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Dクラッカーズ / あざの耕平

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Dクラッカーズ Ⅰ 接触 ―touch―

7年ぶりに日本に帰国した姫木梓は、幼馴染の物部景が、幼いころ共に過ごしたときとは違う暗い雰囲気に包まれていることが気になって仕方なかった。そんなある日、クラスメイトが学校の屋上から飛び降り、重症を負ったが、なんと彼女はカプセルというドラッグを服用していたらしいという話だった。しかも、彼女と最後に話をしたのが、物部景だと聞かされた梓は、いてもたってもいられず、景を問い詰めに行ったが……

仲間の自殺や、天使や悪魔が出てきて願いをかなえてくれるという噂のドラッグの謎を、帰国子女の梓と実践捜査研究会の千絵が追いかけていくというお話です。
もともと富士見ミステリー文庫で出版されていたのを、新装版として富士見ファンタジアで出したとのことですが、富士ミス時代の作品の最初の三冊を、二冊にして出してくれたおかげで、一巻目はちょっと分厚いです。約500ページ。にもかかわらず一気読みでした。誰ですか、「スロースターターだから」「三巻ぐらいから面白い」と脅してくれた人は。初っ端から面白いじゃないですか!

和やかな学園風景から始まったと思ったら、飛び降り、ドラッグ話と急展開。ひょっとしたら幼馴染の景が事件にかかわっているのかもと、慣れない学校内なのに奮闘するさまは、景を信じたい、信じてるという心からなんですよね。あまり表に出さないものの、気になる男の子への思いが伝わってきました。

そんな梓と共に調査をはじめた千絵が素晴らしいです。普段はクールに決めてくれるものの、事件が始まったら、話をこっそり盗み聞きするような好奇心旺盛さや、入るタイミングを見計らうなどの探偵よろしくする姿が、微笑ましい。
格好だけでなく、探偵らしい思考回路にも見所がありましたし、事件解決後は、もっといい方法があったのではないかという探偵の葛藤まで見せてくれるんですから、素晴らしいですね。
逆に好奇心がピンチを招いていくことにもなるんですが、千絵がいなかったころはどうして大丈夫だったのか、むしろそっちがミステリー。

カプセルを追いかけているうちに、バイヤーを知り、そこからカプセル売買組織「セルネット」にたどり着いてと、どんどん危ない方向にいくので、女性二人で大丈夫かと思ったら、なるほど、そう来たか。いや、何かしらあるんだろうなと思ってたんですが、まさかここまでだとは思いませんでした。

個人的に印象的だったのは、梓が景に負ぶさって運ばれたシーンですね。昔を思い出させる光景とは逆だけれど、遠いように感じていた景の心が、決してそうでないと思わせてくれるものがありました。まだちょっと距離を感じるけど、焦らず縮めてほしいですね。

それにしても、まだまだ謎があるなあ。カプセルを摂取すると悪魔が出てくるのもそうだけど、カプセルを使ってない梓に見えることとか気になります。
気になるといえば、茜は良い具合に千絵と張りそうな予感がするだけに、頭脳戦もひょっとしたら展開されるのかなという期待があったりするんですが、どうなんだろう。これから、敵対していくのか、それとも仲間とまでは言わなくても協力関係になっていくのかは、ちょっとよくわからないなあ。甲斐があんな感じだとすると難しいか?ああ、興味がつきません。

よりによって、盛り上がり始めた直後で、この巻が終わってしまったので、あーもう!と叫びたくなりました。いやあ、いいです、面白い。手を出そうかどうしようか迷っていたときに、多くの人から勧められた理由がわかりました。今まで読んだことがないのなら、これを機会に手を出してみてもいいですよね。

ちなみに富士ミス版とは、カバーイラストだけでなく口絵も変わってるそうなので、既にもってる方も手にとって見るといいかも。

Dクラッカーズ 1 (1) - あざの 耕平

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Dクラッカーズ Ⅱ 祭典 ―ceremony―

Dクラッカーズ 2 (2) - あざの 耕平

DDとカイムの戦いで一人の人間が「堕ち」た。凶暴化する相手に、梓は囚われそうになったが、「あいつ」がきてくれるなら、時間を稼げれば何とかなる。だが、このときの戦闘によって、景の体の状態が危険極まりないことに、梓は気づいてしまった。何とか彼の力になりたいと思う梓だが、DDやセルネットは、ウィザードの正体を知り、刻一刻と、包囲網を作り上げて……

「カプセル」と呼ばれるドラッグを使って、悪魔を召喚した高校生たちの戦いの第二弾です。前作でものすごくいい場面で終わってくれたおかげで、はじめから、それこそ一行目からヒートアップさせられました。ウィザードと甲斐の戦いは、恨み辛みを超えた純粋な戦いって感じですね。

それに比べると、カイムの戦闘というのは、力のすごさはわかるけれど、見るものに鮮烈さを与えないという感じがしました。たぶん、本来であれば、カイムとの戦闘が二巻のクライマックスなんでしょうけれど、新装版となる本作では戦いの一部的な感じになってしまったので、盛り上がってるのに、こう、何ていうか、不完全燃焼な感じがしました。う~ん、ちょっともったいない気分。

危険を乗り越えたことで、景と梓の関係がちょっと変わってきましたね。景とのやり取りから、自分でも何かできるのではないかと、動き始める梓の気持ちはわかりますが、それが段々と暴走気味になっていくところが、何とも不安を引き立ててくれてドキドキです。このふたりは気持ちは十分なのに、話し合いが足りないんですよね。ああ、もう。

それにしても、恐ろしきは、トップクラスの連中の実力ですね。セルネットの第二世代ぐらいならまだしも、個人的には、策士としてはかなり上位に位置すると思っていた茜まであっさり手玉に取ってくれるとは……策士が策にやられていくさまは、恐ろしくも興奮してしまいました。なるほど、これがウィザードですか。

相性で言ったらDDの甲斐なんて、まったく合わない気がしますが、逆にこういう相手だからこそ、力自慢なら挑戦したくなるのかもしれませんね。戦闘狂って感じな甲斐くんでしたが、何気にいい味出してて、個人的に大好き。茜といい甲斐といい、僕の好きな人は微妙な位置にいるのが、何とももどかしいなあ。

最後の戦闘は圧巻でしたが、そこで判明した事実のほうが驚きでした。歪んでる……。でもそうなると彼女はどういう意味合いがあるんだろう。う~ん、よくわからん。
普通のことなら頼りになる千絵も、さすがにこの事態にはついていけないところがあるだろうし、水原もちょっと心が弱ってるみたいだし、梓に至っては……ですからねぇ。一区切りついたとはいえ、どうなっていくのか続きがとても気になりますね。

Dクラッカーズ 2 (2) - あざの 耕平

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Dクラッカーズ Ⅲ 決意 ―resolution―

Dクラッカーズ 3 (3) - あざの 耕平

「梓さんが目を覚ましたんですか?」
期待に弾む声で千絵が尋ねる。しかし次の瞬間、千絵は顔色を失った。
「いなくなった!?いなくなったって……梓さんが病室から消えたんですか!?」

クリスマスに起きたセルネットとウィザード、そしてDDの抗争で、浮かび上がってきた事実の詳細が明らかになっていくお話ですが、その事実が、一番心に痛いのは、間違いなく梓ですよね。景に対して自分はなんてことをしてしまったのかと、後悔するところは、読んでるこちらも心が痛くなります。
自棄になり、さらに似たような人たちとであって、慰めあっていくうちにカプセルに手を出していくというところは、傷ついた心に感じる甘美なものがとても感じられました。なるほど、こうやって人はドラッグに落ちていくのかと思った次第。

そんな梓を心配する千絵の奮闘が良かったですよね。やっぱり一番好きです、この子。時に押しつけがましいことをするかもしれないけれど、他の人の苦しみを誰よりも感じ取れるからこその行動力なんですよね。梓の苦しみを知って、同じように苦しみ、それでいて前を向く千絵が素敵でした。
同じく策士的な存在である茜は、今回迂闊な行動が多かったですね。甲斐のそばにいながら、いや、いたからこそでしょうか。甘いなあと思いながらも、惚れた男のために動くところは好きですね。

セルネットのはじめのBがどうやって生まれていったのかという話は、どうでもいいとして(オイ)、まさか、B よりも前にいる A がそんなところから来ていたとは思ってもいませんでした。それほどまでに、彼にとって大きな存在だったんですね、彼女は。

梓にとって、景が大きな存在であることはわかっていますが、ようやくそのことを素直に認めたのは、やっぱり景と離れてしまったからかな。側にいるとどうしても素直になれないことってありますよね。
景自身の口からは何一つ語られることはありませんが、幼きころ、彼が梓をどう思っていたか伝わってくる、あの絵本の間に挟まっていた言葉には、思わず涙。

個人的に嬉しかったのは、敵対していた(というほどでもないかもしれないけど)例の人たちと、千絵たちが手を組んだことですね。憎めない人たちだっただけに、嬉しいです。戦力としても頼れるし、千絵だけでは届かないところも、補強してくれそうな感じもあるじゃないですか。人数こそ少ないけれど、いい陣営です。
主要な人たちが、終結していく様にワクワク。

ファーストセルの思惑については、大きなものは見えたけど、それをどうやっていくのかは、これから示されるんでしょうね。「女王」の存在が、微妙に不安定要素っぽく思えるので、不安はつきませんが、ここからの反撃がどうなっていくのか、楽しみにしたいと思います。

Dクラッカーズ 3 (3) - あざの 耕平

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Dクラッカーズ・ショートⅠ 欠片 ―piece―

Dクラッカーズ・ショート 1 (1)  - あざの 耕平

食事を取るために外出した水原は、奇妙な人物を見かけた。ボンボンのついたニット帽とマフラー、さらにサングラスで顔を隠した不振な女の子。見なかったことにしようかどうかしばらく葛藤したが、つい声をかけてしまった。
そして、下手くそな変装で近所の少年を尾行していた千絵に巻き込まれた水原は、空腹を抱えたまま、貴重な休日を費やして、少年を探すことになり……

本編以前、水原がセルネット内部に侵入していたころの「狩猟 ―hunt―」、細胞のオーディションに潜入した梓と偶然そこで出会った景が巻き込まれた事件「炎踊 ―flame―」、千絵が偶然出会った水原の受難な休日「休日 ―holiday―」、幼い景が、他の悪魔持ちに追われる「逃走 ―runaway―」、本編一作目を敵側の視点で描く「序曲 ―prelude―」景と梓の幼少のころの離れでの出来事「台風 ―storm―」、イントロダクション的な「手紙1 ―a day―」「手紙2 ―a day―」という本編を補完する物語と、Dクラッカーズのベースとなった龍皇杯参加作「Dクラッカーズ」、その続編「逸脱 ―deviate―」が収録された短編集です。

本編同様、シリアスなお話が中心ですが、そんな中コミカルだったのが、あらすじにも書いた「休日 ―holiday―」と、幼年期の梓と景が登場する「台風 ―storm―」ですね。

休日 ―holiday―」は、タイトルどおり、とある休日に千絵に振り回されることになった水原の受難を描いたお話ですが、いやあ、いい人だね、水原くん。パワフル千絵のお守りは大変だろうに、ほんとご苦労様ですと言いたくなるお話でした。軽い印象を受けるけれど、どうしてどうして苦労してるんだなと思いますね。この話が、まさか、表紙をめくった直後の五百円イラストにつながるとは予想もしませんでした。お約束がたまらなく笑わされます。

台風 ―storm―」は、夏休み最後の日に、例の離れで梓と景が宿題を片付けているときに台風が来て、というお話ですが、いやあ、景がかわいそうなぐらい、我が儘な梓に振り回されてますね。台風の日という女王さまにしたら冒険にしか思えないイベントで、災難にあう景の苦労を見ることが出来ます。ま、ちょっと文句を言いながらも、嬉しそうにしてる景も景ですけどね。女王さまとシモベという二人の関係が微笑ましいことこの上ない。ここでのジェットコースターが、「狩猟 ―hunt―」につながると思うと、にやり笑いが止まりません。

シリアス方面で最も印象的だったのは、「炎踊 ―flame―」ですね。セルネットに関する情報を手に入れた千絵の作戦の元、梓が侵入捜査したら、ピンチに陥って、助けてくれたのは景で、というDクラの王道的展開なんですが、最後の最後に、まさか景が梓に対して、あんなことするとは思わなかった。なんだ、このかっこよさは!「Dクラお試し版」として書かれた短編らしいですが、いやはや、景がこんな男だったら、梓も苦労はしないような、なんて思ったとか思わなかったとか。

本編の裏で動いていた「序曲 ―prelude―」は、ゾクゾクする面白さがありましたし、初代と本編との違いを楽しませてくれる「Dクラッカーズ」「逸脱 ―deviate―」も見逃せないものがありました。

全体的に長編と比べるとちょっと物足りないところが多いですが、それでも十分面白かったです。次なる短編集では、ウィザードと甲斐の初手合わせの話が収録されるとか。個人的にこれ、すっごい楽しみ。

Dクラッカーズ・ショート 1 (1)  - あざの 耕平

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Dクラッカーズ Ⅳ 乱 ―rando―

Dクラッカーズ 4 (4) - あざの 耕平

カプセルが今まで以上に出回っている。おかげで、カプセルを手に入れたもの同士の争いが絶えず、ビーグルたちDDのメンバーが、仲裁に入るほどなのだ。このままではと漠然とした不安を持っていたビーグルは、かつての仲間、茜と出会った。彼女は甲斐だけではなく、海野千絵と共にいるという。さらには、あのウィザードとも共同戦線を張っていると!
だが、セルネットの動向は、なかなかつかめないまま、月日が経ち…・・・

セルネットの指揮権がファーストセルへと移り、カプセルが過剰供給されていく中、ウィザード、狂犬、探偵女が共同戦線を張って、敵の目的をつぶそうとするお話。

いやあ、なんか嬉しいですね。自分の好きなキャラクタが手を組むってのは。この面子だったら、余裕で町を支配できそうだとか思ってしまいましたよ。ただ、残念なことに全員に活躍の場がなかったのは、残念だなあ。景―甲斐ラインはありましたが、茜―千絵ラインがなかったもんなあ。せっかく知的キャラがそろったんだから、もっと何かほしかったよと思う僕は、茜好き。

そんな中、意外や意外な活躍を見せたのは、家出少女久美子でした。好奇心旺盛な女の子なだけに、いろいろ目をつけて、敵のど真ん中みたいなところまでたどり着いてしまうんですが、おまえは、もう少し危機感を持て!と、読んでてドキドキでしたね。
バールが、さりげなくこういう女の子に弱かったりしたところは、笑いましたが、おかげでカプセル周りの話がいろいろ見えてきましたね。「制御」するためのものが、むしろ「侵略」みたいな感じになってるところに怖さを感じました。
ここまで聞かされたら久美子ちゃんは……と思ったら、さすが期待の新人。思いっきり見直しましたよ。今回の功労賞は間違いなく彼女ですね。

ここから、Crackersたちの反撃が始まるわけですが、ベアリルと甲斐の戦いには痺れましたが、騎士との戦いのほうは危機一髪でしたね。彼女がいなかったらと思うとゾクゾクします。ひとまず終わったけれど、まだまだ不安は残ってる感じだなあ。ただ、「春」がキーワードになる以上、少しは時間の余裕ができるのかな?とも思ったりしますが、さてさて。

それにしても最後がとても綺麗でしたね。大晦日の除夜の鐘が鳴り響く中、高らかに叫んだ「Crackers」の言葉には、グッとくるものがありました。個人的には、今回ちょっとだけ進んだような進んでないような感じの景と梓の関係に、もう一歩踏み込む何かがあってほしかったなあと思わなくもなかったけど。甲斐と茜のようなやつが。ま、これは次巻以降のお楽しみってことになるのかな。

どうやら次作では、戦いものとはまた違った展開が待ち受けているらしいので、大いに楽しみですね。

Dクラッカーズ 4 (4) - あざの 耕平

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Dクラッカーズ 5 追憶―refrain―

Dクラッカーズ 5 (5) - あざの 耕平

去年の大晦日。カプセルの取引を支配していたセルネットは、景と甲斐、千絵たちによって、事実上消滅した。セルネットを目的としていた水原や景は、これを機会に日常へと戻ることにしたが、景を待ち受けていたのは、カプセルの禁断症状と、今までとは違う、他人との間に感じる壁がもたらす孤独だった。
そんな中、いまだカプセルを取りまとめているDDに、なにやら不穏な動きがあって……

命のやり取りから一転した日常に大きな壁を感じる景の戸惑いと、「女王」のさらなる動きが見え始めるお話です。結構厚みのある物語でしたが、アクションよりも心情に重点がおかれていましたね。やっと日常生活に戻ってきたのに、それを喜ぶ梓とは裏腹に、耐えられないというのではないけれど、刺激を求めてしまう景の姿を見てると、戦いに対して、ドラッグのように囚われてるという感じを受けてしまいます。

そんな中、今までとは違った学校生活が見れたのは楽しかったなあ。特に惚れっぽいと評判の滝田静が、周囲に恐れられていた景に興味を持っていくところは、ああ、青春だなあ、と思いました。こういった何気ない会話が、人と人とのつながりを作っていくんですよね。
梓がいるから心揺れることは無いとわかってますが、それでも期待して頑張ろうとする静の行動は、好ましいものがありました。

それを壊してくれたのは、甲斐でしたが。

まさか、ここまで思い切ったことをしてくるとは思いませんでしたが、茜の状態を知ってしまうと、さもありなんって感じです。あのふたりならと思っていたのに……。「バール」が動いているのは知ってましたが、こういう形で甲斐や景に手を出してくるとは思わなかったなあ。まあ、甲斐というよりは、景か。

ここから、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、景が目覚めていくところは、梓の気持ちを考えると、つらいものがありましたが、「女王」の立場を考えると、うまくやったものだなと感心。景の少年時代の女王とのやり取りを読んでると、なかなか切ないものがあるだけに、どうもこう、彼女の行動に嫌な思いをしないんだよなあ。まあ、梓のことだけは、嫌なんですけどね。

もはやどうにもならない運命のようなものを知って、「建国」された場所へと向かう決意をした景が、夜明けまでを一人過ごすシーンは、とてもしんみりとさせられて、たまらなかったです。部屋に染み付いた思い出を振り返り、未練があるのに、それを伝える術を知らず、「最後」という言葉をかみ締めるところが、とても印象的でした。
投げやりとは違うかもしれないけれど、どちらかといえば、どうなってもいい、みたいな思いを抱いていた景でしたが、そんな彼を引っ張りあげた梓の言葉は忘れられません。

いやあ、面白かった。ゆったりとした流れの中で、大いなる動きを感じさせるお話でした。ここから、クライマックスへと向かっていくらしいので、再び梓の手を取るために、景がどういった道のりを歩んでいくのか楽しみです。

Dクラッカーズ 5 (5) - あざの 耕平

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Dクラッカーズ・ショートⅡ 過日―roots―

Dクラッカーズ・ショート 2 (2) - あざの 耕平

「お前、ウィザードだろ」
ウィンドブレーカーの少年に声をかけた男が呼び出した悪魔は、空に浮かぶ黒い鮫だった。一目見ただけで「圧倒的さ」を実感させられた景は、その男がDDの甲斐氷太だと気づいた。悪魔狩りをしているとはいえ、いきなり、こんな大物が引っかかるとは……。動揺を隠しながら、しかしすぐさま臨戦態勢に入った景だが……

まだカプセルに手を出す前の茜の学園生活のひと時を描いたショートショート「家路 1 ―a day―」、タッグを組んで間もないころの水原と景がセルネットの罠に嵌められる「相棒 ―accomplice―」、景と甲斐の初対面にして初対決を描いた「狂犬 ―hound―」、小学生の夏休みに景と梓が肝だめしをする「夜道 ―pathway―」、四宮が水原と緋崎に出会ったというファーストセルの「同胞 ―accomplice―」、探偵を止められない千恵の迷いと希望を見せるショートショート「家路 2 ―a day―」、Ⅴ巻とⅥ巻の間に収まる梓たち三人の絆を見せる「Dクラッカーズ・ショート・ショート」、ジンクスを信じた梓が景を連れて夏祭りに出かける「夏祭り―midsummer―」という副題の「過日」が示すとおり、本編よりも過去(「Dクラッカーズ・ショート・ショート」を除く)の短編およびショートショートな物語集です。

いやあ、面白かった。それぞれの短編に魅力があるのはもちろんなんですが、さりげなく他の短編にリンクしているところがいいですね。「相棒」と「狂犬」は、話自体が繋がっていましたが、まるで関係ない「夜道」と「同胞」に、リンクするものがあったりすると、ニヤリとさせられるものがあったり。

短編の中で最も興奮させられたのは、景と甲斐の初対決を描いた「狂犬」ですね。既に名を馳せていた甲斐と、悪魔狩りのおかげで少しは名が売れ出したという駆け出しのウィザードこと景の戦いは、息をつかせぬほどの緊張感がありました。おたがい相手を追い詰めながら、気づけば相手に押されていくという展開にしびれまくりです。外見では平静を保ちながら、内心で相手の力を認めていく。やっぱ、宿命のライバルはこうじゃないと!
初対決はこういう形だったのかと、短編とは思えないほどの密度に、やられまくりでした。

では、一番感動させられたのはといえば、「家路 2」かな。5ページちょっとしかない短いお話の中に、間違ったことはしていないと思いながらも、探偵をしたことで他人を傷つけてしまった千恵が、後悔に揺れたあと、出会った一言。ありふれているのに、これほど心が伝わってくるものはないでしょう。よかったね千恵、と思わずじわりとさせられるものがありました。この長さにして、必要十分な物語です。

で。一番楽しいかったのは、梓と景の子供のころの話ですね。「夜道」と「夏祭り」。いや、もう読んでて楽しいんですよ。女王様よろしく我侭言いたい放題な梓に振り回される景が可哀想で可哀想で笑いまくりです。「夜道」を歩いているときに、怖がりまくる景を見たら、梓じゃなくてもからかいたくなるよなあ。やってることは意地が悪いとしか言いようがないですけど、楽しそうな梓の様子を見たら、何も言えなくなりますね。それにしても、ここで学んだ「死んだ振り」が、後に役立つとは……。

そして、梓が自分の気持ちに正直になった「夏祭り」。花火を初めからから最後まで一緒に見たものは、これから先も一緒にいられる。そんなジンクスを信じるなんて、素敵な乙女心じゃないですか。必死になって引っ張りまわす姿が、可愛くてなりません。
そんな梓だから、口下手な景が、最後に唱えた呪文には、これ以上ない喜びを感じたでしょうね。照れくさくても、言って良かったと景も思ったんじゃないかしら。読んでて嬉しくなっちゃうやり取りでしたね。

いやあ、面白かった。ひとつ前の短編集は、まあまあってぐらいだったんですけど、オススメといいたくなるものがありました。こうなると、俄然、本編が楽しみになってきますね。どのような結末が待ち受けているのか、今からどきどきです。

Dクラッカーズ・ショート 2 (2) - あざの 耕平

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DクラッカーズⅥ 王国―the limited world―

Dクラッカーズ 6 (6) - あざの 耕平

行けばもう会えない。もう二度と。共に戦った戦友にも。笑い合った仲間にも。思いを告げた人にも。もう二度と会うことは叶わない。だが、行くしかない。そしてウィザードは王国へと向かい、梓たちは、物部景のことを忘れていった。ただひとり、物部景を忘れず、彼の居場所を求めて動く千絵だが、彼女の必死な行動を理解できない梓たちは、日に日に千絵との間に距離を感じて……

「王国」へと足を踏み入れ、女王へと仕え始めた景と、彼のことを忘れていく梓たちを描いたお話です。

まさかここまでとは……。景が王国へと足を踏み入れたらどうなるかなんてことは、予想していたはずなのに、梓が覚えていないということが、これほど胸に響くとは思いませんでした。ウィンドブレーカーや録音テープがあれば、という甘い期待すら打ち砕くなんて……。

景のことを覚えているのが千絵だけというところが、また辛かった。彼女の必死さは、わかる。わかるだけに、誰一人共感してもらえないもどかしさに、親友たちとの間に走る亀裂の深さに、心苦しいものを覚えました。

それでも、覚えているのが千絵でよかったと心から思う。梓だったら景への思いは強くとも、きっと手立てが無くなり、折れてしまっただろうから。
ひとりでも、危険であっても、仲間のために、親友のために、諦めなかった彼女の姿に、挫けず前を向き続けた彼女の思いに、涙が止まらない。

そんな彼女の思いが、王国の扉を開いて……という展開には、鳥肌が立ってしょうがなかった。相手のことを覚えてなくとも、心の奥に震えるものがあるなんて……、読んでるこっちまで震えてくる。

DDが、茜が、ビーグルが、そして水原が。

大切な人を忘れたことで、気力すら萎えていた人たちが、仲間を取り戻すために、手を取り合って戦う姿が、すばらしく熱かったです。ああ、もう最高!しかも、これだけの盛り上がりを見せておきながら、まだ前編だっていうんだから、たまりません。

次なる巻でどういう展開が待ち受けているのか大いに楽しみですね。

Dクラッカーズ 6 (6) - あざの 耕平

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DクラッカーズⅦ 王国―a boy & a girl―

Dクラッカーズ 7 (7) - あざの 耕平

王国の中で、魔法使いは、自問した。なぜ自分はここにいるのだろうと。王の言葉に、自分の気持ちに迷いを持ちながら、騎士を迎え撃とうとする魔法使い。そして、その魔法使いがいる塔に、梓たちは足を踏み入れた。景を取り戻すために、誰より信頼出来る友人を連れて……

景を取り戻すために、梓たちが「王国」へと赴く、Dクラッカーズ最終章です。

今までは、如何にして景を取り戻すのかと梓の立場で物語を読んでいたんですが、始まりであり幕間である女王の心情が見えたところで、何ともやるせない思いになりました。彼女とて景を思って行動しているんだよなあと、しんみりした始まりでしたが、物語が動いてからは、熱い展開でした。まさか、いきなりベリアルが出てくるとは思いもよらず。

悪魔戦では、どう足掻いても勝ち目がないのは目に見えていましたが、その圧倒的な力を前に、よくぞ頑張った水原。表向きヘラヘラと軽さを見せていましたが、仲間を思う気持ちは、梓や千絵たちに負けてませんでしたね。

それでもきつい戦いであったことに変わりは無いんですが、ここでDDが出てきてくれるからやってくれる。茜の策とDDの戦闘力で立ち向かう展開には、熱いものを感じましたが、それ以上に燃えたのが、黒い鮫の登場でした。
茜との再会シーンでは、ちょっとグッとなりましたが、そんな思いすら吹き飛ばす甲斐のムチャクチャっぷりが素敵。

一方、力ではなく舌戦によって立ち向かった千絵と梓がまた凄かった。水原兄、バール、そして女王を前にして、一歩として退かず、前を向きつづけた姿に、心奮えるばかりです。己の信念や愛する人への思いがぶつかり合う様は、言葉のやり取りとは思えないほどの迫力がありました。ああ、思い出すだけでも鳥肌モン。
景が過去と立ち向かうことで、王国の崩壊へと結びつく展開がとてもきれいでした。

最後がまた素敵なんですよ。
ひたすら会話が続くところでは、景と話ができる梓の嬉しさが伝わってきて、戸惑いながらも段々と調子を取り戻す景がの様子が見えて、そして最後……

「君が、目を閉じろ」

ニヤリとさせられる。

甲斐と茜の結末は、くもありますね。どうやら、来月になる新作が待ち受けているらしくて、本編の「直前」と「その後」についてのお話しになるそうです。

いやあ、ほんと面白かった。ストーリーテラーとはまさにこの人のことを言うんでしょうね。超オススメです。

富士見ミステリー文庫のときは、ここで終わったらしいですが、富士見ファンタジア版では、もう一冊「Dクラッカーズ+プラス」が出るんだそうです。本編の「直前」と「その後」の物語だとか。主要キャラは総出演てことなので、淋しくもあのふたりらしい結末を迎えた甲斐と茜のその後があってくれたらいいなあ。ああ、楽しみ。

Dクラッカーズ 7 (7) - あざの 耕平

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Dクラッカーズ+プラス 世界―after kingdom―

Dクラッカーズ+プラス―世界-after kingdom- - あざの 耕平

においでトリップするクスリに弟がハマって、もう二週間も戻って来ない―蘭子と彼女に相談を持ちかけられた歩美は、ふと昔、じぶんたちの学校でカプセル絡みのトラブルシューティングをやっていた先輩の話を思い出した。連絡先を調べたところ、既に卒業していたものの、大学でも同じようなことをやっているという久美子と名乗った女子大生と、「アロマ」なるドラッグを追いかけることになったが……

Dクラッカーズの本編が始まるちょっと前から、1巻の序盤、セルネットの手が景の元に伸びてきたあたりまでを主に景の視点から描いた「雨中―rainy-rainy―」「雲天―be cloud―」「落日―to the night―」と、大学生となった梓たちが、カプセルに似た騒動を追う「妖香―aroma―」「世界―after kingdom―」という短編集……というよりは、本編の「直前」と「その後」が書かれた中編といったほうがいいですね。

いやあ、面白かった。なんといっても、その後のストーリィが良かったです。「アロマ」と呼ばれる匂いをかぐ事でトリップするドラッグにハマってしまったという弟を心配する姉とその友人の頼みで、実践捜査研究会が潜入捜査を行なうお話なんですが、既に梓たちは高校を卒業しているのに、実践操作研究会って……と思っていたら、意志を継いでくれた人たちがいたんですね。家出三人娘の成長した姿に、じーんときちゃいましたよ。

「アロマ」がただのドラッグではなく、カプセルの再来かもしれないと臭ってくるところでは、久美子じゃ荷が重いんじゃないかと思っていたんですが、こういうとき、出てきてくれるから嬉しく思います。事件の真相と関係者の心境に悩みながらも、最善を尽くす相変わらずな千絵の姿を見たときには、辛さもわかるんだけど、ホッとするものもありました。
彼女たちがいてくれるだけで、事件の解決は目前と思うほどリラックスする久美子たちの心境がとてもよくわかるなあ。

水原の裏方仕事やウィザードの活躍もいいけれど、一番興奮させられたのは、狂犬 VS ウィザードでしょう。ただ対峙しているだけで、なんとワクワクさせてくれることか。思わず喉を鳴らしてしまう魅力に引き込まれるばかり。
それにしても、甲斐は悪党の道を順調に歩んでるようですが、未だ茜のことを気にしてるんですね。ニヤリ。

そのあとのクリスマスを祝うお話には、頬の緩みを抑えられませんでした。例のカラオケボックスがまだあることを嬉しく思ったり、変わらぬ人間関係に温かさを感じたり。良かったなあ。

個人的には、梓と景はどうなったのかが一番興味を引くところだったんですが、水原やら千絵がチラチラと明かしてくれるたわいもないお話だけで、きゃーとなってしまいます。ああ、でも物足りない!「ハリウッドのホテルで景と梓が張り込みしたお話」と「ハロウィンのときのグリフィス天文台の一件」で何があったのか、気になってしょうがないです。その話をぜひ読みたいと思ったのは、僕だけじゃないですよね?

「直前」のお話では、昔に思いを馳せて懐かしいと思う気持ちすら振り払おうとする景の姿が、切なかっただけに(それもまたいいんですけど)、友と愛する人という温かさを手に入れることができた「その後」のお話に大満足でした。
「プラス」の表紙イラストも、二人の距離が伺えてニヤリです。

あー、面白かった。毎月連続刊行されると聞いたときには、ちょっと驚きましたが、読み始めたら、毎月発売日が楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。ほんと幸せな一時でした。
こんな面白い作品を見逃すなんてもったいないので、Dクラッカーズシリーズを読んだことがない人はぜひ!

Dクラッカーズ+プラス―世界-after kingdom- - あざの 耕平

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