狂乱家族日記 / 日日日
狂乱家族日記 壱さつめ
閻禍。それは破壊の化身であること。ゆえに殺されたもの。だが、その閻禍の子が現代に蘇ったことが判明した。DNA 検査の結果、閻禍の子と予測されるものは 6人。だが誰が閻禍の子かははっきりしない。ならばまとめて観察したほうがよいという思惑で集められた閻禍の子。
天上天下唯我独尊。絶対正義の倣岸不遜なネコ耳娘「乱崎凶華」
ぬくもりを知らずに育った孤独人形「乱崎優歌」
心と体に葛藤を抱えるさすらいの麗人「乱崎銀夏」
最強の陸戦型生物兵器黒の十三番「乱崎雹霞」
誇り高き褐色皇帝の最後の血族「乱崎帝架」
謎のクラゲ「乱崎月香」
そして大日本帝国超常現象対策局に勤める乱崎凰火 - 最強の対怪異部隊を率いる男 - の任務は、凶華と結婚しお父さんとして、その子らの家族となるべく共に住むことだった…。
血の繋がりのない家族。だがこれほど家族してる家族があるだろうか。家族の困難をみなで助け合って解決していく物語は、面白い。ほんとに面白い。
今まで読んだ日日日作品の中で、ダントツにエンタテインメントしてました。
狂乱家族日記 弐さつめ
「知らないならば覚えておけ。八月二日は伝統的に新婚旅行の日だ」
そう宣言し、旅行の手配を勝手に済ませたのは当然のことながら凶華。なぜか、家の玄関を開けたら目の前には滑走路が……。呆れる凰火をよそに、家族を乗せた旅客機は花の都パリへ出発する。
……はずが、凶華のせいで墜落し、たどり着いた先は無人島だった……。
前作にひきつづき狂乱な家族の物語。今回の焦点は……誰だ?雹霞か優歌か、それとも月香か。危機に陥ったのはまたもや優歌。そのとき放たれる凶華の言葉。
家族が危機にさらされているときにすら狂乱できないような人間が、人間なものか! 奇跡をおこせる人間なものか!奇跡をおこさねば助けられない娘を助けるために、 いくらでも奇跡をおこしてやるのが親だ!人間だ!
相変わらず熱いぜ。
馬鹿馬鹿しいまでのやさしさは絶対に欠かせない。
ただ、前作があまりにもハマっていたため、同じテンポである今作はちょっと見劣りする。もうちょっとひねりが欲しいかな。十分楽しいし面白いけれど、日日日ならという期待の大きさから、そう思っちゃうのかもしれない。次作に大いに期待しよう。
狂乱家族日記 参さつめ
凶華は不機嫌だった。凰火が知らないうちに出かけたからだ。どこにいったのか。
千花の証言:「知人に会ってくるって言ってたけれど。珍しくおめかしして」
優歌の証言:「そういえば今日は女のひとに会うって言っていたよ」
凶華の怒りは神の怒り。神の怒りは世界を壊す。
向かった先で出会った女性は、元、凰火と同じ職場の人間で……。
「あなたの顔面を破壊します」
千匹の怪物を殺すことで得られる称号を持つ「死神三番」
「お姉ちゃん、見ぃつけた!」
凶華を姉と呼ぶオデッサ = エイ。
謎の存在
そして戦争が始まる……。
ただでさえキャラが多いのに、また新キャラが登場したんですが、これがまた存在感ありすぎ。家族たちが全然目立ちませんから!いや面白いからいいけど。前作でちょっとパワーダウンしたかと思ったけれど、復活ですね。
本作では少しだけ凶華の生い立ちが明らかになりましたが、なるほどねと。そういうことかと。ただ、まだまだわからないことは多い。それにスポットライトがあたってない家族もいるのだ。
これから如何に物語がつむがれていくのか楽しみですね。
相変わらずのハイテンションエンタテインメント、シリーズでした。
ちなみに本作の一番のポイント。
「……凶華様をここまで弱くしたのは間違いなく貴様だ」
いやあ、こそばゆくてたまらないね!
狂乱家族日記 四さつめ
かつて雹霞を造ったという Dr.ゲボック。死んだはずなのになぜか目の前にいる。しかも狂気に取り付かれたまま。
「十三番がどれだけ成長しているか見にきたんですョ?」
攻撃を避けるために、凰火を抱えて飛び込んだ先にその娘はいた。
その優しく澄んだ瞳をみると、脳が、精神プログラムが痛いのはなぜだろう……?
今回は雹霞と千花が中心となる物語。
出会った女の子が気になる存在となって、今の自分はどうなっちゃったんだろうと迷ういつもと違う感じの雹霞がとてもいい具合に描かれてて、相手側の女の子も微妙な関係をうまくかもし出してくれて、非常にいい感じ。さりげなく応援する狂乱家族も微笑ましいことこの上ない(除く凶華様)。
ちょっと悲しい展開とドタバタがうまいよなあ。
それともうひとつ。千花の物語。
今までとは異なり、宮姫ではなく狂乱家族として学校へ行くことの不安が、鬼だけど弱い千花の心が意外にも繊細に描かれてたりする。
そんな千花に掛けた凶華の言葉。
「どうして恋をするのに相手のこととか家族のこととか考えねばならんのだ?」
ここから繋がる一連の投げかけが今回の熱い言葉 No.1 でしょう。いや、それよりも月香が弟に投げかけた言葉のほうが熱いか?迷うほどの直球に胸が高鳴ります。
さらにさらに今まで信用していた超常現象対策局に忍び寄る不安。これだけ混ざり合えば、そりゃ今までのシリーズ最高の分厚さになりますよ。面白かったのでまったく苦になりませんでしたが。
新たな局長、平塚雷蝶の思惑とはいったい何なのか。
今後も目が離せません。
狂乱家族日記 伍さつめ
乱崎家の面々は、どこか浮かれた表情で電車に乗っていた。目的地は世界七大動物園。
凰火としては家族の平和を乱そうとする雷蝶の陰謀も気になるところではあったが、家族をほうっては置けない。
だが、実のところ、雷蝶は乱崎家だけに構っているわけにはいかなかった。先日起きた半獣事件を上回る出来事が勃発していたのだから……。
う~ん。いつもほどの爆発力が無いような気がしますが、続きものとなってしまったことで凶華の暴走的解決シーンが見られないことが原因かなあ。本作だけではわからないことが結構あるし。
今回は帝架が中心となる物語。ひょっとしたら月香もかな。
かつてシャクヤと呼ばれていた帝架が、今ほど落ちついてなかったというのは意外な気がします。優しさは変わってないですが。友人とも言えるマダラ(ライオン)のツンデレさが素敵。
マダラの気持ちも分からないでもないけれど、失望というよりは嫉妬なんじゃないかなあ。大切なものを見つけた帝架に対して。自分だけが知っていた帝架ではないことに気づいて。
このあたりの微妙な気持ち揺れ方がとても印象的でした。
月香がかつてそうだったというニュアンスは今までもあったけれど、ぼやかしつつもはっきりさせたのは(微妙なニュアンスをわかって!)本作が初めてでしょう。幕切れがかっこよすぎです、月香さん。
こんがらがったこの事態をはたしてどのように乗り越えていくのか。次作が大いに楽しみですね。
狂乱家族日記 六さつめ
地上の人間は動物に成り代わろうとしている。そしてマダラの行方はわからない。追放されたとはいえ、褐色皇帝の血族。マダラが命じれば、世界中の動物は従う。
危険を感じた Dr.ヘルは乱崎家へ相談を持ちかけたが、凶華は不敵に笑った。
「マダラに世界が支配されたら、また支配し返してやればいいのだ!」
そして、聖戦という名の SHOW が始まったが……。
前作がやや重いまま終わってしまったので、下巻的役割の本作で爆発してくれるかと思ったけど、思ったより盛り上がらなかったのは、期待が大きかったのもあるけれど、一番の原因は凶華の策が卑怯というより姑息だったからだと思います。もっと痛快な手腕を期待していたのに……。
ただ、シリアスさはシリーズ随一ですね。褐色皇帝血族のたった二匹の生き残りである帝架とマダラのすれ違い。相手を認めているからこそ、譲れないものがあるという心情が伝わってきました。特にマダラは(自覚がないとはいえ)帝架に惚れているからなおさらなんでしょう。
そばにいてあげようと誓いながら、実行することができなかったことを悔いるシーンはまさに悲痛でした。
個人的に気になったのは、銀一と雷蝶がふたりで唄ったシーン。あれは何だったんだろう。今までふたりが関係するシーンってあったっけ。あったような無かったような。どちらかといえば悪として認識していた雷蝶ですが、何かあるのかもしれない。
次はどうやら「来るべき災厄」最終章らしい。となると、月香あたりが主人公となるのかな。
シリアスもいいけれど、ドタバタな展開も忘れないでほしいな。
狂乱家族日記 番外そのいち
南の島に行くぞという彼女の我が侭に文句も言わず賛同したのは、冷房が壊れたからです。この暑い最中、蒸し風呂みたいな家にいたら倒れますよ。
というわけで、青い海。白い雲。溢れる自然に囲まれて、ゆったり過ごすはずだったのに、なぜか海賊がやってきました。よりによって凶華にちょっかいを出すなんて、なんて命知らずな……
という「無邪気海賊ムジャッキー」を含む四篇からなる短編集。
一編目の「旅行も呪いも計画的に」と二編目の「黒サンタは夜眠れない」では、凶華の唯我独尊ぶりが空回りしている?と思いましたが、三編目の「月曜日に猫を拾う」は良かった。
拾った猫がネコミミ娘になって、という、どこかで見たことあるような展開でしたが、猫とのやりとりに、寂しさが癒されていく描写が素敵でした。すぐドタバタになっちゃうところがアレだけど。
始めの雰囲気はどこにいったと思いましたが、だんだんと情が移っていくところが良かったです。最後にはしんみりさせて、終わりはにんまりさせてくれて。思わずクーと唸ってしまいました。いやあ、素敵ですね。
トリを飾る「無邪気海賊ムジャッキー」は、いつもの狂乱家族日記といったノリですね。狂乱家族のひとりが語り手である唯一の物語ってこともあるのかな。
さすがにこの短い物語の中で、全員に焦点を合わせるのは難しいだろうと思いましたが、ちゃんと各キャラの特徴を描いてるところが凄い。さすがに薄まってはいましたけど。
それにしても、凶華はガンガンしゃしゃり出てくるから、パターンが同じになっちゃうなあ。長編ならいいんですが、短編だとちょっときついかも。
「月曜日に猫を拾う」でも思いましたが、もうちょっとドタバタした部分を省いた物語を読んでみたいな。
狂乱家族日記 七さつめ
空から女の子が降ってきた。本人いわく宇宙人だという。ひょっとしたら、彼女が『来るべき災厄』なのだろうか。凰火がとりあえず話を聞いていたら、さらに空から卵のようなものが落ちてきた。中から出てきた化物には銃も効かないので、逃げるしかない。
とりあえず、目の前にいる宇宙人のOASISと逃げていたら、彼女が突然武器に変形して、凰火の手に治まり、ザクザク敵を切り始めて……
というわけで、来るべき災厄編。凶華にも焦点が当たってますが、メインは月香ですね。
隕石やらなにやらが降り注いで、そこら中が大騒ぎになっている中、月香が寂しそうに呟くところが印象的です。
いつの間にやら、狂乱な家族が大切な存在になっていたんだなという思いには、切ないものがありますね。引きとめようとした雹霞を倒したとき、倒された雹霞よりも月香の痛みばかり見えてしかたなかったです。
このあたりの話に、紅茶と死神三番たち側、雷蝶側、強欲王側、乱崎家とOASIS、さらにオデッサ方面も入ってきてと、話が広がりで、そのわりにちょっとテンポ悪いなあと思っていたら、上下巻構成でした。やられた。
個人的に面白かったのは、乱崎家の天使である優歌が、黒く怒ってるところですね。お父さん、タジタジじゃないですか。たぶん、凶華でもかなわないんじゃないかな。大好きなお父さんだからこそ、という家族愛的なものが感じられて、微笑ましいですね。凰火は怖かったろうけど。
家族愛といえば、凶華が地下帝国に対しての思いを告げたときに、凰火が返す言葉にも温かいものがありましたね。あのシーンが一番好きかも。
月香が頬を抑えて涙ぐんでるイラストが、強烈に魅力的なんですが、そんな月香に恋を唱える人に対して、いったいどんな答えを出すんでしょうねぇ。いろいろな過去をもってそうなだけに、幸せになってくれるといいなー。
ただ、ラストがラストなだけに、なんとも波乱を予感させますね。姉上ってなんだろう。そういえば、雷蝶とか紅茶とかもまだまだ出てきてないし。このあたりの話を下巻で、どうすっきりさせてくれるのか見物ですね。
素敵な宴となることを期待したいと思います。
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狂乱家族日記 八さつめ
破壊神になると決めたのに、悪に染まると誓ったのに、乱崎家の面々の優しさに触れて、困り始めたSYGNUSSの前で、姉である月香が言う。強欲王という宇宙人の求婚を受けようと思う、と。
そんなの許せないと吼えたSYGNUSSだが、鳳火もまた可愛い娘をそう簡単には預けられないと言い出して、まずは強欲王と挨拶しあうことになったが……
来るべき災厄編の完結編。SYGNUSSやOASISの複雑な思いや政府の思惑など、いろいろありましたが、実際のところは、地球の運命を賭けた強欲王と月香の恋物語と言う感じですね。
好きな人と共にいる事を望みながらも、最後の一歩を踏み切れなかったのは、不安なこともあったでしょうけれど、一番大きな要因は、乱崎の家族と離れがたかったからなんじゃないかなあ。いつの間にやら、家族としての形が強固になってますよね。月香だけじゃなく、優歌の黒さもまた母を思う心があったからでしょう。こういった繋がりが感じられるところは、ほんと良かったなあ。
ただ、あんま活躍してない家族がいたのはもったいない。変な方向の話よりも、もうちょっと家族ものとしてまとめてくれたら嬉しかったかも。
いろいろな方面から物語が描かれてたおかげで、ごちゃごちゃしてたこともあって、宴が始まるまでの前フリが、ちょっと長くて退屈でした。
そろそろ宇宙人騒ぎにも飽きた。
奇しくも凶華の言葉が的を射てたような。
宴が始まってからの展開は、テンポ良くて、意表をついてて面白かったです。SYGNUSSが可愛すぎて笑いが止まらない。ともあれ、恋する乙女の恥じらいが長引かせた今回の出来事でしたが、切なくも素敵な結末を迎えたと思います。まだまだ家族だもんね。
とりあえず平和に終了……したような気がしますが、ピエールのほうがまだ全然解決してないし、そもそも月香やSYGNUSSが理解しているらしい「閻禍の子」についても不穏なものを感じるので、ちょっと気になりますね。
と思ったら、どうやら次から解決編なんだそうです。「閻禍伝説編」となるのかわかりませんが、引っ張りすぎなんで、ほんとよろしくお願いしたいところです。
狂乱家族日記 番外そのに
学校で事件が起きたり、生徒が何かに巻き込まれたりしたとき、なぜかあたしに相談が持ち込まれ、そのたびに不本意ながら解決していたら、いつの間にか、あたしをお姉様と呼ぶ人たちが増えていた。好意は嬉しいが、女の子に告白されてもと悩んでいた千花は、ある日、友人の家へと遊びに行く事になったが、ふと昔の嫌な気持ちを思い出して……
ごめんなさいね、乱崎家のみんな。
今回は―、あたしが主人公だ。
というわけで、乱崎家の長女・乱崎千花が語り手となり、姫宮時代の暗い過去や、家族への思い、女子高の友人との交流、初恋の人と出会いなどが描かれる番外編の短編集です。
これはいい。前短編「番外そのいち」は、無理やり詰め込んでる感があって、ちょっとノレなかったんですが、本編では、なかなか活躍しきれない(他の人が目立ちすぎるから)千花の内面がいろいろ見えて、とても良かったです。
収録されているのは、「ビタミンCの森」「マイちゃん破壊魔伝説」「乙女心ラビリンス」「ミルクシュガーキス」の四編ですが、一番面白かったのは「乙女心ラビリンス」かな。
ちょっと太ってしまった千花と友人の鞠原万理が、ダイエットでやせ具合を競争していたら、先に脱出した方の体重が減るという迷路に巻き込まれたお話。
乱崎家に来てからは、何かと大人な千花だったので、喧嘩友だちみたいな人がいるというのは、ちょっと意外に思いましたが、他愛もない喧嘩が微笑ましい。そんな感じで、いがみ合っていた二人が、試練を乗り越えるうちに、いがみ合っていた二人が、心のうちを明かして仲良くなっていくところは、お約束ではあるけれど、とても良かった。
じんわりなところもさることながら、笑いもいろいろありました。迷路のクリア条件として、乱崎家の家族それぞれと対決しなきゃいけなくなるんですが、いや、笑った笑った。優歌を相手にしたときの千花が最高。
それにしても、妙に家族の視線がおかしいなと思ったら、まさかそんなオチが待ち受けているとは思いませんでしたよ。やってくれるぜハイテンション女子高生マイちゃん。
そのマイちゃんこと、恋町麻衣子と千花の交流を描いた「マイちゃん破壊魔伝説」も良かったなあ。お姉さまお姉さまとなついてくるのに、自分を殺してほしいと頼むのはどういうことかと思いましたが、そんな疑問を余裕で吹っ飛ばすテンションの高さが、面白おかしい。
さすがの千花も逃げの一手でしたが、かつての自分を思い出して、頼ってくれた人を助けようとする心境が良かったなあ。今の家族がいるから、心に余裕が持てるということが伝わってくる最後が良かったです。家族の集合写真イラストは、はちゃめちゃだけど、楽しさが伝わってくるなあ。
「ビタミンCの森」では、重く暗い過去を思い出しながら、それでも最後の一歩を踏み越えなかった原因が、ラストで繋がってくるところにニヤとさせられ、「ミルクシュガーキス」では、銀夏と出会った千花の子供らしい好意を見せられて、ミルクシュガーキスな脅迫状問題のドタバタには、姫宮とその関係者の心の痛みを感じましたが、最後に、自分が受けた温かさを、今度は自分が返してあげたいと思う千花の思いに、ぎゅっとされる温かさを感じました。
いやあ、良かった。いつもの狂乱のノリではないですが、シリアスな空気の中に、笑いと温かさを見せてくれました。最近の狂乱の中でも、一番いいかもしれない。
日日日作品でいうなれば、「私の優しくない先輩」風味が好きな人なら、楽しめると思います。
オススメ。
狂乱家族日記 九さつめ
破壊の化身とされる閻禍の子と疑われしものたちが、騒動を乗り越えながら、家族となっていくお話の第九弾。今回は、力を使い果たした末妹、月香が赤ん坊になってしまって、というお話です。
巻頭マンガが楽しいなあ。赤ん坊な月香が可愛く、振り回される家族の様子も見えて、ああ楽しい。そんなマンガと同じように、物語の中でも、赤ん坊な月香に振り回されるわけですが、そりゃそうだよなあ。なんせ、お腹がすいたら、あるいはちょっと機嫌が悪くなったら、電撃を放つんですから、家族たちも大変だ。
しかも狂乱な家族たちは、敵対するものと戦うような強さはあっても、赤ん坊をあやすなんてことは、大の苦手だから、ああでもないこうでもないと、試行錯誤しながら、なんとか月香をあやそうとする様子が、とても楽しく、とても微笑ましいものがありました。
この第一章はほんと良かった。
二章あたりから閻禍の話が出てきましたが、このあたりはまあいいとして、優歌が赤ん坊な月香とギクシャクしちゃって、というところが、意外や意外でした。できたいい子でも、今まで可愛がられていた自分の位置が、月香という存在に取られてしまった感があったんでしょうね。なんか本当に家族っぽくてよかったです。
ただ、今まで登場してきた人たちが、ほぼ全員再登場してきたところには、どうも……。今回から「閻禍伝説編」の始まりってことと関係があるのかわかりませんが、話しが長くなりすぎた気が。ちょっとぐったり。
そのあたりが個人的には微妙だったりしましたが、最後に仲たがいをしていた月香と優歌が、家族の力を借りて、仲直りしていく、その過程がとてもよかったです。ああ、なんだか、久しぶりに家族ものなじんわり感がありました。
さて、次は、凶華関係の問題が飛び出してきそうな感じですね。いや、それだけじゃないか。「世界会議」で、どんなことが起きるのか、気になります。
狂乱家族日記 番外そのさん
「では乱崎家全軍突撃!本日の宴を開始するぞ!目的は『謝々飯店』の殺人容疑を晴らすこと!理由はなんか面白そうなのと、優歌の同級生を助けるのと、他の店からは出入り禁止をくらっているからここで食べないとお腹がすいて動けないからだ!」
亡くなった母の店を、兄妹のふたりで盛り立てようとしているのに、食事した人が、なぜかみな倒れてしまう中華料理店「謝々飯店」の問題を、狂乱家族が解決するところから始まる、「謝々飯店」とその周辺を描いた短編集。以下の四編が収録されています。
- 狂乱家族が中華料理店の問題を解決する「謝々!暗殺中華!」
- 「謝々飯店」の近所にある韓国料理店の娘さんがホームレスになってしまう「雨宿りデカメロン」
- 「謝々飯店」で起きた食い逃げ問題を妹の椿姫と優歌が解決する「チクタクワニに気をつけろ♪」
- 商店街のお祭り企画を成功させるために、狂乱家族を遠ざけようとしたが……「サクラチラリズム」
あはは。くだらねーと思いながら楽しんでしまいました。殺人料理ってどんなのかと思ったら、そんな理由で倒れるのかよ!っていうか、それに気づかないお客って……とか思ったけど、まあそれはそれ。
一番好きなお話は、「雨宿りデカメロン」かな。ヤクザにだまされて、店と土地を奪われた女の子・浮月証歩が、雨に濡れていたときに、生物兵器である雹霞の弟・デカメロンと出会うというお話なんだけど、なんかいい感じのボーイミーツガールっぽいお話なんですよ。
困っているのに、体が弱っているのに、情けをかけられるとついつい拒否してしまう意地っ張りな女の子なんだけど、身動きできないぐらい体力が落ちたとき、デカメロンの世話を受けて、温かさを感じていくところとか、なんかいいですよね。同じく意地っ張りなデカメロンと喧嘩しながら、元気になっていく姿がとても楽しく、いつの間にやらデカメロンも証歩のことが気になっていくところにニヤリです。
そんなデカメロンの言葉を受けて、一度は逃げた場所に戻り、生きていくために、恩を返すために、再び料理屋を目指そうとする心意気が素敵でした。
もうひとつ。食い逃げ犯人を捕まえろ!な「チクタクワニに気をつけろ♪」も良かったです。なんせ、狂乱家族の宴を凶華ではなく、優歌が取り仕切るんですから!子供の問題は、子供にやらせるなんて、なかなかいい采配するじゃないですか、ネコさん。
いつもは一歩引いてる優歌だけど、お友達のために頑張ったり、お母さんを真似するお茶目な姿が、すっごい微笑ましくて、そんな優歌とともに、食い逃げ犯を追ううちに、優歌と椿姫が友情を深めていく展開が良かったです。
オチとかもうちょっといろいろあるといいかなと思うけど、オーソドックスな家族もの、友情ものとして(これをオーソドックスと言っていいかは微妙かもしれないけど)楽しかったです。
狂乱家族日記 拾さつめ
「行き先は神聖合衆国!前途洋洋とは言いがたい不穏な気配だがそれもまた良し!楽しいばかりが旅行ではない!苦労もトラブルも望むところなのだ!!さぁ楽しむぞ家族ども!旅行の支度は万全か!?万全ならば問題ない。さぁいつものようにこの全知全能たる凶華様についてこい!!」
そんな家族たちを背景に、凶華が賑やかに宣言した。
「いざ行かん『世界会議』へ!!」
破壊の化身とされる閻禍の子と疑われしものたちが、騒動を乗り越えながら、家族となっていくお話の第十弾。今回は、不解宮の傀儡后・ミリオンの招待を受け、狂乱家族が「世界会議」に参加するため、海外へと足を運ぶお話です。
うーん、長い。初っ端からして、家族のひとりひとりが、旅行に出かけることを、友人や同僚に話をするというシーンが延々と続いてくれて、悪くはないんだけど、なかなか物語が始まらなくて、なんとももどかしい。間に、閻禍の物語が入るから、余計に本編が間延びするような感じを受けるんだよなあ。
旅に出始めたら、凶華のハイテンションっぷりに、ああ、いつもの狂乱だと思ってたりしたんですが、神聖合衆国へ乗り込む直前の船の上で、家族全員が分断されての仮面舞踏会が始まるから、ん?となる。 誰が、何の目的で、というあたりがずっと見えないから、どうしてもノリ切れなかった。
逆に後半になってきたら、閻禍方面の話が面白くなってきて、ああ、こういうすれ違いから、闇が生まれてきたのかと思ってやるせなくなる。
結局のところ、狂乱家族が招待されたのは、ただひとりのわがままからだってことでしたが、そこへ至るかの人の思いには、複雑だけど愛情を感じました。狂乱家族に引き取られた家族を、ずっと見守っていたんだろうなあ。そう思うと温かいものを感じますが、一方、そんな思いを利用しようとするものがいることに、腹立たしいものがある。
まさか、雷蝶にまで手が伸びるとは……
このあと、狂乱家族はいったいどんな騒動に巻き込まれていくのか、さっぱり予想がつきません。
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