薔薇色にチェリースカ / 海原零
薔薇色にチェリースカ
優生会の面目をつぶすために、優生会主催の仮面舞踏会に忍び込んだ綺羅崎ヒロだが、決勝トーナメントへ進んだところで、正体がバレてしまった。幼馴染の真希の手を借りて、必死に逃げたものの、周囲がすべて敵であっては、逃れる術はない。人気のない施設で身を隠してやり過ごそうとしたヒロだが、そこで、異変と出会った。苦しそうに悶えていた蛇が脱皮して、美しき少女へと変化したのだ。
少女の正体を知ってしまったヒロは、命と引き換えに、彼女 ― チェリースカの宿主となったが……
いやあ、面白い。舞台設定がよくわからないまま、いろいろな視点で物語が進んでいくので、初めはちょっと混乱……ってほどじゃないけど、ん?と思うことが多かったですが、概要がつかめてからは、一気読みです。
学園派閥……じゃないか、闘争ものとでも言うんでしょうか。貴族が集う欧州の伝統ある名門校、マシュテバリ学園が舞台。学園を牛耳ろうとする理事長と、エリート生徒の集まりである優生会の対立が描かれる中、身寄りのない自分と妹の学園生活のために、理事長の手先となったヒロが、優生会と関わりあう内に、蛇女チェリースカと疎遠になっていた幼馴染み真希に出会って……というお話。
生徒たちの間では力を持つ優生会に敵対するってことで、ヒロの周りは敵しかおらず、孤立していたんですが、そんな彼を手助けする幼馴染みの真希がすごい良かったです。幼いころ、お互い気になる間柄になっていたのに、それ以上進めなかったどころか、心とは裏腹な分かれ方をしたふたりってのは、いい具合にお話を盛り上げてくれました。祖国から遠く離れた地で、それまでとは違った関係で側にいることになった二人の距離感がたまりません。
人間の姿のときは魅力あふれる美少女で、普段は蛇の姿で、ヒロの体に巻きついて生活しているというチェリースカが、また良かったなあ。正体を知られているということもあって、初めはきつい人かと思ってたんですが、だんだんと打ち解けてきて、さりげなくいたずらしたり、いたずらずるつもりがなくても、ヒロの体に巻きついてるおかげで……なことがあったりして、いつの間にか、心地よい関係に……なったあとだっただけに、チェリースカの態度が突如変化したのは、いったいどういうことなのか気になりましたね。
優生会に逆らったことで、ヒロと真希が命の危険にさらされましたが、ここでのヒロと真希のやり取りは、ドラマのような台詞が良く似合うシーンだったなあ。ぎりぎりのところで切り抜けることができたのは、真希の信念の強さと、チェリースカのおかげですが、切り抜けたことで、優生会とは余計に敵対関係になっちゃったかな。
勢力としては圧倒的に差があるだけに、いったいどうなるのかしら。ひょっとしたら、真希も理事長の手にかかってしまうのではないかと思うと、ちょっと不安もありますが、でもあの理事長は、悪どくもキレものなので、個人的には好きなんだよなあ。学園内の勢力争いもさることながら、ヒロを巡っての三角関係とかもあったりするのかなってところも気になりますね。続きが大いに楽しみです。
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薔薇色にチェリースカ 2
「さて、キラサキ、貴様の任務を説明する」― 横暴を繰り返す理事長が続けた言葉は、封鎖されている地下にあるパルパテラ教会の破壊命令だった。一切便宜は図られず、見つかることすら許されないクソッタレな任務だが、自分だけでなく、妹のためにも、成し遂げなければならない。ヒロよりもはるかに地下迷路を知っているチェリースカの案内を受けて、パルパテラ教会を目指したが、そこには、チェリースカにとって恐怖の対象である敵が待ち受けていて……
自分と妹のために、生徒と敵対する理事長の狗となった綺羅崎ヒロが、ヘビに変身できる美少女チェリースカと出会って……というお話の第二弾。今回は、地下にあるパルパテラ教会で、チェリースカの秘密や宿敵が明かされていくお話です。
いやあ、面白くなってきた!でも、読みにくかった。チェリースカとヒロの視点が、コロコロ入れ替わるところがあったおかげで、どっちの心の内なのか混乱することが結構あったような。話が転がっていくとそうでもないんですけどね。
前作のような学園ものっぽいところは若干なりを潜めた感じがありますが、真希とのやり取りは面白くなってたなあ。よりによってな行動が引き起こされるおかげで、怒り心頭してましたけど、ふたりの間にある垣根は、取っ払われてる気がしないでもない。
ただ、ふたりの間にあった意味深な過去は、実は……というところに、学園の闇を感じましたね。下手すると、ヒロの両親も……なんて囁きが聞こえてきそうなだけに、このあたりは大いに気になるところ。
今回一番大きな動きだったのは、チェリースカの秘密が明かされたことでしょう。彼の人と対峙したときには、極端な怯えを見せたときには、どうしたことかと思いましたが、あれはきつい。チェリースカの恐怖も理解できる。むしろ、よくぞ正気を保ってるものだと思えるぐらい。彼の人の狂気を、はじめは不気味に思っていただけでしたが、だんだんと姿を見るだけで、こちらまで絶望を感じ取れるようになってしまいました。
こうなると、さすがのチェリースカも、心が弱くなりますよね。ヒロに自分の秘密を話したのは、無理なことはわかっていながらも、それでも救いを求めざるを得ないほど、追い込まれていたんだと思います。突拍子もないけれど、それでも目の前の光景を見たら信じざるを得ない、姫と王子の話に身震いしてくる。
それにしても、思わず感心してしまったのは、三つ巴な関係ですね。それぞれが持っている「鍵」が、単純な力の強さとはまた別のアドバンテージも見せてくれて、互角とまでは行かなくとも、ぎりぎりのラインで戦えることに、なるほどと思わされます。
いやあ、面白かった。地下へ行ってからのお話は、ちょっと冗長かなと思わなくもないけど、二人がより強い信頼関係で結ばれることになったのは、よかったと思いました。
とはいえ、油断はできませんよね。今度は相手も別の手を考えてくるだろうし、ダミアの動向も気になります。一応、こちら側も、ちょっとした明るい進展はあるんだけど……、ああ、気になる!
続きが待ち遠しいですね。
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薔薇色にチェリースカ 3
「キラサキ。貴様に礼をしなければならんな」
今朝、理事長室で、アン・フローレンスと引き合わされた際、ギルコは彼女の宿主に、こう切り出した。
しかし。
「今後、私の娘を守れ。娘の敵が皆、貴様を憎むように仕向けろ。それから、娘の頼みは全て聞け」
弱みを握られ、生徒と敵対する理事長の狗となった綺羅崎ヒロが、喋れるヘビにして人間へと変身する謎の美少女チェリースカと出会って……というお話の第三弾。今回は、素性がバレた理事長の娘・アンの護衛を負かされたヒロが、彼女の色気に誘われて、男子禁制のお茶会へ忍び込んだら、そこでトラブルが、というお話。
これは面白かった!
理事長の娘とは思えないほど魅力的なアンですが、ヒロに対して積極的なアプローチを見せてくれて、いつになく動揺するヒロと、その様子を誰よりも側で見て、面白くないものを感じるチェリースカの様子にニマニマしちゃう。幼馴染の真希も不機嫌な姿を見せてくれて、ああ、この嫉妬なやり取りと、素直に認めない女の子たちの強情な姿が楽しくてしょうがない。
そんな中、理事長の狗であるヒロを何とかしようと、優生会の副会長アイスヒルが、画策していたら、子飼いのものが暴走して、よりによって、今まで秘密な存在だったヒロの妹へと手を伸ばし始めるから、ドキドキです。しかも相手は男で、クスリなんてものを持ち出してくるんですから……。
どうなってしまうのかと思ってる間、ヒロのほうといえば、男子禁制のお茶会に忍び込む男たちの手伝いをしてるんだから、まったくもって困ったもんだ。まあ、ここでジャンみたいな男と知り合えたのは、いいことのような気もするけど、こういうことやってるからバチがあたったんだろうなあ。フルチン・ブギに大爆笑でした。
お嬢様たちのお下品なお茶会はさておくとして、大ピンチなヒロの妹・ミカルを助けたチェリースカが、とてもよかった。強いのは当たり前として(というのもなんだけど)、力の強さではなく、気持ちについて語るシーンは、とても印象に残りました。
強くなれ。
その言葉と、その視線が、ミカルにとってどれほどの支えになったかを想像すると……。
圧倒的不利な立場であるヒロが、相手を陥れるべく動くアイスヒルと引き分けることができたのは、間違いなく彼女のおかげですよね。あの覚悟には、本気でしびれました。いやあ、面白くなってきたぞ!
今回はヒロに譲ったとしても、このまま終わるアイスヒルじゃないだろうから、今後彼女がどのような策略を用いてくるのかは、とても興味がありますね。
もちろん、ヒロ争奪戦も楽しみです。チェリースカがあんな大胆なことをしてくるとは思ってなかったので、うふふですね。「代わってやろうか」と言われて狼狽した真希も、そろそろ素直にならないとやばいかもよ?
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薔薇色にチェリースカ 4
「チャンスをあげましょう」
「……チャンス?」
「簡単なことです」
世界一高いかもしれないアイスヒル様のプライドが、許すわけもない。
そう、あの敗北を。
「決闘を復活させます」
弱みを握られ、生徒と敵対する理事長の狗となった綺羅崎ヒロが、喋れるヘビにして人間へと変身する謎の美少女チェリースカと出会って……というお話の第四弾。今回は、ヒロの幼なじみである真希が、シシリー・アイスヒルの罠にハマってしまうお話です。
次から次へと展開が進むわ、危機一髪の連続だわで、どうなるのかとハラハラしましたけど、読み終わってみるとなんとももやもやするものが残ります。言葉悪いけど、行き当たりばったりばかりで、謎めいたところについては、ぜんぜん見えなかったからかなあ。次で最終巻らしいけど、いったいどうなっていくんだろう。
それにしても、シシリー・アイスヒルがこんな姑息な手を使ってくるとは思わなかったけど、決闘を申し込むあたり、自身のプライドを賭けた罠だったわけですね。シシリー・アイスヒルの地位やら何やらを優先する考え方は好きではありませんが、どんなときでも自分の誇りを貫こうとする姿は、小気味いいものがありました。
ヒロと共に閉ざされた空間に足を踏み入れたときでも、傲慢な態度を崩さないあたりには、チェリースカ同様、放っておけばいいのにと思ったけど、不安を隠せない様子に、ヒロのお人好しっぷりに反応を示し始めたあたりに、妙な気持ちを覚えました。さすがにデレることはないと思うけど……、それでも何か変わっていくのかしら。なんとも心情が捉えにくいのでもどかしい限り。
一方、罠にかけられた真希は、怯える様子こそあったものの、ヒロに危険が及ぶことを思ったら、逃げずに立ち向かうあたり、いい根性しています。ヒロ自身は、チェリースカに思いを寄せる……というか、傍にいてくれることに安心を覚えてるところがあるので、なかなか難しいかもしれませんが、頑張ってほしいところですね。
きな臭い動きをしている校長の真意や自由会会長ソフィーの動きなど、気になるものがあるだけに、次なる巻でどんな決着をつけるのか楽しみです。
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薔薇色にチェリースカ 5
異様なまでに熱い吐息と、負の情念に満ちた瞳で。
そう。こちらに伝えてくるのは愛情ではなく。
渾身の呪い―。「エデナリーン・ヘラは、我が身可愛さに私を破滅させたのよ」
弱みを握られ、生徒と敵対する理事長の狗となった綺羅崎ヒロが、喋れるヘビにして人間へと変身する謎の美少女チェリースカと出会って……というお話の第五弾。ヒロとチェリースカの前に現れた女教師によって、ヒロはリバースサイドへと足を踏み入れて……、初恋の人との出会い、よみがえる記憶、すべてが明らかになるシリーズ最終巻です。
うーん、ちょっと消化不良かも。
前作のラストで怪しい動きをしてくれた校長の正体がわかってから、初恋の人が現れて、というあたりは、様々な裏を感じて、ワクワクしたんだけど、思わせぶりな描写の割りに、話が進まないというか、なんか、ノリが悪く感じたのは、詰め込みすぎだからなのかな。
リバースサイドとファーストサイドという関係が悲劇を生み、裏切りと駆け引きが繰り広げられるのは、悪くなかったんだけど、ヒロが彼女の思いに気づくのがちょっと早すぎた感があるかも。あれ、もうちょっとうまくやれば、ヒロに大ダメージ与えられたよねとか思ってしまうサド心があったりする。
でも、チェリースカを巡る争いの中で、チェリースカの記憶が戻ったことが、ヒロに対しての負い目となって繋がるあたり、意外性があって面白かったです。傷つきながら怯えながら、それでもヒロを、と思うところに、彼女の思いを感じました。
最後にヒロのもうひとつの秘密が見えて、それが結果としてギリギリのところからの生還を呼び寄せていくところとか、エピローグも良かっただけに、もうちょっとページをさいて、物語をつむいでほしかったなあ。
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