クジラのソラ / 瀬尾つかさ
クジラのソラ 01
地球を征服した異星人が提供した「ゲーム」は、一チーム三人のプレイヤで 256隻の艦隊を操り戦う戦略ゲーム。異星人の思惑はわからないものの、「ゲーム」の勝者に与えられる高度なテクノロジーを手に入れるため、各国は争って「ゲーム」を後押ししていた。
地球を去った兄を追うために「ゲーム」を始めた桟敷原雫は、辛うじて全国大会への切符を手に入れたが、このままでは全国では戦えないことを痛感し……
これは面白い。戦略・戦術ものかと思いましたが、違いました。それぞれの思いを交差させながら、壁に立ち向かっていく青春成長物語といった感じですね。
仲間とぶつかり合い、自分のやることに迷いを覚えながら、それでも力を合わせて戦う展開に、心が熱くなります。まさか、これほどとは。いい意味で期待を裏切られましたよ。
なんと言っても桟敷原雫が良かった。プライドが高くて、でも実は不安ばかり抱えていて、自分の力に疑問を持ち、他人の力に嫉妬して、心が折れそうになっても無理やり奮い立たせながら、がむしゃらに立ち向かっていく姿に、惚れ惚れ。
特に真実を知りながらも、恐れることなく心に耳を傾けて、目指すところへたどり着いたところでは、鳥肌がたつほど感動しました。素晴らしい。
チームのメンバーがまたいいんですよね。バカっぽくて単純なんだけれど、実は最も冷静なんじゃないかと思わせてくれる智香が大いに好み。時折見せる機転が素敵です。
冬湖の悲しい過去を抱えながらの前向きな姿勢もいいし、同じく暗い過去を抱え、あえて一歩引いたところで見守る聖一の秘めた思いに共感させられます。
戦いには直接関係しませんでしたが、冬湖の友人である郁恵の作戦には、拍手を送りたい。
宇宙へ飛び立つ事になるのだとしたら、これはまだ序章に過ぎないでしょう。コアとなるところはほとんど明かされていませんが、種は蒔かれています。過酷な展開が待ち受けていると思いますが、熱い展開で乗り切っていって欲しいなと思います。
期待大なシリーズとして猛烈にプッシュしたいですね。オススメ!
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クジラのソラ 02
アジア地区予選を勝ち越し、雫が率いる「ジュライ」は、ワールドグランプリの切符を手に入れた。メカニックとして、飛びぬけた力を持つ聖一、「ゲーム」の優勝者を兄に持つ雫など、注目されているだけに、これから先のことを考えると、不安が尽きない。
そんなときに、対戦相手のアウターシンガーが亡くなり、雫たちに大きな影が差し……
一チーム三人のプレイヤで 256隻の艦隊を操り戦う戦略「ゲーム」でトップを狙う三人の少女の物語の第二弾。ひとつ壁を越えて、信頼関係で結ばれた仲間たちと戦いに挑むジュライの雰囲気がとてもいいです。ああ、強くなったなと、アジア予選の最終決戦のシーンで思いました。スパイラルゲージの決まり方が、とても気持ちいいです。
クジラの歌が聞こえても、いまだ冬湖のレベルまで追いついていないことに嫉妬しつつも、いつかきっと、と思う雫の姿勢や、「ゲーム」を続けることの意味を考え始めた智香など、メンバーやサポートの人たちそれぞれについて、成長を感じる描写が素敵。
新たに聖一と同じレベルでメカについて語り合える天才少女アリスや、智香の従姉妹などが出てきましたが、そんなことよりも、今回はアウターシンガーの秘密に驚かされました。ある意味反則と思える能力に隠されたものは、とてつもないほど残酷でした。特に今の自分はひとりじゃない、みんなに支えられているからだと知っているから、尚更でしょう。
何のために戦うか。
雫の迷いというか、確かだった足場がフッと消えたような、そんな心境がとてもよくわかります。
心の重さに潰れそうになっていただけに、冬湖の言葉は心に響きましたね。以前、閉じこもっていたところから、引っ張り上げた人に、今度は自分が引っ張り上げられる。寄りかかるだけじゃない関係を築けるっていいなあ。あんな殺し文句言われたら、そりゃあ、やるしかないですよ。
大いなる決断をしたコズミックイーターとの戦いには、圧迫感を感じましたが、昨日の敵がこれほど頼もしく思えることもないです。アウターシンガーの更なる力には、興奮させられました。うん、やっぱりこのシリーズはいいですね。
これで、ワールドグランプリの頂点まで、あと三つ。
次はどんなドラマが待ち受けているのか楽しみです。
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クジラのソラ 03
あと三回。たった三回勝てばいい。だが、冬湖の様子がいつもと違う。まだ大丈夫なはず。そう思いながらも雫には不安だった。それはくじら憑きの前兆に似ていたから。
さらに「ジュライ」の次の対戦相手である「アギーラ」の試合の映像を見たとき、冬湖は唖然として声を漏らした。お父さん、お母さんと……。
一チーム三人のプレイヤで 256隻の艦隊を操り戦う戦略「ゲーム」でトップを狙う三人の少女の物語の第三弾ですが、初めから不安を煽るようなことばかりで、「ゲーム」ではない方向に盛り上がっていきましたね。
「ゼイ」のもとへいったものは二度と戻ってこないはずなのに、冬湖の両親らしき人たちが「ゲーム」に参加しているという陰謀めいたものに加えて、冬湖がアウターシンガーのさらに一段階上に登って、あちらに行ってしまうのではないかという不安にはドキドキです。
雫のことも聖一のことも気に入っているのに、冬湖が自分から進んでいく様子には、なぜと疑問に思いましたが、両親との話を読んでいると、止まれないのはわかります。目の前にいながら、置いていかれる思いを子供のころに経験したら、次の機会には離したくないですよね。例え「ゲーム」では天性のセンスを持ち、アウターシンガーとしての力があろうとも、心の傷は癒せないところは、何とも心苦しい限り。
そんな冬湖を守りたいと思っていた雫だっただけに、解き放たれてしまったことを知った悲しみは、耐え難いものがあったでしょうね。いや、言葉に出さないで、冷静たろうとした聖一の方が衝撃は大きかったかもしれません。
絶望的な状況で、それでも、決して諦めずにひたすら可能性を模索する姿に、仲間を失いたくないという気持ちが伝わってきました。みんなが自分のできる事をやっていくところが、ほんと良かったです。
一番しびれたのは、自分たちの命どころか、人類全体の命運をかけた最後の戦いですね。自分の力が及ばないことを知っていながら、それでも、勝とうとする意志の強さと、力を合わせて戦う姿、最後にピタっとハマすごさに感動です。いやあ、いいです。やっぱこのシリーズ大好き。
「ゼイ」についてもいくつか推測だってきましたし、これからどうなるのか楽しみだなあと思ってたら、最後が……。悲しい思いで、胸がいっぱい。
次がラストなのかどうかわかりませんが、これから彼女たちがどの道を選んでいくのか、見守っていきたいですね。
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アリスの兄の計画は巧妙だった。アリスを守るために、他の犠牲を考えなかったのだろう。命を懸けた行動は、たしかに彼女を安全なところへと押しやったが、犠牲は大きかった。取り乱したアリス、呆然とする聖一を目の当たりにした冬湖は、ひとつの決心をした。アウターシンガーには、もうひとつ上の段階がある。そこへ辿りつければきっと……。そして彼女は言った。
「ごめんなさい。冬湖は雫との約束を守れません。ばいばい……」
一チーム三人のプレイヤで 256隻の艦隊を操り戦う戦略「ゲーム」。圧倒的力量で世界を制した兄の恭介を追うために、雫が冬湖、智香という仲間を引き連れて、世界へと躍り出たら、ゲームよりもはるかに深刻な事情が待ち受けていて、というシリーズの最終巻です。
いやあ、面白かった。雫という女の子の魅力が、前面に出てましたね。失意から無気力に陥ったものの、仲間の励ましや、協力してくれた人たちの温かさ、さらに巻き込んでしまった人への責任感から、立ち直っていく姿が素敵でした。特に吹っ切ってからの強引な行動は素晴らしい。思わず笑ってしまいましたが、無茶苦茶でありながらも、相手を思う気持ちが伝わってくるんですよね。こういう人の言葉だからこそ、人は動かされるんだろうなと思いました。
何も考えていないような智香が、またすごいことやってくれるんですよね。さりげない仲間の後押しが、またひとつ、気持ちを盛り上げてくれます。
冬湖の気持ちもわかるけれど、それ以上に、彼女を心配する人たちがいて。だからこそ、みなが力を合わせることができて。
冬湖の側についた兄・恭介との戦いも熱いものがありましたが、それ以上に、冬湖を説得すべく出向いてからのゲームにしびれました。圧倒的強さを手に入れた冬湖を相手に、そこまで冷静でいられるなんて!仲間だったからこそ、親愛している人だからこそ、本気で、全力で相手をする姿に、思わず涙が出てくる。
ここで終わっても十分なものがありましたが、さらにさらに盛り上げてくれるとは、やってくれますね。絶望が見える中、世界中が、彼女の言葉に奮起した展開に鳥肌もんです。
それだけに、あそこであっさり終わってしまうのは、ちょっと物足りないものがあるんですが、仲間の素晴らしさを、魅せてくれるお話に大満足。
これで終わってしまうとはさびしい限りですが、次なるお話で、また素敵なお話を期待してます。
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