Home > Series > 宮廷神官物語

宮廷神官物語 / 榎田ユウリ

To the Navi

宮廷神官物語―選ばれし瞳の少年 (角川ビーンズ文庫 39-4) - 榎田 ユウリ

天におわす神が遣わす者というという慧眼児がいるという噂を確かめるために、神官である鶏冠が、空気と眺めばかりはいい田舎のハシバミの村へと向かっていった。ところが出会ってみれば、天青と名乗る少年は、可愛げのまるでない子供だった。本当に、慧眼児かと疑問を覚えながら、鶏冠が王の元へ連れて行くべく、村を出ようとしたら、鶏冠の護衛官が刃を振り上げて……

神話の子供たち」で極上のファンタジーを魅せてくれた榎田尤利さんが、榎田ユウリと名を改めて、新たな物語を届けてくれました。

人の悪しき心魂を看破する眼―額に目を持つという慧眼児の噂を聞きつけて、若くして誉れ高い宮廷神官の地位を授けられた鶏冠が、田舎の村で慧眼児かも?という悪ガキの天青と、彼を守ろうとする曹鉄と共に、都へと向かったら、彼らを狙うものが現れて……というところから始まる中華風ファンタジーですね。

禁欲が美徳とされ、感情すら高ぶらさないことを求められる神官なのに、女みたい、と言われると、青筋を立てて迫ってくる鶏冠と、小生意気だけど、打ち解けてくると素直な可愛げのある王青の軽快なやり取りが楽しいです。

周りからだと、仲の良い兄弟みたいに見えるじゃれあいでしたが、内面でもだんだんと打ち解けていく様が見えましたよね。お高く留まっているかのようで、王青のために体を張った行動を取る鶏冠の姿や、他人のために思い切った行動を取れる王青の姿は、お互い感じるものがあったんだろうなあ。

危険こそあるけれど、意外な出来事があったり、驚きの発見があったりと、楽しい旅路だったんですが、田舎村の外の世界には、楽しいことばかりでなく、身分の違いという現実が描かれるところは、辛いものがありました。
母なるものが、娘を守るために命を賭け、命を奪ったものは、身分の高さから罪の意識ひとつなく過ごす。
ただ耐えるしかない者たち、絶望にとらわれていた娘を見るのは、悲しみと怒りがない交ぜになる思いでしたが、激情を沈め、人々の思いを救った鶏冠の言葉は、心に響くものがありました。こういう繊細な描写は、やはり素敵です。

王子が何たる人だとかいうところは置いといて、大神官になろうとする者たちの私利私欲に満ちた陰謀から、絶体絶命のピンチに陥ったときに、天青が感じた苦しさは、何ともいえないものがありました。自分の身でなく、自分を必要だと言ってくれた人が倒れてるんですから。

それでも、まっすぐに見つめた瞳があったからこそ、最後の壮大なシーンが生まれたんだろうなあ。涙がキーとなるのは、王道ではありますが、心に染み入るものがありました。
っていうか、柘榴婆は全部知ってたんだろうなあ。初っ端の登場のときも、欲深に見せかけて、天青を大切にしてるっぽい感じがあったので、良いキャラしてるなと思ってたんですが、いやはや、侮れないったらありゃしない。

いやあ、面白かった。いつの間にか、天青と鶏冠の間に芽生えていた絆の強さが素敵でした。ひとまず、例の件についてはお預けなものの、どうやら宮廷で共に過ごすことが認められたようなので、これから天青がどんな騒動を引き起こして、鶏冠がどうフォローしていくのか楽しみです。

いつの間にやら天青についてきて、子虎と名づけられた小さい虎が、何気に好きなんですけど、次はちょっとやんちゃになってくれてると嬉しいなー。

宮廷神官物語―選ばれし瞳の少年 (角川ビーンズ文庫 39-4) - 榎田 ユウリ

To the Navi

宮廷神官物語 少年は学舎を翔ける

宮廷神官物語少年は学舎を翔ける (角川ビーンズ文庫 39-5) - 榎田 ユウリ

王宮に来てから二週間。天青は、いよいよ神官書生として、学舎へ赴くこととなった。宮廷内では天青に手を差し伸べられない鶏冠は、ほとんどが貴族で固められる学舎で起こる騒動を懸念していたが、そんな親心(?)を天青は気にしない。そして鶏冠の懸念は現実となった。身分を重んじる書生たちは、徒党を組んで天青に嫌がらせを仕掛けてきたのだ。
姑息な嫌がらせを受けても、負けるもんかと乗り切っていた天青だが、あるとき、天青の言葉よりも、いじめを仕掛けてきている笙玲の言葉を、鶏冠が信じたことにショックを受けて……

人の悪しき心魂を看破する慧眼児の持ち主たる天青と、若くして誉れ高い宮廷神官の地位を授けられた鶏冠が、宮廷内で交流を深めていくお話の第二弾。今回は、天青が学舎へ足を踏み入れたら、同級生たちの嫌がらせが待ち受けていて、というお話。

能力ある新人がいじめられるとは、オーソドックスではありますが、いじめ問題よりも、それを受けての天青と鶏冠の間に見える思いが、なんともいじらしい。

贔屓していると思われないよう、厳しくあたりながら、裏では、天青のために、温かい食事やら毛布を差し入れたりするあたりが、鶏冠らしい不器用さを感じますね。曹鉄を介して差し入れするので、天青からは感謝されないとは、何とも貧乏くじでやるせないですが、それでも、たとえ天青に良く思われなくても、彼を守るためならと行動する姿が好きだなあ。

一方の天青は、いじめよりも、鶏冠がかまってくれないことに膨れてましたけど、鶏冠にも事情があるんだよ、とはさすがに察せないよなあ。このあたりのすれ違いに、やきもきです。それでも荒まなかったのは、曹鉄と、何より子虎の温かさがあったからでしょうね。寒さに震える夜に、ぬくもりを与えてくれた子虎に、グッジョブ!

とまあ、学舎でいろいろあるうちに、宮廷内では、十二年前に、側室の延殊の処刑されたのは、実は聡明な延殊を疎んだ貴族たちの罠だったのではないか、という問題が浮かび上がってきて、藍晶王子や鶏冠が調査を始めるうちに、延殊の娘・櫻嵐と出会うんですが……、何この格好よさ。姫とか弱さがまるでなく、生き延びてきたものとしての強さに痺れまくりです。この人には、今後もぜひとも活躍してほしいなあ、なんて思ったり。

いやあ、面白かった。慧眼児としての恐ろしさを始めて実感した天青を、親愛で包んだ鶏冠の温かさがとても素敵でした。孤独になどさせない、と言い切った鶏冠の言葉が、胸に沁みいります。立場を考えると、今後もすれ違うことはあるだろうけれど、この温かさがあれば、きっと大丈夫でしょうね。
いつの間にか、書生たちが、天青色に染まってるところに、頬が緩んで仕方ない。

宮廷神官物語少年は学舎を翔ける (角川ビーンズ文庫 39-5) - 榎田 ユウリ

To the Navi

宮廷神官物語 渇きの王都は雨を待つ

宮廷神官物語  渇きの王都は雨を待つ (角川ビーンズ文庫 (BB39-6)) - 榎田 ユウリ

「よくない知らせだ」
王子は文から目を上げて言った。
「天青が何者かに拐かされた。一夜経ったが、まだ見つかっていない」

人の悪しき心魂を看破する慧眼児の持ち主であるお子様の天青と、若くして誉れ高い宮廷神官の地位を授けられた青年の鶏冠が、宮廷内での交流を深めていくお話の第三弾。今回は、王都が水不足に悩む中、町へ出かけた天青が誘拐されて行方不明になったと思ったら、大国・淘国の大使が慧眼児に会わせろと言い出して……という話。

ああ、こうやって成長していくんだなあ。
元気良すぎてあれこれ町を探索している間に、誘拐されてしまうところが、なんとも天青らしいですが、町の人たちの様子から、それまで深刻に考えていなかった水不足という問題を認識していくのを見ると、決して悪い出来事ではなかったと思います。まあ、無事だったからいえることですけど。
誘拐されたにもかかわらず、町の人のために何とかしようと、知恵を働かすところが、とても天青らしい。

そんな天青の状況は知らず、行方不明ってことで心配になった鶏冠が、自分の姿で動けないならと、あれほど嫌がってた女装をしてまで、町を探し歩くんですから、いやはや、天青を思う気持ちが伝わってきますね。
見つけて叱りつけたシーンを見てると、どれだけ大切に思ってるか伝わってきて、天青の涙と一緒にじんわりしちゃう。

外がそういった状況なのに、貴族たちは相変わらずな生活をしていて、そこをなんとかしようとする王子と、うるさい王子をだまらせようとする貴族とが、いろいろ謀略を練りあってるのはいつもどおりなんですが、王子に気に入られていることで、何かと狙い撃ちされる鶏冠が哀れでしょうがない。

といいつつも、個人的にはもうちょっとドロドロあってくれるとうれしいんだけどなあという思いはともかくとして、一番印象に残ったのは、逃げることもできず、さりとて立場上逆らうこともできない鶏冠が、雨乞いの儀という死と隣り合わせの儀式を行わねばならなかったときのシーンですね。自身が倒れそうになりながらも、民のためを思い、そして何より天青のためを思って見せた笑顔に、彼の心の強さを感じました。

いやあ、面白かった。急展開とかそういうんじゃないんだけど、天青と鶏冠が二人で過ごすときの雰囲気に安らぎを感じて、こちらまで愛しい気持ちになれます。
今後も、いろいろ気に食わない輩が、何かと手を出してくるでしょうけれど、この二人の信頼関係を壊すことはできないだろうなと、そう思いました。

さて、裏でまたきな臭い動きがあるようですが、次は何がおきるのか楽しみですね。

宮廷神官物語  渇きの王都は雨を待つ (角川ビーンズ文庫 (BB39-6)) - 榎田 ユウリ

Home > Series > 宮廷神官物語

Page Top

Search
Recent Entries
Profile
  • id: deltazulu (deltazulu@booklines.net)
  • PageView:

Page Top