鉄刃サザン / 大迫純一
鉄刃サザン
旅の途中、いきなり村人達に襲われた少女は、大きな岩の前に座らされて縛り付けられてしまった。夜になり、妙な物音が聞こえて不安になったティマに声を掛けてきたのは、護衛のベコニアではなく、全身にイレズミを施した男サザンだった。
その様子から、生贄にされていると判断したサザンは、彼女を連れて近くの町へと向かったが、そこでは町の人たちが、刃物を持って待ち構えていて……
科学は前時代の伝説とか迷信のような扱いで、利力という魔法のような力が活躍する世界でのお話。いわゆる普通のファンタジーといった世界観なんですが、魔法よりも拳で語る感じなので、熱いものを感じます。まさに拳骨ファンタジー。
伝説の「科学」の力を悪用して、た町に生贄を求めてきているタスクリムを倒しにいくという展開は、非常にオーソドックスなんですが、サザンやティマの背負ったものの重さが伝わってくるせいか、読む手が止まりませんでしたね。
全身にイレズミを入れているサザンの呪いから受ける苦しみは、何となく理解できていましたが、囚われた女性たちの思いを絡めてくれたおかげで、より深く捉えることができました。呪いを解くために、人を利用する事があっても、そのことを後悔してしまうところに、悪くなりきれないサザンの心情が伺えます。
同じような思いをしていたティマと出会えたのは、サザンにとって大きなことだったでしょうね。相手への慰めは、そのまま自分に返ってくるものでもあったんですから。自分たちの力が及ぼしていた影響から、どこか後ろめたいものを持っていたふたりが、特にティマが、何とかしたいと前向きになっていくところは、ほんと良かったですね。ティマには、このまま素直に生きて欲しいなあ。
最後の戦いがまた良かったですよね。今の今まで仕方ないと思っていた町の人たちが、何とかしようと行動するところに、人を動かすのは、やはり人なんだと思いました。一部の人だけかもしれないけれど、思いが伝わるって嬉しいですよね。
自らの望みのための傲慢な行動をするタスクリムには、嫌悪するほどの醜さがありましたが、人助けと称して自分のために戦っていたサザンが、本当に人のために戦う決意をしたときの描写に、心が熱くなりました。
いやあ、面白かった。こういうお話は久しぶりに読んだ気がします。ちょっと戦闘が長いかなと思いましたが、熱き戦いものっていいですよね。
どうやら第二巻も出る模様。ベコニアはサザンにお礼をすることができるのかしら。ベコニアとティマというキャラクタがとても良かったので、一緒に旅してくれたら嬉しいですね。サザンの過去話とかも知りたいし、いろいろ想像しながら、続きを待ちたいと思います。
鉄刃サザン 2 ~帰ってきた男~
旅の途中、丘陵地帯の町を通ったら、花火が上がっていた。どうやらお祭りがあるようだ。興味を持ったティマの言葉を受けて、ベコニアはその町を訪れることにした。だがそこで出会ったのは、100年前、この地を蹂躙し、治めるコーデッツの名を踏みにじった魔人として、処刑の危機に遭遇しているサザンだった……!
ティマとベコニアが、魔人の伝説の残るパドリアスを訪れたら、そこで伝説上、魔人として恐れられていたサザンと出会って、というお話。前作の終わりで別れたのに、こうやって出会えるというのは、ティマの利力の強さのおかげでしょうか。素直に嬉しく思います。
ティマとベコニアの主従を越えた間柄は、いつもながら素敵ですが、ベコニアのサザンに対する感情がいいですね。はじめはともかく、今では信頼できる人としているだろうに、素直に態度や言葉に出せない姿がいじらしい。
そんな三人が一堂に会したパドリアスの話ですが、100年前の出来事とはいえ、サザンが町を蹂躙して、多くの兵士を殺しまくったなんてのは、ちょっと信じがたいものがありましたが、同じ状況でも別の方向から見ると、また別の方面が見えてくるんですね。町を治める領主からは、魔人として恐れられ、町に住む者たちからは、解放者として崇められているという、両者の隔たりそのものが、今回の大きな鍵でしたね。
身分の違いによるすれ違いから、大きな問題へと発展したわけですが、そんな中、最も印象的だったのは、幼き少女ティマの行動ですね。利力こそあれど、体力では普通の少女が、たとえその身が動かなくなろうとも、決してあきらめずに、己の信念を貫き通す姿に、熱き思いでいっぱいにさせられました。
守られる存在であるはずなのに、その枠で収まらないところに、ティマの魅力がありますよね。
いやあ、面白かったです。嬉しいことに続きもあるみたいですね。またまた、二手に分かれた終わり方でしたが、きっと、遠くないうちに、出会うことでしょう。
今度あったときは、ベコニアがサザンに素直になれてたら嬉しいんだけどなあ、なんて思いますが、どうなるのか楽しみですね。
鉄刃サザン 3 ~めぐりあう絆~
水と食料を手に入れるために立ち寄った町で、ティマとベコイアは町人に襲われた。何でもこの町はつい先日、利気を扱うものに襲われ過敏になっていたらしい。そのとき、町の人を手助けをしたのが、誰であろうサザンだった。
町を襲ってきた軍人が利用した利学兵器の恐ろしさと、その兵器に伝説の都市・ドゥカイズの紋章が刻まれていることを知った三人は、戦を回避するために、ドゥカイズの軍へと立ち向かう決意をしたが……
利力のイレズミと擬似生命体の虫により、死ぬことを許されないサザンと、利力の運ぶ幸運の強さから周囲の人に不幸を呼んでしまう少女ティマと、ティマの護衛である侍なベコニアが繰り広げる冒険譚。今回は、利力の使い手として、圧倒的力を見せ付ける伝説の都市ドゥカイズの人たちを相手取るお話です。
いやあ、すごい。このシリーズは、愚直なまでに直球な熱さを見せてくれるんですが、最終巻ってこともあって、今まで以上に熱かったです。特にティマがすごかった。敵対する勢力を目の前にしても、決しておびえることなく自分の主張を唱え、甘いと言われても理想を追い、傷つけられても、自分にできることがあるなら、力になってあげたいと思う姿が素晴らしすぎ。
それだけじゃなく、追い詰められても諦めず、彼女にしかできない方法で、ピンチを切り抜けるクライマックスには、やられました。もはやティマが主人公といってもいいぐらいの活躍っぷりが、すごかった。
とまあ、ティマの熱さが目立ちましたが、ベコニアもやってくれたなあ。サザンに対するデレなところは、まだツン度が高いとはいえ、狼狽っぷりには、クスクスしてしまうものがありましたが、いざお嬢のために戦う姿には、痺れるものがありました。親愛なるもののために、勝つのではなく、引かぬ覚悟を見せられてグッとくる。再登場したセシリアとの戦友を思わせるシーンも、素敵でした。
義経を護る弁慶を連想させられるほどの迫力に、どうなるかと思いましたが、最後にはハッピーエンドでよかったです。ベコニアの意外な積極性と、彼女の涙が生んだ奇跡が良かったです。
いやあ、面白かった。これで終わりとはさびしいですが、非常にきれいに終わってるので、これ以上は蛇足になっちゃうかもしれませんね。次にどんなお話を見せてくれるのか楽しみです。
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