うらにわのかみさま / 神野オキナ
うらにわのかみさま 1
小さいころ、自分だけの友人っていたよね、という話が友人たちの間で盛り上がっていたが、垣華ユウにもそんな友達がいた。「とらたん」と読んでいた虎のような猫のような人形が。
そのとらたんが物置を片付けているときにひょっこり現われた。懐かしい気持ちでいっぱいになり、汚れをふき取っていたら、もぞもぞ動き出し、はては二本足で歩き始めた。
何ととらたんは虎神さまであり、ユウの家は神様のお手伝いをする家系だったのだ……
とらたんと一緒に「神もどき」の侵入を防ぐお話。といっても、殺伐としたものではなく、ほのぼのとした雰囲気です。そうだよなあ、小さいときには自分にも自分だけの友達がいたよなあ。あのときの人形とかどこにいったんだろう?
思わず昔を振り返り、自分の気持ちを思い出してしまいました。
悪人らしい人は出てこなくて、ちょっとしたバトルはありますが、人死にすることなく進む展開。虎神さまの手伝いをするときには変身をするんですが、すごい力を手に入れたときの気持ちがとてもわかります。お金で現実に戻るところで思わず笑いました。
ユウの男っぽさに始めは違和感を覚えましたが、良さがわかってくるにつれて、似合ってるかもと思うようになりました。迷うことがあっても、礼を尽くすユウがかっこいいです。
ちょっぴり内気な霧人とのさりげない恋愛要素がいいですね。
何と言っても一番良いシーンは、ユウが亡くなった祖母の部屋に入る決断をしたところでしょう。強いイメージのあるユウが、直視できなかった現実を見つめなおすところ。とても真っ直ぐで、とても悲しくて、とても温かかったです。これぞ神野オキナって感じですね。素敵な物語でした。
うらにわのかみさま 2 夜空の海と炭酸と
古来より、現世と神世を往来する、神様専用の乗り物「アマノウキフネ」が船幽霊たちの手によって盗まれたという。蛇神さまから知らせを受けた虎神さまは、蛇神さまと巫女の狭霧たちと共に、船幽霊たちから船を取り戻す策を練り始めた。
そこに、猫姉ェこと猫神さまも絡んできて……
蛇と虎のかみさまと、その巫女が力を合わせて、船幽霊たちから船を取り戻すお話。と書いたものの、実際には船を取り戻すシーンは最後のほうだけで、メインは蛇神さまとその巫女の狭霧との交流や、気になる人になりつつある霧人との交流ですね。
時の流れがゆったりまったりで、気持ちいい。
今回は、わりと霧人側にスポットがあたっている感じです。クラスメイトと話せるようになったりと、成長する姿が見えるのは、やっぱり猫姉ェのおかげなのかしら。それと自分が作り上げたものに対する責任も、成長させる要因かもしれないですね。
いろいろと抱えるものがあるかもしれないけれど、このままの方向へいってほしいなあ。
猫姉ェは、虎神のことは知っていても、まだユウには気づいていないみたい。霧人とくっつけようとするところに、ほんとの姉らしい愛情を感じます。
何気に霧人もユウ意識し始めたし、ユウも狭霧のおかげで素直になりつつあるみたいですね。純情すぎる反応の初々しさがとてもいいです。最後が最高に甘酸っぱくて、どうしようかと思いました。素敵だなあ。
ただ、敵と知ったときに猫姉ェはどういう動きをするのか油断はできそうにありませんね。下手すると、霧人も感情を持っていかれるかもしれないので、ちょっと不安。
とはいえ、目的が同じであれば今回のように共に戦うこともあるってことは、それほど殺伐とした関係じゃないと思っていいのかな。この雰囲気のまま、何とか仲良くなってほしいものです。
うらにわのかみさま 3 邪神さまにおねがい
二泊三日のお泊り旅行に、ユウたちはやってきた。それも男女三人ずつ。ユウと霧人を除いた二組はカップルで、つまりは自分たちも……という期待を胸に、海で泳いだり、コテージで騒いだりと、ユウたちは楽しさを満喫していた。
そんな穴場の孤島に、とある謎の教団が復活させた邪神の女の子が現れて……
夏の海でドキドキしていた二人が、水着姿の邪神の女の子に遭遇して、というお話ですが、初っ端のユウと霧人のお互いを意識した会話は、読んでて気恥ずかしくなってきますね。初々しいやり取りが醸し出す空気に、クーとさせられました。一緒に行った友人たちが影で見守ってるときの気持ちがよくわかります。
いい感じに仲が良くなって、素敵なシチュエーションに後押しされての決断に、良かった良かったと思ってましたが、よくよく考えなくても、ふたりには大きな壁があるんですよね。妙な教団が邪神なるものを呼び出してくれたおかげで、片方が気づいてしまうことになったのは辛かったです。
教団の武装攻撃から邪神守るために、ユウと霧人が共同戦線を張ることになるなんて、、事実を知ったものからしたら、何とも皮肉ですよね。自分たちの関係を苦悩しつつ、相手のいいところを見つけると嬉しくなってしまうという揺れ方には、何ともいえない気持ちにさせられます。
それでも一段落ついて、ホッと一息と思ったら、最後の最後でこんな衝撃的シーンを持ってくるとは!こんな引きで次巻に続くだなんて、ああ……。いや、ハッピーエンドにしてくれると信じてますが、それでも気になることこの上ないです。
きっと、今回あまり目立つことのなかった猫神、虎神あたりが頑張ってくれるんじゃないかなと期待して、次なる最終巻を待ちたいと思います。
うらにわのかみさま 4 虎と猫と君と僕
南の島での騒動にはケリがついた。だが、あれから霧人と連絡が取れない。かといって、会いに行く勇気も出なかった。ユウがため息をついているころ、同じように霧人がため息をついていた。心が通い合ったと思っていた人が自分を騙していたなんて、と。それ以上に、怖さから逃げ出したことに罪悪感が生まれ、身動きが取れないまま、時が過ぎていき……
神の代行者として対決していた相手が、実は心許していた人だということを知って……というところから始まる物語。強烈な引きで終わっただけに気になってましたが、どうしたらいいかわからないという少年少女の戸惑う心が伝わってきましたね。
同じところでぐるぐる悩んでしまうあたり、青春だなあと思いましたが、そんなふたりを心配して励ます友人たちの存在が素敵でした。安易な慰めだけじゃなく、別の考え方も示唆した霧人の友人の言葉も良かったですが、ユウを励まそうとする友人たちの温かな気づかいのシーンは、ベタだと思ってもグッとさせられます。
友人だけじゃなく、反発しあっていた神さまたちも、ユウと霧人の様子から反省して、なんとか仲直りのきっかけを作ろうとするところが、なんともほほえましいというか、こののんびりとした空気がいいですよねー。
ちゃんと話し合えればここまではいかなかったのでは、と思わなくもないですが、逆にここまでいったからこそ、心から分かり合えたのかなとも思えました。お互いの思いを込めて戦うことで、自分の本当の気持ちに気づいていく展開は、とてもよかったです。
個人的には、もうちょっと二人のラブラブモードを読みたかったかなと思いましたが、最後の最後まで、素敵な雰囲気を崩さずに終わってくれたのは嬉しいですね。全員の幸せが感じられるラストに、にんまり。
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