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アンゲルゼ / 須賀しのぶ

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アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭

アンゲルゼ―孵らぬ者たちの箱庭  - 須賀 しのぶ

日本全国の中等学校で、最低でも週に一度は軍事教練を行うことが義務付けられたのは、昭和の時代だという。気が弱いがゆえにクラス委員を押し付けられた天海陽菜は、クラスメイトからの嫌味と、指導する配属教官の間に挟まれる日々に、疲れ果てていた。
そんな時、彼女はいつも森の奥にある湖で、歌に反応して現れる「何か」と会うことで安らぎを得ていたが、ある日、その場面を通りかかった少年に見つかってしまい……

感染したものは人を襲うという謎の病「天使病」によって、戦時下となった現代を舞台に、嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、唯一の安らぎの場所で出会った少年に惹かれていく……、という始まりで、気の弱い少女が感じる不安や、他人の悪意などを実感するところが、実に心に痛い。

特に、一人の少年に惹かれていくことで、内気な女の子がちょっとずつ前を向くようになったところに、温かいものを感じたと思ったら、まさかの急降下があったり、悔やんで苦しんで、ようやく乗り切る気持ちを抱えた直後に、現実が見えてくるんですから。ようやく築けたかもしれないという信頼が、ガラガラと崩れる音が聞こえるよう。ああ、痛い。心がほんと苦しくなる。

戦時下の雰囲気とか恋愛模様とかでも十分面白かったけど、最後の方にきて、天使病が間近に見えてきてからが、また一段と引き込まれるものがありました。まさか、そういう形で天使病が発病するとは!
いや、予想していたところもあったんだけど、さらに上をいかれてたので、ああ、なるほど、あの陽菜が、ひとり立ち向かおうとするわけだ。彼女の求める道は、険しいと思うけど、いつまで耐えられるか心配ですね。

彼女の心を和らげることができるのは、明るい湊か、それとも冷たく見える幼馴染の覚野か。三人の関係は、今後も大いに気になりますね。

アンゲルゼ―孵らぬ者たちの箱庭  - 須賀 しのぶ

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アンゲルゼ 最後の夏

アンゲルゼ最後の夏 - 須賀 しのぶ

「……もし、私がいなくなったら、マリアはどうなるんですか」
知らず、声が震えた。
「その瞬間から、彼女はただのアンゲルゼよ」
「どういう意味です?」
「つまり、人類の敵。私たちが即座に排除すべき存在になるってこと」

自分の歌が、感染したものは人を襲うという「天使病」の孵化を促した?
嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、その力を欲する軍によって、平和な日常から殺伐とした世界へと足を踏み入れていくお話です。

いやあ、面白かった!
見えてくる真実が、グサグサと心にきて、読んでてホント辛いんだけど、でも、ページをめくる手が止められません。挫折しそうになりながら、心が折れそうになりながら、それでも支えてくれる存在と共に、前を向く姿が見えるからいいんだよなあ。

いや、ホント辛いんですよ。
戦時下とはいえ、今の今まで、戦いとは無縁だった少女が、その力ゆえに軍へと連れて行かれ、しごかれる様が苦しいです。いや、体力的なものだったらまだしも、精神的に苦痛を感じるところは、読んでてホント辛かった。優しいと思った人ですら、必要とあらば脅迫をチラつかせてくるんですから、やるせないものがあります。

そんな陽菜に対して、容赦なく攻め立てる敷島には怒りを覚えることもあるんだけど、でも時折、保護者のような視線を向けてくれるんだよなあ。いったい何を考えてるんだろう。何を知ってるんだろう。気になるばかり。

新たに出会った仲間の有紗が、また陽菜に冷たく接してくるんですが、同時に感じる彼女の覚悟には、ゾクっとくるものがあるんだなあ。今の今まで中学生だったから当然ではあるんだけど、軍の厳しさを知り、戦いの怖さを知り、何度となく腹をくくって、覚悟を決めていくにもかかわらず、現実はさらに過酷なんだから……、そりゃ自棄にもなるよなあ。突き抜けた湊両親がいなかったらどうなったか、想像するだに恐ろしいものがあります。

でも、そんな状態でも、実験として使われるアンゲルゼに対して、陽菜がみせる優しさが温かいです。苦しみを知るからこその優しさなのかもしれませんが、歌という武器があるならば、それを元に苦痛を和らげよう、思いを伝えようとする姿に、じわりと浮かぶものがありました。
特にマリアに対して衝撃を覚えたときのフォローの歌と、つないだ手のぬくもりは、忘れられません。

天使病のキャリアについての処遇には、これまた嫌なものがあるんですが、陽菜と母との間にあった確執が無くなったのは、不幸中の幸い……とは言えないか。いや、それでも、親子の親愛は、きっとお互いの支えになると思う。
陽菜のことについて、何かしら気づいてきたらしい覚野の動き共々気になるものがあるけれど、さて、どうなるのかしら。
敷島のつぶやいた「底なし」が、不安を呼び込んでくれて、すっごい気になります。

アンゲルゼ最後の夏 - 須賀 しのぶ

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アンゲルゼ ひびわれた世界と少年の恋

アンゲルゼひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫 す 5-67) - 須賀 しのぶ

「……敷島さん」
迷ったあげく、陽菜は目を開いて敷島を見た。多忙のはずの彼がわざわざ病室まで来たのは、きっとこのことを話すためだろう。そう思ったからだ。
「私って……なんなんですか?」

自分の歌が、感染したものは人を襲うという「天使病」の孵化を促した?嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、その力を欲する軍によって、平和な日常から殺伐とした世界へと足を踏み入れていくシリーズの第三弾。今回は、軍方面では、本土から探りを入れてくる者が、敷島の副官としてやってきて、学校方面では、覚野がアンゲルゼについて調べ始めて、というところから、お話が広がっていきます。

まさか!と思ったラスト一行。陽菜の抱えてる事情と、敷島の抱える事情がだんだんと見えてきてたときに、こんな言葉を発せられると、ええ!と思ってしまう。ってことは……ってことなのかなあ、といろいろ悶々するものがある。

それにしても、自身が人間とは異なる存在であることを実感させられるところは、きついなあ。食事を変えるだけという、ただそれだけの行為だけど、他人がやったとき恐怖を感じてしまった陽菜からすると、同じ行動を自分がしたら……という思いに駆られるのも当然か。頑なに拒む陽菜の姿は心に痛いけど、すっと入り込んできて、和らげてくれる湊くん、いいですねぇ。

湊さけじゃなく有紗もちょっとずつ変わってきてて、会話をしていると、その場にいてくれるようになってきましたよね。今までのように無視することなく、時に冷たく感じる言葉も、覚悟を決めさせるためだと思うと、なんかいい感じでチームが出来上がってきてるような気がしてきました。まあ、仲間として近くなればなるほど、別れが辛くなるわけですが……。

一方の覚野。実は今回一番頑張ってたと思います。
タブーであるアンゲルゼについて調べ始めるのはいいけど、まさか敷島に話を通すとは思わなかった。それを引き受けちゃう敷島もどうかと思うけどね!突き放したかと思ったら、優しく受け入れる敷島マジックには思わず惚れちゃいそうになりますが、なるほどなるほど、そういう思惑があったのか。

今回それなりに辛くとも、今までほどグッサリくるものがなかった陽菜でしたが、自身の持つ力の影響を思うと、これは想像以上の覚悟が必要となりそうですね。しかも、敵……というか、味方でないものはアンゲルゼだけじゃないみたいだし、そうなると、敷島も覚野という存在を引き入れたくなるか。

覚野もまたひとつ大きな事実に気づいたので、このあたりの話も今後見せてくれるんでしょうね。どうなっていくのかとても楽しみです。

アンゲルゼひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫 す 5-67) - 須賀 しのぶ

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アンゲルゼ 永遠の君に誓う

アンゲルゼ永遠の君に誓う (コバルト文庫 す 5-68) - 須賀 しのぶ

「君の用件はそれだけかな。ならばこちらの話をさせてもらうが」
「まだあります。でもたぶん、敷島さんが今からお話してくださることが、その答えだと思います」
「ほう。というと?」
「つまり、全て教えてほしいのです。私がここに至るまでのことを」

自分の歌が、感染したものは人を襲うという「天使病」の孵化を促した?嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、その力を欲する軍によって、平和な日常から殺伐とした世界へと足を踏み入れていくシリーズの第四弾。今回は、「女王蜂」の力を発揮し始める陽菜に、残酷な事実が突きつけられていくお話です。

自らの力を知ってしまってから、すぐ側にある日常を遠ざけようとする陽菜の姿が痛々しく思えてきます。よく考えたらまだ中学生なんだよなあ。割り切れというほうが難しいと思うし、割り切ってしまったら、むしろ人としての心が壊れてしまうような気がするので、心を守るにはこれが限界なのかもしれない。

と、いうギリギリのところにいる陽菜に対して、さらに有紗との決別やアンゲルゼとの戦いにおける真実が見えてくるから残酷です。ひとつ乗り越える度に、新たなる問題を突きつけられて、普通だったら、人間不信どころか、何のために今まで戦ってきたのかわからなくなりますよ。なんせ最上級の愛情を預けてくれるマリアですら、いや最上級だからこそ、陽菜のことしか考えてないんですから、ゾクッとさせられるものがありますよね。笑顔がだんだんと恐ろしく思えるから愛情とは怖いものです。

それでも、決して壊れることがなかったのは、共に戦ってきた人たちと支えあっていたことがわかったからでしょうね。決定的な別れを持ち出してきた当の有紗ですら、冷たい口調の裏側に温かい思いがあって。大切にしまわれていたであろう写真のエピソードには、じわりと涙するものがありました。
有紗だけでなく湊、これまで嫌悪していた敷島など、怖いことから逃げることなく自身も立ち向かっていくところに、彼女の強さを見ました。成長したよなあ。

今回のお話で一番印象に残っているのは、やはり敷島とのやり取りですね。二人の関係が明らかになってから、初めて向かい合って話をして、ちょっと前までだったら冷静に聞くことすらできなかったであろう話を聞き、言葉を交わして、そして……。
ロンの話を聞いてから決意していたであろうことに手をつけてから、敷島と会ったあと、最後に告げた一言に涙させられました。

いやあ、面白かった。ほんと良かった。「こちら」側に心を残す原因となった覚野の話も素敵に青春してて、これからどうなるのかなーといろいろ想像してしまいます。たぶん、本来考えられていたという5冊の形であっても、これから先の話はなかったと思うけど、可能であるならば、続きの話を読んでみたいですね。
須賀さん、すばらしい物語をありがとうございました!

アンゲルゼ永遠の君に誓う (コバルト文庫 す 5-68) - 須賀 しのぶ

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