ミスマルカ興国物語 / 林トモアキ
おバカなことをやっては、近衛騎士のパリエルに叱られる毎日を過ごしていたミスマルカ王国の王子マヒロは、ある日、父である国王に呼び出された。なんと魔人至上主義国家である帝国グランマーセナルが、侵攻をしてきたというのだ。反帝国同盟を率いるに際し、一時この国を離れねば国王は、マヒロにすべての権限を委ねたが、国王不在の間も、王子のおバカな行動は変わらずで……
これは面白い!
ぐーたらだけど、庶民には人気の高いおちゃらけ王子マヒロと、王子の近衛騎士たるパリエルのやり取りが楽しくて楽しくてたまりません。そりゃ、こんなおバカなことばっかりやってる人がそばにいたら、だんだんと地が悪くなっていくよなあ。はじめは丁寧に王子をボコボコにしてパリエル女史が、ヤンキー言葉でツッコむようになるところは、むしろ成長だと思いたい。ほんとこの二人のやり取りは楽しかった。
そういったユーモア溢れるシーンだけでも、十分楽しいんですが、戦記ものとしても、面白いんですよ。国王と名将が不在の中、帝国の先遣隊がやってきていることに気づいたときのマヒロの行動は、あまりにも意外で、あまりにも予想がつかなくて、次に何をやってくれるんだろうとワクワクさせられる。
その間にもおバカなことをやらかしてくれているんですが、民を傷つけないという理想を、理想のままにせず、追い求めるマヒロの姿には、熱いものを感じました。敵味方関係なく騙しきるハッタリや、ハッタリと思わせておいて……なものとか、ほんとこの王子は底が知れないと思わされるばかりです。
いやあ、面白かった。笑いと意外さと、最後には熱さを見せてくれる展開に引き込まれました。主となる二人のみならず、冷静沈着なメイドのエーデルワイスやら、今回敵対した帝国の姫ルナスも非常に魅力あふれる人たちで、ぜひとも続刊で登場してほしいですね。
パリエルとの間にある気持ちは、ちょっと複雑なものが混じっていますが、素直にお互いを思えるような、そんな仲になってくれると嬉しいんだけどなあ。今後どういう具合に発展していくか、物語の行方とあわせて、気になります。
ミスマルカ興国物語 2
「帝国軍陣地に、大規模な物資輸送の動き。またそれに伴い、敵陣に新たな将が加わったとの報告です」
「名のある将か?」
「ユリカ・美ヶ島・マジスティア……帝国第二皇女です。敵方は総大将を入れ替え、陣容を刷新するものと思われます。この十日以内に総攻撃に踏み切る可能性があります」
暴力を極端に嫌う、ぐーたらおちゃらけ王子のマヒロが、戦わずして敵を退けるかということに尽力を尽くす戦記ものシリーズの第二弾。今回は帝国との開戦に向けて、伝説の神器「聖魔杯」を探索するという任務を負う勇者の選別を任されたマヒロ王子が、行方をくらまして……というお話。
いやあ、楽しかった!
次にどんな行動をとるのか、さっぱり予測がつかないマヒロの突拍子のなさが、とても面白いこのシリーズですが、勇者の選別に追いかけっこを持ちかけるとは思わなかった。しかも、誰もが予想しないところに隠れるんだから、すごすぎる!
王子の近衛騎士たるパリエルですら、いくらマヒロでも……と思ってしまうんだから、たいしたもんです。っていうか、ただのバカにも見えるけど……。
あのゼブラーマンなフリーダムさは、王子という人間がやっちゃいけない一線を軽く越えてたと思います。よくぞ我慢したと、敵側の人を褒め称えたくなった。
で、その敵側たる帝国は、先日の第三皇女ルナスの姉、第二皇女のユリカがやってきたんですが、これはなかなかいい味出してた。剣ではなく知で戦うタイプのため、さすがのマヒロも、あと一歩のところからなかなか進めないようなところがありましたが、ちょっとした運と、そのとき使えるカードを、存分に利用しきる采配で、大ピンチを乗り切っていく姿が、ほんと痛快。
ただ、王子が、別行動でいろいろ動いていたので、近衛騎士たるパリエルとの掛け合いが少なくなっちゃったのが、物足りないかなあ。ひとり突っ走る笑いもいいけれど、ボケとツッコミの王道も好きなので。まあ、強烈な印象を残してくれるエーデルワイスの存在感というか、マヒロに対する冷たさは、今回も健在で笑わせてもらいましたけど。
今回マヒロと共にいいところを持っていった勇者のひとりが、また曲者ですよねぇ。隻眼・隻腕で、魔王を倒すために聖魔杯を手にしたいと、やや狂気的に願う男には、どんな過去があったのかと暗くなりそうなところがあるんだけど、能天気なシスター、エミット(お・り・が・みでいうなら、クラリカみたいなもん)が共に行動してくれるおかげで、いい方向に転んでくれそうです。
はじめはその態度から、アイドル勇者シーナやパリエルから誤解を受けることもありましたが、内面が見えていくにつれて、わだかまりがなくなって、「仲間」な空気を見せてくれるところが、すっごい良かった。
さてさて、一難去ってまた一難という展開が続いていますが、ひとまず帝国の進行に対して、猶予が与えられたと思っていいかな。次は聖魔杯のキーとなる紋章集めの旅が始まるようですが、帝国第一皇女の動きもいろいろ気になるところですねぇ。まあ、それ以上に、お・り・が・みとの繋がりも気になるところです。
そろそろ、何か見えてきてくれないかなあとワクワクしながら、続編を待ちたいと思います。
ミスマルカ興国物語 3
「……これこそ彼方中原において、帝国との戦を左右するものとしてその行方が取りざたされている神器、聖魔杯……その伝説を蘇らせるための鍵となる紋章なのです」
観衆の間を、驚愕のどよめきが駆け抜ける。パリエル自身も無論その一人だった。
「そんなっ……まさか!」
「……そうか。なるほど、そのとおりだ。面と向かって確認を取る必要はなかったわけだ。……やられたな」
暴力を極端に嫌うぐーたらおちゃらけ王子のマヒロが、戦わずして敵を退けるかということに尽力を尽くす戦記ものシリーズの第三弾。今回は聖魔杯の紋章を発見したというヴェロニカ同盟の元へ一行が向かったら、紋章がキャラバンレースの優勝商品にされていて……というお話。
裏方に回ったおかげで、マヒロの活躍はかなり地味だったと思うけど、敵がいい感じにクセ者であってくれたので(紋章をキャラバンレースの賞品とするんですから!)、駆け引きが面白かった。ポン!と膝を打つような逆転劇はなかったけれど、常に相手の一歩先を読むような展開は、気づかされたときに、ゾクっとくるものがありますね。
今回は、いろいろな人が決意をしたお話でもあったと思います。伯父の傀儡であった若干十二歳の当主チカが、ヴェロニカの理念を叫んだシーンは、もし目の前でやられてたら、思わず膝をついて忠誠を誓いそうなものがありました。その後の「真実」を聞いたときは、恐ろしいと思ったけど。
あと、これまで活躍度がイマイチだったパリエルも、力の片鱗を見せてくれましたね。彼女もまた覚悟を決めた人の一人でしたが、さて、この力は今後どこまで伸びていくのか気になるところ。
いやあ、面白かった。
最後のほうなんて、話し合いで物語が進んでいくのに、レースより興奮の展開でしたからね。ぎりぎりまで追い詰められてからの大逆転劇にニヤリです。
しっかし、敵に塩を送るとは、マヒロは何を考えているんだろう。第一皇女は楽しむ余裕があるみたいだけど、いつか歯軋りに変わったりするのかしら。このあたりの動向がとても気になります。
それにしても、エーデルワイス。あなたって人はどこまで完璧なんですか……。力があるのに、必要とあらば他人の名声すら利用する手腕には惚れ惚れしました。
できれば、もうちょっとハジけてくれたらと思ったりするんですが、彼女が動いたら、物語がすぐ終わっちゃうか。
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