アレクシオン・サーガ / 五代ゆう
アレクシオン・サーガ
生まれと容姿から、王である父にすら畏怖されていたアレクシスは、国を捨て旅に出たが、王子を邪魔に思う王妃の手のものは、執拗に追いかけてきていた。危ういところを助けてくれたのは、美しき魔女のヘロディアだったが、何を思ったのか、アレクシスを伴侶と呼んでいる。彼女を追い払うことができないまま、国境を抜けたアレクシスは、亡き母の残した剣と自分の出生の謎の答えを求めていくが……
不思議な力を持つ剣と、その使い手に選ばれたアレクシスが、自分は何者なのかを捜し求める旅に出るというお話です。剣と魔法の正統派ファンタジーってことで、読みなれてることもあるんでしょうけれど、面白いです。ファンタジーが好きな人なら、楽しめるんじゃないかな。
アレクシスには何らかの秘密が隠されていることは、明々白々なんですが、それが何なのかはっきりしないので、いい意味でもどかしく、ついつい引き込まれてしまいますね。
それに同行するヘロディアがいいんですよ。
かつてアレクシスと伴侶だったといいつつ、詳細を尋ねると、自分で思い出せという始末。これがまた生意気なようでカワイイことこの上ない。我儘なように思えるけれど、アレクシスのことが、ホント好きなんだなあと思わせるだけに、微笑ましい限りですね。憎めないアレクの気持ちがよくわかります。
二人だけの旅だと、また暗殺者に狙われるかもしれないということで、巡礼団の護衛を引き受けたら、そこでもまたトラブルがという展開は、なかなか緊張感がありました。共に護衛する人たちの中に、怪しい輩がいるという緊張感の中で、化け物と戦わねばならぬところは、信頼しきれないものがあるだけに、ハラハラドキドキもんです。
「叫ぶ氷原」と呼ばれる地で、氷の中に生息する化け物を倒すために、アレクが決断をせざるを得なかったところは、わかっていても心痛むものがありましたが、それ以上に心に来たのが、閉ざされた氷の中から脱出するところですね。
信頼と仕事と。
揺れる心のうちは、、もうちょっといろいろと書いてほしかったかなと思いましたが、このくらいがよかったのかもしれない。二手に分かれてしまったヘロディアと無事に再会したとき、アレクシスが継げた言葉は、何があったかを刻々と説明するよりも、むしろ、伝わってくるものがあったから。泣かずとも心の声が聞こえる気がしました。
このあと、アレクシスたちにどんな出来事が待ち受けているのかわかりませんが、壮大なサーガとなることを期待したいですね。
ちなみに、本編のあとに、アレクシスが初めて剣を手にしたころ(第一話よりも前)の中編が収録されていますが、先生役のガリマールがいいなあ。剣の道では厳しく、でも父親のように頼りになる実際に力がある人が言うからこそ、含蓄のある言葉になるんですよね。こういった人って、好きなんだよなあ。ガリマールのような人に出会えたことが、アレクシスの運の強さのひとつだと思いました。ぜひ次の時にも出番を……。
アレクシオン・サーガ <橋の都市>にて
<叫ぶ氷原>から二週間ほど北上の旅を続け、アレクシスたちは<お告げの所>の島へ橋渡しをする街<橋の都市>へとたどり着いた。だが、あらゆるところで献上金を差し出さねばならぬと知り、神を祭ることの意味にアレクが疑問を覚え始めていたとき、育ちの良さそうな子供に、自分を誘拐した犯人の役を引き受けてほしいと頼まれて……
ああ、やばい。やばいぐらいヘロディアがかわいいぞ。普段は、アレクを伴侶と呼んで、何かとベタベタしてるのに、アレクから頼られたら喜んだり、褒められたら真っ赤になりながら怒ったりと、アレクを思う気持ちがこれでもかと伝わってきてやられます。
女王然としてるくせに、子供に泣かれたら、さりげなくあやすところもいいですよね。表情すら見えそうな彼女の感情の変化は、この物語の楽しみのひとつです。
というわけで、神の威光を笠に着る権力者たちの住む街を訪れたアレクたちが、街を正しき姿に戻したいと願う子供フォルティスたちの陰謀に巻き込まれて……というお話。
フォルティスの子供らしいまっすぐさがまぶしいですが、一刻も早くという思いがあったからか、願いをかなえるには考えが足りないところはもったいないなあ。ただ、ここでアレクたちと出会えたのは、彼の運の良さでもありますよね。ヘロディアの指摘で、己の過ちに気づいたと思いますが、聡明な彼なら、きっと同じ過ちを犯すことはないだろうと、そう思わせてくれるものがありました。アレクのお話であると同時に、フォルティス少年の成長物語でもあった展開はすばらしい。
そんな中フォルティスたちが権力者に狙われ始めていくんですが、ここで、大きな出会いがありましたね。フォーンという半獣族がヘロディアと語り合うところに大いなる意思を感じますが、イフの暗殺者といい、アレクを取り囲むものたちの動向には、気になるばかり。
個人的に、一番印象に残ったのは、フォーンの言葉を受け止め、世迷言にしか思えない言葉を、己のみに何があろうとも、届けようと努力し続けたアレクの姿ですね。権力者に言葉を届けるための行動は、どういう結果になるかわかっていただろうに、それでも、まっすぐ突き進む姿は、愚直に思いながらも、惹かれるものがありました。この姿に、ヘロディアは心を奪われたんだろうなあ。
どうやら過去にも同じようなことをしたらしいですが、このあたりの話はいつ語られるんだろう。あとがきによると、起承転結の起の半分ぐらいとのことなので、壮大な物語を予感させてくれるだけに、今後の展開がとても楽しみです。
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