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Kaguya 月のウサギの銀の箱舟 / 鴨志田一
Kaguya 月のウサギの銀の箱舟
「あ、これ、相互理解を深めるための共同生活だから。そこんところ、理解しておいてよね」
「いや、まだオッケーはしてませんよ。だいたい、立花がいいっていうかも」
「わ、わたしは全然だいじょうぶです!宗太さんなら、信用できます!それに……」
少し迷ったあとで、ひなたは続きを口にした。
「わたしには、ほかに行き場所も居場所もありませんから」
ムーンチャイルドと呼ばれる少年少女たちがいる。だが、「力」を悪しきものと捉える世間の目から逃れるために、「力」の存在を明かすムーンチャイルドはほとんどいない。
そんなご時世に、ムーンチャイルドであることを隠して過ごしていた高校生の宗太が、重力を操るという巨大な力を持つものの、目の見えない少女、ひなたと出会って……というお話。
いくら道に迷ってるからって、女の子を拾って帰るってどうよと思ったけど、なんかいいなあ、この二人のやり取り。小動物のようなちっこさと、バレバレでも失敗を認めずに強がる姿が、とても可愛いひなたと、優しいんだけど、どこか不器用な宗太の組み合わせは、見守りたくなる微笑ましさがあります。おにぎりを食べるところとか、学校までの道のりとか、ほんと素敵。
ちなみに一番好きなシーンは、ふたりで動物園へいったときの模様。何この見守りたい空気!最高すぎる。
年下だけど、事情があって、宗太と同じ学校どころかクラスにまで転校してくるところには、どんなラブコメが待ち受けているのかとワクワクしてたら、いやはや、凄惨な殺人事件が待ち受けているとは思ってもいなかった。なまじ、ラブコメな雰囲気もある分、やるせなくなる。
犯人逮捕に向けて、宗太を含むムーンチャイルドたちが、自身の力を生かすべく動く姿には、なんとなく痛ましいものを感じるのは、ただムーンチャイルドというだけで、迫害されている者たちの追い詰められた雰囲気を感じるからなんだろうなあ。
さらには容疑者のひとりがクラスメイトどころか、宗太の……なところに、ああ、もう、妙なもどかしさを感じて、うぅ……。
事件を追いながら、ひなたの秘密に触れて。突きつけられた事実は痛ましいものがあるけれど、っていうか、ひなたを押し付けた黒田の言い分は、どこか身勝手だと思うんだかけど、でも、あの真っ直ぐな思いには、応えてあげたいと思うよなあ。
一度犯した失敗を、次には笑って手をつけることができたのは、優しさで支えてくれる人がいるからだということが見えてくる最後の戦いが、とても良かったです。
いやあ、面白かった。ムーンチャイルド話よりも何よりも、ひなたと宗太の話が最高でした。まだ恋愛には至っていないけれど……と思っていたら、とっても素敵なラストが待ち受けてて、笑ってしまいました。嬉しいけど、苦悩が待ち受けてるって大変だ。
まあ、じっくりと悩んでくださいよと、肩をぽんと叩いて見守ってあげたくなりますね。
これは続きがとても楽しみです。
Kaguya2 月のウサギの銀の箱舟
「ひなたちゃんのこと嫌い?」
「まさか」
「なら、好き?」
「……よくわかりません」
世間から白い目で見られるムーンチャイルド。その特殊な力を隠しながら、学校生活を行う宗太の前に、巨大な力を持ちながら目の見えない、天真爛漫な少女ひなたが現れて、というお話の第二弾。今回は、ひなたに告白された宗太が、自分はどうしたいのかと悩むお話です。
ああ、なんとももどかしい。ひなたが一生懸命なだけに、宗太が気まずくなっていくのか、手に取るようにわかります。自分はクラスメイトである千歳が好きなはずなのに、と心揺れてる時点で、もうひなたに惹かれてるんですよね。
初めての制服姿、初めて手にした携帯電話でのやり取り、初めての学校行事、初めての花火と、ひなたが楽しそうに笑顔を見せるシーンは、宗太でなくても目を引くものがある気がしますが、その笑顔や好意が、宗太に向けられるんだから、そりゃもう!
自分がクラスメイトだったら、うらやましいという気持ちよりも、ひなたに対しては頑張れ!と応援をしたくなるでしょうし、宗太に対しては悩んでる姿を見てニヤニヤしたくなるだろうなあ。
さりげなくひなたをバックアップする京先輩の気持ちがとてもよくわかる。
とまあ、日常方面は、ニヤニヤしっぱなしですが、迫害されているムーンチャイルドが事件を起こすというのは、前作同様で。話だけ聞いてると、追い詰められて仕方なく的なものを感じるがゆえに、いろいろやるせないものもあるんだけど、それよりなにより「かぐや姫」の秘密が見えてきたのが、今回の一番の出来事ですよね。
まだまだわからないことだらけだけど、かぐや姫の研究が進んでいないことや、もうひとりの「かぐや姫」の登場したことから、ひなたと宗太が巻き込まれるであろう先行きに不安がよぎります。
それでも、最後がとろけるほど甘かったのはよかったなあ。願わくば、この幸せな時間が続きますように。
Kaguya3 月のウサギの銀の箱舟
「お互い意識してるから、妙な空気になるんだよ。どう思われてもいと思ってる相手に、緊張したりするか?少しでもかっこよく、少しでもかわいいと思ってほしいなんてのは、お前らの年代じゃよくある話だからな。ま、お前とひなたちゃんの場合、今まではただの同居人だったのが、男と女になったってことだろうよ」
小さく、そうかもしれませんね、と宗太は答えた。
「ま、それをどう乗り越えていくかは宗太とひなたちゃんの問題だ。最初の壁ぐらいで弱音吐いてんじゃないよ」
世間から白い目で見られるムーンチャイルド。その特殊な力を隠しながら、学校生活を行う宗太の前に、巨大な力を持ちながら目の見えない、天真爛漫な少女ひなたが現れて、というお話の第三弾。今回は、おつきあいを始めたばかりの二人の間に邪魔ものが入り、悶々としてる最中に、海へ旅行することになって、というお話です。
いやあ、初々しいですなあ。つい先日まではふたりっきりでいるのが自然だったのに、付き合い始めたことで意識しまくってしまうおかげで、ギクシャクする様子がたまりません。思わず、大人である黒田に相談しちゃうところに、宗太の必死さが見えますね。ま、普通に考えたらのろけにしか見えませんが。そりゃ、こんなことしてたら、周囲の女性陣にからかわれるわけですよ、ええ。
宗太とひなたが真っ赤になるシーンは、何度読んでも楽しいものでした。
そんな楽しい雰囲気に水を差すのは、かつてかぐや姫を殺害したとされる指名手配されている福島の存在で。
「かぐや姫に迎えが来る」
その言葉が生み出す不安が、知らず知らずのうちに生み出した、ひなたとの間の溝はやるせないものがありました。
独りよがりとなっていた宗太の行動に対して、ひなたが告げた言葉は厳しいものがあったかもしれませんが、でも、あの言葉があったからこそ、そしてひなたの「やりたいこと」の想いがあったからこそ、宗太の行動から奇跡が生まれたんだと思います。あの「やりたいこと」発言の時には、涙がじわりでした。
さてさて、ひとまずの危機はさったものの、まだまだ謎は多く、宗太の道は険しいことになりそうですね。
それでも願わくばハッピーエンドになってほしいです。
Kaguya4 月のウサギの銀の箱舟
「今日はどんなありがたい言葉をくれるんだ?」
冗談のつもりで、第一声を発した。
だが、その返答は、あまりにもはっきりしていた。
「行けば、大切な人を失いますよ」
世間から白い目で見られるムーンチャイルド。その特殊な力を隠しながら、学校生活を行う宗太の前に、巨大な力を持ちながら目の見えない、天真爛漫な少女ひなたが現れて、というお話の第四弾。今回は、宗太とひなたの間に生まれたアルテミスコードの謎を解くために、「ずっと手を繋いで過ごす」実験をしていたら、もうひとり家族ができて……というお話。
お互い気持ちは分かっているのに、一緒にいると照れしまう初々しいやり取りがたまりません。人目のないところでは、やることやってますしね!
まったくかわいいものだとニヤニヤな共同生活に変化が訪れたのは、家族が一人増えてから。ちっちゃなお子さまのゆうひは、好奇心旺盛で甘えん坊で、思わずひなたが拗ねちゃうほど、宗太が構ってる様子に、ほのぼのしながらしてたら……か。
アルテミスコードそのものに罪はなく、その力を宿した子にも罪はないのに、不安要素というだけで、排除しようとする人がいることに、心が痛みます。たしかに大きすぎる力は怖いけど、受け止めようという心があれば、違うのでは……と思うのは、宗太の周辺にいる大人たちを見てしまっているからかな。
アルテミスコードの変異版とも言うべき、チャイルドコードの真実は衝撃と恐怖に包まれていたけれど、仲間と、頼りになる人と、好きな人がいれば、それらを支えにして前に進むことができると、そう思いました。
切り抜けることができたのは、偶然の重なりあいかもしれないけれど、ひなたの優しさと、人の温かさを知っていたからこそ、ですよね。それを伝えたいという宗太の思いに、辛くとも、胸が温かくなりました。
とはいえ、切り抜けるために無理をしたことで、別の道を選択肢に入れざるを得なくなってしまいましたが、さて、宗太は愛する人たちを守っていけるのでしょうか。楽しみですね。
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