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“文学少女”シリーズ / 野村美月 ― booklines.net

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“文学少女”と死にたがりの道化

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫) - 野村 美月
人間失格 (新潮文庫 (た-2-5)) - 太宰 治

黙っていれば大変お上品そうでお人形さんのような人である遠子先輩は、本などの物語を食べる妖怪だった。
ひょんなことから遠子先輩につかまり、文芸部に入部させられ、お題を言い渡されて「おやつ」となる物語を書かせられる毎日を送る心葉。
ある日、文芸部にひとりの生徒が恋の相談を持ちかけてきた。恋の行方を物語として書くことを条件に、心葉がラブレターを代筆させられることになったが……

コミカルなお話かと思ったら、切ないじゃないですか。複数の話がさりげなく絡み合う展開に酔いしれました。人によって大きさは異なれど、過去に犯した過ちに苦しむことは変わらない。そんな個々人の悲しみ、苦しさが、ぐっと迫ってくる。
それでも、重すぎないのは、遠子先輩のおかげでしょうね。
本を食べちゃう妖怪といいながら、その姿が先輩として心強いのは紛れもない事実。
これはいいなあ。この雰囲気はたまらない。

太宰治の人間失格がこの物語にとって重要な位置を占めますが、未読のぼくでも遠子先輩の説明を読みながら楽しめました。読んだ事がある人はもっと楽しめるのかもしれません。

今後は心葉の過去がさらに明かされてくるだろうし、嫌いといいながら心葉が気になってしょうがない琴吹も絡んでくるでしょうし、続きが大いに楽しみです。

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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”文学少女”と飢え渇く幽霊

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫) - 野村 美月

文芸部のポスト(不法設置)に嫌がらせのような手紙を入れた犯人を捕まえるために、夜までポストを見張ることになってしまった。期末テストまでの貴重な時間なのに、ぼくには憤慨している遠子先輩を抑えることができなかった。
その夜、僕らの前に現れたのは、一昔前の制服に身を包んだ少女だった。
「だってわたし、とっくに死んでるんですもの」って、まさか幽霊……?

文芸部のポストに嫌がらせのような手紙か届けられたことから始まる物語。
素晴らしいですね。文句なしに面白いです。
憤慨して一直線に暴走する遠子先輩と振り回される心葉のやり取りが楽しくて楽しくて。怖い事が嫌いでおびえているのに、人前ではそんな素振りを見せまいと強がる先輩がなんともいじらしいです。この二人のやり取りに幾度となくニヤニヤしてしまいました。

手紙を投函していた少女の関係についてはわりと想像がつきましたが、何をしでかすかわからない雰囲気と展開に引き込まれました。遠子先輩のおかげで、シリアスになり過ぎずに物語が進んでいくので読みやすいですが、だからといって軽いわけではありません。しっかりと揺さぶられます。
すれ違いから生まれる誤解の残酷さが、最終章の叫びが、心に突き刺さります。

心情という点では、心葉の苦しみが特に印象的でした。「失ったものを取り戻す方法」は、忘れられない過去がある心葉にはどんな誘惑となったことか想像するだけでもきついです。ただ、苦しまずに思い返すことが出来る日は、遠子先輩がいれば、そう遠くないのではないかと思います。思いたいです。

個人的に好きなシーンは、自分の身が危ないにも関わらず、部屋にある本の心配をする遠子先輩ですね。あの危機一髪な場面で、真面目に笑わせてくれる遠子先輩大好き。

一方、気になったのはツンデレな琴吹さんですね。前作に負けず劣らず微妙な乙女心が素敵な彼女ですが、中学時代に心葉と何かがあったことを匂わしてました。いったい何があったのか気になりますが、この辺りはいずれ明かされると思うので、楽しみにしようっと。

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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“文学少女”と繋がれた愚者

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫) - 野村 美月

図書館の本のページが切り取られるという事件が発見してしまったら、遠子先輩の憤りを止める事なんてできなかった。張り込みを続けて捕まえた犯人は、何と心葉のクラスメイトである芥川くんだった。
遠子先輩は彼を突き出さず、文化祭で文芸部が行なう劇に参加するよう要請して、芥川くんは引き受けた。だが、そのとき、既にトラブルは始まっていたのだ……

やっぱり、遠子先輩の作品に対する思いはいいなあ。愛情溢れる言葉なので、読んでいて楽しいし、その作品を読みたくなりますね。ちょっと暴走するのはご愛嬌ってことで。その暴走のおかげで、なぜか演劇をやる事になってしまった文芸部のお話です。部員の人数が少ないので、芥川くん、琴吹さん、竹田さんもお手伝いをしてくれます。

一見ほのぼのとした始まりなんですが、芥川くんが、これほどの過去を抱えていたとは思いませんでした。ところどころに感じられる空気の重さに、不安を覚えさせられて、徐々に袋小路へとハマっていく芥川くんに、心苦しさを覚えます。
ただ、そんな彼の苦しさよりも印象的だったのは、心葉が芥川くんの闇の部分に近づいていくところですね。

誰からも距離を置いていたのに、辛くなることがわかっていたのに、放っておけなかったのは、過去の自分に重ね合わせたからでしょうか。それとも、友達としての意識があったからでしょうか。いろいろなことを感じさせてくれる描写に、恋って、心ってホント難しい思いました。

そういえば、琴吹さんが心葉くんと本格的に絡み始めましたね。相変わらず心葉くんの前では突っ張ってますが、何かあると、照れたり、心配したり、噛み付いたりと、揺れる乙女心が前面に出ていて可愛いです。気づいてあげてよ、心葉くん
遠子先輩には彼氏がいるかもなんて言って、心葉が(違うことなのに)落ち込むと、慌ててフォローするあたり、悪い子になれなそう。
昔、琴吹さんと心葉がどこで会ったのか、なぜ勘違いをしているのか、気になるところ。

今回は、なんといっても遠子先輩が、最高に素敵でした。騒いだり、ポカしたりと、とても頼りになるようには見えませんが、心葉が辛いときは、しっかり支えてくれるんですよね。気まずい思いをしている心葉をさりげなく迎えに来るところとか、思わずグッときましたし、何より舞台のシーンのすばらしさといったら!
それぞれが抱えている闇を吹き飛ばす長広舌に、心が熱くなりました。あの舞台を見ていたら、間違いなく遠子先輩に心を奪われてしまうでしょうね。ああ、見てみたいなあ。

いろいろドロドロしたものがあったものの、素敵な友情が芽生えて、いい話だったなあ。と思っただけに、最後の手紙は衝撃的でした。途中で気づかされたときには、背筋が寒くなりましたよ。
また少し心の闇が晴れたかに見えた心葉ですが、これはどん底に落とされるかも知れませんね。遠子先輩なら何とかしてくれると思いつつ(願いつつ)、心葉の気持ちを考えると、次作が怖くて怖くて。でも楽しみです。

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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“文学少女”と穢名の天使

遠子先輩がいきなり休部すると言い出した。なんと、これから受験に専念するというのだ。自分を引っ張り込んだのに休部だなんてと、先輩の勝手さを怒りながら、心葉は一抹の寂しさを覚えていた。
そんなある日、琴吹ななせが心葉に泣きながら相談をしてきた。彼女の友人である水戸夕歌が行方不明になったというのだ。彼女の泣き顔にいたたまれず、心葉は、琴吹と一緒に夕歌の行方を追い始めたが……

今回は「オペラ座の怪人」がモチーフですね。行方不明の歌姫を追っていくうちに、心葉が衝撃的な事実と向き合うことになるお話です。

遠子先輩が受験に専念するということで、出番が思いっきり減っちゃったのが、とても残念でしたが、その分、琴吹さんが頑張ってくれました。もうね、初っ端のクラスメイトにからかわれながら「別に井上なんか」という姿や、音楽教師の毬谷先生のからかいに、必死になって抵抗する姿がたまらなく可愛いです。
クラスメイトの示唆や琴吹さんの態度が、あれほどあからさまなのに、気づかない心葉くんは、どれだけ朴念仁なんだと思ってしまいますね。彼が書いた恋愛小説ってどんな話なのか、ものすごい気になる。

普段なら、遠子先輩が引っ張りまわして、事件にかかわっていくのに、今回は心葉くんが動くという珍しい展開なのは、琴吹さんのこともあるんだろうけれど、遠子先輩がいないという寂しさが動かしたんじゃないかな。
ただ、そういった行動が、他の人に偽善と受け止められたり、調べていくうちに、隠された事実を知ることになり、それをどう扱うかについて、迷う姿には辛いものがありました。

一番印象に残っているシーンは、辛いかもしれない真実を、自分は本当に知りたいのだろうかと自問する心葉が、琴吹さんだったらどうすると尋ねたとき、彼女が答えたところですね。感情が表に出まくって、強がってる印象があっただけに、芯の強さを思わせてくれる言葉には、心動かされるものがありました。
ついに琴吹さんと心葉くんの出会いについてもわかったし、このシーンは、とてもいい雰囲気でしたね。電話なんて小道具がニクすぎです。
個人的には、心葉くんには、遠子先輩がお似合いだよなあと思ってたけど、琴吹さんも負けてないですね。がんばれ!!

ひとつの道を示してくれた人が、実は心の奥底で、別の思いに囚われていたという事実は、あまりに残酷なものがありましたね。特に「ミウ」から逃げられない心葉からしたら、潰されるような思いだったでしょう。遠子先輩の言葉は「天使」に向けたものであると同時に心葉に向けたものだったんだろうなあ。
遠子先輩と「天使」の言葉に、心葉くんが新たな思いを胸にしたところは、とても良かったです。

今回のことで、心葉はまたひとつ、心の闇を消したと思いますが、最後に例の人が裏で動いてることがわかったので、まだまだ予断を許さない状態ですよね。真実は美しいものばかりでないということを知ったわけですが、これがもう一度、心葉に降りかかりそうだなあ。琴吹さんが、心葉くんの思いを胸に、動き出すようですが、どんな事実を浮かび上がらせるのか、読むのが怖いぐらいドキドキしてます。でも、早く読みたい!

“文学少女”と穢名の天使  - 野村 美月

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"文学少女"と慟哭の巡礼者

新しい年のはじまりの風を吸い込みながら、初詣に出かけた。琴吹さんと一緒に。なんだが気恥ずかしくて、けれど心地いい。またふたりで遊びに行こうと約束して別れてから、歯車は反転してしまった。約束を急にキャンセルされ、しかも琴吹さんは怪我で入院したという。
お見舞いはいいという琴吹さんの言葉を放っておけず、病院へと向かった心葉は、そこで片時も忘れたことの無かった少女と再会して……

美羽との再会に心を揺らす心葉を描いたお話ですが、始めの初詣での琴吹さんとのやり取りが、あまりにも微笑ましくて、心温まる感じにニヤニヤしてたんですが、それだけに美羽と出会ってからの展開はきつかったです。あれほど信頼を置いていた芥川や琴吹の言葉すら届かなくなっていくんですから。今まで美羽に対していろいろと語られていたのは、心葉からの視点だったということをまざまざと見せつけられた感じですね。
心葉としても、勘づいていただろうに、それでも手を伸ばさざるを得ない状況を作り上げるんですから、人の思いほど怖いものはないとつくづく思いました。

誤解を解く機会は幾度となくあったのに、気づこうとしなかったこと、見ようとしないところには、相変わらずの弱さでしたね。誰もが心葉を心配していて、そのことに気づいているのに、心葉自身も、他の人も傷つける行為が続くところには、ほんと辛かったです。

そんなとき、心葉の中にスッと入ってきてくれた遠子先輩が、素敵でした。宮沢賢治や谷崎潤一郎の物語を通じて、心葉の迷いを見つけていくところは、素敵にミステリーで、残酷でもありました。気づかずにいれば……と、昔の心葉なら思ったかもしれませんが、ここで自分を見つめようとしたところが、成長したところなんだろうなと思いました。むろん、美羽についての違和感もあったんでしょうけれども、それ以上に、昔と違って、自分を思ってくれる先輩がいる、友人がいる、大切なヒトがいるってことが、大きかったんじゃないかな。
心葉と遠子先輩の祈るようなイラストが、とても心に残りました。

それまでは、ただただ悪意しか感じられなかった美羽の心でしたが、実は寂しさと、大切だからこその思いが見えてくるところに、やるせない気持ちでいっぱいになりました。「B」なる人の思惑についても、許されるものではないと思いつつも、切羽詰ったものを感じるだけに、何ていうか、消化しきれないような、もやもやが残りました。

それをすっきりさせてくれたのは、文学少女たる遠子先輩の言葉でした。あの話の流れで、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を持ってきたシーンの感動といったら!込められた思いを知って読む「雨ニモマケズ」に、涙が……。

これだけでも素晴らしかったですが、「井上ミウ」の名義で心葉が書いた小説の初稿の言葉には、もはや感動という言葉だけでは物足りないぐらいのものを感じました。
「わたしは木になりたい」
ただ一人のために告げられた真摯な思いに、言葉もありません。

今までの物語があったからこそ、これだけの思いを乗せられる物語になったんだろうなあ。素晴らしい。ほんと素晴らしい。何も言わずに読めと周囲に触れ回りたくなるぐらいです。ああ、もう一度シリーズのはじめから読み返したくなってきましたよ。

いったいどうなることかと思いましたが、素敵な終わり方を迎えることができて、ホッと一息……と思いきや、ラストの呟きはなんですか!?
こうなったら、たぶん、次は遠子先輩の物語になるんだろうなあ。

時期も時期だけに、別れを意識させられますが、ビターであっても、最後はスイートになってくれることを期待したいですね。
大絶賛オススメシリーズ!!!

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5) - 野村 美月

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“文学少女”と月花を孕く水妖

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6) - 野村 美月

夏休み。麻貴先輩に「貸し」を作った遠子先輩が、姫倉の別荘へと連れて行かれ、遠子先輩を逃がさないために、また遠子先輩の「おやつ」のために、ぼくまで別荘へと連れて行かれた。そんなある日、ふたりで町の本屋さんを訪れたら、そこで、姫倉の別荘の噂話を耳にしてしまった。なんと、あの場所では、八十年前の惨劇により、幽霊がでるというのだ。
「怖いの?」という麻貴先輩の言葉に、遠子先輩は「ゆ、幽霊なんているわけがないじゃない」と、事件の謎に挑むことになったが……

姫倉家の別荘でおきた八十年前の惨劇と、今なお残る妖怪伝説の謎に、夏休みに文学少女の遠子先輩が挑むという特別編ですが、あー、もう、遠子先輩可愛いなあ!

「貸し」のせいで、麻貴先輩の絵のモデルとして、あんなことやこんなことをされて、あ〜れ〜となってる姿とか、別荘に幽霊が出るという話を聞いてビクビクしているのに、強がって平気なふりをしつつ、ひとりで寝れずに心葉のところにやってくるところとか、お腹が好いて物語や本をねだる姿が、すばらしい。麻貴の策略にハマって、心葉の言葉で真っ赤になった姿に、ニヤニヤにやにや。

そんな遠子先輩が、妖怪や幽霊なんていないんだから(いたら怖いから)と、当時の姫倉家の巫女たるゆりが書いていた日記を元に、事件の謎を追っていくんですが、八十年前の出来事と現在にリンクするものが見えてきたとき、それを仕掛けたであろう麻貴先輩の心情を思うと、ゾクゾクするほど怖かった。特に祟りを思わせる出来事の始まりで、血にまみれた麻貴の笑みは、鳥肌もの。
本音が見えない人って、怖いなあと思いつつ、彼女の思惑が気になって仕方なかった。

姫倉という家で、閉ざされた日常を送っていた少女の恋には切なさを感じましたが、それよりも、時折見せる遠子先輩の表情が不安でした。まるで何かを予感させるかのごとく。

ひとつの事実から、まるで別の物語を作り上げた遠子先輩の手腕は、いつもながら見事でしたし、ひねくれ者同士の恋も素敵で、ああ、よかったと思って迎えたラストでしたが、まさかまさか、これほどの驚愕が待ち受けているとは思いませんでした。たった2、3ページで、それまでの空気を一変させられるとは、予想だにしてませんでしたよ!
あのとき、遠子先輩は、何という言葉を心葉に伝えたかったんだろう。もし伝えていたら、どうなっていたんだろうと思っていただけに、歯型に込められた思いが、今後どう展開されるのか、気になります。

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6) - 野村 美月

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“文学少女”と神に臨む作家 上

“文学少女”と神に臨む作家 上 - 野村 美月

「これまでオレは、天野遠子と井上心葉の物語の、読み手でした。けど、ここから先はオレが書き手になって物語を作ります。井上ミウは書かなきゃいけないんだ。でないと、天野遠子は、消えてしまう」
気づけば、喉がからからに渇き、全身が汗でびっしょりだった。パジャマが肌に張り付いている。
天野遠子は、消えてしまう。
流人くんの声が、耳の奥で不気味に響いている。

天野遠子は、消えてしまう。

遠子先輩の卒業も間近な2月。琴吹さんと心葉が付き合い出したことを、快く思わない流人が、二人の間を揺さぶりだして……という最終章の始まりですが……

怖えー、流人、怖えー!

今までも、どこか冷たいところを見せてたけど、それでもわかりあえるものがあったような気がしてたんですが、こと遠子先輩のことになると、こうまで強引になるのか。琴吹さんと心葉の微笑ましく心温まるやり取りが、流人がくると一転して緊張感高まるから、読んでて心苦しくなります。

「心葉は、遠子姉の作家」という言葉は、ただそれだけ聞くと、甘い関係のように思えるのに、流人の口から発せられると、まるで別の響きが感じられるから恐ろしい。物語が進むにつれて、だんだんと心葉の心がやられていくのが見えてきて、やるせなくなる。
せっかくバレンタインってことで、琴吹さんが頑張ってるのに……
早いところ、芥川くんとかに相談しちゃえばいいのにと何度思ったことか。

「小説を書く」ということについては、一度恐怖を感じたところだけに、戻るのが難しいとは思うけど、でも、井上ミウとしてではなく、井上心葉として歩くことはできるんじゃないかしらと思うんだけど、さてさて。

まあ、おかげで、遠子先輩について、いろいろ見えてきましたけどね。シリーズを読んでた身としては、気になってたところだったのでありがたいものでした。なるほど、こういう現状を側で見てきたから流人は、ああいう行動に出たのかといろいろ納得したんですが……、今回、なかなか遠子先輩の心のうちが見えないこともあって、表立って見える事柄をどこまで信じられるかってのが微妙な気がする。

遠子先輩のご両親と、その親友の三角関係の真実は、どこにあるのかわかりませんが、そのことで、遠子先輩が苦しんでいると感じている流人が、最後の最後で、危険な方向に手を伸ばそうとしてて、あー、もうどうなるんだ!続きが気になって仕方ないです。

そういえば、麻貴先輩は何をしているんだろう?

“文学少女”と神に臨む作家 上 - 野村 美月

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“文学少女”と神に臨む作家 下

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫) - 野村 美月

もう、何日も遠子先輩に会っていない。声も聞いていない。
忘れているつもりなのに、忘れられない。心の奥にいつも存在していて、こんな風に少しのきっかけで、あざやかに再現される。
喉が熱くなって、胸も裂けそうに苦しくなった。
あんなに好きだった美羽のことも、ふっきれたんだ。
いつか平気になる。
遠子先輩のことを、忘れられるときがくる。

いやあ、良かったです。ほんと良かった。読み終わったとき、思わず目をつぶって余韻に浸ってしまうものがある。物語を書くというのは、こんなにも激しい衝動に駆られるものなのか。作家を支える人もまた、物語を届けるためなら……。
時に残酷と感じることもあるけれど、支えるとはそういうものなのかもしれないと思わされるものがあった次第。

ともあれ、上巻で暴走気味だった流人が、たったひとつの出来事から急変して、影が薄くなっていきましたが、琴吹さんを守るために奮闘する心葉は、ほんと頑張ったと思います。流人の挑発に飲まれそうになったときの琴吹さんの言葉や温もりを思うと、ああ、いい感じに思いを育んでるなあと思ってたんですが、そこは流人もわかっていて、さりげなく急所を突いてくるからイヤんなる。
思いあっているからこそ、生まれてくる不安に、胸がドキドキしっぱなしでした。

遠子先輩が生まれたときの話とか聞いてると、涙が出そうになるけれど、だからといって琴吹さんが大切じゃないわけではなく。二人の少女の間で揺れながら、心を強く持つ先輩をうらやましく思いながら、気づけば孤独に打ちひしがれていた心葉でしたが、その思いを救ってくれたのは、かつての自分の言葉で。
人は変わる。そのことを思い出させてあげた竹田さんが素敵でした。

そして、心葉によって、九年前の真実が解き明かされて。
『おばさん』に込められた思いには、涙が止まらなかったなあ。
胸を切り裂くような悲しく切ない思いを感じながらも、根底には温かく優しい思いが感じられるお話でしたね。

最後に、再びペンを手にする心葉の姿を見ると、父と同じ道を進もうとしていた遠子先輩の姿も見えてきて、きゅんとしちゃうものがあります。遠子先輩だけでなく、最後まで「バカ」と言ってくれる琴吹さんも、とっても素敵。
レモンパイの人が誰だったか。それは読んでのお楽しみってことで。

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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“文学少女”と恋する挿話集(1)

“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫) - 野村 美月

『はしるはしる、わづかに見つつ、心も得ず心もとなく思ふ源氏を、一の巻よりして、人もまじらず几帳の内にうち臥して、引き出でつつ見る心地、后の位も何にかはせむ』―。
ああ、わかる!わかるわ!この気持ち!
高く積み上げた物語を、まだ続きがある、まだまだ読めると思いながら、次々ページをめくってゆく喜び!無限の高揚感!疾走感!

清楚で可憐な大和撫子、物語を愛する文学少女の天野遠子。彼女が所属する文学部に引っ張り込まれた井上心葉を筆頭に、彼女を取り巻く人々が織り成す短編集の第一弾です。ちなみに上の引用は、超共感してしまったので、長いけど思わず。

これは楽しかった!
遠子先輩に恋する筋肉な男の人の涙なしでは語れない(笑いすぎて)お話や、文学部となぜか関わりが深いボート部との騒動、はたしてチョコは……といったバレンタインデー話など、時に騒動を引き起こすことがあるものの、遠子先輩の熱血と優しさあふれる行動力は、微笑ましい限りです。初めは文学部に来ることを拒んでいた心葉が、少しずつ彼女の笑顔に惹かれていくあたり、まったくもってツンデレさんなんだからとニヤニヤしてしまうこと請け合い。
っていうか、こんなすばらしい先輩がいるのに、ななせに心揺らすんだから心葉ってやつは……。いや、僕ななせ大好きですけどね?

ふたりのお話だけでなく、周囲の人のお話も載っていて、仲の良い男友達に恋をしてしまった「“文学少女”と病がちな乙女」の甘酸っぱさは、すばらしいものがありました。

「きっと今のわたしは病気なんだろうけれど、どんな病気なのかわたしにはわからない。痛みは感じるけれど、傷なんかどこにもない」

なるほど、恋の病とはよく言ったものです。
あのふたりがどうなったのか、想像すると、気持ちが弾んでしまいますね。きっとうまくいっただろうから。

そのほかにも、遠子と麻貴の出会いの事件話があったりと盛りだくさんでしたが、個人的には、美羽と芥川の「無口な王子と歩き下手の人魚」が一番好きだなあ。人に対して距離を置いていた美羽が、子供と触れ合うバイトを通して、再び物語を生み出していくところや、何事も優等生だった芥川が見せた弱さを支えようとした姿に、ああ、このふたりならきっと、とそう思えるものがありました。
何気にいい味出してる芥川姉ににやり。

いやあ、ほんと素敵でした。
ラストの遠子先輩が大学生になったときのエピソードなんて、胸が締め付けられるような切なさと、人への想いから伝わってくる優しさに思わず、じわりとくるものがありました。またイラストが素敵で……。

今回のお話では遠子先輩が中心となるお話が多かったですが、琴吹さん話などは、次の挿話集に収録されるそうです。今から楽しみでなりません。

“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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“文学少女”と恋する挿話集(2)

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫) - 野村 美月

顔を上げると、森は夕日の中に溶けてしまいそうなほど、真っ赤になっていた。
胸の鼓動が、金の音のように大きく鳴り響く。
驚くオレの目を、恥ずかしくてたまらなそうにじっと見つめたあと、小さく笑って言ったのだった。
「……反町くんの下の名前、呼んでもいい?」

まさに「恋する」ですね。琴吹さんの親友にして明るくお節介な森ちゃんと、森ちゃんに恋する反町くんのお話を中心とした短編集です。普段だったらタイトルをならべるんだけど、ととても長くなるので省略(一編一編がそれほど長くないからね)。

なんといっても楽しかったのは、森さんと反町くんの恋模様でしょう。
森さんのことが気になって仕方ないのに、琴吹さんをみてると誤解されて、ようやく付き合うようになっていい雰囲気に持っていけても、なかなかキスできないと嘆いたりと、本人が必死であればあるほど、読んでる身としては楽しくなってしまうんです。
毎回毎回ちょっとした喧嘩をして、でも森さんだって本当は……ってのが見えてくる展開がとてもよかった。

そんな二人のお話は楽しかったけど、やられたのは、琴吹さんが主役となるお話です。なんですか、この可愛さは!恋日記の乙女っぷりに悶えるばかり。カレンダーの一行に、ノートの片隅に書いた言葉に、心葉を前にしたときの心境に、ちくしょう心葉めと思った僕がいる。

琴吹さんの性格上、恋の行く末を知っているが故に、読み進めるに連れて辛くなるところもあったんだけど、琴吹さんに親友とその彼氏が傍にいてくれたのは、ほんと良かったですよね。支えてくれる人が、抱きしめてくれる人がいたから、前を向くことができたんだろうなと、そう思いました。

読んだ後に、手をつないだ琴吹さんの嬉しそうな顔と、心葉とのやりとりという、在りし日を思わせる巻頭カラーを見ると、切なくてたまらない。

いやあ、ほんと良かったなあと思いながらも、間に「おやつ」として収録されてる心葉くんの災難話は、フリーダムすぎてどうしてくれようかと思ったのは内緒である。

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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“文学少女”と恋する挿話集(3)

“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫) (ファミ通文庫 の 2-7-3) - 野村 美月

「なんだか頼りないし」
「そうなの、すぐに泣いちゃうから、目がはなせないの」
「優柔不断そうだし」
「いつもぐるぐる迷っているわ。だから、わたしまではらはらしちゃうの」
「意地悪だし」
「でも……ときどき優しいのよ」

遠子先輩との思い出をという牛園くん、毬谷を思う二人の少女、お嬢様学校に馴染めない仔鹿ちゃんと彼女を見守る武田先生のお話などなど、文学少女と恋する人たちの物語の短編集第三弾です。

ああ、楽しい。ツンツンしながら、時折ほだされて三題噺で甘い話を書いちゃう心葉くんは、ほんと面倒くさい奴だと思ったりするけれど、こんだけの思いを抱えていたら……やっぱななせという道はなかったのかと思ってしまう。牛園先輩の思い出作りの手伝いで、出てきた感情は、間違いなく、ね。あのお話は、最後に手を繋ぐシーンがすっごい好きです。

今回は、遠子先輩の可愛いさが尋常じゃなかった。本の話をしている時のいきいきっぷりは、いつも素敵だと思っていたけれど、麻貴の別荘に連れていかれた話(あれは本編の何冊目だったかな)で、こんなやり取りがあったなんて……。こんなにもドキドキさせる言葉は、他にないと思いました。あの瞬間、僕は遠子先輩に恋したうん。

メインの二人の話ばかりではなく、本編で登場した歌い手さんの物語も良かった。先を知っているが故に切なくなるけれど、思いが通じ合ったあのときは、きっと……。

最後に仔鹿ちゃんと竹田先生のお話が三編ほど収録されていました。中学生という多感な時期に、周囲と馴染めずに危ない方向へいってしまいそうになる少女と、教師となった竹田の関係は、いいものでした。ちょっとずつ戻ってきた少女を前に、自分の心の折り合いをつけられない竹田がいて、もやもやしたものを抱えていたけれど、最後には、という展開が良かったです。
竹田と流人は、素敵な家庭を築いてくれると信じてる。

“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫) (ファミ通文庫 の 2-7-3) - 野村 美月

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