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翼は碧空を翔けて 1

教師の言葉を退屈しながら聞き流していたら、突然、部屋が暗くなった。窓の外をばかでかい建造物が動いているのだ。何がおきたのかと、部屋の外へ飛び出したアンジェラに説明したのは、次期国王である兄のフランツだった。
「あれは飛行船というんだよ」
故障したという船長のセシルの言葉に、フランツは修理が終わるまでここに滞在することを許したが……。

ああ、面白い。王女であるアンジェラのお転婆ぶりには、お付の人とかは胃が痛むでしょうけれど、周りで見ている分には微笑ましい限り。
はじめは何てわがままな王女なんだろうと思いましたが、お兄さまを大切に思う気持ちや、けっして悪気があるわけじゃないところに、しかたないか、と思ってしまうのは、魅力にやられているのかしら。知らないことに出会って、わあ、と感動している姿が可愛い。

好奇心旺盛で、頭は悪くないけれど世間知らずで、それでいてプライドが高いと、扱いにくいことこの上ないですが、皮肉と正論で受け流す船長のセシルと、同じ年頃で純情なクルーのランディの従士っぷりが、いい関係を作り上げていますね。

アンジェラの行動の理由がいまいちわからなかったんですが、説明を聞いて、ああ、なるほどと納得。でも、セシルの反論は当然だよなあ。深く考えているようで、まだまだ視野が狭いところは幼さゆえでしょうね。とはいえ、成長したら手がつけられなくなりそう。

ランディがアンジェラに好意を持っていることは、あまりにもはっきりわかりますが(真っ赤になり過ぎです)、セシルはどう思っているのか、アンジェラは誰を思っているのか、はっきりしませんね。
最後の場面を見ると、反発しあいながら惹かれあっていく展開かなと思ったり。というか、個人的にはそっちが好みなんですが、さてさてどうなるだろう。

あとがきによると、全三巻の予定らしいです。しかも、戦火の中の話だとか。三人がどんな展開の中を翔けていくのか、今のところ目立たない飛行船はどうなるのか、とても楽しみです。

翼は碧空を翔けて〈1〉 - 三浦 真奈美

翼は碧空を翔けて 2

戦争が始まり、戦地に赴いた人たちのために何かできることはないかと、アンジェラは、高貴なる者の義務として、数多くの職務をこなしていた。一方、エグバートでもついに戦争が始まり、飛行船が戦地を襲撃することになった。軍に飛行船を提供するセシルに、ランディは激しく反発し、いつしか反戦運動に身を投じて……

三部作の第二弾は戦時中の話です。飛行船を作っている人は、高く、より遠くにと思っているだけなのに、いつしか軍がのさばって来るのは、いつの世も一緒なんでしょうね。
真剣に飛行船を愛しているからこそ、ランディが反発するんだろうなあ。その気持ちはよくわかります。わかりますが、反発の仕方が、なんというかとても子供ですね。頭は良くても世間知らずってところかな。

逆にセシルは世間を知っているから、できることをやっているんでしょうね。ランディを諭すこともさほど難しくないような気がしますが、セシルが気づかなかった恋心から始まったものだとすると、なかなか難しいか。
リズにやり込められる姿には、思わずニヤニヤさせられちゃいますが、何か情けないぞ、セシル。

一方のアンジェラは、相変わらず頭より先に体が動くようなところがあるんですが、ある程度、場所をわきまえているし、何より国民のことを思っての行動に、誠実なものを感じます。自分のできることはないかと探し、必要ならば戦地にまで慰問するあたり、王女として成長していますね。どっかの男共とは大違いだ。

内政や外交など、今まで知らなかったことに耳を傾けて、事実を知るところは、なかなか厳しいところがありますが、それでも頑張ろうとする姿が、ほんといいです。この明るさで、国を支えていってほしいと思いました。

ただ、派手なことがいろいろあってもおかしくない戦時中なのに、物語としては、それほど盛り上がりを感じませんでした。誰も戦地で活動していないため、戦地の様子が語られなかったこともありますが、三人がバラバラに過ごしていた事が、一番大きな原因なんだろうなあ。

次は戦後のお話になるってことで、王族の人間としては、むしろこちらのほうが活躍すべき場となるでしょう。セシルは逆に今までとは違って苦しい立場になりそうですが、さてさて、どうなるのか楽しみです。


翼は碧空を翔けて 3

国王陛下が最後のときを迎えた。周辺各国の状況が落ち着くまでは、戴冠式は延期する事になったが、議会は慌しかった。参戦したことについて、世論が非難を訴えているからだ。やがて、アンジェラが暴漢に狙われるほど緊張が高まり、再びアンジェラはエグバートへ送られる事になって……

冒険心豊かなアンジェラのお話もこれで最終巻。女性が政治なんて学ぶもんじゃありません、と言われようがなんだろうが、お兄様を手助けしたい、国民のために何かをしたいと、アンジェラが動き回る姿は楽しいです。
新たな土地で、国のために働き、新たな知識を学んでいくアンジェラの好奇心は、ほんと素敵でしたね。相手を論破していくお転婆さが、たまりません。

エグバートへ行ったらもしかして、と思っていたら、あっさりセシルに会えましたが、アンジェラのあまりの変わりように、セシルが美人だと言ってしまうところはニヤニヤですね。中身が変わっていないところを見抜く辺りはさすがですが、たぶん、きれいになっても、中身が変わらずにいてくれたことは、セシルにとって嬉しかったんじゃないかなあ。今までとちょっと違った視点から、アンジェラを見るようになっていくセシルが印象的でした。

三角になるかと思ったもう一人の男の子ランディは、なんとも子供っぽく感じたんですが、これは人生経験の差でしょうか。つい先日まではアンジェラと同じぐらいだったのにねぇ。こうなると、セシルとの間はどうなるのかとワクワクです。

もやもやしたものは感じていても、それが何を意味しているのかをアンジェラが意識したのは、あの涙のときなんだろうなあ。微妙に心が折れそうになったときに、活躍したのが空を飛ぶ船だったことや、自分の気持ちについては、多くを語らなかったセシルの思いを連れて行ったのもまた飛行船だったことは、感動物でしたね。最後に飛行船が見えたときは、よくやったとガッツポーズしたくなりました。

お母様だった王妃が何となくかわいらしい感じになっていたエピローグでしたが、それより何よりお兄様が素敵でした。何でもお見通しってところは、かなわないなあって思っちゃいます。やってくれるね、このこの。
結託した二人に新国王がふたりにどんな目に合わされたのか。いろいろ想像しちゃいますね。

いやあ、面白かった!これはいいものを読んだなあという気分でいっぱい。飛行船とか、元気な女の子が活躍するお話が好きな人なら、楽しめると思うので、ぜひぜひ手にとってみてください。
オススメ。

翼は碧空を翔けて 3 (3) - 三浦 真奈美

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