おと×まほ / 白瀬修
おと×まほ
実はね、かーさま、魔法少女だったの、という母親の言葉は、いつもどおりの冗談だと白姫彼方が思っていたら本当のことだった。しかも卑劣な手段で、彼方を魔法少女として契約してのけたのだ。実の母親が!彼方は男の子なのに!
契約を破ったら、女の子になってしまうと脅迫されて、その日から彼方は、魔法少女として、ノイズと共に現れる敵と戦うことになったが……。
高校の制服を着ていても、そこいらの女の子よりはるかにカワイイ彼方が、魔法少女に変身してさらに可愛くなって敵と戦うお話です。いや、ちょっと違うか。
本人は女っぽい容姿をとても嫌がっているのに、周囲の人たちは「そのままの君でいて」と言わんばかりで、学内美少女コンテストで、男なのにぶっちぎり一位をとったり、メガネのいかにもな委員長の色仕掛けに、あたふたしたりと、親しみ溢れるからかわれっぷりが、微笑ましく楽しいです。
ただ、展開としてはベタベタで、キャラクタ同士の掛け合いとか、物語のテンポがよくある感じだったので、それほど心惹かれるものがありませんでした。
少なくとも前半は。
いいかもと思い始めたのは、ネコのモエルのエピソードが出てきたあたりからかな。魔法少女についてくる話せるネコの寂しさと家族の温かさを知るエピソードがあってからは、モエルと彼方の関係とか、心理描写が良くなっていきましたよね。
あと、もう一人の魔法少女グレイスが個人的に好みだったのもあるかな。ツンデレというほどではないけれど、はじめは刺々しかったのに、力を認めてからのふんわりしたところとかいいなあ。力比べして、認め合うというのは、妙に少年漫画チックではありますが。
女性として見られることに嫌気が差して、そんなときに敵が現れてと、迷うが故に、焦るところには、自分とに対するもどかしさみたいなものが伝わってきましたが、そこを吹っ切るところのシーンがとてもよかったです。〝脅迫〟がこんなにカッコよく響いてくるなんて思いませんでしたよ。不器用な男らしさが素敵でした。
はじめはどうもノレなかった感のあるお話でしたが、ほどよくコミカルで、いつの間にやら楽しめるようになってましたね。続編が出るのかわかりませんが、グレイスが活躍してくれるのであれば、追いかけていくかも知れません。
おと×まほ 2
「どうして留真ちゃんはこんなになってまで……戦うんだろう」
彼方と同じ歳の少女は、疲労による過労で倒れても、まだ戦おうとしていた。それも、ひとりで。いったい何が彼女をそこまで駆り立てるのかを知ろうとしても、彼女は彼方の力を借りることを良しとしなかった。
そんなある日、ノイズの気配を感じた彼方が変身しようとしたとき、魔法少女へと変身した大人な女性が現れた。彼女は、どうやらグレイスこと留真の過去を知っているようで……
世界の乱す"ノイズ"を、人知れず倒す魔法少女たちのお話の第二弾。変身すると魔法少女になっちゃう男の子・彼方が主人公ではあるんですが、今回は、彼方と同じ歳の魔法少女グレイス・チャペルこと樋野留真のお話です。
これは、面白い!前作もつまらなかったわけじゃなかったんですが、良くある話だなあと思って、続きをスルーしてました。いろいろな人に「面白いから」とススメられて手に取ったんですが、いや、ほんと面白かったです。見送っていた自分を恥じる思い。
というか、前作を読んで、一番しっくりこなかったのは、彼方が女装しまくるというか、されまくるというか、そういうところだったんで、今回も女装ネタがあったら、あんまりノレないんだろうなあと思っていたんですが、いやいやどうして。
女装ネタを男が持ち寄ったら、にこやかにコブシを突き出す強さを持ってるのに、女性には押し切られてしまうかなたんが、だんだんだんだんカワイクみえてきて、別にかなたんだったら、女装してもいいんじゃないかしらと思うようになってきたから恐ろしい。
ち、違うから。そういう趣味はもってないから。と、誰にともなく言い訳しながら、ニヤニヤ読んでたのは内緒。
それはともかく、グレイス。「~ですの」なしゃべり方の可愛さとは裏腹に、限界を超えてでも戦おうとする姿が痛々しかった。彼方といるときには、ふと見せる柔らかさがとても素敵なだけに、何がそこまで彼女を必死にさせるのだろうと思ってたんですが……過去のエピソードが心に痛い。
グレイスを心配する魔法少……じゃない、魔法お姉さん・幾瀬依の思いは、決して同情だけではないのに、頑なな態度をとってしまうところに、グレイスの思いの深さが見えました。
そんな頑なな姿が変わっていったのは、彼方の優しさに触れたからでしょうね。グレイスの過去を知らない人だという思いから、普段とは違った心で接することができたから、逆にかなたんの言葉が、胸に届いたんだろうなあ。
いいんちょに振り回される彼方の姿を見て、今までに無い心の痛みを覚えてたのは、周囲を見回す余裕のなかったグレイスにとって、大きな変化だと思いました。モエルというケンカ仲間な存在も、彼女の心を揺らすのに、大きな影響を与えたでしょうね。
それまで、失いたくないと言う思いから、大切なものを作ろうとしなかったグレイスが、依の「守る」という力と気持ちの強さを目の当たりにして、失ったものを取り戻したいと思ったのは、きっと温かさを知ってしまったからだと思います。取り戻すための戦いの熱さに興奮し、今までと違った形で、依と寄り添うことができそうなシーンに、じんわり。
あー、面白かった。何とも素晴らしい熱さ溢れる展開に引き込まれました。
グレイスだけでなく、かなたんも、すっごいことやってたなあ。強敵相手に、幾度となく倒れそうになりながら、決して折れなかった心の強さが格好良かった。それにしても、なぜここまでの力を持ってるのかは不思議に思うんだけど、モエルの謎とも関係あるのかしら。このあたり大いに気になるところ。
それにしても、いいんちょ。あまりのふりまわしっぷりにドキドキしてたら、なんだか素敵な姿を見せてくれるじゃないですか。これは続編が大いに楽しみ。
おと×まほ
ついに始まる文化祭。Bクラスのみんなで盛り上がっていたところに、Aクラスの委員長がやってきた。
「私たち一年Aクラスは……Bクラスに、決闘を申し込みます。彼方様を賭けて」
そして、文化祭の売り上げによる勝負が始まった。驚く彼方を余所に。
依や留真、さらには彼方の最終兵器な衣装もあって、大盛り上がりした文化祭。楽しく思いながら、何かが足りないことに、彼方は気づいた。そういえば、いつも、このクラスをまとめている彼女は……?
世界の乱す"ノイズ"を、人知れず倒す魔法少女たちのお話の第三弾。今回は文化祭と、いいんちょのお話です。
ああ、もう楽しい。家にいれば依と留真とモエルが、学校にいけば丈が騒動を引き起こしてくれるので、笑いが絶えません。特に今回は文化祭ってことで、クラス全員が盛り上がってるところに、隣のクラスの古伊万里さんが、かなたんを賭けて、勝負を仕掛けてくるんだから、もう最高。白姫会なるものの存在といい、かなたんを守ろうという発想といい、バカだ、こいつらバカだと思いながら、大いに楽しませていただきました。
依と留真まで参加してくれたときに、ですの娘大好きな自分を再確認。
で、あまり意識してなかったんですが、そういえば……と思ってたいいんちょが、ついに立ち上がりましたか。名前すら知らない間柄だったことには、ちょっとショックだったなあ。かなたんも混乱もわかる気がする。
でも、その言葉の強さとは裏腹に、どこか悲しげなものも感じて、いったいどんな事情があるのかと悶々させられましたが、やっぱり、かなたんはいいなあ。あのとき、あの場面で、彼女に対して「友達」という言葉を使える心の強さが素敵でした。
ただ、それだけじゃ、いいんちょの闇は晴れることなくて、彼女の抱えてる闇の大きさには、その力の大きさには、どうなることかと思いましたが、ここで、かなたん母のこなたんが出てきてくれるとは思わなかった。この能天気っぷりと、最強っぷりが素敵です。かなたん大好きっぷりも。見てるこっちが恥ずかしくなる。それでも、敵の強さを知りながら、いまだ力及ばないかなたんを送り出すところに、子供に対する信頼が見えました。
かなたんは、怒ると強いんだよって展開は、いつもながら熱くて良かったですが、それにしても、まさかあんな技(?)を使ってくるとは予想してませんでした。いや、たしかに、そういう話はあったけど……。な、なんだろう。このもやもや感は。
これが一巻であれば、ある意味、僕が望んでいたものだったようにも思うんだけど、ここまで話が進んでしまうと、むしろ違和感バリバリ。
とまあ、最後の戦いには納得いかないものがありましたが、それでも、最後におさげを揺らすいいんちょの姿が見れたときには、すっごく嬉しくなりました。
今まで続いてたお話としては、これで一区切りついた気がするけれど、次はどうするんだろう。やっぱり、かなたんの秘密にせまるとか、そういうお話になるのかしら。
おと×まほ 4
「温泉に行きましょう!」― 母様の強引な誘いにより、突然、魔法少女たちは温泉へと向かうことになった。委員長にからまれて、依さんに抱きつかれて、グレちゃんに押し倒されてと、いつもどおり騒動まみれ。ようやく温泉に入って、彼方がほっと一息ついていたら、女湯のほうで、何やら不穏な動きがあって……「覗きは……まずいと思いますの」
世界の乱す"ノイズ"を、人知れず倒す魔法少女たちのお話の第四弾。今回は、みなで温泉に行く「温泉旅行へ行きましょう♪」、白姫会の古伊万里みさらと明日野丈の、かなたんとの関係が見える「甘いお菓子が食べたいわ♪」、契約によって女の子になってしまったかなたんの苦労を描く「少女な彼方の一週間」の三編からなる短編集です。
温泉で覗かれたり、クリームまみれになったり、女の子の姿で着替えたりと、皆が皆、かなたんに萌えるというか悶えるというか、そういうシーンがとても楽しい。時折、いいお話な雰囲気が見えるところも良かったです。
ただ、日常的なお話ってのは、チラッと出てくる分には面白いんだけど、そればかりだと、ちょっとお腹いっぱいになりますね。誰かとの仲が進展するってこともなかったので、いろいろ物足りなかったです。いい加減、はっきりしちゃえばいいのにと思う僕はグレ子派。
前作のラストで女の子しちゃった彼方は、今回の三篇目でその後の話となってましたが……、やっぱり違うんだよなあ。モエルが言った
「ああ、背中に柔らかさがある……違うんだ、かなたんの柔らかさっていうのはこういうことじゃないんだよ……」
という言葉に思わず頷いてしまいました。そうなんだよ、かなたんは男の子だからいいんだよ。
まあ、女の子な話は、今回で終わるっぽいので(だよね?)、次あたり、またいつもどおりになってくれることを期待したいですね。萌えるよりも燃える展開をぜひ。
おと×まほ 5
「ね、ネグリジェって」
思わず、
「しっ、下着じゃないですかっ!?」
叫んでしまった。
それを聞いた丈君は人差し指を左右に振り、訂正してくる。
「違うぞ彼方。正しくは寝間着だ」
「っ、でも結局下着みたいなもんでしょう!?難易度高すぎますよっ、こんなの!」
「え?でも似合うと思うよ?」
「いいんちょっ、似合っちゃいけないんです!」
世界の乱す"ノイズ"を人知れず倒す魔法少女たちのお話の第五弾。今回は、モデルを依頼された彼方と付き添いのいいんちょが向かった都心で、先日まで敵だったエフェクトと出会い……というお話。
ああ、かなたん。君はどこまで流されていくんだ。レディースブティックのモデルって。しかもネグリジェ!
必死に逃げてるはずなのに、気づけば追い詰められて、しくしくと着替えるかなたんの様子に萌えてる自分を発見しました。どこかおかしいけど、追求はやめておく。
それにしても、かなたんがモデルやってるときの丈君やモエルのテンションの高さは、素晴らしいものがありますね。見習わないようにしないと。
で、都心へ出かけたときに、ノイズであるエフェクトと出会ったわけですが、敵だというのに、今までと違う様子に気づいて、ほうって置けなくなるところが、とてもかなたんらしい。まあ、モデルをさせられるかもという状況で、もしかしたら味方になってくれるかもという淡い期待があったのかもしれませんが、それでも、この信頼感が、より一層、仲間との絆を深めていくんだろうなと思いました。
残念ながらモデル時には、むしろ敵に回ってましたけどね!
今回は、正義の味方とは、みたいな感じのお話になってて、ノイズというだけで、はたして問答無用で倒していいのかというあたりが鍵となってましたが、うーん、でもこれは難しいよなあ。もともと敵ということで、魔法少女になったわけだから、かなたんみたいに割り切れるほうが珍しい気もする。
ただまあ、エフェクトを狙うチューナーも、ちょっと狂気じみたところがあったので、何ともいえなかったけど、手を出さないのであれば、「約束」を守るのであれば、それは仲間として扱う、かなたんの熱い心は胸に響きました。「笑うな!」の言葉にじんわり。
最後はちょっと悲しい出来事か……と思ったら、やってくれるぜ。おそらくは今後も活躍してくれることでしょう。あらたな魔法少女と共に、次はどんなお話を見せてくれるのか楽しみです。
おと×まほ 6
「モエルちゃん。怖くなったら……思い浮かべなさい。
アナタが喜んでほしい、大切な人の笑顔を」
世界の乱す"ノイズ"を人知れず倒す魔法少女たちのお話の第六弾。今回は、彼方の誕生日の様子と、モエルの秘密が明かされるお話です。
うーん、ちょっと物足りないかなあ。いや、楽しいんですよ。いつもながらのドタバタ騒ぎと、かなたんを巡る女の子たちのお話は(と思ったけど男もいたか)。特に誕生日ってことで、みんながかなたんのために、どんなプレゼントがいいかを考えて渡すあたりは、温かくなるものがありました。なぜか、かなたんがミニスカサンタの姿で、みんなそれに萌えてましたことを抜かせばね!
ちなみに今回の一番やばいセリフは「アナタって人はとうとう絆創膏を服と呼ぶように?」だと思います。誰が何をやられたかは、各自でご確認を。
話しそれた。
そんなこんなで、みんなで楽しく平和にやっていたのに、ノエルだけが浮かない顔をし始めて、というところから、不穏な空気が流れていくんですが、物語が動いたのが、後半も後半だったので、ちょっとね。コミカルなやり取りは楽しいけど、長く続くと退屈になってしまうので、もうちょっと早く動いてくれたらなと思わなくもない。
ともあれ、ノエルの秘密を知ってからも、変わらずに家族として愛するかなたんの心の叫びは、熱いものがありましたが、それが更なる危機を呼び寄せそうで、なんとも大変です。ノエルとしても……辛いものがありますよね。
二人の間にすれ違いが生まれてくるのを感じますが、今後かなたんたちと「指揮者」たちが、どう関わってくるのか気になりますね。話が大きく動きそうな予感がヒシヒシ。
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