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ネクラ少女は黒魔法で恋をする / 熊谷雅人
ネクラ少女は黒魔法で恋をする
内気で人と話をすることが恥ずかしく、ついついうつむいてしまう。そのクラサもあって、名前を読み替え「クウロマホ」―黒魔法―なんて呼ばれてしまう自分を何とか変えたいと思っていた空口真帆は、いつの間にかカバンに入っていた黒魔法の儀式を行ってみた。
まさか本当に悪魔が出てくるとは思わなかったけれど、何を望む?と聞かれたとき答えは決まっていた
「可愛くしてほしいんです」
悪魔が示した対価は「男と深い仲になることを禁ずる」こと。
お安い御用と頷き、契約は成立したが……
何かというと自分を卑下していたけれど、黒魔術を使って悪魔と契約し、生まれ変わったようになっても悩むことはある。悪魔のささやきに惑わされながら、少しずつ意識の変化が生まれていくあたりが、うまく描かれていたと思います。
わりと最初のほうで結末の一部が読めてしまうけれど、大してマイナスになりません。
それ以上に締めがきれいだったし、暖かい感じだったので個人的に高評価。
読んでるうちに幾度となくクスクス笑わせてくれるユーモアあふれる文章が素敵でした。
やっぱりいいね、こういうラブコメは。
この題材で続き物を書くのか、それとも別の物語を描くのか。
どちらにせよ、今後も楽しみな作家がまたひとり増えました。
第1回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。
ネクラ少女は黒魔法で恋をする 2
始業式。二年生になったわたしは演劇部に入る決心をした。わたしにとっては勇気を振り絞ることだったけど、あたたかく迎えてもらえた。でも、今、演劇部には廃部の危機が迫っているらしい。顧問の先生がおらず、新入生を入部させないと廃部になってしまうのだ。
少しでもみんなの役に立ちたいと思ったわたしは人集めの黒魔術を使うべく、夜の公園に向かったが、そこをちょっと不良な男の子に目撃されてしまい……。
前作できれいに締めていたので、どういう具合に話を持ってくるのかと思ったら、全員の記憶がリセットされた状態で、真帆だけが記憶を取り戻してしまったという展開。
これはつらい。自分の好きな人が、自分を覚えていないというのは、ほんとつらいですよね。気持ちが通じ合った瞬間があったとしても、覚えていないんだから。一度通った道を再び、というのは大変すぎる。
そんなネクラ少女の真帆が恋をされるという展開。自分の好きな先輩は自分を覚えていないけど、後輩は自分に好意を持っているということで、揺れる心が鮮明に描かれていて、とても良かったですね。
少しずつ前向きになる真帆の姿は、前作と同じように面白く、さりげないコミカルさも健在。演劇部員もいい味出してるよなあ。雛浦さん最高です。
今回の問題は解決したけれど、真帆自身の問題はまだまだ続きそうです。生徒会と演劇部の確執が気になりますね。
これは次作も楽しみだ。
ネクラ少女は黒魔法で恋をする 3
赤信号に引っかからなかったことはない、虫がくれば必ず狙われる、じゃんけんで勝ったことがないなどなど、些細なことだけれど、それが続けば、生まれつき不幸だという彼女の言葉もわからなくもない。
だが、真帆は気づいてしまった。転校してきた宮脇弥生の不幸の元が、悪魔の仕業であったことに。
このままでは彼女が危ないことになると、面倒くさがりな天使の長音先生の代わりに、宮脇弥生の悪魔について調査を始めたが……
今回も真帆のユーモアに笑わされっぱなしです。あの場面でドナドナを選ぶセンスがたまりません。ニヤニヤ笑いが止まらないワンシーンでした。
外ではアレですが、内に入ってくればそこは弁慶。楽しさに拍車がかかりますね。先生やらゴブリンやらとのやり取りが素敵に黒かったですが、妹とのやり取りはとても良かった。実はおねえちゃんを慕っていることが伝わってくるような描写に、ほんわかさせられます。
ちなみに今回最高のフレーズは「捨てたった」。
転校生に対して自分から動くなんて、今までの真帆じゃ考えられないことですけど、かつて自分が通った道を味あわせたくないという思いからなんでしょうね。自分の力の及ばぬことであっても、何とかしたいと動く姿がいいですね。
またひとつ、ちょっとだけ前向きになってきたかな。
ただ、いくらなんでも、包丁を手にした友人を放置して帰るのはどうかと。母親のこともそうですが、あそこで何もしない理由がちょっと思い浮かばないので、投げ出してる感を受けました。その後もサポートするのであれば、もうちょっと何か手を打ってほしかったなあ。
そういえば、ついに生徒会長が出てきましたね。どうやら一之瀬先輩との間にあったことは、かの女生徒が原因っぽい?そろそろもう少し明かしてほしいものだ。
個人的には、真帆には一之瀬先輩とうまくいってほしいと思っているだけに、誤解度がひどくなってるところにやきもきです。次はもうちょっといい目を見せてあげてほしいなあ。
ネクラ少女は黒魔法で恋をする 4
妹のプリンを食べたら、いつもより激怒されたので、こっそり黒魔法の呪詛を唱えていたら、火に油を注いでしまったらしく怒鳴りまくり、無視されるようになってしまった。何かとわたしに文句をつけてきてはいたが、ここまで怒るのは珍しい。
別に心配しているわけじゃないけれど、ちょっと興味を引くというか、気になるので、どうすればいいかと悩んでいたら……
という空口姉妹の喧嘩と仲直りを描いた「空口姉妹の気づかず傷つく絆」を含む四編からなる短編集です。
真帆、夏樹のお互いに対する心情が良いなあ。特に夏樹の複雑な心境はいいですね。お姉ちゃんが好きなのに、ついつい反発してしまうところとか、ちょっとしたすれ違いから気分を害したけど、彼氏に直接真意を尋ねることができない臆病さとか、ありふれていることかもしれませんが、伝わってくるものがありますね。不器用な真帆の解決策と、それに気づいた夏樹の魔法の言葉が素敵でした。
思わず微笑ましくなっちゃうオチは、お約束ということで。
「雛浦と大河内の日常的な非日常」と「弓ヶ浜と湊山の微妙な絶妙な関係性」は、脇役に焦点が当たったお話ですが、本編ではあまり見られない姿が見れるのは、楽しいですね。特に湊山の妄想よろしくなお話には、男子学生だったら何度も夢見たことだと思います。って、僕だけじゃないよね?
そのあたりも良かったですが、トリを飾る「空口真帆と仲間たちの夏」を読んで、やっぱり真帆の話が一番面白いなあと思いました。あの引っ込み思案の真帆が、演劇部の合宿に行くお話です。
今まで友達と出かけたことがなかっただけに、前日からのわくわく感がいいですね。楽しみ!って感じが伝わってきて、読んでるこっちまで楽しくなってきます。夏の出来事ってことで、花火とか海といったイベントもあって、普段とは違った部員たちとの交流がいいですね。
そんな楽しい気持ちも、先輩のちょっとした呟きとかで、暗くなっちゃうあたり、恋する乙女だなあ。恋のライバルが、いまや手に届かぬところにいる存在なため、いろいろ難しいところはあると思うけど、がんばれ!って応援したくなりますね。
いやあ、いいなあ。やっぱりこのシリーズ大好きです。悪魔とかそんなのどうでもよくて、日常的な話にとても惹かれます。最後の真帆の行動を先輩はどう思ったのかとか、いろいろ気になるところがあるだけに、続きがとても楽しみですね。
ネクラ少女は黒魔法で恋をする 5
ほんの数ヶ月前までネクラだったわたしは、大きく変わっていた。部活に入って友達ができて、初めての恋もしていた。ありふれた時間がとても楽しかった。そんなとき、わが高校の生徒会長が、突然話しかけてきた。「君が魔法を使うことは知っているよ」そして「死者を蘇らせる魔法に協力してほしい」と。
あまりのうさんくささに断った真帆だが、手伝うつもりがないならと、会長がとった手段によって、徐々に孤立する羽目になり……
しょっぱなから、今までを振り返るような描写があって、ああ、最終巻なんだなあという雰囲気がひしひし伝わってきますね。というわけで、ネクラ少女の成長物語の最終巻。真帆に黒魔法の手伝いをさせようとする会長の魔法により、真帆が再び過去のネガティブ思考に囚われていくというお話です。
変わろう、前向きにがんばろうという姿を見てきただけに、今までの真帆のがんばりが台無しになっていく展開は、読んでて辛かったなあ。悪い方向へと物事を考えてしまいながらも、それでも前を向こうとしていたのに、部活のとき爆発してしまったのは、一之瀬先輩が関係していたからなんだろうなあ。好きな人の言葉って、嬉しいことでも、苦しいことでも、一番心に突き刺さりますよね。このあたりの止まらない感情には、やるせない気持ちでいっぱいになりました。
自分のやったことに後悔しながら、悪魔のささやきに心揺らすところには、どうなることかと思いましたけど、自分を取り戻すきっかけになるのは、やっぱり一之瀬先輩なんだなってところに、恋の偉大さを感じますね。
今までと違った真帆を見ることができたのは、ここからだったかな。頼りになるおじさんの力さえ借りることができなかったのに、部活の最中に逃げた演劇部に、再び戻る決意をするなんて、どれほどの勇気を振り絞ったことか。壁にぶつかったときに逃げることなく、立ち向かうようになった成長を感じられるところが、幾度も見れてとてもよかったです。
良かったのは真帆だけじゃなくて、雛浦さんや三癒先輩などの演劇部員の真帆に対する言葉も素敵でした。部員として大切なのはもちろんのこと、信頼できる友人なんだよってことが伝わってくるシーンが、素敵に青春だったなあ。
個人的に印象に残っているのは、妹の夏樹とのやり取りですね。憎まれ口を叩くことはあるんですが、お姉ちゃんを応援する言葉が告げられるところに、じーんときちゃいましたよ。心が弱ってるときに、肉親から応援されるって、どれほどの心強さを持つことか。一巻のころは、妹との間に流れてる空気は、もうちょっと冷たい感じがありましたが、こういうところにも、変化を感じられて、とても良かったです。
ただ、微妙なところも多かったですね。今までのシリーズにあったユーモアがあまり感じられなかったし、なんか盛り上がりに欠けた気がしたのは、たぶん、黒魔法関係の話が、青春物語をぶった切ってる感じがあったからかな。結末に向けての過程はもちろん、あのラストも良かっただけに、青春物語をもっと中心に持ってきてくれれば……と思ってしまいました。
そのあたりは残念でしたが、最後のイラストの真帆の笑顔が素敵だったからいいか。あの笑顔で告白されたら……ねぇ?一之瀬先輩がどう答えたかは、とても興味津々ですが、あとは二人の間のことなので、にやにやしながら想像することにしましょう。
これでシリーズ完結とはちょっと寂しくなりますが、新たなシリーズでまた楽しませてくれると思うので、期待して待っていたいと思います。
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