グランドマスター! / 樹川さとみ
グランドマスター! 総長はお嬢さま
宗教集団ミトラーダの陰の総長 ― すなわち女性総長が復活したといううわさは、あっという間に広がったが、名ばかりの女性総長に興味などないハルセイデスは、いつもどおり毎日鍛錬をし、島の警護をこなしていた。ところが突然、女性総長シアシーカの補佐に任命されて、あろうことか、世直しの旅に出されてしまった。美人だけど行動が変なシアシーカと、いてもいなくてもいいような寄せ集めの部下とともに……
優秀だけど堅物な軍人ハルセイデスが、個性的な部下と共に、ノーテンキな姫総長を守りながら、旅をするお話です。
いやあ、何か、こう、いい具合に力が抜けるコミカルさでしたね。いきなり人のケツを触ったり、馬に乗りながら眠って落馬したりと、変で予想もつかない行動を取り捲る総長に振り回されるハルの苦労が何とも楽しいです。
寄せ集めの部下たちも個性的すぎて、どう考えても護衛には向いてないから、ハルの気苦労が耐えませんでしたね。そりゃ、鬼軍曹にもなるわ。
お堅いせいで、部下たちはみながみなハルのことを怖がっていましたが、ハルと一番衝突していた総長がさりげなく弱点を教えてあげたことが、ハルを知っていくきっかけになっていくところは良かったですね。近寄りがたい存在から、怖いけど頼れる人となっていく。いやあ、いいなあ、こういう絆。
一番印象的だったのは、とある任務のときに、ハルセイデスが、部下ひとりひとりに指示を与えるところですね。的確な配置には、各人たちをしっかりと見ていたことが伺えますし、何より信頼が感じられました。旅を続けていくうちに、少しずつ総長や部下への意識が変わっていくのは伝わってきていましたが、ここまでの信頼を見せてくれるなんて、何か嬉しかったなあ。個性的な部下たちは、全員魅力的でしたもんね。みんな大好き。
いやあ、楽しかった。
ハルの暴走を止められる人であり、言葉足らずな不器用さも理解していたシーカと、そんな彼女をいつしか無視できなくなっていたハルは、かなーりお似合いな気がしますが、お互いどう思ってるんですかねぇ。登場人物がほぼ全員男という感じなだけに、恋愛要素はここしかないから、とても気になります。なかなか発展しないかもしれませんが、お互い意識しあうような仲になってくれると嬉しいな。
続きも大いに期待です。
グランドマスター!呪われた女騎士?
美女たちを連れ去り、外国のスケベオヤジへと売り飛ばす「人さらい船」の話を聞いて、周囲の反対を無視しておとりになった総長のシアシーカは、あっさりとさらわれてしまった。彼女を守るべく役目を仰せつかっていたハルセイデスとその一行は、なんとか彼女を救い出したが、囚われの身になっていた美女のひとりアスティルは、自分は女性ではないと、なにやら素性を隠して……
優秀だけど堅物な軍人ハルセイデスが、個性的な部下と共に、ノーテンキな姫総長を守りながら、旅をするお話の第二弾です。今回は、素性を隠す男装の女騎士を、目的地まで送り届けようとしたら、お家騒動に巻き込まれて……みたいなお話です。うん、たぶん、間違ってない。
いやあ、笑った笑った。相変わらずのノーテンキさを振りまくシーカの天然っぷりが楽しくて楽しくて。さらわれたのに圧倒的食欲で相手の食糧を奪ったり、のぞきをしたり、セクハラ三昧なところが、ツボにくるったらないです。なんだ、このセンスは。最高じゃないか!
そんな総長の面倒をみねばならないハルさんが不憫でなりません。総長のアスティルに対するセクハラを止めさせるための自己犠牲に涙しました(笑いすぎて)。
いろいろ振り回されて、お怒りになることも多いけど、お似合いですよねー。微笑ましくなってくる。
アスティルの呪いについては不幸だなと思いますが、そんな彼女(?)をみっちり鍛える辺りに、ハルセイデスの不器用な優しさが見えます。団のメンバーも、ハルセイデスの性格を把握して、信頼と親愛を見せてくれてるところが、何とも心地よい雰囲気を作ってくれますね。厳しいかもしれないけど、こういう旅路は楽しそうだ。
今回、団員の中では、女大好きファーンのバカさっぷりが目立ちましたが、個人的には、ノールソールの株が一気に上がりました。手抜きの天才って!立会いですら手を抜くとは、素敵過ぎ。手抜きが生んだ大技に笑ったのは僕だけじゃないはず。
お家騒動については、アスティルの婚約者の性格の良さ(いい性格しているねぇという良さ)にやられましたが、むしろ、シーカの秘密やミトラーダ側の思惑とかが見えてきたことが興味深いです。っていうか、天然な振りして、実際天然なんだろうけれど、それでもいろいろ秘密を持ってそうなシーカが、今後どういう動きを見せてくれるのか楽しみですね。
ただ、笑いこそあったものの、シーカとハルセイデスのつながりを感じる描写が、ちょっと物足りないなあと思ってたら、最後に来てくれましたか。傷ついたハルセイデスを看病したがるシーカと、好き勝手やらせるハルさんにニヤニヤ。
グランドマスター! 道連れは王子様
本部からの指令を無視して、旅を続けていた「黎明の支社団」は、豪華客船「海の泡号」に乗り込んだ。総長が騒動を起こし、ハルセイデスが諌めと、いつものような風景が繰り広げられていたが、そこになんと、シアシーカの元婚約者・ジェダール王子が偶然乗り合わせていたことから、事態は一風変わっていってしまった。なんせ、ワガママな王子様は、いまだシアシーカに未練があるのだから……
優秀だけど堅物な軍人ハルセイデスが、ノーテンキなシアシーカ姫を総長をして守りながら、個性的な部下と共に旅をするお話の第三弾です。今回は、一行が船に乗ったら、かつて総長と婚約したという王子が乗っていて、というお話。
ああ、楽しい!
初っ端のシアシーカのアプローチを、ハルセイデスが悪乗りするところとか、思わずにやりとしちゃいましたが、肝心なところで朴念仁だよなあ。まったくもって、女心のわからないヤツです。……と思ったけど、今までのシーカの行動を振り返れば、本気に捉えるわけないか。ある意味、自業自得ですね、シアシーカ。
というわけで、仲がいいんだかよくわからないふたりですが、そこへシアシーカ姫を諦めきれない、王子様が登場してくれたおかげで、それもシアシーカの本性を知らないおかげで、ハルさんとの間に認識の齟齬が生まれるんだから面白くないわけがない。かみ合わない会話に、思わず吹き出したことが何度あったことか。
その上、シーカが王子の誤解を招くような言動を繰り返すおかげで、ハルさん大迷惑状態になるところとか、すっごい楽しかった。まったりとしたユーモアに、にやつきが止められません。
幽霊問題やら、刺傷事件など、船の上でいろいろな出来事が起きていったときには、ちょっとドタバタ過ぎるような思いもしたけれど、振り回されていくうちに、普段とは違うシーカの姿を見て、普段とは違う思いを胸に抱いて、モヤモヤしたものを抱えたハルさんを見れたのは、良かったですね。You、もうちょっと素直になっちゃいなよYou!とハルセイデスに言いたくなりました。
いやあ、楽しかった。
最後にまた神を降ろしたシアシーカでしたが、その身に降りかかる重さを感じたハルセイデスが、彼女を支えた姿が、とても印象的でした。普段、突拍子もないことばかりやってるように思えるけど、実はいろいろ考えて動いているってことが、大切な人に伝わったのは、良かったですね。
ところで、だんだんと他の団員たちの存在感が薄くなってきてるような気がしないでもないので、そろそろ誰か大活躍を……させたらハルさんが大変になっちゃうからいいか。
グランドマスター! のこされた神の郷
「ききたくもないが、そのうさんくさい予言というのは、いったいなんです」
「ええと……これ、わたくしが言ったわけじゃありませんからね、そこを踏まえてきいてくださいね?」
なぜかシーカは横をむいてもじもじしちえる。
「わかりました。そんなとんでもない予言ですか」
「巨大な悪とむきあって世界を救うらしいですわ」
優秀だけど堅物な軍人ハルセイデスが、ノーテンキなシアシーカ姫を総長をして守りながら、個性的な部下と共に旅をするお話の第四弾。今回は、腰痛を抱える書記シンドーのために、温泉によろうとしたら、そこは邪教の村で、というお話。
笑った。笑いまくった。シアシーカの突拍子もない思いつきと、それをクールにかわすハルさんのやり取りは、最高だ!団員たちの視線から見る二人のやり取りは、好奇心よりも、好意の表れみたいなものを感じて、団としての繋がりも感じました。
で、ふたりっきりのとき、シアシーカの身にこれから何が降りかかるかってことについての予想が、彼女自身の口から明かされてましたが、うーん、きな臭いなあ。危険とわかっていながら、力を使った彼女を軽率と思うハルさんは、それだけシアシーカのことを大切に思ってるからなんですよね。もちろん、彼女の気持ちもわかってるから、ダメと言い切れないあたりが難しいですが、ますますの信頼で結ばれていく二人が素敵でした。
そんなこんなでいろいろあるけど、ひとまず温泉にと足を向けたら、よりによって邪教の村に入り込んでしまうんだから、この団はどこまでトラブルメーカーなんだと思ってしまいますが、団員たちがバラバラになりながらも、気づけば、解決への道へ続くネタを持ってくるから、面白いんだ。
カイと少女の間で、何かが生まれるんじゃないかと思ってた僕としては、ちょっと物足りないところもあったけれど(そこは期待するところじゃない?)、護るべきものを護るハルさんの戦いや、ラーと呼ばれる村の魔女を諭すシアシーカの言葉が、とてもよかった。
さて、今回の温泉物語で、休息はひとまず終わりって事になるのかしら。ミトラーダが何かしら仕掛けてきそうな感じがあるので、不安ではありますが、この団ならきっと乗り越えてくれると、信じてます。
シアシーカに秘密があったって、ハルさんはきっと!
ところで、ラストにちゃんと温泉シーンがあったのはうれしいんですが、えーと、なんでこんなに色気ないんだろ。いや、楽しかったからいいですけどね。
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