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神様のメモ帳 / 杉井光

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神様のメモ帳

神様のメモ帳 (電撃文庫) - 杉井 光

高校に通う意味なんてあるのかと、いつものように学校の屋上で一人過ごしていた藤島鳴海に、彩夏は声をかけてきた。廃部寸前の部に誘われ、流されるままに入部して、気がつけば彼女のバイト先であるラーメン屋に連れて行かれてしまった。
そこには、三人のニートと、さらには部屋から一歩も出ないヒキコモリなニート探偵の少女アリスがいて……。

街に広がる闇の謎について、ニート探偵のアリスとラーメン屋に集うニートたちが挑む青春ミステリーですね。自分に自信を持てず、すべきことがわからないため、人と距離をとってもしまうような、一歩引いた藤島の様子には、戯言シリーズ初期のいーちゃんを連想してしまいました。
そんな彼が、彩夏に出会い、ニートたちに出会って、距離をとりつつ、時に過ちを犯しながらも、少しずつ距離を縮めていくところが印象的でした。

それにしても、ラーメン屋の女店主かっこよすぎ。口は悪くても、間違ったときには指摘を、躊躇してるときには、そっと背中を押してくれる姿に惚れ惚れします。

ここまでの話が素敵だったために、発覚した事件には、もし、自分が藤島の立場だったらと思うとぞっとします。人生には取り返しのつかないことしかないと、思ってしまう気持ちがよくわかる。自分よがりと思えないのは、彼女に対する思いを固めることすらできない時点での出来事だからかな。

ティラミスに引き上げられて、事件を解決するためにニート探偵に依頼して、それでも前を向けなかった藤島が、吐き出すように放った言葉には胸が苦しくなりましたが、それを受け止めたニートたちの思いに胸が熱くなりました。
ちょっと間延びしたところがありましたが、たったひとつの冴えたやりかたからの盛り上がりはとても良かったです。

真相には、心が痛みましたが、それよりも、あの夜明けに咲く花にこめられたメッセージには、やられました。知らなかったほうがいいのか、知ったほうがいいのか。どちらにせよ、心が痛くなりますが、僕だったら、例えそのとき痛くても、知りたいかな。
酷なようにも思えますが、実は相手のことを思っているアリスの言葉が素敵でした。

ニートというとマイナスに思ってしまうんですが、実は違うんだということが、よくわかります。こういう人たちに出会えたからこそ、藤島は前を向くことができたんですよね。
いやあ、ほんと良かった。切なくも温かいものが残る物語でした。おすすめ。

神様のメモ帳 (電撃文庫) - 杉井 光

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神様のメモ帳 2

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫) - 杉井 光

僕がバイトすることになったラーメン「はなまる」の初めての客は、NEET探偵事務所への依頼人だった。すらりとした肢体を持つ健康そうなタイ人の女の子メオは、お父さんを探してほしいと言うのだ。「金庫に入ってるかばんを持って身を隠せ」と電話してきてから連絡が取れなくなったという元やくざの父を。さらに、メオの持ってきたカバンの中に入っていたのは、二億円の札束だ。どう考えても危険に巻き込まれることになるだろうに、アリスはメオの依頼を引き受けて……

いやあ、面白かった。かっこいいぞ、このニートども!と言いたくなりましたね。危険の迫るメオを守り、彼女の父親を助け出すという依頼を受けたアリスたちニート探偵のお話ですが、不審なお金やメオにかかってきた電話を考えたら、どれほどの危険が迫っているか想像できない人はいないでしょう。怖気づくナルミの気持ちはよくわかります。

助手として何かできることはないかと思っていても、何もできないことに愕然とするところは、まだ高校生なんだから当然だと思うんですが、周囲のニートたちが、何かしら役に立っているので、気後れしちゃうんでしょうね。無理をして空回りしたり、自分の度胸のなさに自嘲する様は、若さ故の焦りみたいなものが感じられました。

実際のところ無力さというのは、アリスも持っているのに、自分だけがと悩むところには、時に痛々しいものを感じたりしましたが、ただ、その必死なだけの行動が、力を生む事だってあるんですよね。穴だらけかもしれないけれど、ひとつの突破口を作り上げたところには、むろん仲間の協力もあったけれど、彼の必死さが伝わったからこそじゃないかと思いました。

今回は四代目がかっこよかったなあ。「覚悟」についての言葉が特によかったですね。ナルミに対して言葉が強くなるのは、もっとも弱さを感じるからだと思っていましたが、実はナルミを認めてるところもあるんだなとわかる、盃のところでニヤリ。イラストもよかったですね。

全てがうまくいったわけではないけれど、危ない橋を渡り、犯罪を犯しながらも、目的は果たしたニートたちの活躍に感動しました。しかも、ナルミの心に残っていたしこりも溶けるようなことがあるんですから、素敵です。奇蹟とは、こういうときにあってしかるべきですよね。
個人的には、一巻よりも面白かったので、今後も大いに期待したいと思います。オススメ。

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫) - 杉井 光

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神様のメモ帳 3

神様のメモ帳 3 (3)  - 杉井 光

彩夏が、戻ってきた。
いろんなものを失くしたまま、
それでも、戻ってきたんだ。

引きこもり探偵のアリスとラーメン屋に集うニートたち、そして探偵の助手になった高校生ナルミが、街に広がる闇の謎を解き明かしていく青春ミステリー物語の第三弾。
かつてラーメン屋でバイトをしていた少女・彩夏が、記憶喪失となって戻ってきた矢先に、彩夏とナルミの二人しかいない園芸部の廃部が宣言されて……ということで、何とか廃部を免れようと模索していくうちに、園芸部周辺で起きた五年前の事件を追っていくお話です。

いやあ、切なくて、でも温かい気持ちになれるお話でしたねぇ。
一度は失くしたかと思った人が目の前にいる。そのことは嬉しいけど、でも、一緒にすごした時間のことを彼女は覚えていないというのは、何とも辛いものがありますね。しかも、ラーメン屋で、かつての仲間と過ごした時の出来事が、彼女に無理をさせているのかもしれないという思いが浮かんでしまったら……、彩夏のもうひとつの居場所である園芸部を失くすわけにはいかないよなあ。
いつになく積極的に動くナルミに、複雑な思いを感じました。

ところが、園芸部設立時に、生徒会で奇妙な動きがあったらしいことを知って、その話をアリスと追いかけていったら、当時亡くなった生徒がいて、その生徒をあのテツ先輩がいじめていた、なんて噂があって。さらにはその件について、テツ先輩が一切口を開かず、アリスに協力もしないと言い出すから、興味津々。

はじめは、触れられたくない過去を探るのはと、テツ先輩に遠慮してたナルミでしたが、追えば追うほど、亡くなった羽矢野とテツ先輩の間の出来事がキーとなってきて、どう打開していくのかと思ったら……、ああ、不器用だなあ。ナルミも。それを受けるテツも。
でも、この青臭いやり取りが、魅力的なんですよね。バカだと言いながら、しっかりと場を作り上げる四代目も素敵でした。
まあ、待たされる人たちからしたら、たまったもんじゃないでしょうけど。ナルミを心配しながらも、素直になれないアリスが、いろいろ世話を焼くところとか、指摘されたときにキレる様子が、いつになくアリスが可愛いかった。最後に、ナルミのちょっとした嘘に騙されてあげるアリスにも、うふふと思ってしまうものがあります

いやあ、面白かった!
抱えるものが多すぎて、ギクシャクしていた彩夏との関係でしたが、事件を終えて、新たな関係を築いていこうとするところが良かったです。「お帰り」とナルミが心から言えるようになったところ、それに彩夏が応えてくれたところに、涙が出そうになりました。ああ、いいなあ、この関係。
願わくば、彼らを取り巻くこの関係が、いつまでも続いてくれたらと、そう思います。
オススメ!

神様のメモ帳 3 (3)  - 杉井 光

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神様のメモ帳 4

神様のメモ帳〈4〉 (電撃文庫) - 杉井 光

「いいんだ、ぼくだって、助手がいつまでも無能では困るからね。犬のしつけだと思って、何百回でも何千回でも同じことを教えるよ」
「がんばる……」
「どれだけ根を張り枝を伸ばし梢に言の葉を広げようと、ぼくの手が触れられる現実の世界は、ごくわずかだ」
そこでようやくアリスの瞳に、かすかな湿り気が入り込む。
「きみはそのわずかな世界の、一部なんだから」

引きこもり探偵のアリスとラーメン屋に集うニートたち、そして探偵の助手になった高校生ナルミが、街に広がる闇の謎を解き明かしていく青春ミステリー物語の第四弾。今回は、四代目が手がけるインディーズバンドのプロモーションを手伝っていたら、イベントを潰そうとする輩が現れて……というお話。

これは熱かった。
過去の傷があるために、四代目がいつもに比べてヘタれてましたが(というか頑なになってたというほうが正確か)、頼ってもらえないことにもどかしさを覚えて、幾度となく立ち入るナルミが、とても熱い。ここまで仲間意識を持っていたんだなあと思うと、なんかいいですね。

で、イベントを潰そうとする輩がいるってことは、当然危険度も増すわけですが、それでも取り組もうとするナルミを心配するアリスが可愛いったらないです。もちろん、本人は全力で否定してますけどね!あれで気づけぬナルミ……おまえはどれだけ鈍いんだ。

四代目が隠していた平坂組のもう一人の創設者・錬次の話は……辛いなあ。相手を思うが故に言えないことが生まれ、確執となっていく。それでいて、心のの奥底では……というところが感じられて、やりきれなくなる。自ら飛び込んだとは言え、間に挟まれたナルミは苦しかったでしょうね。

それでも、不安になりながら「言葉」を告げることをやめなかったナルミが素晴らしかった。彼がいなかったら、きっとみなどこかで諦めてたんじゃないかな。ナルミがいたから、ニート探偵たちが動き、平坂組がまとまり、最後に義兄弟たちが拳をふるえたんだと、そう思います。
まったく、シャツひとつでこんなにじわりとさせられるとは思わなかったよ。
面白かった。

神様のメモ帳〈4〉 (電撃文庫) - 杉井 光

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神様のメモ帳 5

神様のメモ帳〈5〉 (電撃文庫) - 杉井 光

「でも、ナルミ。それは嘘とはいわない。それはね、『物語』というものだよ」

引きこもり探偵のアリスとラーメン屋に集うニートたち、そして探偵の助手になった高校生ナルミが、街に広がる闇の謎を解き明かしていく青春ミステリー物語の第五弾。今回は短編集。「はなまるスープ顛末」「探偵の愛した博士」「大バカ任侠入門編」「あの二十一球の夏」が収録されています。

やばいぐらいアリスが可愛いな。クールを装いながらも、みんながミンさんのラーメン屋に集まって話してると、こっそり降りてきて話を聞いてたりするし、なんだかんだと文句を言いながら事件が起きると手伝ってあげるし。ま、なぜ手伝ってあげるかってことに気づかないナルミの鈍さはアレとしても、ナルミのナチュラルな言葉に、真っ赤になって怒るアリスの可愛さにニヤニヤしまくった。

以下、各話の感想など。

はなまるスープ顛末」は、ミンさんが新たなスープ作りに挑戦するお話……ストーカーに狙われるお話でもあったんだけど、ストーカーされても本人が気にしないから、なんて張りあいのない。それはともかく、やたらめったらミンさんの巨乳っぷりが描写されてて、いろいろやばかった。目をつけた人は……ご愁傷さまとしか言いようがないですが、最後にちょっぴり人情ものっぽい温かさがあって、良かったです。

探偵の愛した博士」。ミンさんの同級生がやってる個人酒屋の商品に異物の混入が発覚して、というお話。いつになく積極的なアリスに、ナルミがもんもんとしたものを抱えるのが珍しかった気がします。なんとなく勘も鈍ってたような……。
事件解決のためついて嘘に対して、アリスが告げた言葉が印象的でした。オチは、ああそういうことだったのね、とニヤリ。

大バカ任侠入門編」は、平坂組事務所の大家さんの娘さんが誘拐される事件。大家さんに気づかれないよう解決するというお話なのに、緊張感があまり感じられないのは、この組のいいところなのかどうなのか……。四代目も大変だ。 このお話で印象的だったのは、アリスがナルミに一本とられたこと。悔しそうに説教する姿が目に浮かびます。

あの二十一球の夏」はヤクザと野球するお話。高校野球で甲子園までいった人を相手取ることになり、アリスが監督としてブレインになり、いつものメンツやら四代目等をひっぱりこんで挑むんですが、まさかアリスがバッターボックスに立つとは……奇策とも言うべき手を使ったけれど、これはアリスに対する信頼があったからこそだよなあ。最後にナルミがじんわり感動させてくれて、ちくしょうと思いました。 せっかくの感動を台無しにしてくれる著者のあとがきはどうかと思うけどね!

神様のメモ帳〈5〉 (電撃文庫) - 杉井 光

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神様のメモ帳 6

神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫) - 杉井 光

「ねえ、アリス」
「……なんだい」
「その。うまく言えないんだけど」
僕は目を開いて言葉を続ける。
「せめて僕といるときくらい、アリスが無防備でも大丈夫なように、なりたい、っていうか」
「な」

引きこもり探偵のアリスとラーメン屋に集うニートたち、そして探偵の助手になった高校生ナルミが、街に広がる闇の謎を解き明かしていく青春ミステリー物語の第六五弾。今回はラーメンはなまるに、ミンさんの親戚であるチャイニーズマフィアがやってきて、ミンさんの父が起こした事件の責任を取れと縁談を持ちかけてきたことを受けて、ヒロさんが縁談をぶち壊して欲しいと依頼してきて……というお話。

おそらくはと予想していた通りの結末は、何とももの哀しいものがありますが、ミンさんの父・花田勝は守るべきものを守り抜いたことは間違いなく、そこに男を感じました。誰もが踊らされるしかなかったひとりの男の存在感が素晴らしいです。

そんな父を持ったミンさんが実は……というあたりから明かされる事実には、いろいろびっくりでしたが、これだけお世話になってるニートたちが、ミンさんの危機を見過ごすわけが無いのはわかっていたけど、ほんと危なっかしくてしかたない。ナルミは自分がどれだけ危険なことをしているのか、アリスにぽかすか殴られてもっと実感すればいいんだ。まあ、あれだけ心配かけられたなら、「必ず喜ばれる親愛表現25例」というご褒美があってもいいと思いました。ナルミが読み上げる言葉にゴロゴロするアリスかわいい。

今回一番印象的だったのは、ヒロさんの思いでしょうか。ミンさんを本気で思っていたんだなー。ジゴロであるが故に、どうしても真剣な言葉に聞こえなかったんだけど、傍にいられるチャンスを逃さず、ミンさんがいるはなまるのために行動する姿は、間違いなく……ね。そのわりに、たまにアレだったりするけど!

でも、ジゴロであったとしても女を泣かさないという信条があったからこそ、今回の危機を切り抜けられたんだと思います。ナルミの奇抜すぎる策は、あまりにもアレな気がしましたが、女という存在の大きさを実感させられるものでもありました。これならきっとミンさんも……と思ったけど、そう素直にくっついたりしないところが、この人たちの複雑なところですね。

ヒロの思いを知ったとはいえ、父の思いもまた知ったミンさんは、当分いまの状況を変えることはないでしょう。それでもいつかきっと誰かを迎えることはあってほしいと思います。それはヒロさんかもしれないし、ヒロさんじゃないかもしれないけれど、「家族」という存在はきっとミンさんにとって大きなものになると思うから。

神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫) - 杉井 光

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神様のメモ帳 7

「僕は探偵助手で、アリスに雇われてるんだ。それよりも力強い事実は、……あんまり、存在しないんじゃないかな」

引きこもり探偵のアリスとラーメン屋に集うニートたち、そして探偵の助手になった高校生ナルミが、街に広がる闇の謎を解き明かしていく青春ミステリー物語の第七弾。今回は、公園にたむろしているホームレスの一人が、子供の頃に失踪した父親ではないかと、売り出し中のアイドルから依頼されて、父親探しを始めるも、その公園に、改造エアガンで武装したホームレス狩りの集団がやってきて……というお話。

相手を思った行動が、悲しみを引き起こしてしまったという物語が、なんとも苦い。少佐の過去にしろ、父の思いにしろ、プライドは大切だと思うけれど、そこまで思っていたならなぜ……ロマンチストは、時に相手を傷つけることになるけれど、でも死者を代弁するアリスの言葉が、痛くとも、前に進むきっかけとなってくれたらと願わずにいられない。

それにしても、今回はもどかしいものが多かったなあ。少佐の離脱は特にそうで、このあたり皆ドライですよね。仲間でありながら、線を引くあたりは、冷たく感じることもある。それを強さと呼ぶべきかはわからないけれど、目の当たりにしたことで、苛立ちを覚えたナルミの感情が印象的でした。

こういうことに気をとられているから、アリスのことまで考えていられないんだよなあ。まったく、あんなにあからさまなのに、とニヤニヤ。天然な言葉に動揺しまくるアリスがとても可愛かった。お互い相手を言い訳にしながら行動をするあたりは、とても不器用だと思うけれど、それぞれの役割を持って動ける関係はよいものでした。

事件そのものの謎よりも、人の思いこそが謎になり、真実にたどり着く前に、一度は諦められた道だったけれど、「再依頼」のメッセージを受けてからの皆の行動には、熱いものがありました。四代目が格好よくてどうしてくれようかと思ったけれど、言葉で人を動かすナルミとアリスも、格好良かったです。

それにしても、少佐は、今後もあのままでいられるのかしら。ちょっと不安。

神様のメモ帳 7 (電撃文庫 す 9-15) - 杉井 光

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