今夜きみを奪いに参上! / 響野夏菜
今夜きみを奪いに参上! 紅の宝玉
各地を騒がせている盗賊「空の旅団」が、王妃の持つ宝石を狙っていると言う。予告状に城内の緊張が高まる中、王女のイリーシュは、悪いとは思いつつも興味津々。予告状に記されていた時間が迫るに連れて、ちょっと覗くだけならと、秘密の扉を開いて、寝室を抜け出したら、そこで追われている男の子と遭遇して……
忌み嫌われる力を隠しているお転婆王女イリーシュが、どんな強固な警備でも潜り抜けてくるという盗賊「空の旅団」の一味と出会って、というお話。
これは楽しかったですね。礼に厳しいお父様や侍女たちの目をかいくぐりぬけながら、好奇心旺盛に動き回る王女が可愛い。つい勢いで、盗賊なんぞを助けてしまうあたりが、イリーシュの性格を現してますよね。助けてもらったのに、「あんた、馬鹿か?」と言うエイラーンの気持ちはわからんでもない。
この盗賊少年とのやり取りは、好きな子相手に意地悪しちゃう、みたいなじゃれあいっぷりがあって、とても楽しかった。
コミカルなシーンが多いように思いましたが、兄への思いに揺れるところや、自身の異能についての悩みについては、結構シリアスだったかな。あのとき、空へ上がっていったのは、もちろん目的もあったろうけれど、「邪神の子」とまで言われていた力について、不安な思いが現れたからこそだと思います。あの涙には、心痛むものがありました。
母親の謎とかもあって、いろいろしんみりさせるものがあったけど、あの船の中の描写は、素敵なファンタジーだったなあ。
自分の居場所について揺れるところには、切ないものがありましたが、空への思いを捨てられない気持ちに、大きな希望が見えました。決意を語る母との会話に、じわり。
意外に思ったのが、王の行動ですね。イリーシュの視点からでは、厳しい父でしたが、彼女のいないところでは、娘への愛情を感じるものがありました。もっと愛情を見せてあげればいいのにと思ったけど、最後まで王たる姿を崩さなかったところに、かの人の心情を思いますね。いつか……と思いたいなあ。
今回は、力や王女のお話ってことで、まだ始まりって感じですが、面白かったですね。次は盗賊団のお話がメインになるんだろうなあ。青い目をしたエイラーンとのやり取りは今後も楽しみですが、まさかのアナベラスってこともあるのかしら。このあたり、三角になってくれると、嬉しいかも。
今夜きみを奪いに参上! 忘れられた楽園
突如として、飛行艇の舵が聞かなくなり、密林へと墜落した。大惨事にはならなかったものの、どうやら精霊たちの力を押さえつけている輩がいるらしい。失われた言葉による「助けて」というメッセージを受けた旅団は、ひとまず周辺を調査することにした。エイラーンと、アナベラス、さらにはイリーシュが、調査隊として先陣を切ることになったが……
どんな強固な警備でも潜り抜けてくるという盗賊「空の旅団」は、実は喪われた民の末裔だった。というわけで、同じ民の末裔であったことを知ったお転婆王女イリーシュが、旅団の一員となって冒険するお話の第二弾。今回は、旅団の飛行艇が墜落した密林で、「助けて」という失われた言葉のメッセージが寄せられて……、というお話。
気になってるくせに、つい強くでてしまうイリーシュとエイラーンのお子様なやり取りは、読んでるとつい頬が緩んでしまう。周囲の大人たちが、ニヤニヤしながら眺める気持ちが良くわかる。
で、密林話。
飛行艇を落とすことができる力を持ってる時点で、同族の力は感じてましたが、その場所で行われた過去の出来事については、人の残酷さと、無念を感じました。でも、この悲しい出来事と遭遇したことは、イリーシュにとって、いいきっかけになりましたよね。
仲間になりながらも、何もできない自分に焦っていた彼女が、自分のできることをやろうと決意したあのシーンは、とても格好よかったです。普段、皮肉な態度ばかりを見せていたファリウスの礼に込められた思いに、じんわり。
いやあ、面白かった。悲しみを胸に抱きながらも、最後にはきっちりと、目的を果たし、そして同族との誓いを見せてくれる一行の姿が、とてもよかったです。
最後にさりげなく、エイラーンがイリーシュに思いを見せてくれたところには、ひょっとしてみんなの与太話に心揺らされてしまったのしらと、にやりとさせられましたけど、さてさて、この恋話はどうなっていくのかな。
旅の行く末ともども気になるばかり。
今夜きみを奪いに参上! 翼のない王
「もちろん、なにかあっても助けに来てくれないわよね」
イリーシュは訊いてみた。のどの奥で笑ったリレイがうなずく。
「もちろん」
「そういうと思ったわ」
「けれど、無事を祈ってる。朝な夕なに」
どんな強固な警備でも潜り抜けてくるという盗賊「空の旅団」は、実は喪われた民の末裔だった。というわけで、同じ民の末裔であったことを知ったお転婆王女イリーシュが、旅団の一員となって冒険するお話の第三弾。今回は、失われた九つの宝のひとつ<三つ背の風切り>があるとの情報を調査するために、イリーシュが奴隷として潜入するお話です。
いやあ、面白かった!
奴隷に身をやつして潜入するって、どんな王女かと思いますが、さすが元気印のイリーシュ。船酔いやら乱暴な扱いやらを乗り越えて、王宮に入ってしまえば、女官のいじめもなんのそのって行動っぷりを見せてくれますね。どれだけたくましいんだかと思いながら、頼もしい限りです。
まあ、待ってる身であるエイラーンは気が気でなくて、あらぬ妄想をしたあげくに、いてもたってもいられず潜入しちゃうんだから、ニヤニヤがとまりませんけど。
後宮に入り込んだとはいえ、奴隷な身分なので、早々自由な時間はなく、調査がままならぬまま、時が過ぎていくんですが、「扉」を使ったときに、意外なところで、王とばったり出会ってから、怪しまれるから、さあ大変。
しかも、聖妃暗殺の疑いまでかけられてとピンチピンチの連続でどうなるかと思いましたが、とある人の「力」によって、なんとかぎりぎりのところで留まっていくところは、なかなかサスペンスでしたね。
「力」に気づかないイリーシュが、思わず本音を漏らしちゃうところにはニヤリ笑いが止まりませんでしたが、もうひとりの線入社によって、明かされた王の真実には、切ないものを感じました。
喪われたものを取り戻すために立ち向かう人もいれば、立ち止まり戦う人もいるんですね。それもまた強さだと思いました。
いつか彼らが同じ場所へ集うことができたら。そんな未来が待ち受けてることを願いたいですね。
最後まで素敵なお話でした。オススメ!
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