銀月のソルトレージュ / 枯野瑛
銀月のソルトレージュ ひとつめの虚言
家族と死に別れ、伯父のところに引き取られた心細さを助けてくれたのは、アリスだった。彼女がいてくれたからこそ、今の自分がある。決して想っていないわけじゃないけれど、今の距離がちょうどいい。
そう思っていたリュカの前に現われたのは、銀の髪をした美しい少女だった。
「見つけた」と呟いたあと、少女は手にもっていた剣で、リュカの左胸を突き刺し……
過去に関わったことが原因で命を狙われることになったリュカが、命を狙っていたジネットと共に行動する事になる物語。これはいいですね。素敵な雰囲気に惹きつけられます。
何が素敵かといったら、リュカとアリスの関係がとても素敵なんですよ。周りから見たらつき合っているようにしか見えないけれど、まだ恋愛にまで発展していない。そんな微妙な距離感がとてもいいです。リュカからしたら、ちょっと辛いのかもしれませんが、大切な人であることが伝わってきますね。
命を狙う者と狙われる者、それを作り上げた者の関係が、伝承と絡み合っていく展開は、オーソドックスではありますが、非常にうまいと思いました。過去と現在の展開が見事でしたね。それにしても、魔法という非日常が絵的に映えるなあ。
子供の頃のリュカとフィオルの話がまた良かったんですよ。辛い過去を送ったであろうフィオルからしたら、自分に対して好意というか、信頼を寄せてくれるリュカが、大切な存在になったんでしょうね。一緒にいるだけで微笑んでしまうフィオルの気持ちと、子供ながらフィオルに好意を寄せたリュカの気持ち。結末がわかっているからこそ、この微笑ましさが、切なくてたまりませんでした。
最後は、なるほどそうくるかという展開で、意外ではありましたが納得するものでもありました。これはジネットの物語でありながら、リュカの物語でもあったということですね。うん、大満足。
ただ、今後どうなるんでしょうね。リュカはわりとキーとなる人だった気がするんだけど、あの終わり方をしちゃうと、ここで終わりなんでしょうか。それとも……?
いろいろ気になることが多いので、続きがとても楽しみですね。オススメです
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銀月のソルトレージュ2 金狼の住処
創立際二日目。学術院はあふれんばかりの人で賑わっていた。いつもと変わらぬ風景、いつもと変わらぬ友人。だが、リュカの心には疑問が渦巻いていた。多くの人が亡くなった、あの夜から一週間が経つのに、何の騒ぎも起きていないのだ。
ひょっとしたら、学術院も魔法について何か知っているのかと、思い当たったとき、何も言わず去っていった少女が、変わり果てた姿で自分の目の前に現れて……
平穏な生活に戻ったのに、魔法について調べてしまうリュカの焦りというか、何がしたいのか自分でもわからない感じが伝わってきましたが、これはもうジネットに会いたいからとしか思えなかったですね。
すぐ側にアリスというかわいい子がいるのに!とアリス贔屓な身としては、思わず説教したくなるところですが、自分の立っているところは、既に違う世界にあるということが、何となくわかっているからじゃないかなあ、と思ったりもしてしまいます。
今回はリュカの叔父さんが、いい感じに活躍してたなあ。ジネットと同盟を組むまではともかくとして、そのあとの奇策には、これがほんとにあのリュカの叔父か?と思ってしまいましたね。いやあ、目が点になる集団をみるのは、とても楽しいものですね。
学術院も魔法を知っているということが明らかになったわけですが、リュカが詳細を聞こうとすると、みなが関わりあうなと言うあたり、なぜなのかという疑問が、ずっと頭の中にありましたが、事実を知らされたときには、納得です。そりゃ、誰もが隠すはずだ。
思わず胸を押さえてしまう話でもありましたが、このあたりは、過去の話もいろいろ絡み合うんですよね。この過去話がまた何とも涙を誘うもので……
叔父であるアルベールが経験したことよりも、姪っ子であるクローディアの決意に、まだ幼い少女の覚悟に、成長した今となっても言葉に出すことができない状況に、切なくなりました。いつか……はあるのかなあ。
二百年も前の話は現実にあったということが、実感できなかったリュカが、ジネットとのちょっとしたやり取りから、目の前にいる人は、魔法などを使えるとはいえ、同じ悩みを持った人なんだなと、実感していくところが良かったですね。
この実感があったからこそ、リュカは最後までリュカたる行動をとったんだと思います。
いやあ、面白かった。雰囲気は相変わらず良いし、いろいろ謎なところもわかってきたし、それでいて、あのラストですからね。別れてしまった者たちの出会いが、今後どうなっていくのか楽しみです。
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銀月のソルトレージュ3 琥珀の画廊
レオネルは討ち果たした。傷も癒えた。ならば、次にやることは魔女を倒しソルトレージュを奪うことだ。そんなジネットにアルト老人は言う。少し休んでみてはどうじゃ、と……。そんなつもりは毛頭なかったが、ソルトレージュやリュカの情報を得るには、「ここ」にいることが、もっとも有力であることに気づいた。期せずして、しばしの静寂を迎えることになったジネットだが、周囲はすでに動いており……
アリスやジネットの決意が描かれるお話ってところでしょうか。リュカがいなくなったことで、それぞれが現状を振り返る姿が印象的ですね。特にアリスが、自分の居場所を「借りもの」と認識していたとは思わなかったなあ。明るさの裏側では、いろいろあったんですね。ちょっとしんみり。とはいえ、ジネットの言うとおり、リュカがそんなこと考えてるとは思わないけど。
いろいろ指摘されて、むっとしながら、恋のライバルを前に、段々と明るさを取り戻していくところが良かったです。やっぱ、アリスはこうでないと。
ちなみに、おでこ押さえるのとくまを抱いてるアリスイラストが、たまらなくかわいい。
一方のジネットも、なんだかいろいろ考えてましたね。自分はこれからどうしていくのかと迷う姿は、リュカのことがきっかけになったんだろうなあ。魔女を追うのは当然のことながら、ふと訪れた静寂に戸惑うなんて、なんとも切ない限りです。
個人的に印象に残ったシーンは、街を出る決意をするジネットに対して、アリスが言葉をかけるシーンですね。
「この街に、心を置いていけというのか?」
「逆ですよ。心に、この街を、持っていってください」
この言葉で、ジネットがどれほどの心強さを思ったことでしょう。たとえ恋のライバルだろうと、相手のためを思えるアリスが大好きです。今後登場減るかもしれないけど;;
アルト老もくだらないことばかりやってるように思えましたが、ジネットのためを思っていることが伝わってくるところに、じんわり。
とまあ、アリスやジネットの心の動きは良かったんですが、それ以外のところで、ほとんど話が動いてなかったから、どうにも微妙に思いました。いろいろ情報は出ては来るんだけど、他の情報・状況との繋がりがごちゃごちゃしてて、よくわからなかったからなあ。おかげで、乗りづらかったです。まあ、ある意味つなぎのお話だったので、続きとか読めばわかるのかなと思うんだけど……ううむ。
それにしても、彼女が騎士を手に入れるとなると……いったい、どうするんだ?どうなるんだ?
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銀月のソルトレージュ4 扉なき仮宿
ベルセリオとミルガの国境を走る列車の中で、ジネットはためいきをついた。あれからもう二年が経とうとしている。だが、いまだになんら手がかりをつかめていない。先行きの見えない旅路に、気分が沈んでいたとき、食堂車両に幼い少年に目がいった。どこかで見たことがある気がして何とはなしに見ていたが、二年前に記憶を失くしたという少年の言葉に、ジネットは驚愕した。
まさか……この子が……
魔法書によって不死者となったものたちが、『ひとつめの嘘(ソルトレージュ)』 を求めるファンタジーの第四弾。今回は、リュカを捜し求めて二年の月日が流れ、というところから物語が始まるんですが、前作とは違って、いろいろなものが見えてきて、かつ動きがたっぷりだったので、面白かったです。いったい何がおきているのか、次に何が起こるのかと、引き込まれるばかり。
中でも印象深かったのは、ジネットの心の動きかな。リュカと思わしき人を見つけたのにもかかわらず、言い出せない。言い出せないからこそ気づいてしまった思いが、なんともやるせない。
かつての敵を目の前にして、戸惑いを覚え、あまつさえ、力を貸すところに、彼女にとってリュカがどれほどの存在であったかが伝わってきます。
ジネットにとって、天敵ともいえる王城の女王の存在も、少女でありながら、その鋭さには目を見張るものがありましたが、「妖精」の意味を知りながら従えさせるには、情が深すぎるんですよね。いつかはとわかっていながらも、側にいてほしいと思ってしまった少女の思いに胸が痛みます。
敵であったクリストフにすら切ない物語があったりして、温かさとそれを失うかもしれないという不安要素が、あらゆるところに見えていましたが、まさかこういう結末を迎えるとは……。
失ったものの大きさを考えると、ジネットの心にどれほどの傷を負わせるのかわかりませんが、逆に手に入れたものもあるわけで、このあたり、どう心の整理をつけていくのかしら。
あとがきによると、どうやら次で最終巻っぽい。ソルトレージュを求めた旅が、どういう終わりを迎えていくのか、楽しみですね。
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銀月のソルトレージュ5 針のように細い銀の月
「……だから、泣かないで、リュカ」
泣いて ― いるのか、俺は。ああ、そういえば、さっきからやけに、頬が冷たい。
「手の中にあるものを守りたいなら、それでいい。
手の中から滑り落ちてしまったものを悔やむなら、それでもいい。
けれど忘れないで。今のきみの手の中は、からっぽじゃないでしょう。
きみには、まだ、守れるものがあるはずでしょう?」
魔法書によって不死者となったものたちが、『ひとつめの嘘(ソルトレージュ)』 を求めるファンタジーの最終巻なんですが……、やばいぐらいジゼットが可愛いんですけど、どうしてくれよう。デレどころか、恋する乙女みたいに、顔を赤らめて素直に頷く姿とか、やばかったです。
笑顔でお迎え&エプロン姿で夕食の支度、さらには「そんなことされたら勘違いしちゃうだろ!」というリュカの情けない発言に対して、返した言葉に、悶えまくったのは内緒。
とまあ、平和な一面がありつつも、世界は少しずつ変化していて。そのあたりを感じながら、一体自分はどうすればいいのかと悩むリュカの姿は、気持ちがわかるだけに、もどかしいがありましたが、ここで彼の目を覚ませてくれた、アリスが素敵でした。好きな人への想いとは、ここまで強いんだなと思った次第です。
アルト老やアヴィンなど、ジゼットを思う人がいてくれるかと思ったら、リュカを思ってくれる人もたくさんいて。人の繋がりの温かさが、彼らの支えだったんだなと思いましたね。
それにしても、「魔女」をめぐる秘密には、驚かされました。ひとつひとつのピースがはまって、全貌が見えてくるところには、ある種の快感を覚えましたよ。
最後に合わさったピースに驚きを覚えながら、ひとつの物語を閉じたリュカのまっすぐな思いに、人への愛情を感じました。
いやあ、面白かったです。日常部分の長さとは裏腹に、魔法方面が短かったので、もうちょっと読みたかったところですが、最後にはきれいに終わってくれたので、満足満足。これから先、あの三人は、きっと、いつまでも一緒にいてくれるんじゃないかなと、そう思いました。
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