紅 / 片山憲太郎
紅 kure-nai
揉め事処理屋を始めてまだ一年にも満たない真九朗。
ある日、仕事の先輩であり、尊敬すべき恩人が女の子を連れてきた。
「この子を守ってやってくれ」
絵本から抜け出してきたような少女の眼を見て決めた。自分が守ると。
ところが、よろしく、と頭をなでようとした真九朗の手をその子は跳ね除けた。
「気安く触るな一般庶民」
天使のようと思ったのは見掛けだけ。
金持ちの家に生まれた少女は、態度が大きく生意気な子だった……。
「電波的な彼女」の登場人物がごく一部(ひとり?)出てきたり、さりげなく名前等が出てくるなど、裏「電波的な彼女」というのがわかる。ベースは同じ。ただ設定は異なる。
哀川潤を彷彿させるキャラや裏十三家など、戯言シリーズっぽさや、犀川&萌絵シリーズを思わせる会話もあったりするけれど、それを感じるのは初めだけ。
いつしか物語に引き込まれてしまう。
闇を溶かす心と決意を促す心。
出会った者たちの心の変化が非常にうまく描かれている。
「人生には無数の選択肢がある。が、正しい選択肢なんてもんはない。選んだ後で、それを正しいものにしていくんだ」
「……前向きですね」
「後ろに何がある?」
そう。人は前に進むしかないのだ。
かっこよきやり取りを経た終盤は、息つく暇も無いぐらい怒涛の展開。手に汗を握りながら主人公を応援してしまいました。いやはや、見事なストーリィテリングぶりだ。すばらしい。
非常にきれいに終わっているけれど、ぜひとも続きをと切に願う。
個人的大絶賛な物語。
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紅 kure-nai ギロチン
悪宇商会のルーシーと名乗る女性は真九郎に言った。
「紅さん。我が社に、悪宇商会に来ませんか?」
これからの進路を漠然としか捉えてなかった真九朗にとって、悩ましき提案だったが、かつて紅香ですら組織に所属していたと聞き及び、テストを受けることにした。
だが、そのテストとは一人の少女を殺すということで……
いやあ、面白い。
今回も大いに笑わせてくれる日常生活。各女性に発生するイベントがいいですね。
誰の心にも気づかない真九朗ですが、今回は積極的な夕乃よりも銀子がいい味出してました。幼い頃の思い出をシッカリ持っているなんて、実利追求の普段の姿からは想像できないかわいさ。そういえば、真九郎は銀子に対しては甘い言葉が多いよなあ。
そんな表の世界がコミカルなだけに、裏の世界でのシリアスさが光ります。裏の世界で生きるならば、人を殺せないのは未熟なんでしょうけれど、未熟さを言い訳にして逃げようとする心情と、立ち向かおうとする心情の葛藤がとても印象的でした。
まあ、どんな助言を聞かされたところで、真九郎が心を動かされるのは、やはり紫の言動なんですよね。取り返しのつかない過ちを犯してしまったことに気づいたシーンで心が痛くなっただけに、魔法の言葉で立ち直る真九郎と、謝る真九朗に涙する紫をみて、心から良かったと思いました。特に絆の深さを感じさせてくれるあのイラストに、心がじんわりされられます。
今回は敵がかなり強大だったんですが、逆に崩月の力の恐ろしさを知らされましたね。夕乃はどれほどのレベルなのか。
今後、真九郎が悪宇商会とどうなるかはわかりませんが、「ギロチン」こと斬島切彦とは、仲間とは言わないまでも、状況によって手を組む事があるかもしれませんね。
そうそう。「電波的な彼女」との繋がりがまたひとつ追加。今回登場した「ギロチン」こと斬島切彦は「電波」の斬島雪姫と間違いなく繋がっているでしょう。いったい、どんな繋がりなのか気になります。
今後、裏十三家のメンバーが出てくるなら、ひょっとして「堕花」も出てくるんでしょうか。ああ、気になる。
短編でもいいので、裏十三家の裏話や、闇絵や環や夕乃が主役となった物語が読みたいですね。
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紅 kure-nai ~醜悪祭~ (上)
紫とのクリスマスをどうしようかと考えていた真九郎の平和な時間は、突如として終わった。彼に情報を持ち込んだ銀子は言う。「柔沢紅香が殺された」と。まさかと思いながらも、ショックを隠しきれない真九郎が、行動を起こしかけたとき、失踪した姉を探してほしいと、幼い女の子が依頼を持ち込んできて……
新米揉め事処理屋の高校生・紅真九郎が、七歳のお嬢様とはじめて迎えるクリスマスの前に、凶報と依頼が舞い込んできて、というお話です。
もうね、最初の日常シーンがたまりません。紫の子供らしい無邪気さに振り回される真九郎の姿や、鞭を見せつつフォローも忘れない幼馴染の銀子の様子に、ニヤニヤがとまりません。
ただ、一番素敵だったのは夕乃さんでしたね。つれない真九郎に、ぷりぷり怒りつつ、そんな無茶な!という八つ当たりまで見せておきながら、ちょっとした真九郎の一言でご機嫌になっちゃうあたりが可愛いったらありゃしない。クリスマスに真九郎を崩月家にひっぱりこもうと頑張る姿が恋する乙女で、くすぐったくなる。これだけ好意を見せられながら、誰一人としてそういう目で見てない真九郎くん、一度痛い目にあってみなさい。
と思ってたら、すっごいことになってた。まさか、紅香がこんなことに……。確証はないとはいえ、真九郎からしたら、目標であっただけに、ショックが大きいですよね。この情報の前に、紅香のムチャクチャさっぷりと格好良さを実感させるエピソードがあっただけに、愕然とさせられるものがありました。これはきついよなあ。
余談ですが、このときの紅香のイラストが素敵過ぎます。拡声器をこんな格好よく持つ人、始めてみた。
このまま紅香方面に話が進んでいくのかと思ったら、そうではなかったので、ちょいと拍子抜けな気分でしたが、まあ、無謀な行動をせず、閉じこもることも無かったあたりは成長でしょうか。揉め事処理屋として、幼い女の子の「姉を探してほしい」という依頼を受けるところは、真九郎らしい甘さがありましたね。こういうの嫌いじゃないです。
姉探しなら……と思っていた仕事が、まさかまさかなところから、紅香のお話に繋がってくるとは思わなかった。しかもよりによって、裏十三家まで絡んでくるなんて。それも、とんでもないバケモノが。
非情になれないことは、真九郎の良さでもあるんですが、今回はそれが裏目に出たかな。下手すると、自分だけでなく、周りにも被害が出るだけに(特に最後に連絡してたあの子が!)、何とか……と思ったけど、超絶体絶命じゃないですか。
いったい真九郎はどうなるのか、紅香は何をしているかなどなど、いろいろ気になる終わり方をしているので、続きがとても楽しみです。
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紅 kure-nai ~醜悪祭~ (下)
外枠はハッキリしていても、核心部分は空っぽ。半分どころか、まだ尻尾を掴んだに過ぎまい。
しかも、これ以上捜査を進めるなら、あの赤毛の怪物をどうにかする必要がある。
いまさらながらに、真九郎は痛感。
これは過去最年少の依頼人が持ち込んだ、過去最大の仕事なのだ。
この難関を、自分は越えられるのだろうか?
新米揉め事処理屋の高校生・紅真九郎が、七歳のお嬢様・紫とはじめて迎えるクリスマスの前に、凶報と依頼が舞い込んできて、というお話の後編です。
ああ、なるほど。あちこちの感想サイトで「これはひどい」タグがつけられるのはわかりますね。本編が120ページぐらいしかなく、しかもお話が終わってないどころか、最終決戦直前の、さあいくぞ!というところで終わるって、どんな下巻……。この後、下巻 part2でも出るのかしら。
ともあれ、超絶体絶命の上巻からの続きです。いったいどうなるかと思ったけど、謎の手助けと、相手の気まぐれで、かろうじて逃げることができたわけですが、かなりボロボロですよねぇ。見下した笑みのイラストが嫌らしいったらないですが、それを甘んじて受けざるを得ない状況が、悔しいですね。
これからどうするかということについて、あせるような、でも先行きが見えずぼんやりとするような真九郎でしたが、そんな彼の目を覚ましてくれる銀子さんが素敵です。常に変わらぬ姿勢は、側にいる人に、特に不安定な生活をする人には、まぶしく見えるでしょうね。時に厳しい言葉をかけられても、素直に頷いちゃう気持ちがよくわかる。
巻頭に銀子さんの読書姿がイラストかされてて、すっごい良いです。うふ。
ちなみに、上巻で可愛い姿を見せてくれた夕乃さんは、今回も可愛かったです。出番が少ないのに「幸せ日記」で、僕の心を掻っ攫っていってくれました。素敵。
クリスマス直前の平和な時間が終わりを告げたのは、星噛の娘からの招待があったからなんですが……、いや、ほんと醜悪だわ。あまりにも残酷な事実には、人の命をなんとも思ってない所業には、真九郎でなくとも怒りに震えることでしょう。
だからといって、圧倒的力の差が埋まるわけではないですが、倒れることがあっても、たったひとつの思いを胸に、立ち上がる姿が良かったです。
ほんと面白かっただけに、さあ、これからってところで終わるのが、すっごい残念でなりません。
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