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私のKnightになってよネ! / 佐藤了
私のKnightになってよネ!
「悪いんだけど……、私と付き合いなさい」
クラス一の美少女に突然告白された。それも命令形で。しかも裕也のことは好きじゃないというおまけつき。
何のためか問い詰めてもはぐらかされ、断ろうにもクラスメイト全員に誤解された状態ではどうしようもない(誰もが美少女の言うことを信じるのは明白!)。
とりあえず彼女の言うとおり、説明を受けるまでしぶしぶ付き合ったが、そこで明かされた事実は、とても信じられないことだった……。
わりとありふれた出だしだけれど、テンポ良く進む展開と不思議な力がマッチしていい感じ。
コメディかと思いきやシリアスに、時にサスペンスにと飽きさせない。
ただラストがなあ…、おいおいそりゃないぜ的な感じが否めなかった。そこだけマイナス。
とはいえ、いい意味でライトノベルっぽくて面白かったのでお勧めです。
これまた楽しみな作家さんが増えましたね。
第6回えんため大賞東放学園特別賞受賞作。
私のKnightになってよネ! 2
「わ、私の『お兄ちゃん』になってほしいんです!」
理由は聞かないでほしい、少しの間だけでいいから……。柚里が匠に話しかける姿は真剣だった。
匠が考えた末に導き出した結論は裕也や恭子にとって予想外のものだった。
そして次の日から、柚里は約束どおり妹として匠のそばにきたが……
恭子がやけに積極的なのが印象的ですが、前作であんな告白をしたのに何ら反応が返ってこないんじゃ、そりゃムキにもなりますよね。ただ、LOVEと書かれたお弁当はやりすぎかと(しかもノリ弁じゃ……)。そんな微妙な空回り感が面白くてニヤケっぱなしでした。ほっぺにご飯粒なんてお約束に動揺する姿がかわいくてしょうがない。
「お兄ちゃん」なんて言わせてハートをキャッチしようなんて、そんな甘い手には乗ってしまうこともありますが、実は結構しっかり考えられているところに好感。「家族」というキーワードが奥深くにまで浸透してたんですね。
テンポとノリの良さから軽めに感じてしまいますが、ところどころシリアスです。
手紙はちょっとやばかった。こらえるのが大変でした。
ただ、敵方というか黒幕がちょっとなあ。MALLSを敵と思うのはいいんですが、示唆するところの説得力がない。あれでは、みながなぜ信じるのかわかりにくかったです。完全否定したら、あっさり終わりそうな感じだったので、そのあたりが残念でした。
とはいえ、終わり方が前作とは異なり(そりゃないぜといった感じもなく)、波乱万丈を予感させるものだったので、期待していきたいですね。
私のKnightになってよネ! 3
親戚である綾奈に結婚を申し込まれた。血を繋ぐためには、それしかないとはいえ、恋愛感情も持たない相手と結婚する気にはなれない。何より、今、自分には恭子がいるのだから。
とはいえ、先日の事件があってから一週間、恭子とはまるで話をしていない。どうにも真実を告げる勇気がでない。恭子は MALLS が開発したクローン人間だなんて……。
「異なる人々」の組織である MALLS と ARES の最終決戦でしたが、実際には、恭子と裕也の話でした。お互い想いあっているのに、自分の力に恐れた恭子と、自分の立場に動けなくなる裕也が、ギクシャクするところが、何とも切ない。
特に、恭子の心境は辛いものがありますね。何一つわからないまま、回りが動いていくだけに、どれほどの不安を抱えていたか。裕也とデートできるというだけで、あれほど心浮き立ったのは、その反動なんだろうなと思いました。
それにしても、ふたりのデートの様子は良かった。一緒にいることの楽しさがとても伝わってきます。観覧車のシーンなんて、会話がないのに、距離感がわかるんですよね。
ひょっとしたらひょっとしてと、恭子と同じように期待してただけに、裕也の言葉は痛かったなあ。真実を話さないまま、側にいてもらうことが難しいのはわかるだけに、何とも言えないもどかしさでした。
突き放すことが優しさなのかどうかは、命がかかっているだけに、難しいところではありますが、あの後の恭子の姿を見てしまったら、一緒にいてあげてほしいと思ってしまいますね。相手に好きと言われて、自分も相手が好きで、でも寄り添うことができない。
吐き出すような悲しさに、思わず涙。
この二人の描写があまりにも良かっただけに、組織の戦いがあまり盛り上がらない感じだったのがちょっと残念ではありましたが、きっちりと前を向いて、戦いに終止符が打たれたのはよかったと思います。
そういえば、いつの間にやら、ツンデレというよりは、デレっぱなしの恭子でしたが、裕也も同じようなもんだし、それを考えるとお似合いかも。思わず、ふふっと微笑みたくなる締めの言葉が素敵でした。
これでシリーズも終わりですが、次はどんな物語を届けてくれるのか、楽しみですね。
私のKnightになってよネ! ぷち
「そなたはわたくしの下僕となるのだ」
恭子の言葉に、裕也の頭は真っ白になった。
文化祭で劇をやる。それはいい。恭子が主役なのも文句ない。だが、そのせいで、裕也は主人公をやることになってしまったのだ。周囲の視線の集まる中、恭子に向かって、愛ある言葉をかけることがどうしてもできずに悩む裕也だが、ある日、劇を中止しろという脅迫文が届けられて……
いやあ、笑った笑った。あるときは爆笑、あるときはニヤニヤ、うふうふ、あるときは微笑ましくと、楽しい楽しい四編の短編が収録されてました。それぞれの短編の一行目がすごい興味を引くんですよねー。抜き出してみると、
「お願い裕也、僕と付きあって」(男から)
「あ、あの、お願いします裕也さん、俺と……、付きあってください!」(ゴツイおっさんから)
「ねえ裕也くん、ちょっと生け贄になってみない?」(彼女から)
「これは命令である。そなたはわたくしの下僕となるのだ」(彼女から)
ってな事になってるんだから、裕也が不憫でなりません。
一番笑えたのは、一編目の「愛と憎しみの交差点!?」ですね。クラスメイトにして同居人にして、さらに社長の息子である自分の護衛として、最も身近にいた匠の告白から始まる物語で、実はとてもしつこい女の子に迫られたので、いっそ男好きってことにすれば諦めてくれるのでは、という匠の浅はかな思いから告白したんですが、それが一気にクラス中どころか学校中に知れわたるところに大爆笑。
いや、そりゃそうですよねー。あれだけ一緒にいたら、ちょっとは想像しますよねー。恭子とか柚里ちゃんがいたから、抑えられていたタガが崩壊して、何を言っても誰にも信じてもらえないところが楽しい限りです。思ったより早く、恭子と柚里の誤解が解けたのが残念でならないほどでした(ひどい)。
女の子を諦めさせる方法については、やりすぎだろって思わなくもなかったですが、それはおいといて、最後に恭子と裕也がみせてくれたなあ。いまだ大して進んでない二人ですが、お互いを思いあう距離感に、微笑ましくなります。
ふたりが必要以上に近づかないのは、裕也が奥手すぎるせいだからなんですが、それが浮き彫りになるのは、あらすじを書いた「眠り姫はあなたのために」ですね。
傍若無人な王女と奴隷の恋を、恭子と裕也が文化祭の劇で演じるんですが、台詞を完璧に覚えていて、匠相手ならばすらすら話せるのに、恭子を目の前にすると、演技だとわかっていても、愛の言葉ひとつ囁けないんですから、いと情けなし。まあ、裕也の台詞に、顔を赤らめた恭子を見てしまったら、意識するのもわかりますけど。
今回の短編では、恭子のツンデレっぷりがあまり感じられなかったんですが、そんな中、一番悶えたのは、キスシーンがあるからといって、本当にキスしたらぶん殴るからと、裕也に釘を刺した後の台詞です。
「別に、裕也くんと、そういうことしたくないわけじゃないから。ただ、事故とか勢いとか、そういうのでしたくないだけなんだから」
転がりまわったのは内緒。
今までは、転校することが多かっただけに、裕也がクラスメイトとの素敵な思い出を作れたのは、ほんと良かったですね。さりげなくも、裕也のために尽力した恭子の思いに、ジーンとさせられました。
いやあ、楽しかった。シリーズが終わったあとに、こんなお楽しみが待ち受けていたとは、嬉しいですね。次はどんな作品を届けてくれるのか楽しみです。
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