沙漠の国の物語 / 倉吹ともえ
沙漠の国の物語 楽園の種子
水の恵みをもらたらす聖樹シムシムは、いまではたった一本しかない。沙漠の聖地としてシムシムを管理するガウルの土地から、「シムシムの使者」として選ばれたのは、まだ成人もしてない少女のラビサだった。だが、旅立ちの日に、ガヴルは砂嵐集団という盗賊に襲われた。 そのとき助けてくれたジゼットと共に、ラビサは沙漠を渡り始めたが……
あー、これはいいですね。沙漠に水をもたらすシムシムは、5年に一度、花を咲かせ、種子を落とす。この種子を植えるにふさわしい町を探す「シムシムの使者」として、天真爛漫な少女ラビサと、彼女を助けたジセットが沙漠を旅するお話です。
真っ直ぐさ、明るさ、子供らしい過信などを持ったラビサが、外の町を見ることで、自分の力の無さを知り、人の暗いところを知るところは、辛かったですね。特に、ガヴルについての闇を見ることになってしまうところは、残酷なところがありました。それでも心折れることなかったのは、人の温かさに触れたからでしょうね。真っ直ぐと前を向いていくところが、とても良かったです。
ラビサを助けたジセットも人がいいですよね。彼女を騙すために信頼を勝ち取ろうとしたのに、共に旅を続けて大いなる信頼を得たら、そのことが心苦しくなっていくんですから。ラビサを盗賊集団から守りつつ、自責の念に囚われていく様を見ていただけに、彼女へ通告するシーンは、読んでて心が痛かったです。
やり方はいろいろ問題あるとは思いますが、あの町に足を踏み入れることができたのは、ラビサにとって本当によかったと思います。外の世界を知ったことで、悲しいこともあったけれど、より多くの出会いがあって。そんな出会いを連れてきてくれた町は、人が人を思いやる気持ちが、町全体に溢れてて……シムシムを託したくなる気持ちがわかります。この温かさ溢れる町の素晴らしさといったらないですよね。
最後シムシムの芽が出たときの町の様子に、思わず涙させられました。
いやあ、面白かったです。盗賊集団のお話やラブ方面は、ちょっと物足りないところがありましたが、そういったところは、今後に期待ですね。今回のお話は続けようと思えば続けられると思いますが、さて、どうするのかな。続編にしろ、新シリーズにしろ、楽しみに待っていたいと思います。
第1回小学館ライトノベル大賞ルルル文庫部門大賞受賞作。
沙漠の国の物語 風はさらう
沙漠に水をもたらす聖なる樹シムシムの種子を、ラビサが使者として、かつて砂嵐の町と呼ばれていたタラスファルに託してから三ヶ月の時が経っていた。タラスファルの復興と同時に、カヴルの過去の罪を明かすべく、それぞれの町の代表者が多忙を極めていた。そんな中、ひょっとしたら、自分は何の役にも立っていないのではないかと落ち込んでいたラビサの前に、盗賊の砂嵐旅団の頭領カヤルの陰謀の手が伸びてきて……
いやあ、いいですね。普段は天真爛漫なのに、ジゼットが関わってくるとなかなか素直になれないラビサや、何かとクールなのに、町の人にはラビサを気にしてることを見透かされてるジゼットの様子に、ニヤニヤがとまりません。お互い自分の気持ちに気づいてないところはお約束ですが、微笑ましく思えました。
そんなふたりを襲ってくるのはカヤルと、カブルに恨みを持つものたちでしたが、カヤルについては、切ないものがあったなあ。自分を裏切ったというジゼットへの怒りのみで動いてる姿はともかく、ふと立ち止まったときに、自分の境遇を振り返って、後悔と寂しさを募らすところがやるせないです。もし、あの時、母親のぬくもりを手にすることができたら……。今回の悲劇のひとつはなかったかもしれないと思いました。
一方、ジゼットは多忙なのに、自分は何一つ役に立ててないのではないかと悩んでいたラビサは、今回も大変な目に合ってましたね。サソリの群れに突っ込んだり、奴隷として売られそうになったり、踊り子にさせられたりと、よくもまあ無事でいるものだと関心してしまいます。
ただ、そこで出会った人たちとの交流を経て、今まで見えていながった視点に気づいていくところは、良かったですよねぇ。素直さもそうですが、こういうところで、キサという少女と出会える運も、「シムシムの使者」としての資質なんじゃないかと思います。それぞれの目的があるために分かれることになりましたが、自分の決意を見せたキサに思わずグッとさせられました。いつか、出会える時があったら、うれしいですね。
ジゼットはジゼットで、ラビサのために身を粉にしてがんばってましたが、まさか、女装までするとは思わなかった。ああ、なんて健気なんでしょう。ラビサが他の男に言い寄られて嫉妬するところとか、すっごい笑える。
ふたりの冒険は不安よりも楽しさのほうが多かったですが、それとは逆に、不安がどんどんと膨らんでいったのは、カブルそのものに暴徒の手が伸びてきたところですね。暴徒たちの言葉は根拠ないものでしたが、カブルは過去の悪事を自覚しているだけに、八方塞がりになっていくところに、ドキドキ。
ここで、力には力をと唱えていた大人たちの思いを、全力で吹き飛ばしたラビサの言葉には、本当に心打たれたなあ。シムシムを慈しむ心にもグッとさせられましたが、それ以上に、拙くともまっすぐな思いを言葉をにしたラビサに、成長した強さを感じました。
いやあ、面白かった。少女の成長と、過去の確執と、恋愛要素がきっちりとまとまった素敵な冒険物語でした。最後の最後で、うふふな出来事もあったりして、やってくれるぜ。ジゼットの言葉に、顔色をクルクル変えるラビサのかわいさを見たら、思わず手を出しちゃうのはわかるけど、思わず照れちゃいますね。
次は、かの連中が手を伸ばしてくると思いますが、ラビサとジゼットがどんな具合に、相手をするのかとても楽しみです。
沙漠の国の物語 水面に咲く花
何年ぶりかの大雨が鉄砲水を呼び込み、ラビサたちの前に、一人の少女が流されてきた。ファティと名乗る美しき少女は言う。自分はとある部族の族長の娘で、嫁入りの旅の途中で大雨に遭い、川に流されてしまったのだと。彼女の言葉に疑惑を抱いたジゼットだが、彼女を送り届けてあげようと言い出したラビサを止めることはできなかった。だが、彼女の秘密によって、ファティを送り届ける旅へと出たラビサとジゼットは、騒動に巻き込まれることになり……
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第三弾。今回は、ふたりが落ち着いたタラスファルを鉄砲水が襲い、流されてきた美しき少女ファティを、目的地まで送り届けようとするお話です。
初っ端のタラスファルの雰囲気がとても素敵だなあ。働く大人と、興味津々に近寄ってくる子供たちのやり取りが、とてもいい。毎回毎回、邪魔する子供たちを真面目に怒るヨシヴが、いい味出してて、微笑ましい。
そんなタラスファルだから、美少女が流されてきても疑いひとつもたないのも当然ですが、無条件で信頼しちゃうようなラビサの姿を見ていると、ジゼットのヤキモキ感もわかりますね。少しは疑いを持とうよと思わなくもないけど、彼女が信じるなら、自分が疑いの目を向ければいいとか考えるジゼットの言動に、まったくラビサには甘いんだからと、にやり。
そういえば、ジゼットとラビサの関係は遅々として進まないけれど、雨に濡れたラビサに上着を着せたり、支える振りして抱きしめたりと、さりげなく見せる好意に、クーとなりました。ああ、ラビサ。あなたも、ぜひジゼットに、いろいろやってあげてください。今なら、間違いなく狼狽させられますよ!想像して勝手にニヤニヤ。
って、話ずれた。
ファティの目的はなかなか知れず、何かを隠していることや、人と人の信頼関係に対して憎しみを向ける様子などは伝わってくるんですが、嫌な人というよりは、むしろ、痛みを隠している感じで、なんとも放っておけないんですよねぇ。このあたりを感じたからこそ、ラビサは、騙されていることに気づきながら、信じようとしたんだろうなあ。ラビサの言葉を奇麗事と思いながら、伸ばされた手を完全に振り払うことができないファティの気持ちが、とても切なかった。
そんな強がる姿の中に、彼女自身が抱えた後悔が見えてきて……生きていくために張り詰めていた思いが、ラビサの言葉で、ふっとやわらいだところが、とても良かったです。
いやあ、面白かった。最後はちょっと切なくなりましたが、でも、きっと次があると、希望が持てる終わり方に満足です。できれば、早いところ、出会ってほしいと祈りたくなりますね。
さて、次はどんなお話になるんだろう。また盗賊団話に戻るのかしら。何にせよ、楽しみですね。
沙漠の国の物語 星のしるべ
(そっか、そんなにすぐ行っちゃうのか……)
「ま、それが無くとも勉強もせずに遊ぶなんて、あんたの先生が許さないんじゃねぇの?」
急に静かになったラビサを横目で見やり、ジゼットは軽い口調で切り出した。
「大体あんた受かる自信あんのかよ。園丁候補選抜試験なんてさ」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第四弾。今回は、ラビサが園庭候補選抜試験を受けるために故郷へ戻るお話です。
いやあ、面白かった。
ラビサの真っ直ぐな思いってのは、どれだけの人を動かしているんでしょうね。ジゼットは当然のこととして、兄や幼馴染など、無意識のうちに惹きつけておきながら、本人は無自覚だから、罪深いってなもんです。振り回されてしまう人たちに同情の念を覚えつつ、微笑んでしまう僕がいる。
まあ、幼馴染からしたら、試験こそ受かってなくとも、シムシムの使者ってことで、それなりの評価をもらっているラビサが羨ましく思うのはしかたないところだと思います。それが惚れた女ならなお更でしょう。ついつい意地を張って、つっけんどんな態度を取ってしまうサユンの態度に、クスッとしてしまうものがありましたが、男とか女とかそんなこと関係なしに、大切な人だと思ったら、全力で立ち向かうラビサはいい子ですね。小さなことに悩んでいる自分が恥ずかしくなります。
むろん、それだけで世の中を渡っていけるとは思わないけど、でも、彼女には真っ直ぐ前を向いてほしいと思うものがありました。
一方のジゼットは、ラビサが試験を受けている間、バラバラになった「砂嵐旅団」の行方を捜していたんですが、どうにもきな臭いことになってきそうです。ラビサがいないことで、寂しさを覚えるところとか、周囲から見てると楽しくなっちゃうものがあるだけに、今回登場した「星読みの徒」が告げるジゼットの「闇」が気になります。
旅団の話や星読みたちが動くことで、ジゼットに闇が生まれるのかしら。
ラビサという光がいれば……と思いながらも、大きな光さえ飲み込むという予言が不安を呼びます。いったいどうなるのかドキドキですね。
沙漠の国の物語 眠れる望楼
「もうしないから。あんたを不安にさせるような真似は……」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第五弾。今回は、マンナの都市へ名物の織物を売りにいったら、曰くつきの塔を巡る事件に巻き込まれて、というお話。
新年を迎える時期になったら、いつもは元気なラビサがやけに暗くなってしまい、さて何があるのかなと物語を読み進めてました。思わせぶりな表現がありつつも、心のうちに何を隠しているのか見えないのがもどかしい。
とはいえ、そんな状態でも、自分のためでなく、村の人たちのためなら突っ走っていけるところがラビサらしいですけど。
幽霊が出るという曰くつきの塔の話では、意外な弱点を露呈したラビサが可愛くもあり、そんなラビサをからかうジゼットの様子に、好きな子をいじめる男の子な雰囲気を感じてにやりとしてしまう。ちょっとしたハプニングから、ジゼットの胸で泣くことになってしまったラビサには、胸が痛みつつも、頬が緩む僕がいた。
それにしても幽霊の正体見たり、ですね。思い当たらなかったのがちょっと悔しかったりしますが、それだけじゃなく、塔の偏屈じいさんの物語と、かつてこの地にいたという歌い手などが絡み合った出来事を紐解くために、ジゼットが悪巧みをするところがとても楽しかったです。
これまで、光として焦点が当てられていたラビサのちょっとした闇が見えて、一方のジゼットは少しずつ光に引き寄せられて。想いはもう見えているのに、いまだ変わらぬ距離でいるのが不思議というかなんというか、もどかしくもあり、でも、このままでいてほしくもあり。何でしょうね、この気持ち。
ただ「星詠みの徒」であるリードゥの先見と様子が変わってきたのは嬉しいかな……と思ってたら、なにやら怪しい動きがありますね。今度は「星詠みの徒」の中の動きに巻き込まれていくのかな。
リードゥの思惑が見えないこともあり、何ともいいがたいものがありますが、ラビサはきっとリードゥの手助けをするだろうし、そうなったらジゼットだって……ねぇ?
いったいどうなっていくのか楽しみです。
沙漠の国の物語 あざなわれし者
「だったら離れなさい。あんたのためでもあるのよ」
一際強い口調でビッキは言い切った。
「あんたとジゼットは全然種類の違う人間よ。あんたが彼を追っ掛けて同じ町に来たみたいだけど、このまま傍にいたらお互い不幸なことになるわ。後悔する前に身を引きなさい」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第六弾。今回は、カヴルの再出発を邪魔するものが、「砂嵐の後継者」を名乗って……というお話。
相変わらずひとり突っ走ってしまうラビサですが、ジゼットがかつて滞在していた遊動民の一族と出会って、これまでとは違う形で壁にぶつかるようになったのが印象的ですね。
ジゼットを婿候補として考えている遊動民の女族長ビッキの言葉は、たしかに一理あって、彼女の頑張りというものは、周囲を引きつけるものではあるけれど、そこには甘えがないわけじゃない……けど、そこで駆け引きとかするようになっちゃったら、ラビサの良さが消えちゃう気もするしなあ。
いろいろ難しいことだと思うけど、厳しい言葉にへこみながらも、目の前で一族を率いるビッキの姿勢をみて、感じることがあるのはいいことだと思います。ビッキがラビサを認めてくれることがあれば、いいお姉さんになってくれるんじゃないかなーと思うんですが、さて、頑張っていけるかしら。
にしても、ラビサはかなりジゼットを意識するようになりましたねー。好きなのかもしれないと素直に認めつつあるところにニヤニヤしてしまいますよ。
ラビサは婿候補話を聞かされて、ジゼットはジゼットで、ビッキの従兄のゼクスがラビサにちょっかいを出す姿を見て。お互い嫉妬しあって、思わずムキになってしまうあたりは楽しかったなあ。
それだけに、ラビサとジゼットがこれまで生きてきた背景の違いが生み出す距離感にやるせなくなりますが。
戦う力を得ることを強さと呼ぶか。甘えてしまうことを弱さとするか。
心情的に難しいのはわかるけど、間違った方向へ足を踏み出す前に、なんとか踏みとどまってほしいですね。
それにしても星読みの徒の動きが一気に不穏になってきたなあ。このあたりもボタンのかけ違いが生まれてきそうで、ドキドキです。続きが楽しみ。
沙漠の国の物語 暗夜流々
「……ちょっと今から最高に格好悪いこと言うから、耳塞いでてくんない」
青々とした空から瞳を隠し、一つ息を吸って、ジゼットは声の震えを押し殺した。
「俺の代わりに、ラビサ頼む」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第七弾。今回は、聖地カプルで、シムシムの使者に向けた不満がくすぶってくるお話です。
面白くなってきた!
前作もそうだけど、盛上がってきたところで終わらせてくれるから、ジタバタしたくなりますね。
ジゼットが見せた過去によって、ラビサとジゼットがぎくしゃくしてく様は、何とももどかしく思うのは、ふたりとも相手を大切に思ってることがわかるからですよね。距離を置こうとするジゼットの言葉は、とてもきついものがあったけど、それでも信じたいとするラビサの姿勢が良かった。ラビサを狙ってるくせに、ふたりを応援するゼクスの気持ちが良くわかる。
さて、ラビサを狙う輩たちの話と、砂嵐の支援者話が同時に進められていくわけですが……己が正しいと思っている人たち同士が争うことになる様は痛々しいものがある。人は自分が信じたいものを信じるとはいうけれど、悲しいものがあるなあ。なぜ話し合うことが出来ないのか……と思わずにいられない。
その渦中に巻き込まれながら、剣を取るのではなく、自分なりに共に戦う決意を見せたラビサは、やっぱり愛されてる子だよなあ。ハディクが誇りに思うわけだ。
ギクシャクしたふたりの間を、意外な人物がまとめてくれて、ようやく素直になったジゼットが動き始めましたが、一歩及ばず正巫女や町の人々を利用しようとするイラースの手に落ちたラビサはいったいどうなるんでしょうか。
続きが楽しみでなりません。
沙漠の国の物語 鋼の旋律
「彼女は自分で選んだんだ。守られることは望んでいない。心配するのはいいが、し過ぎるのはただの侮辱だぞ。お前はお前の仕事をしっかりやれ。それで次に会えたときには……」
言いながらゼクスはジゼットの頭を真上からガッと掴み、自分の方へ顔を向かせた。
「死ぬまで放すな」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第八弾。今回は、星読みの徒に囚われたラビサが、聖地でくすぶる不満の正体を知って……というお話です。
ウルハとリードゥのやり取りがとても切ない。お互い大切に思っていたにもかかわらず、言葉にできない掟が、悲劇を生んでしまうことになるなんて……。ラビサの言葉ですら届かなくなるリードゥの様子は痛々しいものがありました。
そのラビサも、イラースの言葉には揺れて、ちょっぴりと混ぜられた毒にやられそうになっていたけれど、真っ直ぐな性格と運で、ギリギリ引き戻せたのは、ホッとしました。彼女の性格上、カッとなって精霊を使ったら、後悔するのは間違いないですからね。
ただ、やっぱり辛くて。寂しくて。そんなときに、いつも側にいてくれた人がいないってのは……ね。会いたいと崩れ落ちる様は心痛むものがありましたが、きっと、次に出会ったらきっと、ジゼットは抱きしめてくれると信じてる。
次が最終巻ということで、そのための種まきが行われていましたが、ようやくジゼットとラビサが合流できるかと思った矢先に、遊撃隊とも言うべき人が動き出しちゃったのはまずいなあ。おそらく、イラースも気づくだろうから、ここからは時間の勝負になりそうですね。ギリギリになると思うけど、間に合ってくれよ、ジゼット!
沙漠の国の物語 かさなる輝跡
「あんたがいないと駄目だ」
本当に?もし都合のいい夢なら、どうせなら、もうちょっと聞きたい。
「あんたがいないと何も意味がない。あんたの傍にいたい。あんたが……」
どうしよう。もしかして本当に、これ以上の夢が、
「好きだ」
沙漠に水をもたらすシムシムの種子を植える町を探す「シムシムの使者」だったラビサと、彼女の旅路を付き合ったジセットが繰り広げる冒険シリーズの第九弾。盗賊団である砂嵐と狂信的な思想を持つ星読みの徒が聖地へ向かい、囚われの身であるラビサはシムシムの木を守るために、そして大切な人を守るために立ち向かうというシリーズ最終巻です。
カヴル人と異邦人の間で緊張感が高まっている聖地に足を踏み入れたジゼットを待ち受けていたのが、ラビサを信じてくれた人たちだったという始まりにやられました。これまでやってきたことは無駄じゃないと言われてるようで、じんときたなあ。
まだ助かったわけじゃないのに、この始まりだけで、勇気づけられた思いでした。
一方、星読みの徒を操るイラースは、着々と聖地を襲う準備を進めてしましたが、ここで活躍したのが、正巫女リードゥであったことがとても印象に残っています。運命に立ち向かう決意をして、届かぬ言葉もあったけれど、友達ができて、支えてくれる人がいて、そんな彼女にもたらされた本当の託宣は、どれほどの強さを引き出してくれたことか。
そんなリードゥの頑張りを見たラビサもまた、自分の出来ることをやっていく。いいですね。後手に回りながらも、力強い応援があったりして、最終巻らしい展開にニヤリとしつつ、再び会えたことが嬉しかったです。
もちろん、愛する二人の再会も。姿を見かけて躊躇せず飛び込んだラビサに、思いの深さを感じますが、もう手放さないと心に誓ったジゼットも蕩けそうなぐらい甘い言葉の連続で、どうしてくれようかと思った。
すべてが解決した後、ラビサを襲った出来事はアレだったけれど(眠りと目覚めはちょっと唐突……)、思いを胸に待ち続けたジゼットにニヤリですよ。きっとこれからもふたりで、いろんな旅を続けて行くんだろうなあ。そんな終わり方に満足でした。
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