乃木坂春香の秘密 / 五十嵐雄策
乃木坂春香の秘密
その雰囲気。その姿。その容姿。どれをとっても完璧な乃木坂春香。その上、性格もよく、頭脳も明晰で教養もあり、家もお金持ち。そんなパーフェクトなお嬢様、乃木坂春香と俺の接点なんてどこにもなかった。にも関わらず、天使のような笑顔を俺に向けてくれる春香。
始まりは、そう。図書室での出来事。俺が乃木坂春香の秘密を知ってしまったあの事件から、俺たちの奇妙な関係は始まった……。
秘密といってもたいしたことじゃない。それでも場合によっては大きなことかもしれない。一度生まれた誤解はなかなか解けないし、偏見というのは確かに存在するのだから。特に学校という閉鎖的な空間でそれを恐れるのはよくわかる。。
その辺りがうまく伝わってくるんですよね。必要以上に暗くならないように。
たぶん、文章のまとめ方がうまいんでしょうね。説明が明確ですっきりしてる。
そして何より、読んでいてニヤニヤしっぱなし。クスクス笑いっぱなし。
展開も面白いけどちょっとした小ネタがもろにツボにはいる。
見ている人がいたら、どんなに怪しまれることか。
こんな素敵なほのぼのラブコメは久しぶりだ。
個人的に絶賛したくなる作品です。
乃木坂春香の秘密 2
夏休みにはいった。だからといって俺に何か予定があるわけない。だらだらと過ごしていたら、突然、美夏に連れ去られてしまった。
「これからお姉ちゃんのピアノのコンクールに行くから。応援にいくでしょ?」
そりゃもちろん、行くことに問題はない。不安なのは乗っている車がものすごいスピードでどんどん進んでいくことだ。いったいどこでコンクールをやるんだ?
「あれ?聞いてない?ロンドン、だよ♪」
そんな夏休みのひとコマを含む四篇からなる短編集。
二人の仲は確実に近づいているんだけど、一歩一歩がとても小さい。ちょっとしたときに漏れる本音と、何気ない仕種にドキドキしまくる心がビンビン伝わってくる。思わずクーっと唸りたくなるほど。
想いあっているのになかなか進まない仲には、イライラさせられるけれど、ある種、心地よい。狙ってるだろと思うシーンすら、またまたやってくれたと喜んでしまうほど。
特に今回は春香の父親が出て来るから大変。
大事な娘の彼というべき存在の裕人に向けられる冷たい視線にどう立ち向かうのか。
それは本編を読んでからのお楽しみということで。
乃木坂春香の秘密 3
実に普通の日だった。放課後を迎えるまでは。それは春香の誕生日。
サプライズパーティをする、と妹の美夏に言われたので、春香にすら内緒にしていたが、迎えに来たのは最強のメイド二人。校庭に降り立つのは戦闘機?
音速を超えて飛び立った先は、赤道近くの小さな島。
それは春香の父が誕生日プレゼントとして与えた島だった……。
相変わらず小ネタがツボに入ります。こんな姿は誰にも見られたくないな。
そしてニヤけさせてくれるふたりの恥ずかしやり取り。
「二人で初めてのお弁当」「ほっぺについたご飯粒をぱくり」「見つめ合ったまま二人の世界に入ってどきどき」なんてものがあったりするわけで。
ただ、今回、一味違うのは春香だけで完結していないってことかな。
美夏とのやり取りが結構あって、それはそれでいいんだけど、やっぱり春香と裕人じゃないとなあ、って改めて思う。美夏が悪くないだけに、逆に二人の良さがよくわかる。浜辺での出来事は最高でした。
ただ、あとちょっと。あとちょっとなのに……。
読んでるこっちが悔しい。
次作でも読んでるだけで恥ずかしくなり、悶えさせてくれることを期待したいですね。
乃木坂春香の秘密 4
強制的に文化祭の実行委員に任命されてしまった。それも転校してきたばかりの椎菜と一緒に。
結局、信長の情報操作により、文化祭でうちのクラスはコスプレ喫茶をやることになってしまったが、どんな服があるのかよくわからないし、予算の都合もあるのでおいそれと服を買うこともできない
ところが、春香がそういった服を売っているお店を知っているというので、日曜日に二人で出かけたが……
雰囲気はいつもどおりだけれど、展開はいつもとちょっと違う。ラブコメよりもシリアス度が高い。恋愛ものの定番と言ってもいい、すれ違うふたりを描いたものだけれど、ひょっとして本作で終わりなのかと思うぐらい緊張感を高めてくれました。
とはいえ、重すぎず、かといって軽すぎず。
心の揺れが雰囲気を壊さないぎりぎりのラインで描かれてて、うまいなあと思います。
春香が裕人に恋をしているのはわかりきってることだけど、これで本人も自覚したかもしれませんね。ちょっとずれてるかもしれないけど、大切な人であるということは大いに自覚したでしょう。
あの月明かりの下のフォークダンスのシーン。「shall we dance ?」と声をかけているようなイラストのあるシーンを読んでいたら、ほわっと温かい気持ちになりました。
裕人にしろ春香にしろ、美香を見習ってもうちょっと(ほんのちょっとだけでいいから)積極的にと思わなくもないです。次作に進展があることを期待しつつ待ちましょう。
ところで……今回葉月さんがはっちゃけてませんか?
乃木坂春香の秘密 5
ほしいものがあるとかで、なんと、春香がアルバイトをはじめるという。それもメイド喫茶で。
何かとドジだし、おっとりしてるので客にからまれるかもしれない、などと気にしていたら、春香の妹の美夏が様子を見に行くというので、裕人は変装して美夏と春香のバイト先へ向かったが……
サンタの表紙でわかるとおり、クリスマスの空気が世を包む月の物語です。これだけで、春香がなぜバイトを始めたかわかりますよね。メイド喫茶で働く春香の話、春香に影響されて(なぜか)執事のバイトをする裕人の話、裕人の家で開かれるクリスマスパーティの話、そしてパーティ後の話と、どの物語を読んでも悶えたくなるぐらいラブコメ度高いです。
メイド喫茶の話は良かったですねえ。あの変装に気づかない春香の天然ぷりに笑えますが、失敗をフォローする裕人(変装中)と春香のやりとりにきゅんとしちゃいます。春香のメイド姿のイラストにやられたとかそんなことありませんよ。たぶん。
裕人がバイトする話では、天王寺家という超お金持ちのご令嬢が登場するんですが、これまたすてきなツンデレで爆笑しちゃいます。はじめはツンツンしてたのに、だんだんと裕人に心を許し始めていく展開のなめらかさは流石ですね。フラグっぽいのが立ってるし、これは今後も何かあるのかしらと意地悪な期待をしてみたり。
クリスマスパーティに入ったらもう大変でしたね。ヒザにお座りとかやばすぎだから!裕人の理性の押さえつけ度のレベル高すぎです。そんなシーンとは打って変わって、お母さんとの話はとても心が温かくなりました。ただ萌え萌えするだけじゃないところが、このシリーズの良いところですね。
パーティ後のふたりっきりのシーンは、もう何も言えません。充電です、とか言われたらもう……。
ここまでお膳立てされて、まだ階段ひとつ上りきってないところが、ある意味すごすぎですが、お互い大事な人という認識は持ったみたいなので、次作がとっても楽しみですね。
乃木坂春香の秘密 6
幼馴染の信長に、冬コミの売り子を頼まれたことを伝えたら、春香は感激していた。しかも、何か出品したいものがあったら、一緒に売ってもいいということで、裕人は春香と同人誌を作ることになった。慣れない作業に時間を費やして、ついに完成した同人誌をもって、冬コミにサークルとして参加したふたりだが、思うようにはいかず……。
大晦日を明後日に控えた冬の日から始まるお話です。裕人と春香が同人誌を作るお話、冬コミで売り子さんをするお話、クラス全員で初詣に行くお話、ふたりで初日の出をみるお話の四編が収録されています。
相も変わらず、初々しいふたりですが、ちょっと距離が縮まってきた感じがありますね。さりげない仕草にいつも以上の気持ちを感じて、微笑ましくなります。やっぱりいいなあ、このふたり。決して一方通行ではなく、お互いに支えあう関係って憧れます。
まずは冬コミ話から始まるわけですが、あまり知らないけれど、興味はある世界なだけに、雰囲気にワクワクさせられます。冬コミ話で一番良かったのは、ふたりで作り上げた本が、初めて売れたシーンかな。春香自身のイラストがアレなこともあって、そうそううまくいくはずないんですが、春香のために何とか一冊売りたいと、思い切ったことをできる裕人が素敵でした。
ただ、この優しさが、他の人と間にもフラグを作ることになっちゃうんですけど。
初詣のとき、裕人が椎菜のためにした行動は、誰でもできそうで、そう簡単にできないものですよねぇ。本人自覚ないみたいですが、あんなことやられたら、惚れます。ええ、間違いなく。男でもほれる。
椎菜だったら、裕人と春香の関係に気づいてると思うけど、それでも思いを伝えたくなるかもしれませんね。いったいどうするのか、ハラハラドキドキしつつワクワク。
四編の中で一番好きな話といったら、最後のお話かな。初詣では近くにいながら話せなかった二人が、クラスメイトたちの視線もなく、二人っきりで初日の出を見に行くんですから、ああ、素敵なシチュエーション。おみくじの運勢や振袖がうんちゃらなどのお約束も楽しいし、さりげない裕人の優しさもよかったです。お姫様だっこは、まさにこういう時のためにあるものですよねぇ。好きな子のためにカッコつけることができる嬉しさみたいなものが伝わってきます。
特別な場所で特別な人と初日の出を見られて、最後の最後には記念的なこともあって。ここまできて、告白しあってないのは不思議なぐらいですが、いつか、そのシーンが見れるんだろうなと今から楽しみです。
そういえば、また一人、新たな人が参戦してくるのかしら。それとも春香が、あっちの世界に誘われて的な話の伏線になるんですかね。これはちょっと気になります。
気になるといえば、毎回名前だけ出てくる信長の妹の真尋は、このまま姿を見せないキャラとして定着するんじゃないかと思いはじめてきた今日この頃。
乃木坂春香の秘密 7
「ねぇ裕人、いっしょに温泉に行かない?」由香里 椎菜の誘いに、俺や春香など男女合わせて八人が集まり、温泉旅行へ行くことになった。仲の良い友達と旅行に行ったことがないという春香は、いつも以上に楽しそうにしていたが、待ち合わせの東京駅で新幹線に乗り込んだところ、春香の妹の夏美や乃木坂家のメイドさんたちが、こっそりとついて来てて……?
クラスメイト男女4人ずつ……のつもりが、夏美やメイドさんまでついて来た三泊四日の温泉旅行のお話です。裕人以外の男は出てこないに等しいので、男1 : 女7というハーレム旅行になるところに思わずにやり。
お話としてはいつもどおりなんですが、さりげなく春香が裕人を意識するような言葉を見せたりして、微笑ましいシーンがたっぷりでした。裕人も、春香のためにいろいろ頑張っちゃったりして、おまえらさっさと付き合っちゃえよ!と言いたくなることこの上ない。まあ、そんなドギマギを見て、ニヤニヤするのが楽しいんですけどね。
メイドの葉月さんや夏美とのじゃれ合いは、いつもながら楽しいですが、今回は椎菜が一気にきたなあ。混浴……じゃないんだけど、温泉でバッタリから、出るに出られないというお約束になっていくピンチのおかげで、椎菜が……ね。こっそりとやることやったりして、なかなかの抜け目なさを見せてくれましたが、ついに決意してくれたことですし、どうなっていくのか、不安もあり、楽しみでもあり。
一方、付き合ってるのか付き合っていないのかはっきりしない裕人と春香たちでしたが、少なくとも大切な人であることを認識させてくれる遭難イベントが良かったです。
夏美やら葉月やらの積極的な教えを、そのまま実行してしまう春香の天然っぷりには、我慢しなきゃいけない裕人の気持ちを考えると、クスクス笑いたくなりますが、信頼があるからこその温もりは、心があたたかくなりましたね。
あー楽しかった。特別何があるってわけでもないのに、読み始めたら止まらない魅力は相変わらずでした。
そういえば、このシリーズは、ドラマCD化 & アニメ化するらしいですね。春香の声を担当する能登麻美子さんが、作中に出てきてました。あこがれの人に出会う春香の上がりっぷりが楽しかったです。あのシーンこそ、アニメとかで見てみたいかも。
声優さんってほとんど知らないんですが、能登麻美子さんは、たしかマリみての志摩子さんの声やってましたよね?あー、なんか春香に合ってるかもしれない。ドラマCDとか聞いてみようかなと思ってたら、TVアニメ 乃木坂春香の秘密のサイトで、サンプルが視聴できてました。春香もいいけど、由香里のテンションが楽しいぞ。
うーん、買っちゃうか。
乃木坂春香の秘密 8
「実は裕人さんにお話したいことがあったんです」
「お話?」
「は、はい。お話というかお願いというか……」
「?」
「あの……」
「?」
「そ、その……」
「??」
「あ、あの裕人さん、こ、今度の日曜日……私と、その、デ、デ、デデデデートをしていただけないでしょうかっ?」
天然で、お嬢様らしからぬ秘密を抱えていた乃木坂春香を守るために、秘密を知ってしまった綾瀬裕人が、何かと世話を焼いていくうちに、だんだんと二人の距離が……という気恥ずかしくも、温かい気持ちになれるラブコメシリーズの第八弾。
今回は、春香と裕人の「初デート」と、メイドと執事が集まる親睦会に裕人が招待される話と、春香の妹・美夏に呼び出されて彼女の通う女子中学校に裕人が向かうお話と、最近様子のおかしい椎菜が怪我をしたというのでお見舞いにいくお話の四編からなるお話です。
いやあ、面白かったなあ。「デート」が初めてとは驚きましたが、そうかそうか、あれほど散々二人で出かけたりしてたのに、たいてい春香に何らかの目的があって、それに裕人が付き添うという形のお出かけだったので、デートしようという形になるのは初めてなのか。
ドキドキな密着を経験したのがつい先日というだけあって、いたって普通の遊園地模様なのに、クーとかなってしまう僕がいる。
そんなふたりのデートの合間に、以前登場した芸能プロダクション関係の茅原が、バレバレの策略を仕掛けてくるわけですが、まあ、それは置いておくとして、お化け屋敷、観覧車といったところで、お約束な展開を見せながら、胸の中がぽわっと温かくなるようなやり取りをみせてくれて、ほんと素敵でした。あとちょっとなだけに残念ではあるんですが、ま、このもどかしさがいいんですよね。
メイド×執事の親睦会話では、ようやく乃木坂家の序列持ちメイド全員集合かと思ったら、ちょっとした謎があるみたいですね。いずれこのお話も出てくると思うけど、そんなことより、ここでの裕人は熱かった。他人のために頭を下げることを恥と思わない心と、大切な人たちを馬鹿にされたら怒ることができるところが、裕人のいいところだと思います。
また裕人ファンが増えちゃったような気もするけど、まあ、彼女なら問題ないか。
美夏の学校へいくお話は、美夏とそのお友達の無邪気さがすっごいかわいいんだけど、無邪気すぎるぜ。こんなことに遭遇して、普通に対処できる裕人には、尊敬の念すら浮かんでくる。
何といっても、ここでは美夏がかわいいよねー。実は生徒会長だったという普段とのギャップもいいけれど、裕人を前にして、みっかみかにしてあげるんだから、と言ったときのシーンは、本気だったろうなあと思ってにやり。
まあ、お姉ちゃんの次にという気持ちだと思うけど(お姉ちゃんのものを取ろうとはしないだろう)、残念ながら裕人は春香ひとすじだしねー。
これは次の椎菜話でもいえるけど、お見舞いに来た裕人と話せることがうれしくて、ついつい引き止めてしまって、ふと寄り添ったり、思いつめた言葉を放ったり、「二度目」をしたりと、積極的なことしまくってるんだけど、まるで気づかぬ裕人よ、おまえってやつは……。ちょっと椎菜が可哀想に思えるけど、個人的には春香とにゃんにゃんしてほしいので、ここは我慢しやがってくださいと思ったり。
いやあ、楽しかった。
最後の最後で、一編目の問題が浮かび上がってきましたが、さて、春香はどうするんだろう。お父さんは許しませんよ、だと思うので、一大騒動になりそうで、続きがとても楽しみです。
乃木坂春香の秘密 9
「あの、できれば、ほんとに出てくれないかしら!」
「え?」
茅原さんはいきなりそんなことを言い出した。
「あ、あの、それって……」
「こ、言葉のとおり。十日後の二月十四日にあるオーディション本選に、乃木坂さんに本当に出てもらいたいの」
天然で、お嬢様らしからぬ秘密を抱えていた乃木坂春香を守るために、秘密を知ってしまった綾瀬裕人が、何かと世話を焼いていくうちに、だんだんと二人の距離が……という気恥ずかしくも、温かい気持ちになれるラブコメシリーズの第九弾。今回は、 春香が人数合わせでタレントオーディションを受けることになって、というお話。
人数合わせという話だったのに、いつの間にか……というのは何気にひどい話ですが、トレーニングを楽しそうにやってる春香を見たら、何も言えなくなってしまうあたり、裕人の思いが見えてきます。大事に思っているからこそ、その頑張りを遮りたくないってのはありますよね。
これまであまり自分から思いを見せなかった春香が、ちょっぴり積極的なところを見せてくれたりして、(エチュード最高でした)、二人の間がよりいっそう縮まったものを感じたから、ちょっとずつ距離が開けられていこうとするところは、胸に痛いものがありましたが、迷いながら、時に叱咤されることもありながら、自分の思いをはっきりと自覚して、前を向く裕人が恰好よかったです。流されていくことがないわけじゃないけど、芯があるから、みんなに好かれていくんでしょうね。
でも、その分、椎菜はちょっとかわいそうでしたけど。いい子すぎるせいか、どうも春香に塩を送っちゃうんだよなあ。あ、でも、接触という意味では、今回一番良い思いをしたかもしれません。春香だってあそこまでのことはやってもらって……ないよね?
個人的には春香のほうが好きなので、応援しにくいところではあるんですが、それでも椎菜には幸せになってほしいなと思ったりもする。
そういえば、「乃木坂春香の秘密」はアニメにもなったんでしたよね。今回はそれに纏わるネタが多かったように思います。声優さんのアフレコ話とか、へーと思いつつ読んでみたりしました。それにしても信長の妹・真尋ちゃんは可哀想度では、椎菜を上回るかもしれない。毎回ニヤミスおおかったけど、今回もまた……。
次巻では「報われないポジションナンバー1だったあの人のターンになる」らしいですが、さてさて、椎菜か真尋かそれとも……?
乃木坂春香の秘密 10
「あ、あー。そういえば結局、春香は何をお願いしたんだ?」
「あ、そ、それは……」
その質問に春香は少しの間もじもじしていた。はにかむような照れたようなかわいらしいためらい。だがやがて下からちらりとこっちを見上げて、
「え、えと……秘密です♪」
天然で、お嬢様らしからぬ秘密を抱えていた乃木坂春香を守るために、秘密を知ってしまった綾瀬裕人が、何かと世話を焼いていくうちに、だんだんと二人の距離が……という気恥ずかしくも、温かい気持ちになれるラブコメシリーズの第十弾。今回は、椎奈が動き始め、春香がだんだんと想いを自覚し始める(?)お話です。
今まで見向きもされなかった、というと語弊がありそうですが、なかなか自分を見てもらえなかった椎奈に、裕人が反応したのは意外でした。
まあ、暴君二人にいろいろ構われたってこともあるんだろうけれど、それ以上に恋する女の子の可愛さが、直撃したんだろうなあ。心が揺れたわけではなく、好意にドキっとしたんじゃないかと、そう思いたくなるのは、春香派だからでしょうか。彼女が今後どう動いてくるのか、大いに気になるところ。
一方、春香とのお話ですが、他愛もないやり取りに幸せを感じるシーンがとても良かったなあ。ただ二人でいるだけでいい、そんなカップルは見ていると心が温かくなります。
それでいて、春香の様子がいつもとちょっと違うように思えたのは、意識する思いが生まれてきたからでしょうか。夫婦ごっこだけでなく、恋占いのときの願い事や、最後に見せたちょっとした嫉妬など、変わってきたなとにんまりしてしまう。
ここに椎奈が入り込むのは、とても大変だと思いますが、好きな気持ちは抑えられないだろうから、きっと参戦してくることでしょう。そうなると、春香も自分の思いをもっと自覚してくるのでしょうか。
この先の恋愛模様がどうなるのかとても楽しみです。
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