マテリアルゴースト / 葵せきな
マテリアルゴースト
特に生きる意味を見出せないから死んでもいいなとは思っていたけれど、苦しく痛いのは勘弁してほしい。まさか車に撥ねられるとは思わなかった。幸い(?)大怪我ですんだものの、なぜか霊が見えるようになってしまった。しかも自分の半径2メートル以内に近づいた霊は、物質化してしまい触ることができるのだ!
そんな式見蛍は退院した直後に女の子の幽霊と遭遇し……
幽霊とはいえかわいい女の子。霊能力を持つ巫女。口は悪いけれど、だまっていれば美人の先輩。こんな三人に囲まれながら、恋愛フラグが立ちそうで立たないところがいじらしい。
何にでも冷めているようで、どこか熱いところを持つ主人公が遭遇する出来事は、都市伝説をうまく絡めた展開でなかなか面白い。ある意味ストレートな物語なので、安心して読めました。こういったどこかふんわりとした雰囲気の物語は好きです。
どうやら続編の構想もあるらしいので、大いに期待しましょう。
第17回ファンタジア大賞佳作。
マテリアルゴースト 2
先日、先輩に貸しを作ってしまったことで、フルコースを奢ることになってしまったが、どう考えたってそんなお金は搾り出せない。そうしたら事もあろうにあの先輩が譲歩してくれるというのだ!
思わず、あなたは天使だと持ち上げまくったが、先輩の一言に凍りついた。
「そこで、だ。お前には今日からバイトをして貰おうと思う」
先輩の笑顔の怖さに逃げ切れなかった僕はバイトをすることになったが……
死にたがりな人間が主人公なのに暗くないお話。まあ、今回は前作よりも死にたがり度少なかったけど。というより、このあたりに何かあるらしいけど、それは次作以降のようで。
それはともかく、わりと面白かった。展開としてはありふれていることだったり、あーこれはミスリーディングだなとわかったりするけれど、規定のことを基準値以上に仕上げてくる感じですね。
もうちょっと捻ってくれると、さらに盛り上がると思うんですが。
個人的にはところどころに出てくる掛け合いが結構好きです。ベタだけど。たぶん自分が考えたら同じ感じになりそうな気がする。思わずメモしたくなりましたよ。
前作はユウ、今作は鈴音が中心となった物語ということであれば、次作はひょっとして先輩なんでしょうか。傍若無人な先輩が落ち込む姿に萌えてしまった身としては、大いに期待したいところなんですが。
あ、でも次は鈴音の実家がからんでくるのかな。う~ん。どうなるんだろ。
マテリアルゴースト 3
鈴音がため息をついていた。どうやらお姉さんが来るらしい。そのことを聞いたとき、僕は以前にお姉さんの言葉を思い出した。痛くもなく、苦しむこともなく死ねる方法があるということを。
ちくりと痛んだりする胸を抑えて家に帰ろうとしたら、実家にいるはずの妹がいきなり突撃してきた。
ユウと同棲していることを知った妹と、妹に攻撃されているユウの視線という針の筵に晒された僕は……
鈴音のお姉さん、深羅が中心となる物語。ひょっとしたら先輩が中心になる話かなと予想していたんですが違いました。先輩は先輩のままかもしれない。ああ、残念。
ブラコンな妹と美少女な幽霊と巫女なクラスメイトに囲まれながら繰り広げられる会話は、相変わらず面白い。平凡でありながらツボをついてくるセンスにやられてしまいます。爆笑ではなく、プッとかくすくすという笑いですが、それが止まりません。実はにぶいのは、蛍だけでなく、ユウも鈴音も同類であることが判明。これじゃ進展しないわけだ。うん。
そんなコミカルなところに目を奪われていると、いきなり驚かされるのがこのシリーズの特徴でしょう。妹の話は本気で驚きました。薄い伏線でしたが、他の部分を併せると、これはドンピシャな気がします。いや、うまいなあ。泣かせどころも、あざといけれど、きっちり見せてくれますね。
個人的には、深羅さんにやられました。才能があり、クールに物事を進めるけれど、妹との距離のとり方についてはちょっと苦手という深羅さんの態度に思わず微笑みたくなりますね。耳ぴくぴくサイコーです。
そういえば、ついに蛍の死にたい理由や死ぬ方法が提示されましたね。大風呂敷な話ですが、かなり大事のような。想像しにくいというか、想像できるレベルを超えてる気がする。
事が事だけに、今後の展開が現在のようなコミカル中心でいけるのか、このあたり注目したいですね。
マテリアルゴースト4
自分が死にたがる理由がわかり、だからといって、何が変わるわけでもないけど、少しだけ気持ちが楽になったのは、仲間がいてくれたからかもしれない。そんなとき、蛍は帰宅部の最後の部員、耀に出会った。どことなくユウを思い浮かばせる性格がなんとなく気になり、さらには耀の友人のヘルメスという美少年が、いつの間にか面子の中に入ってきて……
死にたがりの理由がわかったことで、ちょっと余裕のある感じがいいですよね。いつもどおり騒ぎつつ、ユウとは意識しすぎて、たまにギクシャクする様子がなんとも微笑ましい。
「死にたい」から「勘弁してくれ」に口癖を変えた蛍を、まさかこんな事態が襲うとは思いませんでした。蛍にとって、ユウのいる位置に誰かが入るということが、これほど罪悪感を持たせるとは思いませんでした。いつの間にか、大きな存在になっていたんですね。ユウにとっても、蛍は大事な人であるだけに、ヘルメスに告げられた言葉で、動けなくなる気持ちがよくわかります。
すれ違いから始まった二人の間の亀裂が、少しずつ大きくなっていく展開は、何とも言えないぐらい辛いです。
今までとは違った心境から、蛍が周囲に対して当り散らす姿は、なんだかなあと思いますが、物事から逃げていた蛍が、正面から向き合うことを決意したところは、とても良かったです。
「それって、なんか重要な話?」には、思わず、プッとなったけど、そうだよなあ。関係ないよなあ。
最後はとてもいい感じで、ハッピーエンドになったかと思いきや、まさかまさかの展開にびっくり。え、え?と思ったけれど、そうか、彼女がいたか。激しくバッドエンドっぽい感じですが、これからいったいどうなるんだろう。
次作は短編で、その次の長編が最終巻らしいので、とても楽しみです。
マテリアルゴースト 5
神無鈴音にとって片思いの相手。ユウにとってのパートナー。陽慈にとっての親友。綾にとっての幼馴染。傘にとっての大切な兄。そして、紗鳥にとっての後輩である式見蛍が死んだ。ふとした拍子に後輩を思い出し涙する紗鳥は、寂しさを紛らわすために拾った黒猫を飼うことにした。
だが、タナトスは次なる手を打ってきた。全世界に向けて、メッセージを告げてきたのだ。皆さん、自殺してください、と……。
蛍が死んで、みんなが悲しみに浸る中、タナトスが新たに仕掛けてきて、という最終巻です。なんていうか、このコミカルなシリーズで、こんなに重苦しい雰囲気に包まれるとは思いませんでした。普段、無駄に(といったら何ですが)陽気な連中だけに、空元気を発してるところとか、見ていると辛くなります。
深螺側の話は、比較的早く想像ついて、予想通りな感じでしたね。そこからは、わりといつもの雰囲気になったので楽しめました。やっぱり、会話のツッコミセンスは、ツボです。悲しいときでも勢いに乗せるものがありますね。
蛍がいろいろあって、とりあえずこちらにいるんですが、最後の戦いに赴く前の各人との最後の一日の過ごし方が、個人的には良かったです。
誰が選ばれるかなんてことは、表紙を見た瞬間にわかってしまうので、ネタバレでいきますが、一番印象に残ってるのは、先輩とのやり取りですね。お互い思いあいながら、最後まで手を取り合うことがなかったというのは、何とも皮肉というか、切ないものがありますが、それでも、このふたりが出会えたからこそ、今の仲間がいるんだなと思えるところが、たまらなく良かったです。なんで、これで先輩を選ばない……バカ。
「帰宅部」の人たちの繰り広げる雰囲気やとてもよかったせいか、逆に最後の戦いなどが、妙に長く感じてしまったんですが(戦いよりも普通の話のほうがテンポがいいって不思議)、きれいに物語を終わらせてくれましたね。
最後まで同じノリで、でもちょっと切なくさせてくれる描写が素敵でした。
いやあ、面白かった。キャラの掛け合いっぷりは、文句なしでツボですね。ストーリィ展開は、時折微妙なところがあったんだけど、さりげないエピソードとかが素敵に補ってくれたりして、読んでて楽しかったです。
先輩の今後が気になるだけに、これで物語が終わりというのは残念ですが、次にまた、素敵な物語を届けてくれることを期待しましょう。
マテリアルゴースト 0
蛍の目の前に、メイド姿をした神無深螺が突然現れた。どうやら夢を強制的にリンクさせて登場したらしい。いったい何かと思ったら、散々迷惑をかけてきた式見蛍に、恩返しをすべきだ。相手が男なら、萌えさせろ、萌やしつくしてしまえ。という父の言葉を真に受けて、蛍を萌えさせるべくメイド姿をしているのだとか。
さらに、ユウ、さん、先輩、鈴音を引きずり込んできて、誰が一番、蛍を萌えさせることができるかという勝負が始まって……
という「夢見る少女じゃ、結構いられる」を含む六編からなる短編集です。いやあ、面白い。この人の笑いのセンスは、ほんといいですね。爆笑ではなくて、ニヤニヤ笑いがとまらないんですよね。蛍が一番のツンデレだったことが、ありありと伝わってきます。
初めの三編は、学校の七不思議を追うことになったり、蛍が風邪で寝込んでるときの騒動だったり、幽霊屋敷へ探検に行ったりと、ユウに振り回される蛍という、いつもの二人の日常的なお話でした。いつもどおりで、ちょっと物足りないものがありましたが、笑いだけじゃなく、最後にしんみりさせてくれるところは良かったです。
残りの三編のうち二編は、鈴音と蛍の出会い、紗鳥先輩と蛍の出会いという出会い系(別の意味に思える言葉だなあ)のお話でした。
自信を持てず、引っ込み事案だった鈴音が、名前も知らなかった蛍とケンカしてしまって、でも言い合えたことからわかることもあって、蛍の優しさを感じて、という展開は、ああ、いいなあと思えます。鈴音からしたら、まさに人生を変える出会いだったんですね。
紗鳥先輩と蛍の出会いもまさに同じで、心で思っていることとは裏腹に、表ではおしとやかにしていた紗鳥が、蛍と出会ったことで、肩の力を抜いていくという展開は、とてもよかったです。まあ、蛍をやり込める快感を覚えてしまったからなんですが、くつろげる相手がいるというのは、大切なんですね。
そして最後があらすじにも書いた蛍を萌えさせる話。これは素晴らしすぎでした。なぜ萌えさせるんだという話はおいといて、誰が一番、蛍を萌えさせることができるかという勝負の面白さったらないです。クールに決めていた蛍が、先輩、ユウ、妹、クラスメイト、クラスメイトの姉の仕掛けに、ドギマギしまくるんですからね!
特に一番手の先輩の仕掛け。最高でした。あざとかろうが、計算尽くしだろうが、僕なら文句なしで、優勝者は先輩を選びます。はい。
意外な一面にやられたり、まさかの行動に唖然としたりと、皆が皆、蛍のツボをつくところは、楽しかったです。
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