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戦うボーイ・ミーツ・ガール

世界最強の武装集団「ミスリル」に所属するエリート戦士の相良宗介と仲間のクルツ、上官のマオの三人は、KGB から狙われていると予想される女子高生、千鳥を密かに護衛するという任務に当たることになった。
同じ日本人で同年齢である宗介は、千鳥と同じ学校へ転校しそばで護衛にあたることになったが、軍人としてしか生きてこなかった宗介はどこか突飛な行動ばかりをしてしまい……

2006年上半期ライトノベルサイト杯で見かけたので手を伸ばしてみました。
始めは単なるドタバタ的なコメディかと思ったら、途中からサスペンスな展開。シリアスな場面とコミカルな場面が見事に展開しています。これはおもしろい。
修学旅行中のハイジャックやら、アーム・スレイブと呼ばれるロボット同士の戦闘など盛りだくさんな内容に加えて、軍事的な話が面白い。変なところが細かいですが、臨場感溢れてますね。

平和ボケならぬ戦争ボケしていて、普段はやっかいごとしか引き起こさない宗介が戦闘になるとかっこいい。ミスリルに入る前の宗介についてはチラリとしか出てきませんでしたが、この辺りは後々語られるんでしょうね。結構ヘビィそう。
語られるといえば、千鳥も同じかな。特に変わったところなどなかったというのに、狙われることになった原因はいったい何なのかというところがとても気になります。

勢いに乗って読まされてしまいましたが、僕が一番好きなシーンは、護られていると知らぬ千鳥が訝しいと思いながらも、宗介を嫌いになれないシーンですね。あの駅のベンチのシーンはとても素敵でした。
これから二人がどんな学園生活をしていくのか楽しみです。

戦うボーイ・ミーツ・ガール  賀東招二

疾るワン・ナイト・スタンド

<A21> というテロ・グループの一員が日本の税関で捕らえられた。日本政府にその重大さはわかっていなかったが、ミスリルにはその少年が重要なキーであることを知っていた。
テッサやカリーニンが面会に向かい、検査の結果を確認したところ予想通り彼はクロだった。
背後関係を聞き出そうとした矢先に、厳重に警備された建物にアーム・スレイブが襲撃してきて……

宗介からみたら予測をしていない方向から巻き込まれた感じの騒動じゃないでしょうか。
まあ、かなめのお怒りもわからんでもない。せっかくソースケのためにいろいろやって、理由がわかったから謝ろうと思ったら、テッサがいるんだもん。16歳の若さで艦長と言われても普通は信じてもらえませんよね。間に挟まれた宗介には悪いですが、おふざけをするテッサににやり。
勘違いから発生するふたりの騒動が、とてもコミカルでしたが、同時に切なくなる恋心。いや、まだ本人たちは認めてませんけどね。

個人的には、逃げることを良しとしない宗介が、かなめとテッサに挟まれたとき、増援やマオ、クルツが来るのを必死に願うシーンが印象的で笑いころげました。シリアスなシーンなのに、ここまでコミカルにできるのはさすがです。

<A21>は結局のところ、操られていたに過ぎないんでしょうけれど、破壊力はすごかったな。意外にもかなめが活躍してましたね。裏側で操っていた輩が何者なのか気になりますが、ぶっちゃけ、騒動なんてどうでもよくなるぐらいの出来事が最後にありましたね。

まさかテッサもかなめと同じだとは思わなかった。ふたつの意味で。
ライバル宣言は、とっさの判断があれだけ狂うぐらいですから、わからなくもないです。
この三角関係は今後どうなるのか大いに楽しみなところ。

疾るワン・ナイト・スタンド  賀東招二

揺れるイントゥ・ザ・ブルー

あと一週間で高校二年生の夏休みが終わってしまうと、ため息をついていたかなめに、宗介が声をかけた。
「それなら、数日間、俺と遠出をしないか」
ふたりで出かけるなんて、心の準備が……とあたふたするものの、ちょっとした冒険と思っていくことにした。
ちょっとした冒険どころか、大冒険になるとも知らずに……

夏休みに宗介に誘われて出かけたら、実はミスリルの任務だったと言うお話。

いつの間にやら、かなめがミスリルに関係するようになってきましたね。ウィスパーズなので、当然かもしれませんが、それ以上にテッサ率いるミスリルの連中が、かなめを大事に思う気持ちが伝わってきました。サプライズなシーンは、自分がかなめだったらくすぐったくなったでしょうね。

出だしこそ平和でコメディであったものの、展開はサスペンス満載。またもやガウルンの手によるテロ。こやつは不死身ですか。
餌におびき寄せられるように動くミスリルの傭兵部隊ですが、ジェットコースターノベルといっても過言ではないでしょう。次から次へと襲い掛かる事態を皆で協力しながら回避していく展開に引き込まれました。

むろん、単なる戦闘モノで終わらないのがフルメタル・パニックのいいところ。かなめのブルーな気持ちと、任務に失敗した宗介のブルーなどなど、題名どおりブルーな気持ちがたっぷり。どちらの気持ちも分かるだけに辛いですね。

今回はクルツがかっこよかったなあ。口調こそおちゃらけているけれど、女性にはやさしいし、諌めるときはしっかりしているし。任務に失敗したことよりも、八つ当たりしてしまったことを怒るなんて、漢ですよね。
テッサの艦長としての行動もかっこよかった。

それでも一番良かったのはやはりラストです。仲違いしてしまったふたりが、初期の作戦目標をこなすシーン。このシーンはもっと見ていたかった、もっと読んでいたかった。そんな気持ちにさせてくれました。

いやあ、青春ってほんといいですね。

揺れるイントゥ・ザ・ブルー  賀東招二

終わるデイ・バイ・デイ 上

テスト前日にも関わらず、宗介はミスリルの仕事でイタリアへと飛び立った。
ミスリルの仕事とかなめの警備。宗介にとってはどちらも大事な仕事だ。かなめがミスリルというよりも、宗介に対して信頼を示し始めてきてからは、特に。
だがその日、宗介の元へ届いたミスリルからの指令は、宗介の気持ちを一転させた……。

いくら音声状況が悪いからって、電話越しでも戦闘してるってわかると思うんだが……。そんなぎりぎりの状態でもかなめとの電話を切ろうとしない宗介の気持ちにニヤリ。

宗介の気持ちと裏腹の指令がミスリルから下されるという展開。
指令を知らされたときの宗介の気持ちを考えると……。ふたりの信頼がはっきり見えた直後なだけに、余計に苦しみが伝わりました。テッサの言いたいこともわかるし、上からの命令が多分にあるんだろうけれど、ふたりの関係が好きな身としては、仲が進まなくてもいいから、一緒にいてほしいと思うんです。

今のところ、上層部の思惑ははっきりしませんが、幻のコールナンバーが出て来ただけに、下巻ではシリアスさにさらに拍車がかかりそうです。

終わるデイ・バイ・デイ 上   賀東招二

終わるデイ・バイ・デイ 下

考えすぎだと思った。宗介に連絡がつかないことなんて今までもあったのだから。虫の知らせなんて、当てになるわけがない。
それでも、不安になった。ならば、宗介の部屋にあった通信機を使えば連絡が取れるかも。
そして、かなめは宗介の家に向かったが、部屋の中には、家具が何一つなかった。もぬけのからだったのだ……

宗介の不在に気づいたかなめが、何とかしようと動き始める展開。やけに不自然だなと思った前作のラストがようやく腑に落ちる。

今回はかなめがかっこよかった。宗介がいないことに愕然として、でも、落ち込むのは後回しにしてまず行動するというのは、とてもかなめらしい。無謀すぎると思うけど、やはり行動力が彼女の持ち味ですよね。
テッサの兄のしでかしたことは、ショックも大きいけれどより強く宗介を渇望する原動力になったといいほうに解釈。さっさとやっておけばいいものを……。

それにしてもあの真面目な宗介が任務放棄とは驚いた。それだけ、かなめを置いて離れたということが心に響いてるんでしょう。ぼうっとしてしまう心境がとてもリアルだし、よくわかりました。
後半はお約束ではありましたが、読んでいて宗介と一緒に気分が高揚する感じでした。うん。よかった。
どうせなら、ちょっと二人の仲も進めちゃえばいいのに。

「俺がもし恋愛ドラマの脚本家だったら、絶対お前みたいなタイプの男は主人公にしないだろうね。だって、話がすすまねえんだから。視聴率ガタ落ちだよ」

クルツの言葉は作者の自嘲だったりして。

終わるデイ・バイ・デイ 下 賀東招二

踊るベリー・メリー・クリスマス

以前、台無しになった修学旅行の代わりとして、クリスマスに豪華客船に招かれた陣代高校の面々。
奇しくもクリスマスはかなめの誕生日であったが、みなで楽しめるならと参加することにした。当然、ソースケもくるものだと思っていたら、突然「任務が入った」と不参加を表明され、不貞腐れていたら、当日、船が占拠された。
占拠したのは覆面をかぶっていたが、どこかで見たことがある金髪とドジっ子の女の子と乱暴な言葉使いをする連中で……

豪華客船をミスリルが占拠するという物語。
何でミスリルが、というのはまあいいとして、笑いあり、シリアスあり、ちょっぴり寂しく、しっとり温かいという素晴らしさ。軽すぎない軽さがいいですね。「踊る」と題しているせいか、例のドラマを連想してしまいました。ひょっとしたら意識しているかもしれません。ウルトラ C なアクロバットとか、ドラマチックですよね。

テッサがいい思いをしていたり、かなめとテッサが絡んだりと微笑ましいばかり。嫉妬しあうふたりに挟まれちゃうとソースケが役に立たず、止められるのはマオだけというのが面白い。

読後一番に思ったのが、ついに!でした。いつものことと思っていただけに、ちょっとした衝撃でした。かなめはともかく、あのソースケまでがねぇ。テッサがちょっとかわいそうですがしかたない。
むろん、自覚したからといっていきなり何かなることはなりでしょうけれど、これからが楽しみでしかたありません。

そうそう。口うるさい号令係だと思っていたマデューカスのかっこよさに惚れました。テッサとのコンビにも期待です。

踊るベリー・メリー・クリスマス   賀東招二

つづくオン・マイ・オウン

「そろそろ、無理だと思うよ」
引退間際の生徒会長の言葉は重かった。たしかに、これほどの騒ぎが連続していれば、誰が狙われているかなどというのは、明白だろう。もう、平和なときは限界なのかもしれない。
重苦しい雰囲気の中、かなめと宗介が帰宅すると、部屋の中にはレナード・テスタロッサが待ち受けていたが……。

ついに本格化するミスリルとアマルガムの戦い。

はじめの林水の言葉で不安いっぱいになりましたが、予想以上にとんでもなかった。かなめとミスリルを襲うアマルガムの包囲網。はじめか終わりまで、圧倒的不利な展開。
どこまでもどこまでも追い詰められていくミスリルとかなめに、すべてが後手後手に回る展開に、息苦しさと悔しさを感じてしまいました。何てジェットコースターなスピード感だ。

かなめにとっての唯一の弱点を狙ってくるのはある意味当然で、今まで狙ってこなかったのが不思議なぐらいでしたが、ま、これが本気ということなんでしょう。かなめの動揺は当然というか、戦闘を経験しているとはいえ、平和ベースな生き方ですからね。無理も無い。
その気持ちがわかるだけに(自身もそうであるだろうから)、理性よりも賭けに走ってしまったんだろうなあ、宗介は。

今回一番印象に残ったのは、絶体絶命のとき、兵士の無礼をとがめ、逆に激励した言葉。そこにはあの弱々しかった少女ではなく、多くの人の命を抱える仕官の姿がありました。かっこよすぎ。

今回は、一応ひと段落ついているけれど、完全に続く形で終わっていました。壊滅的なダメージを受けたミスリルの反撃はなるのか。かなめと宗介の運命はどうなるのか。などなど、続きが気になってしかたないです。
そういえば、カリーニンはどうしたんだろ。

つづくオン・マイ・オウン 賀東招二

燃えるワン・マン・フォース

アーム・スレイブがぶつかり合う賭け場として、知られ始めてた闘技場で、宗介は寝食と引き換えに、とあるおんぼろチームの AS 乗りとして競技に参加していた。
彼女のへの手がかりを探すために、アマルガムへの手がかりを探すために……。

ミスリルの他の連中が全然でてこないし、かなめもぼんやりとしか出てこない、ほぼ宗介のひとり旅となる展開。

AS乗りとして優秀であっても、後ろ盾が無ければ組織には対抗できないということで、外堀を埋めていこうとする宗介の行動に、冷静なようで焦ってる感じが伝わってきます。彼女のために頑張りたいと思いつつも、離れていることで少しずつ意識が薄れていくというのは、逃避っぽくてとてもリアル。
かなめを彷彿させるような新キャラがいるのも逃避に走りたくなる原因の一つなんだろうなあ。間違いなく彼女も例のアレでしたが、宗介はかの人たちを何か惹きつけるものでもあるのかしら。

そんなこんなで、宗介の心情溢れる物語でしたが、アクションもすごかった。今回の AS での戦闘はシリーズ中でもピカ一じゃないでしょうか。旧型も旧型というほどのサベージも、使い方によっては戦えるというのがよくわかりました。
薀蓄ってありすぎると困るけど、いい具合にあると物語を引き締めますね。

最後に出てきた機体が気になるし、ミスリル(というよりトゥアハー・デ・ダナン一行)の動向も気になります。いつ合流するんだろう。かなめは、今のところどうしようもないのでしかたない。
期待しながら続編を待つことにします。

燃えるワン・マン・フォース 賀東招二

つどうメイク・マイ・デイ

死ななかったのは奇跡に近い。そう言われるほど、宗介の身体は衰弱していたが、かなめを取り戻す決意に変わりは無い。レオンたちの協力を得て、昔の伝手を辿り、リハビリしながら、アマルガムの情報を集めていた。
一方、テッサたちもアマルガムを追っていたが、ミスリルによる支援のない状態に、次第に追い詰められて……

前作の終わりが終わりだっただけに、そして本作から反転攻勢が始まるって事で、期待はしていましたが、まさかこれほどまでとは思わなかった。期待をはるかに上回る面白さに興奮しっぱなしです。
アマルガム打倒を決意するテッサと仲間たちのやり取りに涙したところから、もう一気読みでした。

特に中盤以降の離れ離れになっていた人たちが集結して、一気に敵を叩くところは、いままで溜まっていた鬱憤をすべて吹き飛ばすような展開でしたね。まさに「つどう」という言葉が相応しい。震えるほど興奮させられます。いやあ、熱い。

ありとあらゆる場面で、熱さを感じるか、涙ぐむようなところがありましたが、最後のかなめと宗介のやり取りを読んだら、他の話が全部頭の中から吹っ飛びましたよ!ここしか頭に残りませんよ!
囚われの身となったかなめは、悶々と悩む姿は、心が痛くなるところがあっただけに、あの「約束」に込められた思いには、もう……。鳥肌と涙が止まりませんでした。
約束を守るには、これから先、腐るほど苦難が待ち受けているでしょうけれど、あの言葉が心にある限り、宗介がくじけることはないでしょうね。

圧倒的な戦力を持つ相手がいたとしても、こっちだって宗介の相棒が戻ってきたし、仲間が集結してきたし、と高揚してましたが、ふと思い返してみると、不安なところも多分にありますね。一番感じたのはテッサが無理してるところですね。仲間を失ったことが、かなりキテる様子が伺えるだけに、誰か支えになってあげてくれと願いたくなります。
そういえば、まさかまさかの人がアマルガムにいましたが、いったい彼は何をしようとしているんだろう。敵に回るとこれほど怖い存在もないだけに、その理由が気になりますね。

これから先どんな展開が待ち受けているのかわかりませんが、きっと今回のように熱く燃えるのは間違いないでしょう。続きがとても楽しみですね。
いまさらオススメしなくても、みんな読んでるんじゃないかと思うけど、それでも大絶賛でオススメしたくなりますね。

つどうメイク・マイ・デイ - 賀東 招二

せまるニック・オブ・タイム

まだミスリルは生きている。そのことを知った元ミスリルの面々が、少しずつ集結し始めたころ、テッサはアマルガムの動きに不自然なものを感じた。もしかしたら、組織構成が変化してきたのかもしれない。ならば、これは隙となるかもと、次なる戦いへと照準を合わしながら、テッサはウィスパードゆかりの地へと足を運ぶ決意をした。
一方かなめは、転々と移動させられる軟禁生活に、日に日に衰弱して……

クライマックス直前ということで、いろいろなことが明らかになってきましたねぇ。前半から中盤、中盤から後半にかけてと、物語が進むにつれて、ドキドキが止まらなくなるお話でした。

バラバラになっていたメンバーが、少しずつ集結し始めているとはいえ、そのほとんどがテッサひとりに圧し掛かってる状態なので、いったい彼女は大丈夫かと心配になりましたが、いやあ、まさか宗介が支え……というか、別の道を見せてあげるとは思わなかった。硬いだけの男が、硬いなりに冗談を言って、今までと違った考え方を示したのは、大きな成長を感じました。
汚れた手かもしれないけれど、それでも希望を捨てたくないという思いが、心にくる。

一方のかなめは、連れまわされるうちに弱っていって、さらには、例のウィスパードの力のせいで、まさか!と思うことを幾度となく見せてくれるから、心臓に悪いったらないです。しかもこれが後に響いてくるから、恐ろしい。
レナードがまた妙な具合になってるから、余計に危なっかしいったらないです。

そんな二つの勢力が遭遇したのが、ウィスパードの始まりの地であるから、運命とはこういうものなのかと思いましたねぇ。テッサと、そしてレナードが明かすウィスパードの真実は、まさかと思いながらも、なるほどカリーニンが動いたのもそういうことかと納得させられるものがありました。
積み上げてきたものを消すってのは……と思うけど、それでも、どちらの思いもわかるだけに難しいものがある。

とまあ、いろいろあったけど、このお話のクライマックスは、やっぱり、狙撃手の戦いですよね。クルツVSクルツの師匠カスパーの千メートルをはるかに超える距離での戦いは、駆け引きとタイムリミットのおかげで、緊張感ありまくり!
あの一発が見せた軌跡に、思わず涙。

いやあ、面白かった。結構な厚さがありましたが、一気読みさせられましたよ。
いろいろ見えてきたおかげで迷いも生まれてきましたが、かの者の目覚めは、更なる混乱を引き起こして、ああ、どうなっちゃうんだろう!不安で不安でたまりませんが、いや、でも、まだ涙を流せるのであれば、望みはあるのかもしれない。

次でクライマックスとのことですが(あと一巻で収まるかわからないとも言ってますが)、宗介が涙を流せるような、そんなハッピーエンドを期待したいですね。

せまるニック・オブ・タイム - 賀東 招二

ずっと、スタンド・バイ・ミー(上)

「状況は厳しいわ。作戦は困難だし、危機は重大だし、時間もたぶん足りなくなる。でも、実はもっとひどい、とにかく最悪の話があるの。なんだかわかる?」
「?」
「さあ……」
首をかしげる一同に、マオは言った。
「あんたたちが世界を救うってことよ」

学園ミリタリーアクションの最終巻(の上巻)。全面核戦争が始まろうとするカウントダウンの中、「時間災害」によって歪んだ世界を元に戻そうとするか<アマルガム>と、それを阻止しようとする<ミスリル>の生き残りメンバーが激突するお話しです。

アマルガムとミスリルの成り立ちを確認して、登場人物それぞれが、自らの立場から現状を見つめ直す形で物語が進んでいきますが、ああ、これが最後なんだなあと感じさせる描写が随所にあって、思わずじんわりきちゃう……。

それにしても、テッサたちには厳しい戦いですね。少ない兵数をさらに分けねばならない状況に追い込まれるんですから。片方だけを止めればいいというわけにはいかず、ならば単独でもと思い詰めるテッサに対して、きちんと向き合わせたマデューカスさんが格好よかった。責任の重さから潰されそうになっていたテッサが、ふっきっていくところは、何とも可愛らしいものでしたが、宗介はまだ精神的にそこまでたどりつけない。もどかしいんだけど、迷う気持ちも分かって、そう割り切れるもんじゃないよなあ。

あるいは三人だったら、たぶん宗介もマオも大丈夫だったと思うけれど……クセがつよい76ミリの弾が余るとか、ふたりに影を差す描写は見ていて辛い。でも、そんな彼を奮起に持っていくマオは強いよなあ。厳しい戦いになることが見えていて、それでもユーモアを忘れない彼らに、幸あらんことをと、切に願う。 ……ところで、アレはアレだよね。頭撃ち抜かないでほしいよね。

いろんなことを予感させる戦闘準備と、緊張感を高めるタイムリミットから、ついに最後の戦いが始まり、テッサ格好いい!ソースケいけー!と言いたくなる熱さで、終盤は一気読みでした。一兵士として戦いに向かう宗介が、ここからどうするのか、かなめとどうなるのか(世界なんかどうでもいい!)。下巻が待ちきれません。

フルメタル・パニック!11  ずっと、スタンド・バイ・ミー(上) (富士見ファンタジア文庫) - 賀東 招二

ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)

『……千鳥かなめ、聞こえるか!?』

『……オープン回線で呼びかけている。返事ができないなら、聞いていてくれ!俺は来たぞ。すぐそこまで来ている!』

『俺は君を連れ戻しにきた。わかるか?連れ戻しにきた!』

かなめを救い出す為に、宗介が、レナード、カリニーンたち<アマルガム>の待つメリダ島へ辿り着いて……学園ミリタリーアクションの最終巻です。

もはや言葉にならない。冒頭だけ読むなんて無理でした。ページをめくった直後からクライマックスで、ソースケの言葉に心が奮えてしまったら、読む手を止めることなんてできなかったです。ソースケ、マオ、テッサ、かなめ、次々と場面が変わるスピード感と戦いに引き込まれ、全ての場で涙させられる。ああもう!

全ての戦いが熱かったですが、やはりソースケが一番かな。ただひとりで、いやアルと一緒に飛び込んで、長年共に戦ってきた人だからこそ互角以上に戦えて。宿命ではなくともレナードにギリギリまで追い詰められ、そして親父……最後まで厳しく、優しい人だと思いました。切り抜けても切り抜けても、襲い掛かってくるピンチに、決して諦めなかったソースケが、ついに……というときに流れた映像と、自覚した思いを発した言葉は、本当に胸を打ってくれて、涙が止まらなかった。

ここまできたら、最後に「問題ない」といって終わるのもぜんぜんOKです。つーか、むしろ最高じゃないか!表立って戦うことはなかったけれど、内なる叫びと共に起きたかなめが、現実にくずおれそうになり、でも負けなかった姿に、ああここにかなめがいると思いましたよ。帰ってこれて、抱きしめることができて、本当に良かった。

主役二人のみならず、わかっていたけれど出てきてくれて、ああ神様といいたくなった男の登場と、館長として「THANK YOU」と言葉を送った母なる思いのキスシーンも、人間として行動した彼……そのほかたくさんの場面で感動させられました。たどり着いた結末がまた素敵で、ああ良いものを読んだと、心から思いました。

これで終わりか……寂しさはありますが、これ以上は蛇足ですよね。素敵な物語をありがとうございましたと言いたいです。今からでも遅くないので、未読の人はぜひぜひぜひ!!!!

フルメタル・パニック!12  ずっと、スタンド・バイ・ミー(下) (富士見ファンタジア文庫) - 賀東 招二

放っておけない一匹狼?

宗介がラブレターを受け取ったら―「南から来た男」
かなめを中傷する噂が飛び変わったとき、宗介が取る行動は―「愛憎のプロパガンダ」
海で水着姿を見ても何の反応も示さない宗介にいらつくかなめは―「鋼鉄のサマー・イリュージョン」
宗介を恋人の替え玉にしたら―「恋人はスペシャリスト」
写生会でモデルに選ばれた宗介は誤った先入観から姿を隠したが―「芸術のハンバーガーヒル」
いつものメンバーでシンデレラ―「シンデレラ・パニック!」
というコミカル一直線な短編集。

軍人であるが故の用心深さがすべて空周りするという展開に吹きだしてしまう。ラブレターが入ってる靴箱を、誰かが勝手に自分の靴箱を空けた、として爆発物処理班のような行動を取るんだから。周りのみんなも呆れながら、楽しんでる感じが伝わってきます。無関心を装いながら、気になって相手を見に行ってしまうかなめが可愛い。
このふたりの距離感には、にやにやしてしまいます。

宗介の思考回路で一番面白かったのは、海でかなめが怒って姿を消した後、戻ってこない理由を考えたときのこと。
「いちばんありそうなのは―」 のあとの一文を読んだときは 1分ほど笑い転げてました。
よくもまあここまでいろんなことを考えるものだと思ってしまうぐらい笑わされた作品ばかり。長編とは別物だけど、これはこれでとても面白いですね。

ちなみに一番好きなキャラクタは生徒会長。ショックを受けたかなめのために、その友人に対してお金を渡し「彼女と一杯飲んで帰りなさい」という、部下へのケアを忘れない課長みたいな行動がたまらない。学生に向かって、飲んで、というお惚けぶりも素敵でした。

放っておけない一匹狼? フルメタル・パニック!  賀東招二

本気になれない二死満塁?

宗介にヤキを入れるためにヤンキーたちがかなめを人質に……「妥協無用のホステージ」
忘れたら補習を免れない古文の宿題を宗介が忘れて……「空回りのランチタイム」
かなめのバイト先の神社に宗介が手助けにきたら……「罰当たりなリサール・ウェポン」
廃部寸前のラグビー部に宗介とかなめが助っ人に……「やりすぎのウォークライ」
かなめがかつての想い人とデートする……「一途なステイク・アウト」
ミスリルの基地で退屈したクルツと宗介が宝探しに……「キャプテン・アミーゴと黄金の日々」
という 6編からなる短編集。

どちらが悪役かわからなくなる救出劇の「妥協無用のホステージ」には最高に笑えましたが(宗介相手に人質という時点で負けだと思います)、やはり一番良かったのは「一途なステイク・アウト」ですね。

普段と様子が違うかなめに違和感を覚えた宗介が、かなめの友人の恭子と一緒に、かなめのデートを偵察しに行くというお話。ここまではっきりと宗介が動揺するのは初めてじゃないでしょうか。とても新鮮。
さりげなく見れたかなめの心の内や、想い人に付き合おうと言われた後のかなめの行動に、心が温かくなりました。かなめはだいぶ自覚してきたのかしら。宗介はまだまだな気もするけど……。

短編集なのに、かなめが一切出てこない「キャプテン・アミーゴと黄金の日々」もなかなか面白かった。クルツの軽快ぶりが見事。期待していなかった宝探しで意外なロマンが見えたりするのはいいですね。オチはお約束ということで。

相変わらずのコミカルさで楽しさ満喫の短編集。第二弾ということで「二死満塁」と題名に「二」をつけたらしいですが、このパターンはどこまで続くんでしょうね。

本気になれない二死満塁?  賀東招二

自慢にならない三冠王?

かなめと宗介が学校でパンの販売をすることになった「すれ違いのホスティリティ」
球技大会をするなら自殺してやるというFAXを受け取ったかなめたちの「大迷惑のスーイサイド」
市内で頻繁に出る痴漢退治に乗り出した宗介が引き起こす騒動「押し売りのフェティッシュ」
恋する美術教師と英語教師の「雄弁なポートレイト」
宗介を怖がらせるための怪談プロジェクト「暗闇のペイシェント」
売り言葉に買い言葉から始まったASを使う大喧嘩「猫と仔猫の R & R」
という6編からなる短編集。

昼休みに学食へ走って行くという経験はないですが、壮絶な争いなんですねぇ。初っ端の「すれ違いのホスティリティ」は、予想通りの展開なのに笑いが止まりませんでした。

笑いが多い短編ですが、読後感がとても素敵なのが「暗闇のペイシェント」と「猫と仔猫の R & R」

どうにかして宗介を怖がらせようとするかなめの頑張りが裏目に出まくるという「暗闇のペイシェント」には笑わされっぱなしなんですが、ちょっとしたことから、かなめが怪我をして、そして……。
青春っていいねぇ、なんて言いたくなるラストでした。

そんな青さと打って変わるのが「猫と仔猫の R & R」。かなめたちではなく、テッサとマオの物語。仲のいい二人がひょんなことから口げんかをして、ASでの戦いにという大騒動へ発展する展開。
今まで AS に乗ったことがなく、運動音痴なテッサということで、はじめは宗介に相手をしてもらうために AS 対決しようとしてるんじゃないか、なんて邪推してしまいましたが、とんでもない。何とかしようと奮闘し、緻密な戦略を立てるんだからたいしたものです。
まあ、対決すると言ってしまったものの、冷静になって考えたら、失敗したなあというな雰囲気を感じさせつつ、それでも意地を張っちゃう姿がとても良かった。友情を感じられたラストに感動。

笑いあり感動ありと、とても素敵な短編集でした。

自慢にならない三冠王?  賀東招二

同情できない四面楚歌?

貴重な貝を殺した凶悪犯であるかなめは、何とかごまかそうとして ―「磯の香りのクックロビン」
会長の黒い過去が明かされる? ― 「追憶のイノセント(前編・後編)」
会員制のサロンで生徒がバイトしていると聞いて、かなめが潜入することになったが ―「おとなのスニーキング・ミッション」
メリッサ・マオが、クルツ、ソースケとはじめて出会った ―「エンゲージ、シックス、セブン」
という五編からなる短編集。

いつもなら短編集はコメディ一色といって過言ではないんですが、今回はわりとシリアス多め。というより、一番長かった前後編に分かれていた「追憶のイノセント」がシリアスだったために、そう思うのかもしれません。
会長が町で得体の知れない人にお金を渡していたという噂を聞いたかなめと宗介が、気になって調査をするお話。

物事を別の方面から見ると、違ったように見えるという典型ですが、個人的には宗介が「かぎまわるのをやめよう」と言ったシーンがとても印象的でした。いったい彼の過去に何があったのか、気になりますね。
まあ、そんな暗さもラストで一掃されましたが。
あれは、ずるいよ。反則だよ。くそう、好きだ、おまえら!

普段失敗するのは宗介ですが、かなめが失敗するという珍しい展開の「磯の香りのクックロビン」には爆笑させられましたが、やはり「エンゲージ、シックス、セブン」のが印象的ですね。
マオが部隊の欠員を補充するために、訓練キャンプへ向かうというお話。

まともな人や腕の立つ人たちよりも、軽いクルツや固いソースケを選んだ理由が語られています。いや、二人とも一級品の腕前を持ってるんですけどね。
そういえば、その腕前を訓練時に隠していた理由が語られてなかったなあ。だいたいの想像はつくけれど、合ってるかどうか。
過去ものは面白いので、また語られる日を楽しみにしましょう。

表紙がかっこよすぎる短編集第四弾。

同情できない四面楚歌?  賀東招二

どうにもならない五里霧中?

部室の立ち退きをかけて宗介と空手同好会とが戦って ―「純で不純なグラップラー」
空手同好会部長との対決再び ―「善意のトレスパス」
極道の連中を鍛え上げることになった宗介だが ―「仁義なきファンシー」
公園で発生した小学生同士の激突の仲裁に向かった宗介たちだが ―「放課後のピースキーパー」
宗介たちをつけてきたの老人は ―「迷子のオールド・ドッグ」
テッサが目覚めたとき、艦内に誰もいなくて―「わりとヒマな戦隊長の一日」
という六編からなる短編集。

コミカルさがいつほどじゃないかな。各話とも面白くはあるんだけれど、爆発さは感じられませんでした。蓮の実家の意外な事実が発覚したり(仁義なきファンシー)、宗介がかなめにかっこいいところを見せようとして忍耐強く動くところ(放課後のピースキーパー)にニヤリとさせられ、「迷子のオールド・ドッグ」のちょっといい話と、宗介の微妙な不満が見えるラストがとても良かったです。

でも一番良かったのは、「わりとヒマな戦隊長の一日」。
マオに酒を飲まされたせいで、目が覚めてもぼうっとしてて、というテッサのお話。題名どおりヒマなので(をつくるために頑張った)、わりとどうでもいいようなことで、艦内をうろつき、出会った人と一騒動という展開。
寝ぼけて宗介に迫ってしまうテッサに、ニヤニヤしてしまいましたが、きびしめな人の意外な事実が発覚したり、貴重な軍事設備で遊んじゃうマオなど、ホントにここは軍かと思ってしまうぐらい楽しかった。

「散々な一日でした」
「そう」
「でも、こういう毎日がずっと続いたらいいな……と思いました」

どんな一日だったかと聞かれたテッサの言葉がとても良かったです。

どうにもならない五里霧中?  賀東招二

あてにならない六法全書?

空き部室を賭けたナンパ大会が開催されて ―「ままならないブルー・バード」
かなめの友人ミズキに猛烈アタックを受ける一成だが ―「的はずれのエモーション」
学校案内のパンフレットの文面を任された神楽坂恵里は ―「間違いだらけのセンテンス」
宗介とかなめが映画に出演することになり ―「時間切れのロマンス」
宗介が持ってきた細菌兵器がばらまかれて ―「五時間目のホット・スポット」
テッサが宗介の学校へ留学してきて―「女神の来日(受難編)」
という 6編の短編 + 「作者の極秘設定メモ」がボーナストラックとしてついてくる短編集。

相変わらずなふたりですね。かなめも宗介のことになると異様に短気だなあ。かわいそうになるけど、それ以上に迷惑をかけているか。

ひとりもナンパができなかったら、裸踊りという賭けをしてしまった「ままならないブルー・バード」で、なんだかんだ言っても、最後には助けてあげちゃうかなめがとても素敵。ホントに周りの人が気づかなかったのかどうかはともかくとして、好きな人にきれいと言ってもらえるのはうれしいでしょうね。むしろこのあと二人でどうしたのかが気になる物語です。

恭子が相手だと自然に演技できるのに、かなめだと自覚なしだけど照れちゃう姿や、人生最後と思えるシーンで思わずかなめが口走ってしまうような、ふたりの仲を思わせるシーンはもっとほしかったなあ。

ちなみに「女神の来日(受難編)」は、休暇中に宗介の学校へと留学してくるテッサの物語ですが、何ていうか、本編で交わることがないであろう人たちが交流するというのは、とてもいいですよね。けなげなテッサと、無関心を装うかなめの戦いは今後も引き継がれていきそうです。
つまり受難は宗介ってことで。

 あてにならない六法全書?  賀東招二

安心できない七つ道具?

都議会議員が視察に来るので宗介をどうするか ―「穴だらけのコンシール」
宗介が始めて合コンに参加して ―「身勝手なブルース」
風邪を引いた会長のお見舞いに行ったら ―「ミイラとりのドランカー」
陣高のヤンキー軍団の中には生徒会のスパイがいて―「義理人情のアンダーカバー」
強盗が宝石を隠したのは高校の敷地内で ―「真夜中のレイダース」
テッサの上官たちの集まりに宗介が連れて行かれて ―「老兵たちのフーガ」
という6編からなる短編集。

お気に入りは「ミイラとりのドランカー」。
風邪で休んだ林水のお見舞いに自宅へ行ったら……というお話ですが、まあ、そのあたりはどうでもよくて、ちょっとしたハプニングで、かなめや宗介が酒を飲んでしまって、そこからは定番といえば定番。
宗介もやっぱり男だったんだなと思わせる発言や、ちょっくら積極的なかなめが異常にかわいいぞと思ったりなどなど、いつもと違ったふたりの描写にニヤニヤしまくり。
はたして甘い感覚を思い出すことがあるのか。気になるばかり。

ちなみに文句なしでお勧めなのは「義理人情のアンダーカバー」ですね。
ヤンキーたちの中に生徒会のスパイを紛れ込ませていて、という展開で、おバカなギャグものかと思ったら、意外や意外な展開。スパイ発覚から、仲間のためにまでの流れは見事でした。かなめの書いた脚本が素敵すぎです。
オチはお約束ってことで。

相変わらずバラエティに富んでる短編集だなあ。

安心できない七つ道具? 賀東招二

悩んでられない八方塞がり?

ネットワークゲームに宗介たちが集ったら ―「約束のバーチャル(前編・後編)」
宗介とそっくりなアイドルがいて ―「影武者のショウビズ」
文化祭で実行委員に抑圧を受けたかなめたちは ―「対立のフェスティバル」
ミス陣高に参加したかなめだが ―「愛憎のフェスティバル」
という五編からなる短編集。

意外にもネットワークゲームの話が面白かった。うるわしき女剣士トイレットペーパーのお話。
舞台がバーチャル空間ってだけで、あとはいつもどおりのノリなんだけど、各キャラの味が良く出てたなあ。チャットなところは読みにくいんだけど、それもまたいい味を出してました。
何といっても林水の商才に爆笑。どこにいってもマイペースな人って大好きです。そこでも絡む蓮さんや極貧プレイでもめげない恭子さんには脱帽。
個人的には風間君とお相手さんの話がもうちょっと読みたかったな。

今回一番良かったのは「愛憎のフェスティバル」。挑発されて出る気のなかったミス陣高に参加するかなめのお話。ただの挑発だけだったらともかく、宗介にちょっかい出されていたのが気に入らなかったんでしょうね。
個人的には、変に媚びなくてもかっこいいってことを、まっすぐに指摘する宗介の評価に好印象。
ラストの宗介の言葉は、殺し文句ですよね。
この一言だけですべてが許せる、そんな心温まる短編でした。

悩んでられない八方塞がり?  賀東招二

音程は哀しく、射程は遠く

学生時代に憧れていた先生に出会ったクルツが、再びギターを手に取る ―「音程は哀しく、射程は遠く(前編・後編)」
整備士エド・サックス中尉のお話 ―「エド・サックス中尉のきわめて専門的な戦い」
温泉にいくテッサたちのお話 ―「女神の来日(温泉編)」
題名どおりマオがアーム・スレイブの基本を教える ―「よいこのじかん〜マオおねえさんとアーム・スレイブにのってみよう〜」
狡猾なマオの姿が見え隠れする ―「ある作戦直前の一幕」
という6編からなる短編集。

哀しいまでにロックな「音程は哀しく、射程は遠く」。前後編というちょっと長い物語だけれど、クルツの過去と、光と影を見た気がしました。いや、影というほど暗いものではないんですが、美しき思い出が汚されたら、やはり黙ってはいられないでしょう。トリガーと共に思い出も吹き飛ばしたのかな。
そろそろマオといい仲になっていきそうな予感がしているんですが、さて。

一番好きなのは、エド・サックス中尉のお話。前面に出てこないものの大事な位置づけである整備士。各人たちのやり取りを踏まえながら、時に暴走し、時に冷静に、整備を続けるおっちゃんの姿が素敵です。
整備士だって命をかけている。そのことを知らしめる台詞に胸が熱くなりました。
ちょっと頑固者だけど職人な人って大好き。

それにしてもそんなことまで考えて物語を作っていたとは驚いたというのは「よいこのじかん」。新人さんがアーム・スレイブにのって、歩いて、という基本操作をマオに教わるという、ただそれだけのストーリーなんですが、細かい。専門的な説明になるとついていけませんが、ここまで拘っているからこその物語なんだと思いました。

「―サイドアームズ―」なんて副題(副々題?)があるだけに、いつもとはちょっと違った雰囲気の短編集です。

音程は哀しく、射程は遠く ―サイドアームズ― 賀東招二

極北からの声

カリーニンと宗介が始めて出会った ―「極北からの声」
『公爵』と呼ばれたマデューカスがトゥアハー・デ・ダナンに乗るまでを描いた ―「<トゥアハー・デ・ダナン>号の誕生」
宗介が飼ってる猫は ―「大食いのコムラード」

「―サイドアームズ―」とは、軍事用語で腰につける武器、つまり拳銃を意味しており、メインアームであるライフルを補助する的なニュアンスがあるのだとか。フルメタル・パニックでは学園を中心とする短編ではなく、長編シリーズの補完的名意味合いを持つ短編集という意味らしいです。

というわけで、ミスリルの中の人たちの話。今回はカリーニンとマデューカス。男たちの話ということで、自然とシリアスになっておりますが、かっこ良すぎます。

以前からふたりの係わり合いはほのめかされていましたが、ついに明らかになりました。カリーニンとは、一言でいうなれば、宗介を助け続けた男でしょうか。
子供のころ、傭兵時代、そしてミスリルでと、確かに運命を感じてしまう。それだけに、あんな状況での再会がつらすぎます。母親のことについても、一度告げるチャンスを逃したら、もう告げられないですよね。決断をしたことを悔やむ気持ちは一生続くと思うと、泣けてくる。それを不誠実だと、僕は思わない。
ところで、宗介の母親は何者なんだ?

そして「<トゥアハー・デ・ダナン>号の誕生」。
マデューカスが、学校に入って士官になって、『公爵』と呼ばれるようになって、テッサと出会い、トゥアハー・デ・ダナンに乗るまでの物語。ある意味、マデューカスの一生ですね。
昔から固い男だったんだなと思う反面、柔軟さも持ち合わせているところが、優秀さを思わせますね。テッサの父親と戦った話とか、最高でした。
子供のころのテッサは、肩肘張って可愛い限りですが、マデューカスのような規律を大事にする人が身近にいたからこそ、みなに好かれるテッサたんに成長したのではないかなと思いました。

それにしても、大きすぎる才能が不幸をもたらすのであれば、それは悲劇としか言いようがないですよね。

極北からの声 賀東招二
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