とらドラ! / 竹宮ゆゆこ
とらドラ!
新学期。クラス変え。竜児は片思いの相手と同じクラスになれた。竜児の親友と彼女は同じクラブなので、たまにちょっとした会話ができる。だが、ひとつだけ懸念があった。彼女のそばには常に逢坂がいるのだ。容姿こそかわいいものの、気性の激しさ、背の低さ、大河という名前から「手乗りタイガー」と呼ばれる逢坂が。
ある日の放課後、誰もいないと思った教室に戻ったら「手乗りタイガー」がとんでもないスピードで隠れていくのを見かけ……
「ヒロインは手乗りタイガー」なんて帯に書かれていて、しかも表紙に小さなトラらしきものが描かれていたので、変身もの?と思ったら、普通の女の子だった。小さくて名前が大河だから手乗りタイガーか。まぎらわしい。
それはともかく、ラブコメ。どういう展開になるかは読んですぐにわかる。実際そのとおりに進んでいくのに、なんでこんなに面白いんだ?照れくさくて、恥ずかしくて、読むシーン読むシーンニヤケっぱなし。
……周りから見たら変態だ。
何はともあれ存分に楽しませていただきました。
あとがきによると二巻も出るっぽいですね。
ぜひとも、気恥ずかしさ満開の展開をお願いします。
とらドラ2!
互いの利益のために協力していたら、いつの間にか一緒にいることが多くなった大河と竜児。そんなふたりがファミレスにいたとき、北村が店に入ってきた。すらりとした八頭身美人の女性と共に。北村の幼馴染という亜美。美人で、親は有名な女優で、気取ったところもなく純粋。 こんな子がいるんだなあと思っていた竜児だが、北村と竜児が席を外している間に、大河が爆発して……
気恥ずかしくてたまらないという展開は少しなりをひそめ、新たな展開が待ち受ける。前作の流れを引継ぎながら、こんなふうに話を持ってくるとは思いませんでした。女性には怖い一面もあるんだよというところでしょうか。
それにしても女性陣の印象が強烈です。新たな登場人物も生徒会長もいい味出してます。
何といっても櫛枝サイコー。天然とは、ああいう人のことを言うのだ。
櫛枝にしろ大河にしろ、ひとりひとりでも面白いんだけど、二人が組めばもはや最強。コンビニ神拳は何度読んでも笑えます。
おかげで男性陣の影が薄いこと薄いこと。竜児って主役のひとりだったよね、と思わず確認したくなりました。
しかしまあ、何て強烈な引きを作ってくれるんでしょう。次は大波乱が待ち受けてるであろうことを予感(期待?)させてくれますね。
とらドラ3!
大河は機嫌が悪かった。ぜんぜん怒ってないよ、と言いながら、周りには怒りのオーラが見えた。しかも指摘しようものなら、逆ギレされる始末。
そんな終わりの見えないトンネルのような息苦しさが破られたのは、プールが始まるということで、水着を買いに行くことになったからだった。プロポーション抜群の亜美とは対照的に、大河はとても貧乳で……。
大河の怒りを如何にして解くかに終始した物語といったかな。なかなか誤解が解けず、大河が怒っているので謝ると、怒ってないと取り付く島がない、というループ状態。おかげで前作では影が薄かった竜児にフォーカスがあたって、竜児と大河の物語になってました。ギクシャクした二人の関係という困った展開に、ニヤニヤ笑いが止まらない。
ただ、ふたりの仲がループ状態だったせいか、話の進み方が遅く感じました。面白いけれどちょっと重かったって感じですね。
個人的には、竜児が表に出てきたおかげで、逆に見事な裏の顔を見せてくれた亜美が鳴りを潜めてしまったのが残念でした。ただ、本気で惚れたのかしらと思う描写がちらほらあって、非常に気になる。演技の可能性もあるんだけど、たぶん違うよなあ。自動販売機での竜児との会話がとても印象的でした。素の方がかわいいじゃん。って僕やられてる?
まあ、雨降って地固まるというか、派手にやらかすふたりに雨が降ったら固まり方も強烈だったわけで。あの叫びはすごい。いくらなんでも誤魔化せないだろうと思ったけれど、そこはさすが大河さんでした。意地っ張りめ。
竜児はそろそろ気づいてきたような気がしないでもないけど、さてさてどうなるのかな。亜美の件もあるし、今後の波乱がどうなるのか楽しみでしょうがない。
ちなみにお気に入りのみのりんは今回も印象的な行動をいろいろやってくれましたよ。ぎにゅー特戦隊やら閉じない目やら、細かいベタなギャグがツボでした。やっぱりみのりんは最高です。
とらドラは、実はみのりんの魅力を伝えるための物語だと、僕は信じてます。はい。
とらドラ4!
みんなで亜美の別荘に行く事になった夏休み。今度こそは好きな人と距離を縮めたい。ただ、今までのようにお互いに協力し合うのでは、共倒れになる可能性がある。ならば、一方が完全にサポートに回ろう。ということで、大河と竜児は勝負をした。
そしてついに舞台は海辺の別荘へ……
5人で海辺にある亜美の別荘へ行くというお話です。
海で水の掛け合いをしたり、別荘の掃除をしたり、料理を作ったり、星空の下で話をしたり。こう書くとベタな感じですが、好きな人と一緒にいる嬉しさや、喜んでもらえて照れる様が伝わってきて、もうニタニタしっぱなしです。この雰囲気作りは素晴らしいですね。
いろいろ画策する大河と竜児の様子が楽しいですが、そんなふたりを吹き飛ばすぐらい、みのりん大フィーバーって感じでした。
明るいだけでなく、意外一面も見えたりして、みのりん好きとして、とても堪能させてもらいました。竜児もいい具合にフォローしてて、ひょっとしたらひょっとしてと思わせる雰囲気が良かったです。
意外にも亜美があまり引っ掻き回したりしなかったので、物足りなさを感じましたが、逆に竜児に対しては、ちょっと真剣になったっぽいですね。冷静に分析するあたり、マジなものを感じます。本気になったら、積極的になりそうなだけに、こっちはこっちで面白くなりそう。
何気に竜児が、ほかの人とうまくいってるおかげで、大河がちょっと可哀想になってきましたが、そのあたりを目の当たりにして、どんな気持ちになったんでしょうね。素直になれない彼女が、どう挽回していくのか気になるところですね。
そこいら中に、甘酸っぱいものや、もどかしいものが散りばめられてて、悶えまくりでしたが、今回の出来事で、竜児に対して三人の女性が、心境の変化をもったので、わりと重要な前振りになるのかな。
これは続きがすごく楽しみですね。
とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード
みんなの兄貴的存在である生徒会長のすみれ(女)に虐げられる毎日をすごしていた生徒会庶務の幸太は、ひょんなことから、すみれの妹であるさくらと出会った。追試を受けることになった彼女を、すべてにおいて完璧な姉が怒鳴り散らしてたのを見て、ちょこっとさくらに肩入れしたら、なんと彼女の勉強を手伝うことになってしまった。
天然で、見るものを扇情させる無防備さをもつさくらとのお勉強会では、いけない妄想が溜まりに溜まって……
毎日、何かしら不幸が降りかかる体質を持っている富家幸田が、天然扇情娘の狩野さくらと出会って、というお話です。いやあ、いいですね。はじめから最後まで、ニヤニヤ笑いが止まらない面白さです。
さくらの無防備なエロさに翻弄される幸太の姿が笑えますが、相手にそんな気はないんだからと、彼女のことは意識の外に置いてたのに、テスト勉強が終わったらさくらの笑顔が見れなくなるんだなと、一抹の寂しさを覚えるようになっていく展開がたまりません。恋に落ちていく過程が、素敵ですよね。
ただ、一緒にお弁当を食べているだけ、ただ、一緒に出かけているだけ。それだけのシーンなのに、これでもかというぐらい楽しさが伝わってきて、読んでるこちらまで、気分が弾んできます。友達以上、恋人未満なのが不思議なくらい。ふたりの初デート騒動は、ほんとうにほんとうに素晴らしかったです。
そういえば、さりげなく出てきていた生徒会副会長の北村(タイガー惚れ惚れ中)も、なかなかいい味出してたなあ。すみれが妹や幸太のことを心配するところにつけこんで(というと言葉悪いけど)、さりげなく会長とデートしようと姑息さには笑いました。違うだろ、おまえはもっとカッコいいやつだろ、と思ったけど、そんな北村が好きだったりもします。
男気溢れる会長はかっこよすぎなので、惚れるのもわかりますね。大河じゃ敵わないなと思ったのは僕だけじゃないはず。
ちょっとしたことから、幸太とさくらのすれ違いが始まるところは、好きだからこそ、という感じが伝わってきましたね。好きという言葉がどうしても言えなくて、でも彼女のことが好きで好きでたまらなくて。 あまりにも真っ直ぐで、気恥ずかしくなるものがありましたが、幸せな二人には、気にならないでしょうね。ごちそうさまです。
いやあ、ほんと面白かったですね。文句なしでオススメです。とらドラシリーズを読んでない人でも、楽しめる内容だったので、初々しい恋と楽しさ満載のお話が読んでみたいと思ったらぜひぜひ。
P.S.
いつか、すみれと北村の話も読んでみたいな。
とらドラ5!
夏休み明けの文化祭。やる気のなかった 2-Cの面々は、人気投票トップには豪華商品が出るというアナウンスで一変した。実行委員の春田がコスプレ喫茶を提案すれば、女生徒はホストクラブを提案してと大騒ぎ。いつの間にやら、三十路ライフを送ってる(独身)担任、恋ヶ窪ゆりの策略により、プロレスショーを行うことになったが、それはそれ。クラスが文化祭に向けて一丸となっている中、大河の父親が竜児の前に現れて……
文化祭に一丸となっている学校のお話と、大河と父親の関係について語られるお話ですが、素晴らしい。ほんと素晴らしい。いつも以上にコメディ要素が多くて、ニヤニヤと爆笑の連続かと思いきや、父親パートについては、結構シリアスで、もやもやしたものが残って。そこから迎えたらストの怒涛の展開は、鳥肌が立つほどの感動を覚えました。ああ、もう、最高。
それにしても、初っ端の文化祭に向けての話は、笑いが止まらなかったなあ。特に独身三十路ライフを送ってる恋ヶ窪ゆりのセリフは、たまりません。生徒に向かって何を言ってるんだ、あんたは(笑)。
普通だったら、絶対やる気なんかでないプロレスショーなのに、いつの間にかみんなが取り組むようになったのは、亜美の力がありましたよね。不満をくみ上げて導いたり、分裂が起きたときには宥めたりと、大人な対応を幾度となく感じて、メインの五人の中では、一歩進んだ成長を感じました。いまだにみんなの前では、仮面をかぶりまくってるし、文化祭の時のSMショーなど、はっちゃける場面もまだまだありましたけど。っていうか、大河と結構仲良いですよね?
楽しい雰囲気の裏側では、大河と父親の関係が描かれてましたが、話だけ見ているといい事のようなのに、不安を煽られまくりで、単に離れることになるのかもしれない竜児の気持ちが見えてるのかなと思ってたんですが、ぜんぜん違いました。みのりんが動き始めて、やっとわかりましたよ。ただ、竜児からしたら、素直に頷けないところもわかりますよね。間違っているとも思いたくないのは、やはり父親に対する想いというか、憧れがあるんだなあと思わされました。
文化祭が始まってからの展開は、楽しくもあり、それ以上に不安にさせられるものだったので、例のことが発覚したとき、胸が締め付けられる思いでいっぱいになりました。竜児の悔やむ気持ちも、辛いなんてもんじゃないですよね。
これだけの重苦しさを解き放ったのが、躓いた大河の立ち上がる姿でした。他人からどう見られても、彼女のために応援する竜児とみのりんの姿でした。これだけでも心に残ったのに、最後の福男な話といったら……。ストレートに胸に来る熱き思いに、やられました。みのりん、かっこよすぎ!とても文化祭であんな仮装した人と同一とは思えないよ!
大河が心に負った傷を癒したのは、彼女を大切に思う人がいたからだという展開に、温かい気持ちになりました。最後のキャンプファイアシーンも良かったよねー。ああ、青春って素晴らしい。
それにしても、みのりんのぶっちゃけトークには驚かされましたが、ひょっとしたら竜児を?と思わせる節もあってニヤニヤがとまらない。でも、竜児は、微妙に大河方面に……な気がしないでもない。っていうか、北村がいきなり参戦してきた気がするんだけど、どうしたんだ?そういえば、文化祭で店を回ったときにも、妙なこと言ってたしなあ。
今回は恋愛よりも友としてのお話が強かっただけに、次なるステップである恋愛の行く末がどうなっていくのか楽しみですね。
とらドラ6!
文化祭が終わって数週間。イベントの興奮もとっくに去って、日常が戻ってきた最中、北村の燃え尽き症候群は、日に日に悪化していた。何とか元気づけたいと思うクラスメイトは、間近に迫った生徒会長選挙で、北村を応援しようとしたが、北村は突如叫びだした。 「俺はやめる。生徒会も、やめる。生徒会長選挙になんか、でない」と……
盛り上がった文化祭のおかげで、大河と竜児、北村に関して、いろいろな噂が流れてるところに、思わずにやりとしてしまった。本当のことでもないのに、嬉しく思う大河の気持ちはわかるなあ。竜児には同情しちゃうけど。
その文化祭の楽しさを、写真パネル前の騒動が改めて感じさせてくれましたね。好きな人の写真を買っちゃうドキドキとか、すっごい楽しいけど、何といってもみのりんが良かった。オラオラな登場には、盛大に吹いたけど、俺のターンと称して、記念に写真買うところは、素敵に青春でした。みのりんの恥ずかしそうなイラストが素晴らしすぎる!
とまあ、前作の文化祭の残り香が漂う始まりから、生徒会長選挙戦間近になって、北村がグレるというお話になっていくんですが、何があったのかはっきりしないので、なんとももどかしい。いや、スピンオフを読んだ身としては、察するものがあるんですが、どうして何も言わないのかヤキモキ。
そんな北村の力になりたくてと、竜児や大河などが、いろいろ手を講じるところは、ほんと良かったですね。一見ヒールだけど、亜美がかなーりいい味出してくれて、ああ、彼女は彼女でいろいろなものを見てきたんだろうなと思ったりしました。やばい。だんだん、亜美評価がアップしてきた(何がやばいんだ?)。
そういえば、今回は大河が、竜児とみのりんを二人っきりにしようとしてたシーンが、結構見れたなあ。好きな人と一緒にいられるドキドキさも良かったですが、暗くなりそうなみのりんに、まっすぐ向かった竜児が格好よかったです。これはなんかいい感じの雰囲気を感じるんですが、さてさて、どうなるのかしら。
一方の大河は、北村と会うと固まっちゃうような状態は(強制的に)なくなりましたが、それでも自分勝手な嬉しさをかみ締めていたときに、北村の胸の内を知って悔やむところとか、いつもと違った雰囲気が見れましたね。こういう北村の気持ちを目の当たりにしていたからこそ、最後の襲撃があったんだろうなあ。彼女の凶暴さに、理不尽さよりも熱さを覚えたの始めてかも。
今回迷いに迷っていた北村の姿には、ちょっと優柔不断すぎるものを感じていたんですが、そんな彼の迷いを吹っ切らせるすみれの言葉が、胸に来ました。そうか、彼も不安だったんだなあ。
吹っ切るための言葉は、華麗にかわされてましたが、ここで怒りを見せてくれる人が側にいるところに、北村の人柄を表してくれてますよね。彼女の思いの深さに、そして、立ち向かった相手もまた、完璧に見えても、やっぱり年相応の人だったことが見えてくるところに、グッとなりました。
いやあ、面白かった。笑いあり、涙ありと、ほんと素晴らしい青春物語になってきましたね。超オススメです!
しかも、最後に来て、ここ最近いろいろと別の顔を見せてくれてたみのりんが、またひとつ不安を思わせるものを見せてくれたりして、もうドキドキ。こうなると次はみのりん話かしら。それに亜美も絡んでくるのかな?あー、気になる!
今から続きがとても楽しみです。
とらドラ7!
「ここで生徒会からお知らせがあります。期末試験明け、クリスマスイブの二十四日は終業式ですね。その後、体育館にて、有志でクリスマスパーティを行います!」
「カップルさんたちはもちろんのこと、恋に迷えるそこのキミ……気になる誰かを誘えないキミ。ロマンチックなイブの聖夜を、想うあの子をこの機会に誘ってみないか?」
世間がクリスマスムードになり始めたころ、失恋大魔神となった北村が、クリスマスパーティを開くと言い出して、というお話。
ああ、もう、はじめの停学が終わったことを喜ぶ竜児と大河のやり取りが、すっごいいいなあ。クリスマスを楽しみにする「いい子」モードな大河がとてもかわいくて、ドーナッツを天使の輪のように掲げるシーンとかイラストとか見てると、これで付き合ってないなんて詐欺だと思ってしまいますね。
で、クリスマスイベント。気になる人がいても、積極的に声をかけることができないふたりからしたら、イベントにかこつけて誘うことができるんだから、いいタイミング……と思ったら、みのりんが絶賛へこみ中で、読んでて、こう、何とかしてあげたいのに、何もできないもどかしさが伝わってきて、とても、苦しい。
いったいみのりんに何が、ということに気づいてるのは、亜美だけのようですが、竜児も大河も気づいてないからこそ、つらいんだろうなあ。時にみせるハイテンションなノリが(ムーンウォークとか)、楽しくも痛々しく思えました。
ともあれ、クリスマスには、みなにハッピーな気持ちになってほしいと願い、思い、期末試験があるにもかかわらず、それをおろそかにしないで、クラスのみならず学校の生徒が一丸となって、イベントの準備をするところとか、ほんと良かったなあ。ひとつのことに向かって、全力を出し切るような、青春っぷりが、すっごいです。こちらの気持ちまで盛り上がってきちゃいましたよ。
今までどこかしらで切ない思いを胸にしてきた女の子たちだから、クリスマスという魔法で、少しずつでもいいから幸せを手にしてほしいと思っていたら、まさか、まさか、ここにきて、こんな怒涛の展開が待ってるとは思いもしなかった!
いったい、どうする、どうなる?
自分の思いに気づき、泣きじゃくる大河と、自分の思いを秘めて、何も言わせなかったみのりんと、裏に回りながら、でも諦めきれない思いを見せる亜美と。どの子の思いもわかるだけに、なんともやるせないです。
ここからどうなっていくのかわかりませんが、できれば、全員が幸せを手にしてほしいと、そう願いたくなります。
とらドラ8!
「逃げるんじゃない」
大河の声が、少し大きく辺りに響く。
「みのりんのことが、それでも好きなんでしょ?みのりんがあんたに向けていた想い、みたいなものを信じてるんでしょ?だったら、逃げたらだめ」
クリスマスイヴの出来事にショックを隠しきれない竜児が、ギクシャクしながら迎えた新学期。普段と変わらないみのりんの真意がわからぬまま、修学旅行が始まって……というお話。
これは……胸が痛くなるようなお話でしたね。人を好きになるって、ほんと重いんだなあと思います。竜児の様子には、悲劇のヒロインっぽい痛々しさを感じることもあるんだけど、好きな人の笑顔に、思わずこみ上げてくるところには、揺れる心が伝わってくるものがありました。
でも、大河といるときの様子を見ていると、やっぱり竜児は……って思いますよね。特に今回はひとり立ちしようとする大河に寂しさを覚えたり、大河の励ましに支えられたりしてて、そこまで大河を信じてるのに、なぜ気づかぬのか不思議に思うほどでした。そりゃみのりんも……とか思ったけど、みのりんはみのりんで、なかなか心の中を見せてくれないからモドカシイ。
この三人の様子を外から見てたら、勘の鋭い亜美みたく、バカバカしく思えてしまうのかもしれませんね。と思いきや、つい冷静でいられなくなってしまったのは、やっぱり、竜児を少なからず思っているからなのかなあ。みのりんにつっかかった亜美の姿を見ていると、ひょっとしたら悔しかったのかもしれないと思ってしまいました。
四者……というよりは、ほぼ三者か。竜児、大河、みのりんの三人のギクシャクしながら、つかず離れずを繰り返して、よりによって聞いちゃいけない話を聞いてしまい……というところで、自分はどうすればいいのだろうと悩む姿は、ほんと苦しくなりますね。
個人的に一番心にきたのは、大河の失恋大明神への願いです。あれはきつかった。今まで、どんな思いで竜児を応援してたのかが見えてきてやるせなくなる。その応援を受けていた竜児にしても、新たな悩みが加わることになるわけですが、これが自分を見つめなおすきっかけにもなるのかなあ。
それより何より、自分の行動が、結果として何を生み出してしまったのかを知ってしまった例の人は、流している涙とどう折り合いをつけていくんでしょうか。そろそろこの人の思いのはっきりしたところを見てみたいですね。
とらドラ9!
「……俺がお前を羨ましいと思うのは、前向きだからだ。ちゃんと前進しているからだ。どうすれば、そんなふうに前向きになれる?」
「『決める』ことだよ」
ちょっとだけ黙って、実乃梨は竜児の両目を静かに見返していた。
「自分で進む方向を決めること。それが定まらなかったら、そもそもどっちが前なのかもわからないじゃん。高須くんは、どこに向かってるの?行きたいところはある?それがなけりゃ前進できないぜ」
修学旅行で大河の気持ちを知ってしまった竜児が動揺する中、進路を巡って、母・やっちゃんと衝突してしまい……というお話から始まるわけですが、いやあ、すごかった。悩める青春まっしぐらですね!
みのりんのことは忘れられないんだけど、でも自分に向けられた好意を知ってしまったら、意識しないわけがなく、意識してしまったら、今まで気づかなかった思いを実感して……と揺れる男心が、これ以上ないぐらい伝わってきます。ズルズルと引きずる姿が、時にうっとおしく感じたりもしますが、それだけ真剣に悩んでるんですよね。
一度わかってしまうと、今度は周囲の視線も違って見えてくるんですよね。特に印象深かったのは、亜美です。誰よりも早く気づいてただけに、どうすればうまくいくか、自分ならうまくできるんじゃないかと、悩み迷いながら、噛み合わない歯痒さに苛立って。寂しさを強がりに変えてたことが見えてくると、心痛むものがありますが、もちろん、そういう悩みは亜美だけじゃなくて、みんな抱えてるんですよね。そのことに ―亜美だけじゃないですが― 気づいてほしいと思いました。
意外……といっては何ですが、独身(30)が、ちゃんと先生してるところが新鮮でした。進路相談のときに、竜児の迷いを、ああいう形で見抜くんですから。「反抗」という言葉が、これほどまでに竜児を縛っていたとはなあ。幼いころの思いとは、かくも深く刻まれるということか。
いや、やっぱり目の前で苦労を見ていたら……、せめて重荷になりたくないと思いますよね。このあたりは、やっちゃんももうちょっと話し合いに乗ってあげればよかったのにと思ったり。
やっちゃんとの衝突や大河の思いに悩んだ竜児がヘロヘロになっていく中、魅せてくれたのはやっぱりみのりんで。常に前を向き走っていく彼女の告白は、素直に格好いいと思いました。意地でもなんでもいい、頑張れ、みのりん。
おかげで大河との関係を壊さぬよう、ぎりぎりのところで踏ん張っていた竜児の努力がアレになってしまったんですが、ようやく……と思ったら、そっち側から話が飛んできたか。やっちゃんはともかくとして、なんだ、大河の家庭に何があったんだ?あーもう、こんなところで終わるなんて!
いったい二人は、どこへ行くのか。
続きがとても気になります。
とらドラ・スピンオフ(2)! 虎、肥ゆる秋
「ち、違う!わけがるのよこれには!」
違わない。わけなどない。スカートのホックが留まっていない。ファスナーが閉じていない。きちんとウエストがしまっていない。
「夏服と同じサイズで作ったから、ほら冬は下に着込むじゃない?だからきつくなって当然というか、」
「……何を着込んでるんだよ。なにを、きこんで、いるんだよ……」
「……キャ、キャミ……」
電撃文庫MAGAZINEに掲載された短編と書き下ろし短編を合わせたスピンオフです。
- ご飯の美味しい季節。太った大河がダイエットを決意したけど……「虎、肥ゆる秋」
- 川で溺れかけた女子大生を助けて、あわよくばと思った春田の妄想が現実に……「春になったら群馬に行こう!」
- 夏休み最後のイベントのバーベキューで、まさかのハプニングが竜児と大河を襲う「THE END OF なつやすみ」
- 台風直撃。園芸部のスペースを間借りした高須農場が心配になり……「秋がきたから畑に行こう!」
- 独身30の人生のドツボは22歳のときだった「先生のお気に入り」
ああ、楽しい!最近のようなシリアス展開もいいけれど、初期のとらドラを彷彿させるドタバタから繰り広げられる笑いあり、涙ありの展開は、気分が楽しくなりますね。「虎、肥ゆる秋」なんて特にそう。太ったことを必死に隠す大河、付き合いでジムに通いヨガに目覚める竜児、独自のダイエットを見せるみのりん、同情を通り越して大河のダイエットに使命を感じるあーみんなど、みんなの特色が現れるお話は、頬が緩んでしかたなかったです。
他の話も楽しさ満載でしたが、個人的に好きなお話は、春田の恋物語と独身30のお話ですね。
「春になったら群馬に行こう!」は、竜児の友人で軽さばかりが目立つ春田が、あわよくば、と思いながら、偶然出会った美人女子大生の恋の手伝いをしていたら、本気になってしまって、というお話なんですが、辛いよね。自分を大切にしてくれない人は。あわよくば、なんて軽い気持ちだったのに、気づけば本気になってしまったら、特に。
元カレとの話は、第三者だからこその冷静な指摘ができて、そのときの格好良さは素晴らしいものがあったけど、自分の気持ちとなると、迷いばかりが見えてしまうんですよね。どうすればいいのかもがく姿が、とても苦しくて、でも彼女のために笑顔を見せ続けたところが素敵でした。
間違いなく春田だったからこそ、の恋ですよね。素晴らしいです。
「先生のお気に入り」は、春田の話でも活躍してた独身(30)が、まだ教員になったばかりの頃の失敗を描いたお話。
いい先生ですよねー。みんなに親しまれるのがよくわかります。あれだけいろいろ失敗しながらも、決して他人のせいにはしないんですよね。落ち込むことは多々あるけど、特に仕事とプライベートの失敗が重なったこのときの出来事は、まさにドツボだったと思うけど、吹っ切って前を向いた姿が素晴らしかった。なんでいい人が現れないのか不思議に思っちゃいましたが、まあ、仕事熱心なせいですよねと思っておきます。
独身のファンならずとも、心を持っていかれるお話でした。ラストの疾走の爽快感が最高ですね!
さあ、次は本編の10巻ですね。今回のような楽しさとは違うシリアス度満載のような気がしますが、それもまた青春でしょう。楽しみに待っていたいと思います。
とらドラ10!
「わかんねえのかよ!?それが本当にわかんねえのか!?」
夜空に星はなく、道を導く星座も見えない。自分がどこにいるのかもわからない。ただここには、この腕の中には彼女がいる。彼女があるところに自分はいる。
それだけがたった一つ確かで。
「俺がいる場所がここ以外のどこにあるんだよ!?」
超弩級ラブコメ完結編。
行くあてもなく、さりとて手を離すことはできない。繋いだ手だけで、このふたりの距離を、見せてくれるんだからすごいですよね。言いたい。けど聞けない、もどかしさがとても伝わってくる。
それだけに、橋の欄干でのひとときは、イラストと併せて、胸きゅんになりました。切ないときも温かさあふれる笑いが生まれるっていいなあ。これは、仲間が集まってくれたときも思ったけど、この雰囲気こそが、とらドラの素晴らしいところだと思う。
てっきり勢いで一気に動くのかと思ったけど、現実を見てしまうのは、やっぱり苦労してきたからなんだろうなあ。普通見えないよ。
それまで母子家庭で生きてきたからこその、想像できてしまう未来に、泣き崩れるところは、ほんと苦しかったけど……諦めなかった。そのことが竜児の強さだと思いました。
不安で不安でたまらないけど、幸せのために諦めず、もう一度「家族」を見直していくところには、何でもないところなのに、じわじわきてしまうものがあって大変でした。
よかったよ。よかったね。あの場にいた人みんなに言いたかったです。
「家族」を知ったからこその竜児と大河の決断には、みのりんじゃなくとも、亜美じゃなくとも辛いものがあったと思うけど、でも、この思いがあったからこそ、ラストが映えたんだろうなあ。
猛々しい力強さを見せる大河のエネルギーあふれる言葉に、笑みを浮かべながら涙しました。
あー、よかった。ほんとよかった。
アクセルを踏んだ直後にブレーキを踏む展開にフラストレーションが貯まりましたけど、最後の笑顔で、幸せいっぱいな気持ちになりました。最後まで読めたことを嬉しく思います。
素敵な物語を届けてくれた竹宮さんに感謝を。次の作品も楽しみに待ってます!