藤堂家はカミガカリ / 高遠豹介
藤堂家はカミガカリ
「ハテシナ」から人間界への上陸は成功した。こちらでの名を建代神一郎としたタケシロは、今回のパートナーとなるアマギリこと天霧美琴と共に、ハテシナの者から狙われているという少年・藤堂周慈の護衛の任につくことになった。いったいどんな少年なのかと思いきや、様子を見に行っても、ただのいじめられっ子のようにしか見えないが、時折、英力なるハテビトならではの力を感じる。
そこでふたりは、周慈と双子の姉、春菜の二人が住む藤堂家に、強引に住み込むことにしたが、早くもハテビトの手のものが現れて……
鞘から抜けないクサナギとデッキブラシを武器に、ハテシナという異界の悪人たちから、藤堂家の双子の姉弟を守るというお話。
デッキブラシで戦ったり、カツアゲしてる輩からカツアゲしたり、人に家に勝手に上がり込んだりと、良くいって大らか、周りからみたら傍若無人な二人のやり取りは、どこまでが悪ふざけで、どこまでがマジメなのかはっきりせず、なんだかなあと思ってたんだけど、二人の、特に神一郎の心情が見えてくると、面白くなってきました。
特にコミカルなやり取りは非常に魅力的。神一郎と美琴は、妙にハイテンションなところで楽しく、藤堂家の二人とはちょっとラブコメテイストに、それでいて家族的温かさを感じさせられたり、果ては敵との絡み合いでも、センス溢れる会話を見せてくれて、非常に面白い。会話センスの抜群さに魅了されるばかりでした。
その中でも印象に残っているのは、春菜と神一郎の距離が縮まっていくところかな。押しかけてきた不審な男だから、警戒心を持つのは当然なんだけど、そんな彼女の心を解きほぐしていくのが、神一郎の手料理ってところが、良かったなあ。美味しいものを作れる人に悪い人はいないという感じですね。いや、作った料理を美味しいといってくれる人がいることを喜ぶ人に悪い人はいないというべきでしょうか。
神一郎の過去には重いものを感じるんだけど、それを振り切ろうとする決意を持てたのは、春菜という存在があったからだと思います。
また、神一郎と美琴がコンビを組んで戦うシーンが格好いいんだ。強大な敵に対してでも、決して軽口を叩き合うことを忘れないのは、背中を預けられる相手だからこそ、なんですよね。口では言わないけれど、信頼を感じる「相棒」な関係が、とても良かった。
いやあ、面白かった。最後の笑顔には、こちらまで嬉しくなるものがありましたよ。これはぜひとも続編を読みたいですね。
一番おバカなように見えたけど、実は美琴って器が大きいんじゃね?と思わされましたが、本当のところどうなんだろう。今回は、神一郎側の話がメインだったけど、次はぜひとも美琴が主となるお話をお願いしたいです。
あ、あと、頑張ったで賞のカラ助は、次こそ名前が言えますように(笑)
第14回電撃小説大賞銀賞受賞作。
それにしても、なぜこの子が表紙に……と思ったけど、「甘口」でノックアウトされた身としては、何も言えない。
藤堂家はカミガカリ 2
「このウチデノコヅチは、感情の大きさを変えるイルフィニなんだ。ま、あくまで限定的なものだけどな」
「なーるほどねえ」
「教えろよ」
「昨夜春菜ちゃんは、そこのアフロをゴキブリと間違えて悲鳴をあげたでしょ?それで一番に助けに来たのはあんた。つまり、その時春菜ちゃんが抱いていた感情は『神一郎を頼る』って感情だったわけ。それで、春菜ちゃんはその小槌を振った」
「……で、その感情が大きくなっちまった、と」
「そーゆーこと」
鞘から抜けないクサナギとデッキブラシを武器に、神一郎と美琴が、ハテシナという異界の悪人たちから、藤堂家の双子の姉弟を守るお話の第二弾。今回は、藤堂家の姉・春菜が、ウチデノコヅチの力により神一郎に甘えることになってしまい、彼女を戻すために、何者かに狙われているというアフロな小人を守っていたら……というお話。
ああ、春菜が可愛い。神一郎にからかわれたら、真っ赤になりながら怒る姿もいいんだけど、頼り切って、「神一郎さん」と声をかけてくる春菜もいいです。小槌のせいだとわかっていながらも、平常心を保つのに苦労する神一郎を見ていると、美琴じゃなくてもニヤニヤしちゃいますね。
で、春菜を元に戻すために、何者かに狙われているというアフロなダンサー(でも小人)のホウジを守ることになったんですが、彼を狙うものが、同郷たるハテナシだから困ったことになるわけで。
しかも相手は十二単を着た少女アオイと(表紙イラストの子!)、軽薄な男ケンジのコンビ。男はどうでもいいとして、アオイがなかなかいい具合にツンしてて、うふとか思ってたら、まさか、そんな武器だとは。イラストに描かれてるのに、脳がフィルタしてたみたいで、まるで見えてませんでした。でも、よくよく考えると、十二単でショットガンとか、素敵な組み合わせですよねと思ってしまうあたり、我ながらおかしいと思う今日この頃。
それはともかく、なぜホウジは同じ勢力から狙われることになったのかという謎から、アオイたちの置かれた状況がだんだんと見えてくるんですが、彼女たちの事情もまた見えてくるから、物事が難しくなってくる。
神一郎と美琴だったら、このぐらいの相手だったら、それほど苦労しないですむのに、どうしても、必要以上に力を出せず……哀しいお話になってしまったのは、やるせないものがありました。ただ、好きな人のためにと、それだけを願っていただけなのに。
待ち受けた悲劇には、哀しいものがありましたが、最後の戦いを終えた後に見せてくれる雰囲気は、このお話の一番の魅力だと思いました。この町に来てよかったと思える町の描写に、この家に来てよかったと思える家族な描写に、温かい気持ちでいっぱいです。
いやあ、面白かった!
ラストの傷に不安が残るんだけど、さあ、どうなるんだろ?続きが楽しみです。
藤堂家はカミガカリ 3
「私たちが受けた任務は、ギリシャ勢力が積極的に行っているイルフィニ収集の妨害だ。そして今日、アルテとの接触があった。アルテはまだこの近辺に潜み、イルフィニの情報を求めて再びお前たちを狙ってくる可能性が高い。そこで、私たちもこの地域で待機するのが効率的だと判断してだな……」
長くなりそうだと思ったのか、ミリカが遮った。
「もー、正直に言えばいいじゃないですか。ここに泊めて欲しいって」
ハテシナという異界の住人である神一郎と美琴が、ハテシナの悪人たちから、藤堂家の双子の姉弟を守るお話の第三弾。今回は、北欧勢力のレッテが再び藤堂家にやってきて、居候をするお話です。
レッテ再び、なお話ではありましたが、そっちよりも気になるのが、春菜と神一郎の恋の行方ですよ。どちらも意識はしているのに、恋とまでは思っていないみたいだから、何とももどかしい。みんなで遊園地に行ったときのシーンとか見たら、もうどう見たって恋人同士だろうに。あのときの美琴には、グッジョブといいたくなりました。
まあ、神一郎は罪悪感を持ってることもあるから仕方ないところもあるんだけど、春菜は……やっぱりコンプレックスを抱えてるから、いい雰囲気になっても踏み込むより、それを壊したくないという方向に行っちゃうんだろうなあ。親友の恋を知ったときも、つい我慢してしまう姿に、切ないものを感じました。
まあ、そんな乙女心を神一郎が感じ取れるわけないですが、そのあたりをホームステイしてたレッテがフォローしてくれたのは良かったです。いつか敵対することがあるかもしれないけれど、この藤堂家にいる間は、仲良くやっていってほしいなと思いました。
そんな中、例によって例のごとく、クサナギやヤサカニを狙うものたちがやってくるんですが、ギリシャ勢力、北欧勢力、さらにはギリドルたち吸血鬼もやってきてと、様々な勢力が入り乱れてくるから一体どうなっちゃうのかとワクワク。何ていうかピンチのときでも笑って皮肉を言い合える連中ってのは、何かしでかしてくれそうで、格好いいですよね。
それにしても、毎回毎回やられるために出てくるギリドルたちが、まさか役に立つとはなあ。なんで出てきたんだよと思ったけど、こういう結末を持ってきてくれると、ポンとひざを打ってしまいました。お見事です。
いやあ、面白かったなあ。親友の恋を知ったことで、自分の思いを自覚し始めてきた春菜がいてくれて。神一郎となら一緒に歩いていきたいと思ってくれたら嬉しいですね。まあ、神一郎は抱えてるものがあるので、なかなか難しいかもしれませんが、神一郎もそろそろ目を背けないで欲しいな。
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