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魔法の庭 1 風人の唄

氷姫イザモルドの呪いによって、大地は次第に凍っていた。呪いをとくために、東から来たという鋭い目をしたシリエンは、アストラに氷姫のところまでの道案内を依頼してきた。ただのうたびとでありながら、氷姫の魔法の庭に、奇跡的に足を踏み入れたうたびとのアストラに。
彼の竪琴の響きに胸を打たれ、うたいたいという思いが、再び心を駆け巡ったアストラは、北方の音楽を知るために、シリエンと共に氷姫の魔法の庭を目指すことにして……

妖魔の王シリエンと、うたびとのアストラが、氷姫イザモルドを探す旅に出て……という、名前とうたが重要な意味を持つ世界のお話ですが、何といっても、はじまりがいいですよね。
生まれ育った南方では、禁忌とされていた北方のうたに惹かれて、そのために追われることになってしまったアストラが、うたいたいという思いを胸にするところが、とても良かったです。この気持ちを引き出したシリエンの言葉と、奏でる竪琴の音色も素敵でした。雰囲気が絶品。

アストラの音楽に対する興味と好奇心と真摯な態度は、個人的にいいなあと思って読んでましたが、人としても優しいところが随所に感じられましたね。サーライのエイーシャのときは、たぶん、シリエンだけだったら、こじれにこじれたんじゃないかなと思ったり。

このサーライでの話は、非常に音楽的で、読んでるうちに、周囲の音がすべて消えて、物語の中で奏でられてる音が聞こえてくる感じがしました。ああ、もう、この唄が聞きたい、この音楽を聴きたいと、切実に思いましたね。

尊大で傲慢な態度がとても似合ってるシリエンでしたが、アストラと行動しているうちに、何ていうか、親しみ易くなってきてますよね。何があるってわけではないのに、二人の会話が面白い。物怖じしないアストラが、シリエンの態度にむかつきながらも、心の内では憧れているところもあるという関係が素敵でした。

謎な存在であるシリエンの昔のことなどが少しだけ描かれてていましたが、どれほど昔の話なんだろう。雰囲気的には、人というよりは神の領域な感じですが、気になるところですね。
全三巻とのことなので、続きがとても楽しみです。

魔法の庭〈1〉風人の唄 - 妹尾 ゆふ子

魔法の庭 2 天界の楽

寒さのせいか、何かに見られているような幻覚があった。その様子を見たシリエンに問い詰められて、アストラはしぶしぶ自分の幻覚について話した。目が自分を見ていた、と。その話にシリエンは、足を速め始めた。
おまえは、<百の塔>の追っ手に見つかったと言って……

大地を凍らせる呪いをかけた氷姫に会うために、雪と氷の世界を旅するアストラとシリエンのお話ですが、今回は、追うものの姿に動揺したアストラを不審に思ったシリエンが、アストラの過去に触れて……というお話です。

かつて、風の塔で随一と言われていたうたびととしてのアストラが、物思いに浸っているところのシーンのなんと美しいことか。文による風景の描写とイラストがあまりにも素敵で、繰り返し読んで、見つめてしまいました。

自分を狙うものがいるのに、頑なに相手を殺すことを拒絶するアストラが、何とも不思議だったんですが、過去の話を読んだらわかる気がしましたね。大祭で闇の御子役を勤めたことで、禁忌となっている神謡に触れて、その力に惹かれてしまうところは、何とも危うく甘美なものが伝わってきます。「うたいたい」という気持ちが、これほど強烈に響いてくるとは思いませんでした。

個人的に印象的なシーンは、アストロの中にある力が暴走しそうなとき、幻の女が音楽を奏でるところですね。荒々しい気持ちが収まったあと、自分に言い聞かせながら、それでも消えることのない思いと、アストロの涙が忘れられません。

なるほど、これで北の音楽を目指すことになったのかと頷いてしまいましたが、アレを忘れてくるなんで、うかつにもほどがあるぞ、アストロ……。そりゃ狙われるわけだ。ナパールのことを思うと、抉り取られるような痛みを感じますが、このあたりどうなるんだろうなあ。

ともあれ、これで、ようやく、原点ともいうべきところに、たどり着くことができました。今までどちらかと言えば、足を引っ張っていたアストラですが、例のうたを考えると、活躍できそうですね。いや、そんなやさしいものじゃないかもしれないけど。
氷姫との対峙がどうなるのか、楽しみです。

魔法の庭〈2〉天界の楽 - 妹尾 ゆふ子

魔法の庭 3 地上の曲

たしかに見覚えがある。だが、かつて訪れたときよりも色あせて見える。ほんとうに、ここに氷姫が眠っているのだろうか。疑問を抱えるアストラの前で、シリエンは氷姫に呼びかけた。それも己の本当の名を告げて。
やがて、目の前に青い薔薇が現れ、アストラたちは、イザモルドの意識に包まれたが……

最終巻はイザモルドと、彼女の唯一の友人である薔薇の切ない物語から始まるお話でした。

ああ、もう、何て孤独なんだろう。力を封じたにもかかわらず、他の人から避けられ続けたイザモルドの気持ちを考えると、胸が痛くなります。父である王と謁見しても、目すら合わせてもらえないところなど、幼いころから愛情ひとつ注いでもらえない境遇には、涙を誘われるものがありました。

彼女が唯一、心を慰められるのが、庭に咲いた青い薔薇で、いつしか薔薇も意識を持つようになったけれど、それゆえに、応えることができない自分が歯がゆかっただろうなあ。彼女のためを思って、禁を犯しているとわかりつつ、意識の声を放つ姿には、胸を打たれるものがあります。

イザモルトの孤独を癒したハルンラッドの言葉は、本当に素敵でしたね。イザモルトが自棄にならず、生きようと思ってくれたのは、間違いなく彼がいたからこそでしょうね。戦争によって、二人の間が離れざるを得なかったシーンでは、涙が浮かんで仕方なかったです。

これほどの仕打ちを受けたなら、己の力を取り戻したイザモルトが、呪いをかけてもしかたないと思いましたが、まるで違ったんですね。恨みから呪いをかけたのではなく、大地を、人々を愛したからこその呪いだったなんて。
「吹き荒れよ、北風の王!凍りつけ、我が大地!」
この言葉の意味が、一巻のときとは、違って聞こえてきました。むしろ心の叫びだったんだなあ。あぁ……。

この圧倒的な物語に心奪われていたおかげで、もうひとつの神同士の戦いには、ちょっと乗り切れないところがあったんですが、アストラが父と出会い、母と話、再び竪琴を手に取る終わり方は良かったですね。

エピローグで、アストラの母がエイーシャと出会うところは、何とも温かいものを感じられましたね。このあと、ふたりがどんなことを語り合ったのか、とても興味深いものがありますね。

第二巻の終わりでは、あとは氷姫と出会うだけだと思っていたのに、どうしてどうして、最も長いお話でしたが、読み始めたら、そんなことが気にならないぐらい引き込まれる物語でした。あーよかった。大満足。

出版社が倒産されたということで、書店には並んでおりませんが、もし古本屋等で見かけたら、ぜひ手にとって見てください。素敵な世界が待ち受けてますから。
オススメ!

魔法の庭〈3〉地上の曲 - 妹尾 ゆふ子
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