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さよならピアノソナタ / 杉井光

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さよならピアノソナタ

さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6) - 杉井 光

海岸沿いにあるジャンクパーツ置き場で、知り合った真冬が、ある日、僕のクラスに転校してきた。ピアニストとして名を馳せていながら、ピアノを触ろうとせず、超絶技巧なギターを弾いている彼女は、友人もおらず孤立していたが、よりによってぼくが密かに使っていた空き教室を乗っ取ったのだ。それだけならまだしも、ぼくの人生の半分以上を注ぎ込んだロックンロールを馬鹿にしたのだ。なんとしても、ロックのすごさを教えて、ぎゃふんと言わせてやると決意したぼくは、ベースと手にして彼女に勝負を持ちかけたが……

これは素晴らしい青春物語だなあ。音楽を通じて、少年・少女が心を通わせるというお話なんですが、ギターにしろ、ピアノにしろ、ベースにしろ、知らない曲もたくさんあるのに、なぜか心に音楽が響いてくる、そんな感じの物語でしたね。
思わず原曲が聞きたくなるなあ……と思ったら、作者の杉井さんが、blogで曲紹介をしてくれてます(「ネタバレがあるので、本編と合わせて、曲が出てきたらこっちを確認する、みたいなめんどくさいやり方推奨」だそうです)。

ピアニストなのになぜかギターを弾いているとか、一切ペンを手に取らないのに決してサボることなく毎日学校へ通う姿とか、なんとなしに少女の行動に目がいってしまう、ナオの心情がいいですね。なんとなく気になるという感じが、とてもよく分かります。
普段は無気力なのに、思わずベースを手にとってしまったのは、ロックを馬鹿にされたという気持ちもあるかもしれないけど、真冬が相手だったからこそでしょうね。

そんなナオのやる気を引っ張りあげた神楽坂先輩がまた素敵なんだ。自称革命家として、不遜な態度を崩さないけれど、目的のために謀略を企てる手腕は最高でした。ちょっと万能すぎるきらいがあるけれど、彼女の言葉に、心奮わされることが幾度あったことか。脇役でありながら、抜群な存在感を見せてくれた彼女の物語も読んでみたいと思いました。

真冬については、あれだけサインがあったのに、ぎりぎりまで気づけなかった自分に突っ込みたくなりましたが、これはむしろ、勝負を挑んだ際の展開に引き込まれて、真冬のことなんかコロッと忘れてたからだと思います。神楽坂先輩に乗せられて、三人で曲を奏でたとき、そして、勝負へと挑んだあのベースとギターのセッションには、鳥肌が立つほどの感動がありました。

これだけでも素晴らしいと思いましたが、さらにもうひとつの感動を見せるべく、少女の内面が見えていく展開にやられました。始まりの場所へ戻ってきて、再び響いたフーガに、グッとさせられました。

いやあ、面白かった。最後の最後でいい感じに、希望を思わせるものがあったりして、嬉しくなっちゃいましたね。名もなきクラスメイトたちも、魅力的でした。
続編はないと思いますが、もしあったら、迷わず手に取ると思います。
オススメ。

さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6) - 杉井 光

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さよならピアノソナタ 2

さよならピアノソナタ (2) (電撃文庫 (1570)) - 杉井 光

夏休みに二泊三日の合宿を行うという。それも海の別荘に。先輩が言い出すことはいつだって突然だが、このことに難色を示したのは、ぼくらの元に戻ってきた真冬だった。父親が許してくれないというが、どうもそれだけじゃない気がする。
四人でいるからこそバンドだと思ったぼくたちは、なんでバンドにいるのかと悩む真冬を説得して、合宿へと向かったが……

恋と音楽の青春物語の第二弾。今回は、バンドにいる理由がわからないという真冬を連れて合宿にいく、というところから始まるお話です。前作よりも恋愛要素が増えたかな。

相変わらずツンとした感じの真冬でしたけど、ナオを名前で呼んだり、つっけんどんとはいえ、音楽の話をするようになったりと、ふたりの距離がちょっと近づいてるような描写にうれしく……なってたのに、合宿へ二の足を踏むわ、バンドに入ってることにも、煮え切らない態度をみせるわで、なんともモドカシイ思いになりました。まあ、あれだけ鈍い男を想ってたらしかたないところはあるけど。

バンドにいることに引け目を感じているおかげで、どうしても馴染みきれない真冬でしたが、そんな彼女を引っ張り上げる先輩が、ほんと格好良かった。バンドとしての鼓動を感じさせて、弾きたいと思わせ、そしてひとつになるセッションにゾクゾクさせられる。この人の音楽描写は、心を熱くさせてくれるなあ。この繋がりがあればと思わせてくれましたよね。

今回一番印象に残ったのは、革命家の弱さが見えたところでしょうか。いまだ見えぬ彼女の過去の重さを実感させてくれましたが、そこから立ち直ろうとした先輩の言葉のまっすぐさに、思わずこちらまでドキドキしてしまいました。ただ、彼女にとってのポールが……ってのは、なんかしっくりこない気がしないでもないけど、過去の話が見えてくるとまた違ったものが見えてくるかもしれません。

いやあ、良かった。
言葉で伝えきれない思いを、音楽を通じて伝えることができるって、ほんと素敵ですよね。居場所を求め、葛藤を繰り返してきた人たちが集まったバンド「フェケテリコ」が、今後どういう道を歩んでいくのか、楽しみです。

さよならピアノソナタ (2) (電撃文庫 (1570)) - 杉井 光

そうそう。今回もまた著者の杉井さんが、本編に出てきた曲の紹介をしてくれてます。読み終わったあと聞くと、それぞれのシーンが思い浮かんできて、もう一度読み返したくなりますね。
Desperado」がとてもよかったので、Amazonでポチっ。

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さよならピアノソナタ 3

さよならピアノソナタ 3 (3) (電撃文庫 す 9-9) - 杉井 光

「あなたは、ムソルグスキーにおびえることなんてない」
真冬がぼくの間近で顔を上げる。鼻が触れ合いそうな距離。
「ただのロックでいい。だれかのコピーでも。それはあなたの音楽。わたしは、わたしも、千晶も、響子も、それが演りたいの」

恋と音楽の青春物語の第三弾。今回は、初ライブを終えて、次のライブの場を求めていたとき、真冬のギターの師匠であるヴァイオリニストが現れて……というお話。

一度ライブを経験したことで、次のライブを目指していく姿が、とてもいい。特に今まで一歩引いていた真冬が、ライブのために、ナオのために、ちょっとだけ積極的になる様がとても印象に残りました。
でも一番印象に残るのは、先輩なんですけどね。

クラス対抗合唱コンクールが開催されるとき、先輩VSナオ・真冬・千晶のクラスで勝負をしたときのあの格好良さは忘れられない。きっとナオからしたら、永遠に追いつけない、でも追いかけていきたいと思える人なんだろうなあ。でも、そうなると、先輩との間に恋は芽生えそうにないので、とても残念。

先輩にしろ、千晶にしろ、ナオを見ていれば、誰を一番気にしているかは気づいていると思うんですが、敵に塩を送りながらも、なお、自分の思いに正直に生きる少女たちの姿が、とても眩しく感じました。もちろん、悩むことはあるんだろうけれど、足を引っ張る方向にいかないあたりが「フェケテリコ」のいいところだと思います。やっぱり、音楽という繋がりがあるからなのかな。

その音楽の繋がりを、真冬がギターを始めたきっかけを作ったというユーリという男の子と真冬との間で見せ付けられてしまい、ナオがうじうじと悩むんですが、その悩みの元となった感情が嫉妬だとなかなか気づかないあたりは、やっぱり朴念仁というか、おニブさんというか。

今まで考えたこともなかった「真冬との関係」を問われて、悶々としていたナオですが、やっぱり居場所を明け渡すわけには行かないと思ったのは、真冬の言葉があったからなんだろうなあ。
真冬のまっすぐな言葉と、彼女の言葉を膨らませて胸に響かせてくれる先輩の言葉は、幾度となく心を奮わされました。

いやあ、面白かった。
ようやくお互いの思いを……と思ったけど、ナオのニブさからすると、好意を伝えただけのようにも思えるから、不思議です。どんだけ僕の中でヘタれキャラなんだろう。でも、彼女のそばで、という決意自体には嘘はないでしょうね。ベーシストとしてだけでなく、音楽を言葉で伝えていくことができたらと思いました。

まだまだ二人の思いは、始まったばかりのような気がするので、もっと距離が近づいてくれたら嬉しいですね。

さよならピアノソナタ 3 (3) (電撃文庫 す 9-9) - 杉井 光

今回も著者の杉井さんが、本編に出てきた曲の紹介をしてくれてます。あー、また読みたくなってきた。

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さよならピアノソナタ 4

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫) - 杉井 光

「ピアノしか知らなかった頃は、こんな気持ちになるなんて、想像もしなかった」
言葉もなく、うなずく。ぼくだって、ただ他人の音楽を聴いているだけだった頃は、あんな熱や鼓動が存在することすら知らなかった。
「もっと、弾きたい。響子を歌わせたい。千晶と一緒に歩きたい。……あなたの、心臓の音を聞いていたい」

文化祭のライブを終え、次なるステージの場を捜し求めている間にやってきた冬。真冬の誕生日とクリスマスの季節に自分の想いを告げようとした直後に、神楽坂先輩に振り回されて、さらには真冬に異変が起こり……恋と革命と音楽が織り成す青春物語の最終巻です。

ああ、もう素晴らしい!
真冬の誕生日に何かあげたいと思いながら、何が良いかと千晶に訊ねてしまう無神経さは、まったくもってアレですが、鈍い鈍いといわれながら、恋のせつなさ、苦しさを覚えていくナオの気持ちがすっごい伝わってきます。告げたい言葉があっても、でも今の関係が壊れたらという不安は、誰にでもありますよね。考えてみたら真冬も、千晶も同じような感じだった……わけでもないか。ナオが鈍すぎて伝わらなかっただけだから。

まあ、でも積極性という点では、やはり神楽坂先輩がダントツでした。まさか、あんな策略を仕立て上げてくるとは……。どこまで本気かってのは、なんとなく掴みにくいところがありますが、ナオの気持ちと真冬の気持ちに気づいていながら、それでも可能性にかけて動く姿は、らしくあり、らしくなく思えました。強くとも、やっぱり恋する思いは変わらないんだなあと思ったしだいです。

それでも、フェケテリコが飛んでいる間であれば、何とかなったと思うんですが、ナオが気づいてしまった真冬の不調から、少しずつ歯車が外れていくところには、もう……。誰が悪いというわけでもないのに、ちょっと不安を抱えていただけなのに、フェケテリコが片翼になってしまうあたりには、やるせないものがありました。

個人的に一番心にきたのは、「後悔しないね」という神楽坂先輩の問いに対するナオの答えですね。そう、後悔しないはずがない。それでも真冬のために……ナオの言葉と、その言葉を聴いた千晶や神楽坂先輩が、ステージへ向かうときの鼓動を想像したら、胸が熱くなるばかりでした。

いやあ、面白かった。重苦しい空気に包まれながら、それでも音楽が彼らを結びつけて、人々の思いを表現してくれて。自分への思いに気づいていき、また自分の思いも気づいていく。この物語を読んでる間、言葉を超えるような音楽ってあるんだなあと思いました。

できれば、もっと読んでいたかったですよ。ずっとずっと読んでいたかった。物語が終わることがこんなに寂しく思えるのは久しぶりです。可能であれば、この続きを、あるいは番外編でもいいから短編を読んでみたいですね。
文句なしでオススメのシリーズです。

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫) - 杉井 光

今回も著者の杉井さんが、本編に出てきた曲の紹介をしてくれてますので、読み終わった人は余韻に浸りながら、ぜひ。

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さよならピアノソナタ encore piecs

さよならピアノソナタ―encore pieces (電撃文庫) - 杉井 光

「真冬も覚えてる?」
「……なにを?」
「いつ、どうやって直巳のこと好きになったのか」
「そ、そんなのっ」
ついに真冬は椅子から立ち上がってしまう。暖炉の前まで行ってかがみ込み、火に見入る。
「……忘れるわけない」

恋と革命と音楽が織り成す青春物語のアンコール・ピース集。二十四歳になったナオたち、四巻の空白の時間を埋めるストーリィ、神楽坂響子の初恋など、以下の五編が収録されています。

  • ナオが真冬に一大決心するまでを描く「Sonata pourdeux
  • 千晶に憧れてフェケテリコのサポートメンバーとなったベーシスト・橘花を描く「翼に名前がないなら
  • 離れた真冬とナオの間で揺れるユーリを描く「ステレオフォニックの恋
  • 神楽坂響子の初恋を描く「最後のインタビュー
  • 哲朗のワンエピソードである「だれも寝てはならぬ

ちょっぴり大人になった登場人物たちの姿に一抹の寂しさを感じることもあったけど、あの頃と変わってない面も多くて、特に神楽坂先輩とナオの関係は、大人になっても高校生の頃を思い出させてくれて嬉しくなる。

表紙からしてネタバレですが、ナオのプロポーズ話は楽しかったなあ。まふまふの様子に気づかぬ鈍さは相変わらずですが、発破をかけられて意識し出したり、結婚というものにもやもやするものを感じたりしてたけど、音楽が二人を結びつけてくれるところはとてもよかった。
まったくキザなプロポーズだよ、と思いながらニヤニヤでした。おめでとう!

どの話も良かったけど、音楽的熱さを見せてくれたのは「翼に名前がないなら」かな。二名で活動するフェケテリコの千晶に惹かれて、サポートメンバーに応募した女の子・橘花のお話。

憧れて、念願叶って、初体験のグルーヴに打ちのめされて、ついていくために一生懸命頑張って。仲間になっていく様は、我がことのように嬉しくなったけど、のめりこみすぎたことが、彼女の翼を封じてしまう結果になるから、心とは怖いものです。
もがき苦しみながら、投げだそうとして、でも投げ出せなかったのは、やはり憧れと、音楽への感動があるからなんでしょうね。
逃げるのではなく戦うために、立ち上がった橘花の姿は、とても素敵でした。こんなときでも格好いい神楽坂先輩にやられるばかり。

その神楽坂先輩の中学時代の物語も素晴らしかった。
神楽坂響子をして最高のベーシストと言わしめたリュウジとの出会いのお話なんですが、彼女にとってどれだけ大きな存在だったか、とても伝わってくる。

才能に振り回されて二つのバンドをつぶし、ひとりでやっていく決意をしたときに、ハートをぶち破られるグルーヴを体験させられて。ああ、本編で彼女が他の人に伝えていた鼓動は、ここから始まっていたのかと思う次第です。

惹かれて、でも必要以上に近寄らせてもらえず。それでも音楽がふたりを結びつけていたと思っていた矢先の出来事は、神楽坂先輩にとってどれほどの衝撃を与えたか、想像するだに難しいことですが、倒れることなく、弱さを見せることなく、戦ってきた先輩を心の底から格好いいと思いました。
まったく泣かせてくれるお話です。

いやあ、よかった。ほんと素敵な短編集でしたね。これで会えなくなるのは寂しい限りですが、いつかフェケテリコが一堂に会すときがくることを想像して、本を閉じたいと思います。

このシリーズに出会えて良かった。

さよならピアノソナタ―encore pieces (電撃文庫) - 杉井 光

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