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黄昏色の詠使い / 細音啓

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イヴは夜明けに微笑んで 黄昏色の詠使い

イヴは夜明けに微笑んで (富士見ファンタジア文庫 174-1 黄昏色の詠使い) - 細音 啓

色を媒体に、呼び出したい物、出会いたい物を心に描き、詠うことで自分の下へと招きよせる技術「名詠式」を学ぶ学校で、クルーエルは、赤、青、黄、緑、白以外の理論として構築されていない夜色名詠を使うネイトと出会った。自分より幼い子ということもあって、興味を持ちつつ面倒を見ていたら、五色すべての色を使える色名詠士・カインツもまた夜色名詠士を探していて……。

母から夜色名詠を受け継いだネイトと、目標が見つからないクルーエルが、名詠式を通じて成長していくお話。これは素敵なボーイミーツガールものですね。透明感あふれる雰囲気に心を掴まれました。
メインストーリーの十年前にあたるプロローグが、また良くて。夢を追おうとするイブマリーとカインツの「約束」はほんとに素敵でした。これだけで、ハマりましたね。

夜色名詠を完成させるために、日々努力するネイトの真っ直ぐな姿には、心惹かれるものがありますが、そんなネイトのひたむきな姿や、将来の目標に向けて動いている友人のミオの姿を見て、不安を抱えるクルーエルの気持ちがよくわかります。
それなりに何でも出来るけれど、何をしていいのかわからない。そんな将来への不安って、誰もが抱えるものじゃないかと思います。それだけに、ネイトの言葉は、ストンと心に入ったんだろうなあ。
ネイト、クルーエル、ミオ、ネイトのペットが作り上げる雰囲気は、読んでいて微笑ましい気持ちになりますね。

名声を手に入れてからも、かつての約束を忘れることができなかったのは、本当に手に入れたかったものだからなんでしょうね。コートのエピソードとか泣きそうになります。約束があったからこそ、目標を達成できたとはいえ、あの時点で言葉にしていたら、ひょっとしたら未来も変わっていたかもしれないだけに、カインツの気持ちを考えると切ないです。

名詠されたヒドラとの戦いでは、多少都合のいいところがあるんですが、ネイト、クルーエル、それぞれが思いやりながら成長していくところがとても良く、それ以上にカインツと <始まりの女>に対して、良かったねと言いたくなる気持ちでいっぱいになりました。

ああ、これはほんといいです。最後まできれいにまとめられて、いろいろな想いを感じられる雰囲気に酔いしれました。プロローグでいいなと思えたら、間違いなく楽しめると思います。
いくつか不明なところがあるだけに、ぜひとも続編をお願いしたいですね。
第18回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作。

イヴは夜明けに微笑んで (富士見ファンタジア文庫 174-1 黄昏色の詠使い) - 細音 啓

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奏でる少女の道行きは 黄昏色の詠使い 2

奏でる少女の道行きは (富士見ファンタジア文庫 174-2 黄昏色の詠使い 2) - 細音 啓

またあの夢だ。逃げろといわれて逃げたあの時、本当に自分は何もできなかったのだろうか。先日の事件に、エイダが苛まされていたころ、一年生たちの基礎作りとして行われる、夏季集中補講が行われることになった。だが、そこには、あの「孵石」を精製した研究支部があり、しかも、その支部からの音信が不通になっているという。教師であるゼッセルとエンネは、研究所の様子を探ることにしたが……

生まれつき才能から、詠生物を送り還す祓名民(ジルシエ)の名を得たのに、決められた道を歩むのに反発し、名詠士を目指したエイダが、夏季集中補講へ向かった先で「孵石」による事件が発生して、というお話です。

いやあ、いいです。個人的には前作より好きだなあ。定められた道を進む事に反発して、名詠士という新たな道を選択したのに、それでいいのかというエイダの葛藤が伝わってきましたね。自分の進むべき道について迷いを生むのは当然だと思うんですが、それだけ迷いながらも、決して祓名民であることを止めようとしなかったところに、いろいろ思わされるものがありましたね。

自分ひとりで悩んでいるエイダでしたが、そんな彼女を見守る友人のサージェスが素敵でした。自ら気づいて欲しいと優しく突き放すエイダの父親も良かったんですが、それ以上にサージェスの心は、エイダにとって大きな支えになったと思います。親友と呼べる人がいるとしたら、間違いなくエイダにとっては、サージェスがそうですよね。

メインの話こそエイダでしたが、クルーエルとネイトも、素敵でしたね。分校へ行くために、列車に乗ったときのシーンもよかったですが、なんと言っても、自分の力を恐れたクルーエルに対して、ネイトが伝えた言葉が良かったですよね。あれほど真っ直ぐな言葉と信頼を受けたら、どれほど心強いだろう。きっと、ありとあらゆる温かさみたいなものが、心に沁みたんじゃないかなあ。
急がなくていいから、いつか二人の関係が、クラスメイトから変わっていくといいなと思いましたね。

今回の話では、良いところしか思い浮かばないんですが、その中でも一番良かったのは、エイダが決意を固めて戦うシーンでしょう。
詠え。思い出せ。
そこから始まる詠と過去を振り返る言葉は、あまりにもまっすぐで、あまりにも興奮させられて、気がつけば、涙が流れていました。ほんと素晴らしかったです。

前作に比べるとストーリィがシンプルでしたが、その分、はっきりと伝わってくるものがあったと思います。今回のお話で「孵石」精製についていろいろ裏が見えてきましたが、それでもまだ隠されているものがあるし、あの最後が最後ですから、気になることばかりですね。次なる三巻は、「夜色の少年」の織りなす、新しい詠と約束の物語になるとのことなので、大いに楽しみです。
大絶賛オススメ!

奏でる少女の道行きは (富士見ファンタジア文庫 174-2 黄昏色の詠使い 2) - 細音 啓

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アマデウスの詩、謳え敗者の王 黄昏色の詠使い 3

アマデウスの詩、謳え敗者の王 (富士見ファンタジア文庫 174-3 黄昏色の詠使い 3) - 細音 啓

孵石暴走事件、そして先日の研究所襲撃事件と不審な事件が相次いでいる。折りしも、今のトレミア・アカデミーには、異端の夜色名詠者と名詠式に異常な才覚を現したものがいる。これは果たして偶然なのか?それらに纏わる不審現象を調べるために、カインツも所属している世界で十一人しかいない<イ短調>のメンバーが立ち上がったが、不審者は既にトレミア・アカデミーへ手を伸ばしていて……

いやあ、面白かった。今までも、たまに突拍子もないことをしてくれていたクルーエルが、名詠式でかなり高度なことを無意識なうちにやっているというところは驚きでしたが、意外な才覚を見せ始めたクルーエルと、同じ場所に異端の夜色名詠のネイトがいて、そこへさらに灰色名詠が絡んでくるんですから、面白くないわけがない。

しかも、<イ短調>なる人たちが出てきてくれたおかげで、今まで謎であったことが明かされてきたり、さらに謎めいたことがでてきたりと、大きく物語が動いてきましたね。

ちなみに、今回<イ短調>から派遣されてきたサリナルヴァは、かなりお気に入り。研究のためなら寝食惜しまない熱意と、傲慢に見せかけておきながら、時折見せる優しさにやられます。こういう姉御肌(っていうのかしら)な女性にやられてしまう僕がいる。

それはともかく、敵対する灰色名詠の思惑が見えないまま、アカデミー内に進入を許したことで、一気にサスペンスフルな展開になってくれて、もうドキドキでしたよ。最も力の弱いものが、最も危険なところに近寄ってしまうというのはお約束ですが、灰色名詠という圧倒的攻撃力を持つ相手を目の前にして、体も心も震わせながら、それでも友を、仲間を信じるミオの姿が良かったです。やばい、ミオが好きになってきたぞ(別にやばくない)。

今回最も意表を突かれたのは、クルーエルを襲った出来事ですね。強さと言う意味では、かなりのものを名詠できるだけに、まさか足を引っ張る(というと言葉悪いけど)とは思わなかったです。

そんなクルーエルの姿を見て、動揺しながらも、彼女の言葉を聴いて、自分の心に湧き上がる思いを糧に、ネイトが一歩前へ出ようと決意するところが良かったです。二人の関係が、守りたい大切な人から、信頼の置ける大切な人へと、変わっていくところが素敵でした。むろん、二人の間を取り持ったミオの活躍も忘れちゃいけないですよね。

ひとまず危険は回避されましたが、灰色名詠だけでなく、更なる展開も待ち受けているみたいだなあ。いろいろ見えてきたものもありますが、まだまだ明かされていないことも多いので、これからどうなっていくのか、ものすごく楽しみです。

それにしても、クルーエルとネイトの最後はすごかった。今回の件を経て、信頼という絆が深まったことによる甘えなんだろうなと思うと、ニヤニヤさせられますが、純粋な男の子に何てことを言うんですか!ああ、もう、きゅんきゅんしまくりです。やっぱ、このふたりの関係、大好き。

アマデウスの詩、謳え敗者の王 (富士見ファンタジア文庫 174-3 黄昏色の詠使い 3) - 細音 啓

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踊る世界、イヴの調律 黄昏色の詠使い 4

踊る世界、イヴの調律 (富士見ファンタジア文庫 174-4 黄昏色の詠使い 4) - 細音 啓

灰色名詠の襲来で、原因不明の高熱により昏倒したクルーエルを心配していたネイトは、休み明けの学校で、いつもと変わらぬクルーエルをみて安心した。だが、逃亡した灰色名詠の使い手は未だ捕まっていない。不安を覚える中、再びクルーエルが倒れて……

母から夜色名詠を受け継いだネイトと、目標が見つからないクルーエルが、名詠式を通じて成長していくお話の第四弾。今回は、以前続くクルーエルの不調の原因が明かされるお話です。

いやあ、面白かった。今までよりもクルーエルの出番が減りましたが、存在感の大きさは相変わらずです。せめてネイトには心配をかけまいと、自身の不調を隠す姿に、どれほどの思いを感じた事か。時折見せるネイトへの冗談は、本気度も高いんだろうなあ。

そのネイトが、今回素晴らしかったですね。今までもクルーエルを大切な人としていましたが、彼女のために頑張る姿を、ここまで見せてくれるとは思いませんでしたよ。知恵を絞り、力を絞り、強大な敵に立ち向かう姿に、グッとさせられるばかり。そこには、純粋な思いの美しさがありましたね。決して一方通行でない、思い合う雰囲気が素敵です。
まだ、恋心とまではいってないかもしれませんが、クルーエルの隣にいるのは自分でありたいという思いを叶えるために、頑張れ男の子。

クルーエルとネイトの関係もさることながら、興味深いのは、クルーエルの不調の原因が見えてくるところですね。始まりの女、刃剥く者、浸透者などなど、次から次へと新たなモノが見えてくるものの、つながりが見えそうで見ないので、ゾクゾクしながら引き込まれました。ああ、面白い。

そんな中、熱いところを見せてくれたのが、二人のご老体であったところが素敵すぎです。力を使いきり、倒れそうになっても、背中を預けられる人がいるという力強さに、なんと素敵なライバル関係なんだろうと、涙が出そうになりましたよ。こういうじいちゃんになりたいもんです。

「空白」については、多くのものが見えてきた気がしますが、まだまだ隠されたもののほうが多いですよね。中でも、シャオはいったい何者なのか気になる……と思ってたら、まさか「緋色の背約者」がここまでの動きをしているとは思いもよらず。ネイトを執拗なまでに否定する姿には、腑に落ちないものがありますが、「全てが集う場所」でどういうことが明かされるんでしょうか。
どうやら次の巻でこのエピソードに区切りがつくらしいので、楽しみですね。

踊る世界、イヴの調律 (富士見ファンタジア文庫 174-4 黄昏色の詠使い 4) - 細音 啓

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全ての歌を夢見る子供たち 黄昏色の詠使い 5

全ての歌を夢見る子供たち (富士見ファンタジア文庫 174-5 黄昏色の詠使い 5) - 細音 啓

意識を失ってから一週間以上が経過しているが、いまだクルーエルは回復する兆しが見えていなかった。何か役に立てないかと気ばかりが焦っていたネイトに、ある日、ティンカが告げた。このままでは限界に達する、と。 アカデミーからケルベルク研究所へ彼女を移すといわれ、側にいることを約束したネイトは、ひとりケルベルク研究所を目指そうとしたが……

異色の夜色名詠を受け継いだネイトと、目標が見つからないクルーエルが、名詠式を通じて成長していくお話の第五弾は、灰色名詠と夜色名詠の争いと、クルーエルの心に決着がつくお話でしたが……ああ、もうじわじわ涙が出て止まらない。

何も出来ない自分に歯痒さを感じているネイトの思いには、心を締め付けられるものがあって、それでもクルーエルを思って動こうとするネイトの真っ直ぐさが心にきましたね。ほんと素直にガンバレ!と応援したくなるものがありました。
ネイトだけじゃなく、クラスメイトみんなが見せてくれた思いの温かさにじんわり。

気づけば、ケルベルク研究所に、すべての人が集まってきたわけですが、ネイトたちを狙う敗者の王の思いには、後悔ばかりが伝わってきて、むしろ打ち砕いて欲しかったんだなと思える心情が切ない。

彼ばかりでなく、クルーエルの中にいるアマリリスも、同じような思いがあったのかもしれませんが、そんな大人の都合に惑わされず、一緒にいたいという純粋な思いから、ネイトの呼びかけに応じるクルーエルの姿が素敵でした。
それにしても、ネイトを思うときのクルーエルって、笑顔の印象が強いなあ。二人が一緒にいるのを見るのが好きなのは、その笑顔が見えるからかもしれません。おかえり、クルーエル。

そして、なんと言っても圧巻なのは、二人で詠う名詠式でしょう。世界も聞きほれると言わんばかりの美しく、力強い詠に、鳥肌と涙が止まらなかったです。

いやあ、面白かった。優しさと温かさに包まれる終わり方に大満足です。
これで「Episode 1」が終了とのことですが、最後のほうにまたいろいろと動きがあったので、このあたりがどう動いてくるのか、「Episode 2」が楽しみですね。その前に短編集が登場するようなので(ほのぼの学園ものが盛りだくさんらしい)、こちらも大いに期待したいと思います。

全ての歌を夢見る子供たち (富士見ファンタジア文庫 174-5 黄昏色の詠使い 5) - 細音 啓

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そしてシャオの福音来たり 黄昏色の詠使い 6

黄昏色の詠使いVI  そしてシャオの福音来たり  - 細音 啓

「……誕生日?誰のですか?」
すると。ぽかんとした表情でミオは目を丸くした。
「あれ。ネイト君、クルルの誕生日もうすぐだって知らなかった?」

触媒と詩を用いる召喚魔法・名詠式。その名詠式を学ぶ学園で、異色の夜色名詠を学ぼうとするネイトと、目標が見つからないクルーエルが出会って、成長していくお話の第六弾。今回は、本編からちょっと離れて、にぎやかな学園生活を描いた短編集でした。

収録されているのは、以下の八編です。

  • クルーエルの誕生日の出来事を描く赤奏「あなたに贈る小さな黒歌」
  • 宝の地図を見つけたミオ一行を描く緑奏「探せ、そいつはあたしのだ!」
  • アーマーの災難な一日を描く青奏「アマデウスを超えし者」
  • 男子禁制の場に女装したネイトが潜り込む白奏「花園に一番近い場所」
  • 賞金が出るマラソン大会の大騒動を描く黄奏「走れ、そいつはあたしのだ!」
  • カインツとイブマリーの卒業式を描く虹奏「また会う日までの夜想曲」
  • クルーエルへの想いが見える禁律・夜奏「アマリリスは真夜に咲いて」
  • 歴史上最も美しい声を持つ人とネイトが出会う禁律・空奏「そしてシャオの福音来たり」

ネイトとクルーエルの間に流れる空気は、ほんと素敵で、これを感じられるだけでも嬉しく思ってしまいます。クルーエルのために、何かしてあげたいと頑張るネイトが微笑ましい。クルーエルもかまってあげてるんだけど、まだ恋……とまではいかないのかなあ。ネイトの好意に、時々鈍さを発揮してくれるところが、楽しいですね。これが、年下キラーか。

同じような……といっては何だけど、カインツとイブマリーの関係もよかったなあ。意地っ張りなイブマリーから笑顔を引き出すことができるのは、彼だけだと思いました。卒業というひとつの区切りは、時に寂しいものがありますが、未来への約束を胸に前を見据える二人の関係がとても素敵でした。
最後の最後に、格好よく締めてくれて。やってくれるね、カインツ!

という具合に、ネイトとクルーエル、カインツとイブマリーといった感じに、二人の関係が描かれるところは、とてもよかったんだけど、それ以外の学園生活は、いまいち印象に残るものがなかったです。
ミオとか、先生とか、今までと違うような一面が見れて、それなりに楽しかったんだけど、ちょっと物足りなかったです。

そのあたり、ちょいとアレでしたけど、最後のほうでは、アマリリスのつぶやきや、美しき声のファウマの周囲に現れるものなど、次巻以降に動くであろう人々が見えて、いろいろ気を引かれるばかり。このあたりがどうなっていくのか楽しみですね。

黄昏色の詠使いVI  そしてシャオの福音来たり  - 細音 啓

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新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ 黄昏色の詠使い 7

黄昏色の詠使いVII  新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-7 黄昏色の詠使い 7) - 細音 啓

『お前が小娘と出会ったのは、決して誰かがそうと決めたわけではない。ただ一瞬のすれ違い、お互いがそこで振り返らなければ、そこで別れて終わりだった。幾度となく繰り返された歴史の一つ。本当に、その程度の些細な交わりだったはず。だが』
ゆっくりと、贈る言葉を選ぶような余韻を残してそれは続いた。
『何千何億回と繰り返された歴史の中、だがその一瞬の交差で終わらず、お前たちは互いに振り返った。それこそが何にも代えがたい奇跡であることを最後まで信じぬけ』

触媒と詩を用いる召喚魔法・名詠式。その名詠式を学ぶ学園で、異色の夜色名詠を学ぼうとするネイトと、目標が見つからないクルーエルが出会って、成長していくお話の第七弾。今回は、どんな名詠式にも、何度でも使用可能な触媒が発表されるという凱旋都市エンジュに、ネイトたちが向かうお話です。

おお、面白くなってきた!
正直なところ、そろそろ読むのやめようかなと思っていたのは、物語の雰囲気はきれいだと思うけど、いまいち、こう、ノリきれないものがあったからなんですが、新章になって舞台が変わり、二人の関係もちょっと変わってきて、さらには名詠式の行方も今までとは違ってきて、読む手が止まりませんでした。

表向きは、名詠校の生徒による模擬決闘の大会を見学しに行く、という用事で向かうわけですが、ところどころで見せてくれるネイトとクルーエルの、今までとちょっと違う描写がいいですよね。特に、みんなにからかわれることもあって、ちょっと意識しちゃうクルーエルの様子ににやり。
自分の思いが何なのか気づかないネイトではありますが、クルーエルを守りたいという思いを強くしていくところが、今回とても印象に残ってます。

今回新たにできたキャラも良かったなあ。エンジュで出会ったジール名詠学舎のヘレンとレフィスの関係は、どこかクルーエルとネイトっぽいものがあってにやりとしちゃう。そういえば、クルーエルとネイトの関係をちょっと羨ましく思ってるエイダの恋らしきものも、見逃せなくなりそう。

とまあ、男の子女の子たちのやり取りを微笑ましく思いながらも、アーマの思わせぶりな態度(毎回毎回何か告げようとする度に邪魔が入るってどうよ!)や、アマリリスの気まぐれな優しさに不安を覚えていたら、いきなり大ピンチを迎えて、それを切り抜けたと思ったら、実は……といった展開は、ほんと面白かった。ここでクルーエルが奏でた<讃来歌>にしびれるしびれる。

だからこそ、クルーエルを襲うであろう出来事がつらくて。今のところ、ネイトしか気づいてないらしいけれど、このままだと、約束が果たされなくなりそうで……。
クルーエルが空白名詠を使うとか、五色の名詠が消えるとか、謎めいた言葉がいろいろ飛び交っているだけに、一同が集まった場所で何がおきるのか、気になってしょうがないですね。

黄昏色の詠使いVII  新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-7 黄昏色の詠使い 7) - 細音 啓

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百億の星にリリスは祈り 黄昏色の詠使い 8

黄昏色の詠使いVIII  百億の星にリリスは祈り (富士見ファンタジア文庫) - 細音 啓

「アマデウスとミクヴェクスが?」
「そう、その言語にとある願いを込めてね」
目を細め、シャオが視線を頭上へと向ける。
「二つの意思法則体。後に名詠式を司る調律者同士の衝突、それが名詠式の始まりだった」

触媒と詩を用いる召喚魔法・名詠式。その名詠式を学ぶ学園で、異色の夜色名詠を学ぼうとするネイトと、目標が見つからないクルーエルが出会って、成長していくお話の第八弾。今回は、新種の触媒が暴走した凱旋都市で、ネイトたちが名詠式の成り立ちとクルーエルの存在意義を知るお話しです。

ここまでの物語だったのか。第二部たる七巻から話が一気に面白くなってきたんですが、ここにきて、名詠式の成り立ちが明かされるとはなあ。しかも、その「意思」を知ってから、昔の物語を思い返すと、はじめから設定されてたんだろうなってことが伺えて、濃厚な世界観だと、大きくため息をついてしまう。

五色の名詠式に、虹色、夜色等の意味もさることながら、クルーエルの「秘密」が明かされる話でもありました。アマリリスを抱えてる時点で普通ではないと思ってましたが、突きつけられる真実は残酷で……それでも、心が折れなかったのは、大切な人の笑顔を忘れなかったからだと思います。
同じく真実を知らされたネイト、そしてエイダも、決してクルーエルを見放そうとせず、手の中にある力を振るう姿に、熱いものが浮かんできました。

説明が中心となって話を進められるんですが、だからといって退屈さはまるでないには、話の内容が気になることもさることながら、三箇所で壮絶なバトルが繰り広げられていることもあるんだろうなあ。どこもほぼ互角でありながら、奥の手を持ってるほうがほんの少しだけ……という戦いだけに、引き込まれるものがあります。

特にすごかったのは、ネシリスとファウマの戦いですね。いや、戦いそのものよりも、ネシリスと彼をサポートするシャンテの関係が見えるところです。心の奥底に見える信頼関係のなんと素敵なことか。歌が紡ぐ想いには心が洗われる気がしました。

さあ、いよいよお話も佳境に入ってきましたよ!今回でだいたいのところの説明も終わってるので、あとは最後の戦いに向かって走っていくのでしょう。
クルーエルが自覚した想いと、ネイトが決意した覚悟。
このふたりの想いがあれば、きっと世界を失うことなんてないと、そう信じてます。

黄昏色の詠使いVIII  百億の星にリリスは祈り (富士見ファンタジア文庫) - 細音 啓

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