学校の階段 / 櫂末高彰
学校の階段
高校に入学したばかりの幸宏がどの部活に入るか迷っていたとき、とてつもないスピードで階段を駆け下りてくる少女に出会った。いったい彼女は何をしているのかと疑問に思っていたらトラブルに巻き込まれてしまったけれど、ひょんなことからその少女に助けられ、いつの間にやら彼女の部に入ることになってしまった。
部活とは「階段部」―それは校内を走り回るレース。
「ショットレース」「スタンダード」「ラリー」
タイムをかけた戦いが今始まる!
校内を走る。階段をかけ上がる。
ただそれだけのはずなのに、なんだこの熱さは。
ここには間違いなく青春がある。
「廊下は静かに」が当然の学校内で駆け巡る部活。本人は楽しくとも回りに迷惑をかけているという意識がある。その後ろめたさ故に他人へ怒りをぶつけてしまった幸宏が後悔し、決意するシーンが印象的でした。
情けないバカガキが。人に助けてもらってばかりで、それなのにちっとも気づいてないヘタレが。今できる恩返しとしたら……。
いやあ、素晴らしき失踪。
こんな話でこみ上げてくるなんて思わなかった。文句なしに傑作です。
大いにお勧めな第7回えんため大賞優秀賞受賞作。
学校の階段 2
階段部のことはなし崩しで認められたが、正式に創部するには顧問と生徒会長と校長の判子が必要になる。
そこで、部長の九重は、ミーティングで女子部員の増員と顧問の確保という課題を挙げたが、階段部という迷惑な部活の顧問を引き受けてくれる教師がいない。
そんなおりに PTA と理事が階段部の話を聞いて視察に来るという噂が出回り……
きれいに終わっていた前作からどう続けてくるのかと思ったら、各部員を掘り下げる方向で来ましたね。今回は部長の九重と刈谷の過去、なぜ階段部を作ったかが描かれています。
勢いと熱さと青臭さがとても素敵だった前作なので、ややシリアスな話が多くなった本作はどうなるかと思ったけれど、九重の話は良かったなあ。己の限界が見えてきたときに見つけた光という展開が、とても素敵でした。階段部を作ったのは、逃げではなく攻めなんですよね。
もともと階段走っていたのは刈谷の方というのは意外でしたが、なぜ走っていたのかについて具体的な話は描かれなかったですね。それは衝動というしかないモノなのかもしれません。
前作では微妙な四姉妹でしたが、今回では小夏がしっかり絡んできます。
そして注目の階段レースは熱いです。幸弘の叫びが胸にジンときます。みなで盛り上がる階段レースのシーンなんて最高じゃないですか。
「実はいっぺんやりたかったんだよな」
自分が学生のときにこの部があったら、同じように思ったでしょう。
読み終わったあと爽快感が体中を駆け巡りました。う〜ん。気持ちいい。
もし次作があるのだとすれば、恐らく天ヶ崎の話になるのではないかと思われます。
「雷の女神様」の過去話が楽しみでしょうがないので、ぜひとも続きをお願いしたいです。
学校の階段 3
夏休みに入って、天栗浜高校では、非公認の部も含めた全校合同合宿が実施されていた。
女子部員獲得を目指す階段部部長はこの機会を逃さず、お互いの部員を賭けた女子テニス部と戦うことを提案し、実現させた。よりによって、テニスという種目で。
一勝でもすればいいというハンデはあったものの、三戦中二戦はあっけなく惨敗。勝負の行方は「黒翼の天使」天ヶ崎とテニス部エースの美冬の対決に託されたが……
「黒翼の天使」の二つ名をもつ天ヶ崎の過去が明かされるお話。
自分の居場所がどこかということを迷う姿は、未来へ不安があるからなんですよね。九重のような感じで引っ張っていってくれることは、ある意味楽だから、その事を気づかせる刈谷の発言にショックを受ける気持ちがわかります。まあ、このあたりは過去の負い目もあるんだろうなあ。
努力した結果が実る・実らないのところで、恣意的な疑問を感じてしまったら、トラウマになるのも分かる気がする。
そんな感じで若干シリアス風味だったせいか、今回はちょっと盛り上がりに欠けた気がします。いや、面白かったんですが、いつもほどの熱さを感じませんでした。熱い戦いというよりも、自分との戦いという感じだったからでしょうね。
階段レースをする必然があまり感じられなかったのもあるかも。
とはいえ、傷ついた少女が立ち直っていく姿はとても良かった。自分を見つめなおすための行動が、階段を走ることというところがやっぱり階段部なんだよなと思わせてくれます。走るきっかけを作った冬美のまっすぐな言葉が、胸に響き渡りました。
ひょっとしたら幸宏を巡る争いとかあるのかと一瞬思いましたが、天ヶ崎は既に気づいているし、それはないか。
幸宏の声援ひとつで、パワーアップする冬美姉さんがカワイイ。
次は三枝の話っぽいですね。彼も何か過去があるようです。不穏なことを口にしているだけに、今後の階段部の動向が気になりますが、個人的には暗躍するお話よりも、熱く突っ走る展開になってほしいなあ。
ちなみに例の部は今回も活躍してくれました。まさかそのネタでくるとは!意表をつきすぎです。毎回登場が楽しみでなりません。
学校の階段 4
スポーツの秋。異様な盛り上がりを見せた体育祭の後に、いきなり三枝が退部届を出した。かつて三枝が階段部に入部したいきさつ、刈屋と約束したひとつの目標を知った階段部員たちは、このまま辞めさせるわけにはいかないと、三枝に勝負を持ちかけて……
いやあ、素晴らしい。今までで一番きれいにまとまってた作品かもしれない。
階段部員 VS 三枝が描かれる物語です。
やさぐれていた三枝が、階段部に出会い、少しずつ心境が変わっていく日記を見ていると、何かにぶつかっていける対象があるっていいなと思います。
仲間ができたことで、逆に自分の弱さを知ってしまい迷う姿は、頭脳派と言われながらも、人とのやり取りにおいては、未熟であるところを感じさせますね。階段部員を相手取っての戦いでも、それが随所に現れていたと思います。
それにしても強いなあ、三枝は。部員全員を良く知るからこその勝利には、むしろ部員のためを思っての行動なのかもと思ってしまうのは、何だかんだ言って、悪役になりきれてないところを感じたからでしょうか。よくわからないなりに、それを見抜いた幸宏もいいですが、辛いときに、いつも頑張る力を与えてくれる美冬姉さんが素敵ですね。
ぎりぎりまで追い詰められたけれど、最後の最後を持っていけたのは、好きという気持ちだというところが、何とも青春じゃないですか。どこか引っ込んでいた見城が、ただただ思いをぶちまけるシーンとか、思わず熱くなりますね。恋する乙女の心意気に完敗です。
罰掃除をするふたりのシーンは、思わず、頬が緩むほど、すごい良かったし、圧し掛かっていた過去に対しても、きっちりと向き合うことができて、素敵にハッピーエンドでした。恋ってほんといいですよね。
そういえば、何気に校長先生もいい味出してました。三枝の両親との会話は、胸を打つものがあります。こういったところも見逃せなくなってきましたね。
次はどんな熱い物語を持ってきてくれるのか、とても楽しみです。
学校の階段 5
文化祭まであとわずか。どうやら階段部も参加することになるようで、準備が大変だ。そんな中、井筒はひとり苦悩していた。周囲の状況が状況だけに、間違った告白であることを、なかなか凪原に言い出せないのだ。なし崩し的にダブルデートが組まれて、どうしようかと迷っている中、文化祭で交流することになっている山上桔梗院の生徒・槙島が、妹を泣かせたと井筒に敵意を向けてくるというトラブルが勃発して……
井筒の覚えのないことで他校の生徒とトラブルになり、階段レースで決着をつけようとするお話ですが、ぶっちゃけ階段レースよりも、井筒と凪原の関係がとても良かったです。
凪原に謝って告白を取り消したいのに、クラスメイトの女子やら九重やらが盛り上がってしまって、ダブルデートが組まれた時の井筒の様子には、可哀想すぎて笑ってしまいました。まあ、自業自得だし、可哀想さで言ったら、凪原の方が可哀想なので同情はしないけど。
ただ、今まで、お気楽な印象があった井筒が、神庭と本音のやり取りができるようになったところには、嬉しい気持ちになりましたね。仲間っていいです。
槙島と井筒の騒動から、階段レースになるのは、どうにも微妙なんですが、九重がいたからしかたないか。まあ、勝負よりも、凪原と槙島の妹である愛との話のためのレースでしたからね。
状況に流されて、期待に応えるために自分を押し殺して。そんな自分だったことを省みた凪原が、親友のために叫ぶシーンは、良かったなあ。彼女が変わろうと思ったきっかけは、井筒だと思いますが、それを後押ししたのは、槙島愛だったんじゃないかと思いました。
いつの間にやら、三島や凪原まで参加することになったレースでしたが、一番印象的だったのは、凪原が井筒にバトンを渡すシーンですね。何も言えないことが、言葉にならないものが、バトンと共に伝わってる感じがして、素敵でした。イラストもいいですよねー。
井筒が応えた「任せろ」という言葉がかっこ良さに惚れ惚れしました。
とまあ、ここまででも面白かったんですが、一番面白かったのは、最後の章、文化祭当日のお話でしたね。「筋肉の案内板」から始まって、各部員たちの文化祭の模様があるだけなのに、笑いとニヤニヤが止まりません。サエぽんのキザっぷりには、思わず「きゃー」と叫びたくなりましたし、美冬姉さんの態度にニヤリとさせられましたし、ナギナギの決意には、頑張れ!!と応援したくなるものがありましたから。でも一番好きなのは、刈谷と中村のシーンかな。短いやり取りの中に、多くのことを感じさせるものがありました。
いやあ、面白かった。レースはあくまできっかけに過ぎず、それ以外のところでも青春してるってことが、たっぷり伝わってくるお話でした。
会長が何を考えてるのかわからないのはいつものことですが、どうやら山上側にもいろいろあるみたいだし、馬淵については、天ヶ崎だけじゃなくて、神庭も関係してくるっぽいので、このあたりがどうなってくるのか楽しみですね。
学校の階段 6
文化祭も終わり、生徒会役員選挙が始まろうという11月。神庭幸宏は、いつもと違う自分に気づいた。階段を見ても気持ちが高揚してこないのだ。なぜだろうと自問していたときに出会った編入生の御神楽あやめは言う。
「飽きちゃったんじゃないの?」
彼女の言葉が胸に突き刺さったことに気づいた幸宏は、階段部から距離を置く決意をして……
燃え上がるものがなくなってしまった幸宏の悩みと、そんな彼を放っておかない別の動きが描かれるお話です。何気にシリアスだなあ。でも、これがまた素敵に青春なお話になってます。
燃え尽き症候群じゃないですが、他の部員が新たな技をマスターしたりと楽しく過ごしている中、ひとり高揚できない幸宏の孤独が伝わってきます。ただ、何でそんな気持ちになったのかが、いまいちよくわからないまま、話が進んでいくので、うーむ。
悩む幸宏を励ますように美冬姉さんが健気な事をしてくれますが、言葉がないのがほんと残念。素直に言っちゃえよ!と後押ししたくなる気持ちでいっぱい。
周囲の動きもちょっと変で、特に山上との係わり合いは、思わせぶりな話ばかりで、ちょっと辟易。誰がどういう関係に当たるのかは、わりとわかるんですが、それが何を意味するのかがわからないので、どうにもこのあたりは読んでてストレスたまりますね。次あたりで明かされるのかしら。とりあえず、水戸野と天ヶ崎のあたりは、個人的に注目中。
新たに登場したあやめは、幸宏のよき理解者かと思いきや……あまりにも都合よい存在だったので、不安が増してたんですが、自分の目標に素直な方ですね。っていうか、こんな高校生いるのか?生徒会なんて近づきたいとも思わなかった学生の頃を思い出してしまいましたよ。
ともあれ、彼女が生徒会長になったら、危うしな階段部なので、このあたりは大いに気になるところ。
結局のところ、幸宏の悩みについては、理解できないところがありましたが、ブチ切れた事で、吹っ切れはしたかしら。階段レースが主となるお話ではなくなってきましたが、それでも最後の決断は、やっぱり階段を走ることからなんだなあという展開が素晴らしかったです。
階段レースが自身の原点(というのもなんだけど)として使われることは今後もありそうですね。部活ってそういうものでもあるってことに、気づかされました。筋肉研究部部長だって、いろいろ縮こまってたけど、やっぱり筋肉と共に動いてたし。決して逃避じゃなく、前向きに筋肉する姿に感動です。笑いながらだけど。
今回のお話で、階段部員それぞれの意識が、少しずつ変わってきている印象を受けましたが(特に二年生組が)、それぞれが自分のできることをやりながら、力をあわせていくような展開が見れたらうれしいですね。次はどうなっていくのか楽しみです。
学校の階段 7
生徒会長選挙へ立候補することを決めた幸宏だが、既に立候補を表明していた御神楽との差は否めなかった。それでも、できる限りのことをやっていこうという幸宏を、階段部のメンバーが後押しした。推薦人に井筒、広報活動に九重と天ヶ崎、そして、ブレーンには三枝と刈谷が。
それでも、生徒たちの間では、御神楽が優勢だったが、ある時、生徒会長候補者同士の対談で、幸宏が一言を放ったことから様子が変わり……
学校の階段を疾走する階段部のお話の第七弾。今回は、階段部員の一年生、神庭幸宏が生徒会長に立候補して……という選挙ものです。
いやあ、面白かった。いかにも、という選挙シーンに、学生時代を思い出してしまいましたが、言ってることとかはさておき、みなで協力し合って、という空気がいいですね。御神楽のおかげで、クラスメイトの力を得ることが難しくても、階段部はもとより、今まで部を通して知り合った人たちの声援が届いてくる展開が良かったです。
演説とか対談とかを読んでいると、御神楽のセンスが光って見えたので、いったいこれをどう打破していくのかと思ったら……、ここでくるか筋肉!いや、ほんと笑った。笑いました。筋肉吹きましたよ。これまでも、何かと印象的なシーンを見せ作れてくれた筋肉研究部の影響が、ここにきて華を開かせたとでもいいましょうか。
あの一言で、僕だったら、幸宏に投票しちゃいますが、そのあとの筋肉祭りが、暑苦しく、それでいて熱い友情を感じて、なんか、良かったですよね。
今回は、階段部のメンバーは、ほとんど裏方に回ったので、目立ちませんでしたが、部長が役立ってたのが意外でしたね。ああいう演技(じゃないのかもしれないが)させたら、右に出る者はいなそう。それよりも、他人との係わり合いを避けがちな三枝が、他の見事をしにいったというところのほうが印象的かな。甘い時間を過ごしてたときには、ちっ、と思ったけど許してさしあげます。
甘いといえば、美冬姉さん。家じゃ、幸宏のことを睨みつけることしかしてないように思ったけど、部活では違うんですね。部長さんがからかうぐらいだからなあ。幸宏のことをどんな風に話しているのか、聞いてみたいったらないです。部活でミッフィーと呼ばれてるところに萌える。
ちなみに、今回のベストイラストは、表紙をめくってすぐのところに待ち受けている美冬姉さんのイラストです。これを見て、買わずにいられるだろうかと思ったのは僕だけじゃないはず(と思いたい)。
ああ、楽しかった。
たった一言で流れを変えて、その流れを階段部や力を貸してくれた人たちが引き寄せてくれて。
最後の最後まで優しさを見せた幸宏の格好よさったらないですね。ええ、御神楽は惚れたに違いありません。美冬姉さん、負けてられないよ、と応援したくなる終わり方でしたね。
これでひとまず選挙ものは終わりですが、今後どうなっていくんだろう。そういえば、山上桔梗院学園の問題にも、一部ケリをつけたものがあったけど、まだまだ問題は残ってるだろうし……と、続きが気になるばかりです。
学校の階段 8
「念のため、今度のレースについて、もう一度確認しておきましょうか」
不意に、波佐間の声がした。
「今度のレースは、十二月二二日。終業式の日ですね。場所は僕ら山上の校内。三対三の団体戦で、三枝さんと浅沢が一回戦。九重さんと寺城さんが二回戦で、神庭君と僕が三回戦。全てラリー勝負ということで良いですか?」
学校の階段を疾走する階段部のお話の第八弾。今回は、生徒会選挙も終わり、ついに天栗浜高校と山上桔梗院学園の階段レース勝負が始まるお話です。
頑張るなあ、神庭幸宏。生徒会役員のうち、男が幸宏と筋肉さんしかいないという中、普通に考えたら無謀な計画を発動させちゃって、女の恐ろしさを知らされたかと思ったら、突き進むんですから、たいしたものです。まあ、孤立無援になるのかと思ったら、意外にも御神楽さんが、目立たぬよう手助けしてくれてたってのが大きかったと思うけど。
御神楽さんのみならず、どこの乙女だよとか言いたくなる井筒の陰からの支えがあったのも大きいだろうなあ。っていうか、御神楽さんが、井筒が生徒会室に入ってないって話をするまでは、本気で井筒×神庭な世界を想像してたから危なかった。って、余談過ぎる。
余談といえば、役員会議で、女性陣に囲まれた筋肉さんが、震えてるところに大爆笑。
という具合に、生徒会方面は大変だけど頑張ってるなあという感じでしたけど、個人的にはそっちはわりとどうでもよくて、気になるのは、階段レース話。レースに向けて、地道に勝算を固めていく波佐間の姿は、とてもスポーツマンらしさを感じたんだけど、顔で笑いながら心に暗いものを隠してることが見えてくるあたりで、ひょっとしたら、逃避に近いものがあるのかなと感じてきて、なんともやるせない気分になりました。
悩むことがあっても突き進む神庭とは、違ってるようで、でも似てるような、なんか不思議な関係だなあ。
身体的能力差は否めず、ではどうやって戦っていくかを悩む神庭でしたが、忙しい生徒会方面では御神楽さんが、戦術方面では、階段部のメンバーがと、みなの支えがあったからこそ、自信を持って戦うというところまでたどり着けたあたりが、個人的にはすごく良かったです。
結局のところ、周囲の人と協力し合ってきた神庭と、周囲を拒絶し一人で戦ってきた波佐間というあたりが、勝負を分けたんでしょうね。
いやあ、面白かった。ここ数巻は、階段レースがなくても面白かったというか、むしろ無くていいよねと思ってましたが、今回は、階段レース方面が、熱かったです。
最後に聖夜のパーティで、神庭がいろんな女の子からアプローチを受けてるところに、ニヤニヤしちゃいましたが、まさかあんなオチが待ってるとは思わなかったなあ。もし、あれが無かったら、いったい神庭は誰を選んだんだろう?
とても気になります。
学校の階段 9
ずっと、ずっと追いかけてきたんだ。……この背中を。
一年前のあの日から。追いかけ続けてきた。
追い抜くんだ。今日。
ビバ青春の無駄足。学校の階段を疾走する「階段部」のお話の第九弾。次期部長を決めるための部長戦の様子を描いたお話です。
いやあ、面白かった!
一行目から吹き出してしまったのはともかくとして(たった一言で誰がしゃべっているかがわかるってすごいと思う)、実力が拮抗してる人の競争は、興奮させられますね。総当り戦なので見所満載です。レースだけじゃなく、レースに至るまでのお話も興味深いものがありました。特に天ヶ崎や三枝の階段部にかける思いは素晴らしいものがある。このあたりは年長者に一日の長があるか。
とはいえ、レースにかける思いの中で一番熱かったのは井筒でしょう。部長戦メンバーの中では一番下にいるという思いを抱えながら、黙々と練習を積み重ねて、時に八つ当たりすることもあるんだけど、走り出すと夢中になるその姿勢は、見ていて気持ちがいいです。実力が拮抗しているからこそのレースの楽しさが伝わってきて、ほんと面白かった。部長との出会いの話や、部長戦に挑む決意も、単純だけど彼らしくて、楽しかったです。
そんな井筒とは打って変わって神庭は……何を見つけたんだろう。階段レースの先を目指して、あとちょっとで何かをつかめそうになりながらもがく姿は、とても青春してたんですが、レースが始まると、淡々としながら抑えきれない思いみたいなのを感じてちょっと怖くもありました。このあたり刈谷との絡みもあるので、後に明かされるのかな。
似ている二人は鈍さも似てて、ちょうどバレンタインってことで、まあ、そういうイベントがあったんだけど、義理としか思ってないあたりが何と情けないことか!神楽坂の一歩引きながら決して譲ろうとしない姿に惚れ惚れしただけに、その鈍さがアレです。っていうか、真冬姉さん、敵に塩を送ってる気がするんだけど……いいの?
刈谷も似たような感じではありますが、「筋を通す」人の思いを受け止めずにいられるかどうかは微妙な気がするので、このあたりも楽しみにしておこう。
いやあ、熱いレースでした。レース前までは、それぞれが個々の練習を積んでいたために、ほとんど絡みがないんだけど、「部」としての繋がりを感じるせいか、部活動モノとしての絆みたいなものを感じて、年甲斐もなく興奮するものがありました。あのときホワイトボードを用意した真夏姉さんにグッジョブ!と言いたい。
とりあえず部長戦は終わったわけですが、先を目指すものの戦いはまだ終わってないみたいですね。なんとなく次で終わりなんじゃないかと思うぐらいの盛り上がりを見せていますが、どうなるのかしら。続きがとても楽しみです。
学校の階段の踊り場
「九つあったプリンを、ここにいる私たち八人とあやめさんでひとつずつ食べれば数はピッタリ合う。そうよね?」
角井先輩が真子先輩にズイッと顔を近づけました。真子先輩は笑顔を引っ込めようと努力しながら「そうでーす」と答えます。
「それじゃあ、どうしてひとつ足りなくなったの?私はまだプリンを食べていないのよ!」
ビバ青春の無駄足。学校の階段を疾走する「階段部」のお話の第十弾。
今回は、学校のアイドルを選出する「女神委員会」や天ヶ崎家で催されたお泊まり会「夜明けの階段」、冷蔵庫にあったプリンを食べたのは誰?「プリンはどこへいった?」、美冬と幸宏の幼い頃、サンタはいると信じた二人の「サンタ同盟」、父の実家を幸宏が従姉たちと訪れる「盂蘭盆会」の五編からならなる短編集です。階段レース無しです。
読んでると、幸宏の隣に来るヒロインは、美冬姉さんなんだろうなってのが伝わってきます。ツンとしているけど、ちょっとした動作や一言で、幸宏の心を持っていくんだから、ニヤリとさせられます。「夜明けの階段」でのラストは、イラストもステキで惚れ惚れです。
美冬も一緒に出かけるときは、さりげなく気合い入れてるようで、まったくお似合いですね。もうちょっと打ち解けてくれたら最高なのにと、じりじりしながら読んでました。
個人的に一番好きなお話は「夜明けの階段」かな。体育祭の興奮覚めやらぬ夜に、天ヶ崎家にみんな(女子限定)でお泊まり会をするお話なんですが、いずみのお嬢様っぷりに驚きつつ、かしましい女の子たちのやり取りに頬をゆるませてと楽しさ満載。特にいずみが美冬に対しては積極的で、意外に思いつつ新鮮さを感じました。こういう同級生ならではの距離間がいいです。
幸宏は男だけで集まってワイワイやってましたが、くだらねーと思うようなことでも、皆で集まるとやってしまうような勢いってのが、なんか、わかるなあ。こういう無駄な青春シーンがとても好きです。
いつものような疾走感はないけれど、「階段の踊り場」としての面白さはありました。どうやら次が最終巻らしいので、どうやって締めくくるのか楽しみです。
学校の階段 10
刈谷先輩。もしかして、ずっとこんな思いをしていたんですか?たった一人きりで、誰にも理解されない思いを抱えていたんですか?
この感覚は、他の人に説明が出来ません。刈谷先輩は、だから一人きりで走っていたんですか?今も、一人で走っているんですか?
やっぱり、僕も独りにならないといけませんか?
ビバ青春の無駄足。学校の階段を疾走する「階段部」のお話の第十弾。刈谷との勝負にこだわり孤立していく幸宏を尻目に、階段部包囲網が敷かれていき……というシリーズ最終巻。
正直言うと、幸宏や刈谷の求める「先」については、よくわからないことがあって、なんともモヤモヤさせられるのは、実は幸宏の抱える孤独は、特別なものじゃないんだよなあという感じがあるからかしら。わけのわからない焦りから、少しずつ意識のズレが生まれていったけれど、それでも、見えないところで支えてくれる仲間がいるという描写がとても良かった。
階段部包囲網については、一瞬まじで?と思ったけど、すぐ気づけましたよね。ああ、愛されてるなあと思うばかり。階段レースによらない勝負の盛り上がりも良くて、特にさえぽんの言葉には、きゃっきゃしたくなった。
幸宏を巡る女性関係に結論が出なかったのは残念でしたが、三島さん、御神楽さん、美冬姉さん、みんなに活躍の場があって、それぞれに魅力を見せてくれて、まったく幸せなヤツだ。いいねー青春って。
最後の階段レースも良かったけど、卒業式模様も良かった。もともとああいうシーンには弱いんだけど、送辞・答辞共にじわっときましたよ。「先に、いかせてもらう」にしびれた。
いろいろあったけど、やっぱこの一言に集約されるんじゃないかなと思います。
「階段部、大好きー!!」
おもしろかったです。ありがとう。
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