つばさ / 麻生俊平
つばさ
奨にはちょっとした能力があった。自分に危険が及ぶとシグナルを感じるのだ。放課後、シグナルを感じた奨は別の道で帰宅しようとしたところ、その道を進むクラスメイト、学園一の美少女檜垣翠子がいた。
まずいと思った奨は、信じてもらえるかわからないけれども翠子を説得しようとしたが……
面白い。こういった雰囲気の学園ものは好きです。
美少女たちに囲まれてそこら中でフラグ立ってるのに、引っ込み思案な性格のため気づかないという、ある意味、王道的な面白さ。さりげなく嫉妬したり対抗する翠子にたまらなく萌える。
翠子だけじゃなく、みんなが奨に惹かれるのもわかります。一番力がなく、足が震えていても、仲間のために頑張れる男の子だから。
意地っぱりな連中が思わず奨を気にしてしまうシーンが出てくると、ニヤリとしてしまいます。
誰もが何かしらの特技を持っているけれど、影も背負っているようなので、このあたりが語られる話を読んでみたいですね。
つばさ 2
高校の剣道部で道場破りがあり、この地区でも有数の実力者である部長が敗れた。それも、もてあそばれるほどに圧倒的な力の差を見せつけて。それ以来、部長は覇気をなくし、引き篭もってしまった。そんな彼を見ているのはつらいので、何とかしてくれと、幼馴染だという女子生徒が「つばさ」に依頼してきた。
話を聞いたメンバーは、さっそく調査を始めようとしたが、メンバーの一人である静は、依頼を引き受けないと言い出して……
学園内でのトラブルの解決を目指す秘密グループ「つばさ」へ持ち込まれた今回の依頼は、道場破りやられた剣道部部長の自信を取り戻すこと。それと同時に、道場破りの流派が、静と同じ窮真流ということで、静にも焦点が当たります。
依頼についての話や、複雑な事情を抱える静についての話を、いわゆる超人的な力を持たない普通の生徒たちが、稚拙かもしれないけれど、自分達のできることをやって解決を図っていくという展開がとても良かったです。
それにしても、翠子が楽しかった。奨が他の女の子を気にかけると、黒い嫉妬のオーラを発したり、かと思うと、勉強会(という名の個人授業)に誘ったりと、何かと奨のことを構う姿にニヤケてしまいます。指摘されると、クラスメイトだから、頼りないからと言い訳してるところが、可愛いですね。
ただ、いまだに翠子が、なぜ奨を好きになったのかがわからないんですが、どっかに書いてあったかしら。
焦点が当たった静もいい味出していましたね。ぶっきらぼうでも温かい。そんな彼女の良さが伝わってきました。いろいろシリアスなことがあったりしますが、偽装デートとかコミカルなところもあって楽しかったです。ひょっとしたら、このあたりもちょっとしたフラグになるのかもと思うと、ニヤニヤです。
静と麗の出会いの話は、もっと詳しく知りたかったなあ。サイドストーリーでもいいので、読んでみたいところです。
依頼にあった、失った自信を取り戻させるというのは、単純に力で解決できないことなので、なかなか話がすまなかったところがあったり、最後はちょっと力技な感じもしましたが、解決できればすべて良しってことで。
読んでる身としては、依頼内容よりも、静の話のほうが気になっていたので、そっちがうまくいってよかったと思いました(ひどい?)。
今回は静の話でしたが、他のメンバーについては、まだまだ、知られざることがあるので、一巻につき、ひとりずつ焦点が当たっていってくれるとうれしいなあ。次はどんな話になるのか、楽しみですね。
つばさ 3
中間テストが終わったころ、以前に茜台学園へ留学に来ていたアニエスから、<つばさ>に依頼がきた。「癒しの歌姫」といわれたセレーネが、かつてエトワニアで出会った日本人旅行者ヤマガミと会いたいので、探して欲しいのだという。恋した人のために国を渡ろうとする思いに心打たれた<つばさ>のメンバーは、さっそく動き始めたが、調べていくうちにキナ臭さを感じて……
学園内のトラブルを解決する秘密グループ<つばさ>が、学外の依頼を受けて、人探しをするお話です。もう出てこないかと思っていたアニエスが、自国で<つばさ>のような活動を始めて再登場というのは、嬉しいですね。
麗と静香が修学旅行のため、翠子と奨が主に動いてましたが、ちょっと物足りないなあと思ったのは、恋愛要素が足りなかったからです。一緒にお泊りとかあったのに……。
ただ、奨がいないところでは、翠子も結構気にしてて、久しぶりに会ったアニエスとライバルらしい火花を散らしあうところは笑えます。奨自身は、翠子だけじゃなくアニエスにも心揺れてるところがありますが、さて、どうなるんしょう。
個人的に印象的だったのは、先輩たちが翠子や奨を導くところですね。「失敗してはいけない」のではなく「失敗するなら、少しでもいい失敗に」という言葉には、しびれました。多くの失敗を経験しただろうに、決して諦めずに今も<つばさ>の活動を続けている人たちに、頭が下がる思いです。
夢を追うだけで、現実を見ようとしなかった人たちが、誤った方向にハマっていくところは、切ないものがありましたが、それでも自分の気持ちを正直に歌で表現したセレーナの思いには、胸に来るものがありました。
舞台の上での歌も良かったですが、やはり愛する人のために歌った最後の希望の歌と、つたない日本語で告げた言葉が、ほんと良かったです。
若さ故の行動から失敗することもあるし、複雑な思いから前が見えなくなる時もあるけれど、仲間と力を合わせれば、何かが出来るということが伝わってくるお話はいいですよね。次はどんな依頼が舞い込んでくるのか、楽しみです。
できれば、翠子と奨の関係がもうちょっと発展してくれると嬉しいな。
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