Home > Series > クダンの話をしましょうか

クダンの話をしましょうか / 内山靖二郎

To the Navi

クダンの話をしましょうか

クダンの話をしましょうか (MF文庫 J う 3-5) - 内山 靖二郎

幼なじみのつぐみの様子が、最近おかしい。彼女の母親に言われるまでもなく気づいていた直辰は、ある日の放課後、つぐみの後をつけて驚いた。制服から着替えた彼女は、ものすごく派手な服装をしていたのだ。普段のおとなしい様を知っている直辰の目には、別人にしか思えない。その格好のまま、つぐみは転校生のクダンと出会い、どうやら口げんかをしているようで……

人の災いを予言したら、その人は自分のことを忘れてしまう ― そんな力を持ってしまったクダンが、力から解き放ってくれる鵺を探して訪れた街で、ヌエ、影法師、ドッペルゲンガーと名乗る、心に迷いを抱えた少女たちと出会って……
読み終わったあとには、優しさが残るんだけど、読んでるときには切なく思える連作短編集ですね。

第一話は「ひとりぼっちのヌエ」。高校へ通い始めたという今までとは違う新たな環境を迎えて、孤独を覚えてしまった少女や、何か関係が変わったわけでもないのに、学力というその一点だけで、少女との壁を感じてしまった少年など、自分を振り返っても思い当たる不安なだけに、シクッとくるものがあります。また、この空気がいいんだよなあ。クダンにつっかかるヌエの姿に、優しさが見えたり、壁を乗り越えようとする少年の勇気が見えたり。素敵です。
でも、わかりきっていることとはいえ、やはり最後は辛かった。いや、この場合、クダンのことを忘れてしまうことよりも、忘れられてしまうクダンの気持ちのほうが辛かったかな。

一話目のあと、幕間で、普段とは違うコミカルなクダンの姿が見れるんですが、そこで見えてしまったクダンの思いが切ない限り。大切な人の笑顔の中に、自分が入れないのは苦しいですよね。

二話目の「天然甘党影法師」は、甘党なんてタイトルとは裏腹に、ホラーテイストな物語でした。ネット上では、普段とは違う自分を見せるというのは、結構ある話のように思えますが、同じハンドルネームを使用している人の言葉に、飲み込まれていく心理描写が、あまりにも自然すぎてゾクリとさせられます。本気でホラー書いたら、すごくなるんじゃないかしら。
間違った方向へと進んでいく少女の姿には、痛さもありましたが、寂しさも感じてやるせない思いでいっぱい。
まず自分の居場所を確認して、不安を覚えたら人のぬくもりを感じていけばいいじゃないかという、終わり方が素敵でした。

三話目の「なりすましドッペルゲンガー」は、生徒たちの集まる掲示板の管理人が、興味を覚えた生徒の心の闇に、そっと入り込んでいくというお話なんですが、痛いなあ。「神」の視点で人を見下すことができるという快感はあるとは思いますが、人を動かせると勘違いしていく様は痛いです。いや、実際ある程度、誘導することは可能だと思いますが、現に影法師では失敗しているし、その程度のものだと気づけなかった、気づこうとしなかったあたりが、彼女の弱さなんでしょうね。追い詰めたつもりが、追い詰められていた展開に、緊迫感を覚えました。

「予言」によって、相手との係わり合いが消えていく切なさもありますが、それでも相手を救いたいと願うクダンの優しさに温かさを感じます。惜しむらくは、ひとつひとつの話が小粒なことかなあ。いい話だねー、で終わってしまうものがあるので、読んだら面白いんだけど、オススメ!と人に勧めるには躊躇するものがあります。

悪くはないんですが、個人的には、クダンよりも「神様のおきにいり」を、と思ってしまう……

クダンの話をしましょうか (MF文庫 J う 3-5) - 内山 靖二郎

To the Navi

クダンの話をしましょうか 2

クダンの話をしましょうか 2 (2) (MF文庫 J う 3-6) - 内山 靖二郎

ドッペルゲンガーと出会ったのは、この町から引っ越す直前の小学五年生のときだった。あれから八年。大学生になった美千恵は、あのとき会ったドッペルゲンガーを探しに、再びこの町へやってきた。見つからなくてもいいのだ。ここには「あきらめる」ためにきたようなものだから。
そう思っていた美千恵に、突然、声をかけてきたのは、手のひらを緑色に塗りたくってる少年だった。
お姉ちゃんって黒い子だよね、と……

人の災いを予言したら、その人は自分のことを忘れてしまう ― そんな力を持ってしまったクダンが、力から解き放ってくれる鵺を探して訪れた街で、心に迷いを抱えた少女たちと出会うお話の第二弾。今回は以下の三編が収録されています。

  • 幼いころ住んでいた町に、ドッペルゲンガーを探しにいく「尋ね人はドッペルゲンガー
  • バイト先で見かけた人に恋をした女の子の失意の思いを描く「コロポックルがやってくる
  • 子供たちの広場でのみ伝わっていた「手形」の思いが町へ広がる「鵺の足跡

これは胸が痛くなるなあ。予言と記憶の関連から、切ないお話になることはわかりますが、それにしても、これは……。ドッペルゲンガー話は、切なさのなかに温かさも感じるお話でしたけど、二編目はきつかった。バイト先で共に働く香奈とのやり取りは、他人と深い付き合いをしないようにしていたクダンの戸惑いながらの嬉しさが伝わってくるだけに、すれ違うところが胸に響く。香奈とてわかってるだけに、それでも止まらないのは、かつて味わった不安があるからで……。
足りない言葉が辛さを呼び込み、ラストが切なく悲しかった。あー、泣きそう。

一編進むごとに、人が消えていく扉絵が、また涙を誘う。

そういえば、今回のお話は、怖さも目立ちましたね。子供たちの無邪気さに手形が合わさると、こうも不気味になるのかとゾクゾクさせられました。でも、それは純粋な思いがあるからこそ、なんですよね。辛いとき、寂しいときに、思い出せる場所というのは、誰もが持っているんじゃないかしらと思わされました。

前作同様の展開には、物足りないところもないわけじゃないですけど、やっぱり心にくる物語ですね。これでハッピーエンドだったら、さらに嬉しいんだけどなあ。

クダンの話をしましょうか 2 (2) (MF文庫 J う 3-6) - 内山 靖二郎

Home > Series > クダンの話をしましょうか

Page Top

Search
Recent Entries
Profile
  • id: deltazulu (deltazulu@booklines.net)
  • PageView:

Page Top