルにクリスマスを盛り上げさせる約束をしてしまい……。
入院生活に辟易していた双葉のクラスメイトの吾郎や他の入院患者のために、クリスマスイベントを盛り上げようとするお話なんですが、病院側が、かのゴールデンボーイズにも依頼してくれたおかげで、いつの間にやら、林吾たち演劇部員(+ガーゴイル)と、盛り上げ対決が始まってと、楽しいノリが炸裂です。
今回はオシリスが良かったなあ。今までは、和巳を除けば、人間にはあまり関心がないように思えたんですが、病院内の木々と出会い、吾郎と出会って、少しずつ変わっていくところが印象的でした。自分の力に気づき、自分が今やっていることに気づき、何ができるかを考える姿を見ていると、カッコいいなと思いますね。そういえば、イラストも何か可愛くなってる気が?
相変わらずハイテンションなゴールデンボーイズですが、その生き様は、以前にも増してプロフェッショナルな気がします。ひとつひとつの言葉が深いですよね。思わず、うんうんと頷いてしまうものがあります。
看護婦の聡美さんとリーゼントの間柄には、僕まで絶叫しそうになりましたが、あれもある意味、読者を楽しませる一環かしら。
みんながみんなを楽しませようと考えて、至らないところがあったり、暴走するところがあったりするけれど、一丸となって行動するところは、御色町ならではな感じがして、何かいいですよね。ただ、それゆえに、病気の子供が孤独を感じてしまう気持ちが、伝わってくるのは切ないです。
彼のたったひとつの願いには、思わずグッときてしまいますが、そのことに気づいて、彼の気持ちを汲んだガーゴイルに GJ!と言いたい。
いつもに比べると、感情の高ぶり度はちょっと低いんですが、ほのぼのとした雰囲気はとても良かったです。双葉と共に成長していく姿は、いつまでも見ていたいですね。今後も楽しみだなあ。
そうそう。出番がないかと思った梨々と兎轉舎の姉ちゃんでしたが、何気に仲いいのね。対決シーンには笑わされました。
吉永さん家のガーゴイル 12
正月も終わり、もうすぐセンター試験を控えている和巳は、勉強の息抜きに同級生の範太の卒業製作の手伝いをやっている。帰りはよく桃を家まで送り届けているが、桃との関係をはっきりさせることは、未だできていなかった。
今日もまた桃と一緒に帰っていたが、演劇部の部長という立場から疲れているようで、和巳と意見が合わず喧嘩してしまった。さらにそのあと、範太と桃が寄り添うシーンを見てしまった和巳は……
林吾や範太、和巳のそれぞれの進路と、和巳と桃の恋愛の行方を描いたお話です。林吾とかはどうでもいいとして、和巳がどういった道に進むのかというのは、興味津々だったので、ああ、なるほど、そういう道を選んだのかというところには、らしいな、と思うところがありました。
もともと、そういったことが好きだったのもあるんでしょうけれど、ガーゴイルという存在が、より拍車をかけてくれたんでしょうね。漠然としながらも、未来を思う姿が素敵でした。
そんな和巳が、桃といまだに付き合っていなかったというのは、むしろ驚きなんですが、いい雰囲気だからこそ、どちらからも言い出せないというのは、よくわかりますね。今の関係を壊したくないという気持ちから、あと一歩を踏み出せない和巳の気持ちが伝わってきます。
自分が桃をどう思っているか、はっきり気づいたのは良かったんですが、きっかけとなったシーンは、ちょっとショッキングでしたね。みんながちょっとずつ悪いだけに、何より感情的なものだったので、こじれると大変でした。
さすがにガー君じゃ、これを解決するのは難しいだろうなあと思ってたら、今回は百色がやってくれましたか。予告状をきっかけに、自分の思いに気づき、相手のことを思いやり、仲直りした最後に、和巳が桃に継げた言葉のシーンは……。
どうなるかなんてわかっているのに、それでもなお、身構えていてもなお、悶えまくりでした。あーもう、和巳も桃もかわいすぎ!このシーンは、何度も何度も読み返してしまうぐらい素敵でした。
いやあ、面白かったですね。ちょっと切なさのスパイス入りでしたが、見守ってくれている人たちの温かさを感じられて、最後に胸きゅんな恋愛ものを持ってきてくれたので、とても満足です。
次は古科学あたりとの話がまた絡んでくるのかな?楽しみですね。
吉永さん家のガーゴイル 13
古科学者の組織に、君の家が狙われている―百色の言葉に警戒心を強めたガーゴイルだが、その夜、ガーゴイルは初めて、吉永家に敵の侵入を許した。しかも、双葉が襲われて……気がつけば、双葉と同じ顔をした、身長十五センチにも満たない人形のような少女が現れた。何ひとつ記憶を持たず、ただ「見る」だけ、そして感覚を双葉と共有している少女に、警戒心を抱いていた吉永家だが、彼女の素直な態度に次第に警戒心を緩めて……
すばらしい。やっぱり吉永さん家には、家族のお話が似合います。
何ひとつ情報を持っていないとはいえ、敵の偵察としてやってきたのは明白なのに、パパやママが、妖精のピクシーに危機感を持たないところが、なんとも吉永家らしいなあ。この子に罪はないという思いがあるんだと思いますが、それ以上に、ガーゴイルがいるから大丈夫という信頼があるんでしょうね。
敵の侵入を許したことにショックを受けているガーゴイルでしたが、そんな彼に対する吉永家の信頼が、言葉の端々に伝わってきて、とても温かい気持ちになれます。
ガーゴイルのみならず、ピクシーと吉永家の間にも、素敵な空気が流れてましたね。何かにつけて興味津々となってるピクシーが可愛いですが、いろいろ問題を起こす or 起こしそうになるあたりに、二年前のガー君を思わせます。 その頃のことを思い浮かべながら、家族や町の人たちが、いろいろと世話をする素敵な空気は、ガーゴイルならでは、って感じですよね。
そんな生活をしていくうちに、ピクシーが今までにない感情を覚え始めていくんですが、吉永家にいることをうれしく思いながらも、自分は敵なんだからと、一歩引こうとするピクシーの心情がなんとも切ない。
似たようなことはガーゴイルも思ってたりするんですが(我はただの門番だ、とか)、そういった迷いをすべて吹き飛ばしたのが、ママの鉄拳だってところが素敵でした。暴力はいけないと思うけれど、家族が間違った方向へ進んだなら、体を張ってでも止めようとする姿に、そしてその思いに応えたガーゴイルと、ピクシーの思いに涙。
いやあ、面白かった。すばらしかった。これぞガーゴイル!でしたね。
ジワジワさせられる場面は、それこそいくらでもありましたが、一番キタのは、自分と同じ顔のピクシーを嫌悪してた双葉が、最後にピクシーに投げかけた言葉かな。
「これから飽きるほど食えるぜ、ってことだよ」
照れながらも、しっかりと新しい家族を迎え入れる言葉に、涙を流さずにいられなかったです。
これほどまでに家族の絆を見せられたら、これから先、どんな敵が来ても、吉永家を切り崩すなんて無理なんじゃないかと思わされますが、悪党は悪党で、またいろいろ画策している模様なので、油断はできないか。
今回のように、ガーゴイルが力を発揮できず、かつ自分たちは発揮しまくるような策でくるのかどうかわかりませんが、今回のように素敵な絆を見せてくれたら嬉しいですね。
吉永さん家のガーゴイル 14
だからこそ、寂しくなる。
こんなにいい人たちを殺すわけにはいかない。
だからガーゴイル達の目の前で誓った。関係ない人たちは一切殺さないと。
約束は守る。誰ひとり殺さない。
少し不幸な目に遭ってもらうだけだ。
ガーゴイルの誕生パーティが開かれ、平和な時が訪れた後に、宿敵レイジがやってきた。それも小悪党な雰囲気が一変して、風格漂うほどの佇まいで……というわけで、ガーゴイル、怪盗百色、ケルプ、オシリス、デュラハンという御色町最強メンバー VS レイジの戦いが始まるクライマックス前半戦です。
これはすごかった!最強メンバー相手に、まさかレイジがここまでやってくれるなんて!
レイジが宣戦布告をしにガーゴイルの元へやってきたとき、最強メンバーが集っていたにも関わらず、悠々と退却していったときから、不安を覚えていたものですが、いやはや驚きです。
単純に力という点で言えば、誰が戦っても勝てるのに、相手の力は発揮させず、自分の力は思う存分使ってくるんですから、そりゃ、適わないよなあ。御色町が気に入ったというレイジの言葉は、嘘ではないのに、そこに人を思いやる気持ちが見えないから、恐ろしいです。
オシリスの無念ですら可愛く思えるほど、ガーゴイルが被っていく無念に、心が痛くてたまりません。
個人的に印象に残っているのは、敵の力によって、御色町が危険にさらされていく中、今まで町を守ってきた人たちが手一杯になっていたときに、活躍したのが、子供たちだってところですね。特に、梨々の頑張りは、心温まるものがありました。
百色のことで、悩むことはあるかもしれないけれど、彼女は彼女の知ってる百色を尊敬していいと思いました。
そして迎えたラストが……。やばい。やばすぎる。
ガーゴイルの力が及ばなくなり、逆にレイジが御色町内で信頼を得ていくところに、彼の策略の悪辣さを感じますが、いったいどうあなっていくんだろう?
盛り上げに盛り上げてくれたクライマックス一歩手前ですが、できればラストは温かく締めてほしいなあと思います。最終巻がひたすら待ち遠しい。
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