時載りリンネ! / 清野静
時載りリンネ! 1.はじまりの本
「わくわくするような大冒険がしてみたいな」― 幼なじみのリンネがそう言い出した夏休み、僕とリンネは、一人の少女を助けた。ビルから落下してきたスチールパイプを避けることができたのは、リンネが時間を止めてくれたからだ。少女は怖がって逃げ出してしまったが、その代わりに少女の持ち物であるバイオリンケースが残されていた。忘れ物を届ける、ただそれだけのはずだったのに……
これは素晴らしい!こういう雰囲気というか、語り口の物語って大好きなんですよ。一ページ目を読んだ瞬間から虜になりました。たぶん、「サマー/タイム/トラベラー」が好きな人なら、楽しめるんじゃないかな。
本を読むことで、生きるための必要な滋養と、時を止める力を得ることができる「時載り」一族。人間と時載りのハーフである元気いっぱいな女の子リンネと、そんな彼女に振り回される久高が繰り広げる夏の冒険って感じのお話です。
少女の荷物の中に、時載り一族に関係する本があったことで、俄然冒険に力が入りながらも、本を読まなかったらお母さんに怒られたりと、小学生らしいシーンが微笑ましい限り。付き合わされる久高との関係も素敵ですね。同じ部屋にいながら、ひとりは本を読み、ひとりは宿題をしてるシーンが、二人の関係を表しるようでとてもよかったです。
個人的に好きなシーンは、緑のトンネルを歩いているときに、ふたりが「時の旋法」の物語を体験するところですね。老婦人のお話は、とても幻想的で、魅力にあふれていました。特別な時載りの子という話から、リンネが顔を赤くするってことは……思わずニヤニヤ。
好奇心いっぱいに町を駆け巡って、同じ時載り仲間も見つけ、新たな友達ができて、恐ろしき「時砕き」を知って、と冒険いっぱいなお話は、とてもワクワクさせられたし、とてもニヤニヤさせられましたね。他の登場人物たちも非常に魅力的でした。本を読まないと生きていけないのに、本を読むよりも体を動かすほうが好きなリンネが、自然と本を手に取るようになっていくラストがよかったです。
いやあ、もう魅了されっぱなしでしたね。タイトルに「1」とついているし、まだ、お父さんの話もあるだろうから、たぶん、続きは出るでしょう。出て欲しいです。いくらでも話が膨らみそうなので、どんなお話が待ち受けているのか、すっごい楽しみ。超オススメな第11回スニーカー大賞奨励賞受賞作。
「わくわくする大冒険がしてみたいな。物語みたいな。悪党に狙われて困っている女の子を颯爽と救うような話が理想ね。日常の中のふとしたできごとから幕を開けて、しだいに謎が膨らんでいく不思議な展開、中盤はミステリーあり、活劇あり、友情ありの総天然色の大冒険よ。お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて、もちろん最後は奇麗な大団円を迎えるの。すべてが終わったあと、前よりも少しだけ世界が輝いて見えたら素敵よね!」
あの日、リンネが言った言葉だ。
女の子は時々預言者になる。
時載りリンネ! 2.時のゆりかご
夏休みも終わったある日、大量の本を寄贈してくれた品の良さそうな老婦人の緒方さんと仲良くなったリンネは、そこで、変わり者の時載りが作った魔法の書棚を見せてもらった。なんと、その中に入れたモノは、何年経っても風化しないのだ。同じ職人によるアンティーク家具がオークションにかけられるという話を聞きつけた緒方さんは、リンネたちにその家具が本当に、時載りの手によって作られたものであるか鑑定を依頼してきて……
本を読むことで、生きるための必要な滋養と、時を止める力を得ることができる「時載り」一族。人間と時載りのハーフである元気いっぱいな女の子リンネと、そんな彼女に振り回される久高が繰り広げる冒険物語の第二弾。
今回は、時載りにして名工であったハゼル・ジュビュックの書棚を手に入れるために、リンネたちが奮闘したら、そこから街の「時間」がおかしくなって……というお話です。
ああ、もう最高!読み始めから、頬の緩みを止めることが出来ません。おしゃまで、でも好奇心いっぱいに行動するリンネがホントいいですね。やれやれと思いながらついていく久高も、まんざらじゃない様子が伝わってきて、微笑ましくなってくる。
新たに友達になったルウとのやり取りも、クスクス笑いたくなるものがあるし、お歳を召した方との触れ合いも優しさを感じて、くすぐったくなるものがあります。
「時載り」であり、職人であったハゼルの家具を巡って、リンネたちが、オークションに参加することになってからのワクワク感は、良かったなあ。ゴージャスに着飾ったGと紳士へと変身した遊佐のカップルの堂とした演技には、見入ってしまいましたよ。
未成年のリンネたちは会場入りできないんですが、ま、そう簡単に面白そうなことを見逃すリンネじゃないってところに、にやり。
今回も逸脱者との対立のおかげで、ちょっぴり悲しい出来事もありましたが、失ったものの悲しさよりも、年齢差に関係なく、新たな友だちという、かけがえのないものを得ることができた温かさが、ほんとすばらしかった。あのときのおばさまの言葉は、どれほどリンネを誇らしくしただろう。物語が続くにつれて、毎回素敵な出会いがあってくれたら、うれしいですね。
不安があっても、その中に楽しみを見つけるリンネの才能は素晴らしいですが、周囲に信頼できる人がいるからこそ、楽しいという思いを持ち続けていられるんでしょうね。特に、久高という存在がいるからこそという親愛が伝わってくるところはとても良かったです。握った手の温かさが、伝わってきたときには、素敵なドキドキ感がありました。
いやあ、面白かった。やっぱり、この人の物語は琴線に触れるなあ。ちょこちょこ出てた凪が、最後を締めるところは、ちょっと甘いかもしれないけれど、それをやり遂げられるのが若さというなら、こんな素敵なことはないと思います。
「ある人」が誰なのかってトコロは気になりますが、このあたりをどう語ってくれるのか、今後が楽しみですね。
大絶賛オススメ。
「私がこれを手に入れたいと思ったのは、この書棚の貴重さを知り、その価値を惜しんだからだけど、実は今回の出来事を通じて、何より、思いもかけないものも一緒に手に入れたわ。それはね、とっても心の優しいお友達ができたこと」
リンネははっと顔を上げた。その視線を受け、緒方夫人は目尻に皺を溜めて悪戯っぽく微笑んだ。
時載りリンネ! 3.ささやきのクローゼット
「ね、あっちの世界とこっちの世界では時間の進み方が違うわけよね?」
「うん」
「あっちの世界にずうっとずうっといても、こっちの世界じゃとっとしか時間が進んでないのよね?久高けさそう言ったわよね?」
「う、まあ」
「ということは、むこうに行ったら私たち、思う存分遊び放題じゃないの!」
本を読むことで、生きるための必要な滋養と、時を止める力を得ることができる「時載り」一族。人間と時載りのハーフである元気いっぱいな女の子リンネと、そんな彼女に振り回される久高が繰り広げる冒険物語の第三弾。
今回は、「時の把手」と呼ばれるバベルの塔へ行き来できるドアノブをリンネが手に入れて、というお話。
いやあ、今回も良かった!
遊びすぎて学校の成績が芳しくないリンネに、ママさんが家庭教師をつけてくれたことが始まりなんですが、毎日毎日お勉強三昧になってしまって、ふくれるリンネの前に、バベルの塔へ行けるという「時の把手」というドアノブが出てきたら、そりゃ使っちゃいますよね。
クローゼットにドアノブを取り付けて、あけてみたらそこは……って、だけでワクワクさせられます。
しかも、あちらとこちらでは時の流れが違うという状況を確認したリンネが、突拍子もないことを思いつくんだから、いやはや遊ぶことに関しては、素敵なひらめきを見せてくれますよねぇ。
はじめは渋い顔を見せていた久高が、リンネの熱意に当てられて、バベルの塔への冒険にワクワクしていく様子を見ていると、こっちまでワクワクしちゃいました。こういう冒険心を呼び起こしてくれるから、このシリーズ好きなんだなあと思った次第。
用意された「時砕き」専用の部屋を自分の好みに変えて、それだけじゃ飽き足らず部屋の外を冒険して、気づけば迷ってしまったりもするわけですが、同じ年頃の時載りネリーと出会ってからの話がいいんだよなあ。
助けてくれたお礼のプレゼントを渡すシーンを筆頭に、本の話題についていけないことを悔しがって頑張るリンネ、だんだんと積極的になっていくネリーの様子など、会うたびに仲良くなっていくふたりの様子が、とても素敵でした。
それだけに「時の把手」が引き起こすすれ違いが辛いんですが。
会えることは楽しい。でも、本来、違うところに生きているふたりだから、次第に歪が見えてきて……。
気づけば、ネリーが大変なことになってしまうんですが、友のために全力で走るリンネと、そんなリンネを助けるために、自分のできることを考えて行動する久高の姿に、ああやっぱりいいコンビだなと、そう思いました。もちろん、仲間の存在も。
「お礼を申し上げますわ。久高様。久高様のおかげでわたくし、リンネ様が一番助けを必要とさいれているときにお側にいることができます」
リンネと久高にトラブルの原因があるとわかっているのに、責めることなく、やさしさと愛情で包み込んだGの言葉に、涙が浮かんでしまう。
ああ、面白かった。
リンネが時載りとして成長していくための大きな出来事といっていいですよね。塔で出会えた友の話は、きっとリンネの支えになってくれると思います。
さて、次はどんなワクワクする冒険譚を見せてくれるんでしょうか。とても楽しみです。
オススメ!
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