夜想譚グリモアリス / 海冬レイジ
かくてアダムの死を禁ず 夜想譚グリモアリス 1
桃原グループの御曹司である誓護は、愛する妹のために、憎き叔父と遺産について話し合おうと、山奥の修道院へと向かった。叔父の秘書、修道院長、コックなど、7人の男女が一堂へ会したとき、周囲が黒い霧に包まれ、閉じ込められてしまった。
そこへ現れた美しくも恐ろしい少女は、大罪を犯した罪人を地獄へ招待するためにきたというが……
閉ざされた修道院で、煉獄より遣わされたアコニットと取引をした誓護が、この修道院で大罪を犯した人を探すお話です。「デフラグメント」という物や空間の記憶の断片を見る道具を利用して、怪しい人物を探していくんですが、全員が何らかの過去を持っていることが伺えるため、便利な道具を使っていても、わかりそうでわからない感じが、いい意味でイライラさせられますね。本気で信用できる人がいない状態での犯人探しの欺瞞さが心地いい。
特に誓護は、妹という言わば足かせな存在がいるだけに、どう切り抜けるんだろうと、引き込まれてしまいますね。
その妹に対してのシスコンっぷりには、思わず引きそうになりますが、おちゃらけているのは表面だけで、本気で妹を大切に思っていて、護りたいと思う気持ちが伝わってくるところには、鼻の奥をツンとさせられるものがありました。
なぜそこまで、と思いましたが、そのあたりが見えてくると、愚かしくも高潔な思いに胸を打たれます。それにしても、真実とは何と残酷なことか。
一番良かったのは、恐怖の象徴として登場したアコニットが、段々と誓護に打ち解けていくところですね。気高きアコニットの態度には、実は自分の弱さを隠すための壁だとわかってからは、一気に魅了されてしまいました。何ですか、この素敵なツンデレは。
主従だったはずなのに、いつの間にか頼りになる仲間として、力を合わせて立ち向かうところが、なんとも素敵でした。
最後に彼女が発する「じゃあ、また」という言葉に込められた思いには、立ち去りがたいものがある様子がとても伝わってきただけに、キュンとするものがありますね。
謎解きの部分には、ちょっと物足りないところを感じるけれど、今後、同じような事件が発生した時、ふたりがどういう関係を築いていくのかは、楽しみです。
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堕天使の旋律は飽くなき 夜想譚グリモアリス 2
クラスメイトである織笠美赤のフルートを聴いてから、最愛の妹・いのりが、フルートを習いたいと言い出した。さっそく美赤に話を聞いて、フルート教室へ通うことにしたが、そんな美赤の前にグリモアリスが現れた。ということは、美赤は何かの罪人なのか?驚きながらも、いのりの頼みでもあり、また自身の目を信じて、美赤の無罪を確信する誓護は、彼女を守ってグリモアリスと対決するが……
紗彩が亡くなったのは、友人である美赤が殺したからと主張するグリモアリス・ギシギシから、美赤を守るために、誓護やアコニットが奮闘するお話です。閉ざされた空間でのお話だった前作とは違って、追っ手から逃れつつ、無罪を主張していくという展開のため、素敵にサスペンスで面白い。
それにしても、アコニットがいいなあ。何か言われるとすぐそっぽを向くけど、誓護のことが気になってる様子がたまりません。実はいのりのことも結構気に入ってきてるんじゃないかしらと思う描写もあったりして、嬉しい限り。この三人は仲良くしてほしいですからね。
フラグメントにより過去を視ることができても、相変わらず肝心のところだけが明かされず、そこを推理していくわけですが、いやあ、いいですね。このもどかしさ。わかりそうでわからないところにイラついたり、わかってるなら早く言ってよ、誓護とツッコミたくなります。ミステリー風味が面白かったですね。
個人的に印象に残ったのは、アコニットの誇りを感じたところですね。地を這うことになっても、約束したことを守りきろうとする姿に、熱くなりました。あれは誓護でなくても、取り乱しちゃいますよね。人間ごときと言っておきながら、体を張る姿に、彼女の誠実さを感じました。それにしても、あそこでアコニットを……した人は誰なんだろう?
黒幕たる鈴蘭とアコニットの確執については、どうやら冥府のほうでいろいろあったことが原因のようですが、かつて友人だった二人が決別するとは、どんなことがあったんだろうと気になるところです。そろそろ何か明かしてくれるかしらと期待中。
あれ、でも冥府で物語が進んじゃったりしたら、誓護が頑張れないか。うーん。いったいどうするんだろ。
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魔女よ蜜なき天火に眠れ 夜想譚グリモアリス 3
いのりと一緒にバレンタインデーのチョコレートを作っていたとき、アコニットがやってきた。どうやら彼女は、人界のお菓子が気に入ったようで、近所の製菓工場のバレンタインイベントで展示されるお菓子の家に行きたいらしい。偉そうに、でもお願いされたので、いのりも連れて三人で出かけることにしたが、その工場には、訪れた客が突然神隠しにあったかのように消えてしまうという不信な噂が流れていて……
思わず声を上げたくなる咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿の第三弾。今回は、人界のお菓子に虜になったアコニットが、バレンタインにかこつけて、誓護たちと菓子工場へ出かけて、というお話。
なんですか、このアコニットの可愛いさは!
こんな安物!といいながら、チョコレートを食べてうっとりしちゃったり、お菓子工場に行きたいのに自分からは言い出せず、でも行きたいという葛藤を見せたり、最後にはお願いしたりと、しょっぱなからやられました。あのプライド高いお姫様が人間ごときにお願いをするんですから、誓護への信頼と、好意の大きさが伝わってきますね。
お菓子工場では、お菓子の家があったりして、いのりよりもアコニットのほうが楽しんでるんじゃないかしらと思うほどでしたが(いのりのお金でお土産買ってたし!)、そこで出会った少女と誓護が、ちょっとした恋の予感を見せてくれて、アコニットとはこういうシーンをあまり見せてくれないだけに、にやりとさせられたりと、甘いものがありました。
が、毎年一名が行方不明になると噂されるイベントですから、甘いばかりで終わるわけがない。よりによって、アコニットに魔の手が伸びて……ってところで、まさかまさか、アコニットに制約を設けるとは思わなかった。彼女が普通の状態であればあっさり終わったであろうに、殺人事件を解決し、かつ冥府の敵の手からアコニットを守らねばならないと、誓護のピンチ度が今までないものでドキドキ。
いのりまで人質に取られ、焦りながら、戸惑いながら、それでも必死に考え抜いて、事件の謎を解き、力ではどう足掻いたってかないっこない相手に対して、知恵を振り絞って活路を見出して、アコニットを守り抜いた姿は、すばらしかったですね。誓護格好いいー。これで妹を溺愛してなければ、もっとモテただろうに……。
いやあ、面白かった。
「父」に囚われていた女の子が今後どうなるのかわかりませんが、思えば、敵であった人たちと何気に、信頼関係を結びまくってるよなあと思ったりもするので、いずれどこかで出てきてくれるのかしらとも思ったり。
いや、そんなことよりも、このお話の素晴らしさは、なんと言ってもラストでしょう。あの台詞とイラストには、思わずやられて悶えてみたり。最後まで素敵に甘くて、いいバレンタインでしたね。
これは続きが楽しみになってきました。
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幻想譚グリモアリス 1 されど魔刃の名のままに
「もう、忘れて」
……忘れる?
「忘れなさい。全部、忘れるの。そして、二人で、幸せに、今の生を生きて」
十代の少年少女が原因不明の昏睡状態に陥る事件が相次ぐ中、誓護の前に、教誨師なる少女が現れて……。咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿の第四弾です。
これは面白かった。
誓護の記憶から、アコニットや教誨師のことが失われていて、しかもアコニットが始めての出会いのときのように、傲慢な態度で接してくるから、いったい何が起こったのかと、気になってしょうがない序盤でした。「眠り病」の謎についても、よりによって「ブツ」を手にしてるから、まさかと思いながらも、不安を呼び起こしてくれるし。
記憶が無くなるってのは、ほんと怖いよなあ。
教誨師やら謎の古書店員やら、軋軋が現れては、ちょっとしたヒントのようなものを置いていってくれるんだけど、見えそうで見ないから、何とももどかしいんだけど、そのヒントを元に、誓護が失われた記憶を補完していくから面白いんですよねぇ。
そして、アコニットが何に巻き込まれているかが見えてくるんですが、ずいぶん追い詰められているなあ。いったい何があって汚名を被せられたのかはわからないんですが、事態はすでに動いてて。誓護の記憶については、ほぼ予想通りでしたが、せめて巻き込まないようにと誓護を突き放そうとするアコニットの姿には、心痛むものがありました。まあ、それを簡単に受け入れるわけがないから、誓護は素敵なんだけど。
素敵といえば、軋軋が素敵でしたねぇ。誓護を認めながらも、主人としてのアコニットの意思を尊重して動き、下級官吏だからといって卑下することなく、誇りを持って行動する姿が、格好よすぎます!いやほんと、軋軋がいてくれてよかったと思いました。
いやあ、面白かった!せめて最後に一目だけでも。そう思える人がいるって素敵ですよね。
「貴方は、ばかだわ」
プライドの高い彼女の涙が、その言葉に込められた思いが、とてもよかったです。
これで誓護としても、本格的にグリモアリスたちの戦いに参戦することになってしまったわけですが、まあ、誓護の狡猾さとアコニットの力があれば、きっとなんとかなりますよね。
これからも、いのりを加えた三人の温かい雰囲気を期待してます。
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幻想譚グリモアリス(2) 千の獣が吼ゆるとも
「私が気づかないとでも思ってるの?貴方は何かおかしなことを考えてる。これでも、私は貴方の智慧を買っているのよ。その貴方が、隠れもせず、この家に留まって、まるで何かを待っているみたいに……」
真正面から、アコニットは訴えるような眼差しを向けた。
「ねえ、誓護。ちゃんと教えて。貴方は何を考えているの?何をするつもりなの?」
咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿シリーズの第五弾。今回は、罠に嵌り罪人として追い立てられたアコニットに、宿敵・鈴蘭が手を伸ばしてくるお話です。
うーん。面白いんだけど、次から次へと話が進むわりに、あっちへいったり、こっちへ来たりするせいか、どうにも「スピード感がある」というよりは、「展開が速すぎる」ようにしか見えなくて、イマイチ乗り切れませんでした。一番の不満は、誓護の策が成功しているにもかかわらず、有効に機能しているように見えないってのがアレかな。
ともあれ、アコニットに敵の手が伸び始めてくるお話なんですが、だんだんと誓護への思いが見えてきて、ニヤニヤしちゃうなあ。まあ、依存度が強くなってしまったのは、裏切りという目にあったからだと思いますが、かなりトラウマになってる様子が痛々しかったですが、今回の戦いを切り抜けたことで、また強くなっていくんでしょうか。今後の彼女の心の動きが気になるところ。
一方の誓護は、いつもの冷静さを欠くシーンが多かったようですが、自分と同じ生徒が絡んできたら、仕方ないか。しかも相手は自分の力を知っていて、自分は相手の力を知らないという状況での戦いなので、追い詰められていく緊迫感が面白かったです。それだけに、ここはもうちょっと書いて欲しかったなあ。今回そういうシーンが多くて、個人的に物足りなかったりする。
しっかしまあ、誓護ってやつは、大それたことを考えるなあ。友人のために、という言葉では表しつくせないものがあるように思いますが、そのあたりはどうなんでしょうね?ともあれ、まず第一歩は進めた……けど、別方面で一歩下がった気がする。こうなると、次巻は、誓護が冷静じゃいられなくなりそうなので、逆にアコニットが活躍しないとダメかな?
どうなるか楽しみですね。
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幻想譚グリモアリス(3) 誓えその名が朽ちるまで
「馬鹿げた大風呂敷さ。だが……なぜかな?オレも、オドラさまも、当の姫さんさえ、そのマヌケな大風呂敷にのっかるつもりでいる」
にやり、と凄絶な笑みを刻む。
「あいつには、それができると、ハラの底から信じてんだよ」
咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿シリーズの第六弾。今回は、敵にさらわれた妹と、冥府で囚われの身となったアコニットの間で板挟みになるお話です。
いやあ、面白かった。
祈祝のことでは冷静でいられない誓護の様子に、アコニットが先んじて決意をしてしまうんですが、それによって冷静になっていくあたりが、誓護の思いを表しているように思います。もちろん、祈祝も大事だけど「人質」としての価値を考えたら、逆に安全とも言えるわけで、このあたりの駆け引きが生み出す心理戦が、とても面白い。
冥府に駆けつけてみれば、圧倒的に不利な状況で、たとえアイギスを持っていても、基本的にはほとんど人の身でどうやって切り抜けていくのかと思いましたが、なるほど。アコニットを信じるものは、決して少なくないってことか。
常にぎりぎりの綱渡りは、時にご都合を感じることもありますが、ひとりの姫の周りに集まったものたちの強さと信頼と、それに応えるアコニットの決意に、心が熱くなりました。
蘭躑躅の君とのやりとりは、その悲しみに触れてしまうと、いい話に感じてしまいますね。
ようやくひと段落と思ったら、息をつく暇もなく次の敵が待ち受けてますか。アイギスを持つものとして注目度も高いので、誓護はこれからさらに大変になるだろうなあ。ま、大変になればなるほど、面白くなると思うので、これからが楽しみです。
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幻想譚グリモアリス(4) 罪と祈りとほほえみと
さあ、桃原。回線を告げるゴングは鳴った。
正々堂々、騙し合いといこう。
咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿シリーズの第七弾。今回は、最愛の妹・祈祝を拉致された誓護が、鈴蘭とその配下にいる千秋たちの仲間になると言い出して……というお話。
これはおもしろかった。祈祝が人質に取られたら刃向かえないのでは……と思ってたけど、ここまで思い切ったことをするとは思わなかった。そりゃ、アコニットが不安になるわけだ。
いつになく脆さを見せてくれたアコニットに、誓護への思いを感じて、女の子してるなあとニヤニヤしてしまいました。
で、千秋たち。
誓護を仲間にしたく呼びかけたにも関わらず、仲間になったら疑ってしまうのは、彼の性格を知ってたら当然ではありますが、そのことがすでに誓護の罠だってところが素晴らしい。心を読むことができる鈴蘭を相手取っての騙しあいに、引き込まれました。
かなりギリギリの綱渡りではあったけれど、面白かった。
人質をとても効果的に使う鈴蘭の非道さにもうっとりさせられますが、完全に計算しつくした欺瞞をやりとげた誓護に拍手したくなりますね。
にしても、最後に敵を逃すのは興ざめてしまうんですが、それはさておき、このことで憎しみが本当になっていくとなると……もしかすると足を掬われたりするのかしら。いろいろ気になります。
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幻想譚グリモアリス(5) 天の座に咲け叛逆者
「桃原誓護は非力な人間にすぎないけど、知恵くらいなら、貸してあげられる」
「……何か考えがあるの?」
「アコニット、君―」
誓護はぽんとアコニットの肩を叩き、軽い口調で訊いた。
「侵略する覚悟はある?」
咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿シリーズの第八弾。今回は、霊廟と決裂し、戦力差に不安を抱えるアコニットに、誓護がある案を持ち出して……というお話。
いやあ、面白かった!
アコニットひとりを差し出せば、講和に応じると言う霊廟の言葉に、アコニット以外のものがすべてNoを突きつけるところに、仲間の絆を感じましたが、ここに限らず、いろんなところで、同じようなものを感じさせられました。信頼関係があるからこそ、不利な戦いでも覚悟が生まれるんだよなあ。このあたりの描写がとてもよかった。
今回何といっても熱いのは、霊廟側にいる七剣花者との戦いでしょう。序列上位にいる者たちを相手にして、一歩も引かない戦いは、しびれるものばかりでした。誓護の策によって、それぞれがひとりを受け持つ、みたいな感じで、バラバラに戦ってましたけど、斬斬は格好いいわ、アザレアはしびれさせてくれるわで、もうどうしてくれようかと思いました。ピンチになると必ず仲間が助けてくれる信頼関係に拍手したくなりました。
それにしても、誓護は一か八かの賭けが強いな。もちろん勝算があってのことだろうけれど、それでも戦いの最中にアイギスを手放すとかありえない。しかもそのあとの言葉は……女ったらしめ!と思ったのは僕だけじゃないはず。
アコニットとふたりっきりになると、ドキドキとお約束を見せてくれるくせに、まったくもって、困った男だ(にやにや)
そんな誓護の策をにこやかに受け止めた黒幕の存在は、ああなるほどと納得させられるものがありましたが、さらに切り返す誓護は天才すぎると思います。あんなの気づけないよ……でも、彼には彼で不安が残るものがあるしなあ。
次なる最終巻で、鈴蘭と天狼がどんな手を下してくるのか、そして彼女はどうなるのか。いろいろ気になるばかりです。
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幻想譚グリモアリス(6) かくてアダムに祝福を
「桃原くん、貴方は」
ふっと星の顔から笑みが消える。
「世界の平和と、いのりちゃんとの暮らし、どちらを選ぶかしら?」
咎人を煉獄へと送る教誨師(グリモアリス)として、地上へ降り立つ少女・アコニットと、彼女の手助けをする桃原グループの御曹司・誓護が繰り広げるファンタジーな事件簿シリーズの第九弾。アルマゲドンを起こし、普通の世界と天国、地獄の三つの世界の垣根を無くそうと、地獄にいる光の王が動き出すシリーズ最終巻です。
光の王や地獄にいるものたちは、全てがグリモアリスレベルで、さらに圧倒的な数の差があって、どうあがいても勝ち目がないんじゃないかと思うのに、これを切り抜けるために誓護が労した策が、非情にも凄かった。まさかアルマゲドンすら利用するとは……。いのりを第一に考えているとはいえ、目の前の人を助けられないというのは、きつかったろうなあ。それでもやり遂げて、世界の醜さを知り、同時に美しさも知った最後のシーンが印象的でした。
それにしても、世界を返るような動きが、まさかこういう思いから生まれていたとは……。それは野望というには、あまりにも個人的な思いであり、決して美しいと思えないものであったので、遣りきれない思いになる。
宿命と言える対決が、数カ所で行われていましたが、中でも一番印象的だったのは、やはりアコニットと鈴蘭ですね。単に力という意味での強さは鈴蘭に軍配が上がるかも知れませんが、戦ったときに勝つのはアコニットとなる。その理由が見えてくるところが……間違ったと気づいて引き返すことは、とても難しいと思う。でも支えてくれる友人がいれば、ね。罪は罪だけど、いつか友と呼ぶ人が側に戻ってきてくれることを祈ってる。
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