SHI-NO ―シノ― / 上月雨音
SHI-NO ―シノ― 黒き魂の少女
ぼくのおんぼろアパートには毎日のように志乃ちゃんがやってくる。まだ小学生だというのに無駄なことは一切しゃべらないおとなしい子。年齢は離れてるけど幼馴染として、妹のようにかけがえのない子だ。
ただ、志乃ちゃんには欠点があって、人の死とか、どういうことに対して異常なぐらい興味を持つのだ。今日も大学の先輩に頼まれたことをやっていたら、彼女の視線にとらわれて……
小学生との甘い話かと思ったら全然違った。わりと暗めなミステリィ。伏線があまり張られずにいきなり謎が解かれてしまう感じがあったので、ちょっと不満。もうちょっと伏線とか効かせてくれれば面白くなりそうなのに。
どちらかといえば、ホラーといったほうがいいかもしれません。雰囲気はかなりよかった。
ただ思想的というか独り言のような話が前に出過ぎな気がしました。ラストもちょっと蛇足気味。このあたりをコンパクトにまとめれば、もっといい感じになるかも。
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SHI-NO ―シノ― アリスの子守唄
「今日ちょっと先輩に呼び出されて、ちょっと相談事を持ちかけられたんだ」
志乃ちゃんに呆れ顔をされたが、仕方ないのだ。先輩が家庭教師をしていた頃の生徒が毎晩夢にうなされるらしい。学校の怪談話「惨殺アリス」に追いかけられると言うのだ。どうすればいいのかよくわからないけれど、何とかしてあげたい。
なんせ、彼女は志乃ちゃんのクラスメイトなんだから……
普段は無関心なのに、気になることがあるとわざわざ独自ルートを使ってまで調べるという志乃が、かわいいというよりは怖いかな。高屋敷の気持ちがよくわかる。そこまでして『彼』に知られたくないのかしら。
ミステリィ要素は基本に忠実といった感じで驚くべき真相ではないですが、雰囲気がいい。
自分語りというか思想的な語りが多々あったせいか、前作ではいまいち馴染めなかったんですが、今作ではうまく物語に取り込んでいました。読もうか読むまいか迷いましたが、読んでよかったです。
志乃ちゃんと僕の微妙な関係がとても素敵なので、変に恋愛するよりもこのままいって欲しいですね。
そういえば、本編を無視しているとしか思えないところで展開されていたショートストーリィの「微笑」
ものすごく琴線に触れたんですけど、どうしてくれよう?
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SHI-NO ―シノ― 天使と悪魔
このところ志乃ちゃんの様子がおかしい。ひょっとしたら、何か危ないことに関わっているんじゃないかと、不安を抱える僕にキララ先輩は用事を押しつけてきた。どうやらいつもの人生相談に行けなくなったので、会ってきてほしいとのこと。
しかたなしに約束の場所へ向かったら、そこには小学生ぐらいの女の子が待っていた。彼女はお兄ちゃんを探してほしいと言い出して……。
行方がわからなくなった「正義の味方」であるお兄ちゃんを探してほしいという人探しの話と志乃ちゃんが狙われるお話。
う~ん。イマイチ?
緊張感のある始まりだったので、どうなるかと思ったら、それほど盛り上がらずに終わってしまった感じがする。この始まりなら、志乃ちゃんを巡るサスペンスか、ふたりで名探偵な展開になってくれれば面白くなっただろうに、と思わなくもない。
登場した真白について書くとネタばれになりそうなんでやめておくけど、一番興醒めなのはだらだらとした解説かなあ。後々のためにということで言えばわからなくもないんだけど、理解しにくいことをただ説明してるだけなので、退屈でした。1巻のときも思いましたが、思想的な話が前面に出てくると微妙です。ひょっとしたら僕には合わないのかなあ。
ただ、今回の話は前編にあたるそうなので、ひょっとしたら、飛躍するのかもしれない。
そういえば、今回は「家族」という言葉を意識させられましたね。妹も家族になりえるけど、恋人だって家族になりえるんですが、真剣な言葉を思わす茶化してしまう彼や、相手のために走ることを選択する彼女が望むのは、どっちなんだろう。
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SHI-NO ―シノ― 愛の証明
市井垣忍の個展が開かれるという知らせを受けて、先輩、僕、志乃ちゃんの三人は、そのイベントに向かった。残念ながら何の手がかりもつかめなかった、と思った矢先に、それは起こった。
突然の停電、閉まるシャッター。
暗闇に閉ざされたフロアには、十人に満たない人と、カウントダウンしている爆弾があり……。
前作で志乃ちゃんを狙っていたデッドエンドコンプレックスとの最終決戦ですね。クローズドな場所。自殺志願者が相手。共に死ぬことを狙っているであろうから、閉じ込められたという人たちの中に犯人がいるという状況でのカウントダウンな物語です。
いやあ、面白かった。今までで一番好きかも。
カウントダウンの緊張感よりも、時間制限における犯人との駆け引きによる緊迫感が良かった。志乃ちゃんという存在が、これほどまでにプレッシャーを呼び込むとは思いませんでしたね。個人的にはもうちょっと犯人側の心理描写が欲しかったですけど。
志乃ちゃんと「僕」の関係は良かったなあ。「最悪」についての判断が違うのは当然ですが、相手を追い詰めないように「僕」が行動しようとするところが良かったです。志乃ちゃんの成長物語であると同時に「僕」の成長物語でもあるんですね。
今回は、志乃ちゃんの内面が見えませんでしたが、きっと彼の言葉をそのまま受け止めてくれたんじゃないかなあと、あのエピローグで思いました。交わす言葉が少ないのに、相手を思う気持ちが、何でこんなに伝わってくるんでしょうね。素敵な素敵な雰囲気のエピローグに大満足。
ただ、いつものことではあるんですが、無駄な語りが多かったのがもったいないと思いました。事件後のあの子との会話は、既に「僕」が気づいていることなので、延々と話されて興ざめしてしまいました。事件の余韻が無くなっちゃって……。
事件の緊迫感と、彼の決意、エピローグという展開がとても良かっただけに、残念ですね。
さて、これで第一部完だそうです。といっても、一区切りという意味らしいですが。
これからふたりでどんな道を歩んでいくのか、楽しみですね。
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SHI-NO ―シノ― 呪いは五つの穴にある
先日の事件で怪我をした入院していた僕の元に、ある日、先輩がお見舞いにやってきて、『呪いの本』について尋ねてきた。僕と志乃ちゃんが再会したばかりのころ、先輩と三人で解決した『呪いの本』に纏わる事件のことだ。お見舞いに来ていた真白ちゃんに尋ねられて、僕はあの夏の日を思い出した……
本編のイラストが、今回ほどすばらしいと思ったことはないかもしれない。特に9ページ目のちょっとにらむ志乃ちゃん最高。209ページの思案する真白ちゃんも捨てがたいけど(メガネが素敵に似合ってる)、志乃ちゃんには惜しくも届かずかな。いやあ、思わず道を踏み外しそうになりました。あぶねあぶね。
というわけで、過去に解決した「呪いの本」に纏わる密室殺人事件と、再び「呪いの本」が引き起こした密室殺人事件を、お見舞いに来ていた三人が頭脳で立ち向かうお話です。安楽椅子探偵のように、現場にいくことなく、僕のいる病室内で事件を解決していく展開ですね。ミステリーの王道とも言うべき雰囲気がたっぷりで嬉しい。
二人が始めて呪いの本に関わったのは、密室の中で老人が、体中に五十三の傷を負って死んだという事件ですが、事件そのものよりも、呪いの本の気持ち悪さと、犯人の動機を納得というより理解できてしまう志乃ちゃんに対して、畏怖というか嫌悪のようなものを感じてしまう「僕」の気持ちが印象的でした。
もうちょっと犯人の「異常」さを感じられると、「僕」の気持ちに感情移入できたかなと思うけど、志乃ちゃんと僕の関係が変化するきっかけとなったという話は、興味深かったですね。その後に続いた「呪いの本」の出所を調べている先で起きた殺人事件も面白かったです。
第一部と第二部の繋ぎとなるお話ということで派手なことはなく(病院から一歩も出てないし)、謎自体はちょっと物足りないところがありましたが、四人で話をしているときに、「僕」が真白ちゃんに何かすると、さりげなくむくれる志乃ちゃんが見れたし、最後の拗ね方も可愛かったし、満足満足。
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SHI-NO ―シノ― 支倉志乃の敗北
先輩から貰ったチケットで、志乃ちゃんと個展に行ったら、クイズに当たって、画家のアトリエを訪れることになってしまった。せっかくなのでと、山奥にある九瑠夜明日先生のアトリエに向かったが、たどり着いたとき、突然志乃ちゃんが帰ろうと言い出した。一体何があったのだろう?
怒らせた九瑠夜明日先生と、志乃ちゃんをなだめ、何とか一泊することになったが、そこで待ち受けていたのは……
山奥にある九瑠夜明日のアトリエを訪れたら、惨殺死体を発見して……、という第二部スタート。どうやら第二部は、事件の謎解き物語というよりは、志乃ちゃんの心のミステリーを解いていくというお話になっていくみたいですね。
「僕」を通しながらの物語の展開はいつもどおりなんですけど、珍しく志乃ちゃんが煮え切らない様子を見せてて、ふたりの関係がチラッと変化したことを伺わせてくれます。「僕」の何気ない一言で、素の表情を今まで以上に見せてくれる志乃ちゃんが可愛い。
一方の「僕」の方も、ちょっと志乃ちゃんへの意識が変わってきたような……。家族という思いは変わらない気がするけれど、より近くなったかしら。たまに、意識する感情が、志乃ちゃんにどういう影響を与えるのかしらとか考えると、ドキドキですけど、いつもと違う志乃ちゃんに、「僕」が「勘違い」して慌てる姿を見てると、まだまだそこまではいかないか。
あの慌てっぷりには笑いましたが、勘違いを正しつつも、志乃ちゃんが素直に言う事を聞いてたのは、ひょっとして甘えてるのかしらとか想像して、ひとりでニヤリ。
とまあ、ふたりの関係については、そこそこ楽しめましたが、お話としては微妙だったかな。館ものらしい展開だったので、ミステリーを期待してたら、謎解き要素がなくて、がっくし。「天才」とか「才能」というものについての描写もイマイチなので、動機もイマイチに思えてしまうところがありました。
「支倉志乃の敗北」という副題の意味もよくわからなかったなあ。まさか、ダウトの話じゃないよね?それとも、自分の意志を貫き通せなかったというところを指すのかなあ。
志乃ちゃんが迷ったおかげで、結果として惨劇に巻き込まれることになったけど、あの時点でそこまでわかったら神だし、その後も失敗をした訳でもないし……よくわからん。まあ、この志乃ちゃんの揺れに、今後焦点が当たっていくんでしょうね。
事情を知った真白ちゃんが、大胆な推測をしてて、これが不安を掻き立ててくれます。新たに覚えた感情に振り回される事はあるかもしれないけれど、「僕」と一緒ならば、と思いたいけど、どうなるんだろう。
最後のページで、彼と彼女の間に、何らかしらの過去があることを匂わせてくれてるので、大いに気になります。
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SHI-NO ―シノ― 夢の最果て
とある会社のCEOである志乃ちゃんのお母さんが招待されたパーティに、志乃ちゃんと彼女の面倒を見る僕も参加した。なんとそこには、鴻池先輩も出席してて、気後れしてた僕は、ほっと一息ついていた。だが、そんな平穏な時間は長く持たなかった。そろそろ帰ろうかとホールから出たそのとき、女子トイレの方角から悲鳴が聞こえ、踏み込んでみたら、そこには銃で撃たれた女性がいて……
とあるパーティ会場のトイレで女性が銃殺されて……というお話ですが、今までにないぐらいミステリーな雰囲気が漂ってたなあ。防犯カメラを見る限り、死亡推定時刻の時間帯に、トイレに入った人は一人。でも、それは状況証拠でしかない。みたいなところから、犯人と思わしき人を追い詰めようとするんですが、届きそうで届かないところが、何とももどかしく、でも面白かった。
いつもはすべてを見透かしてるような志乃ちゃんが、制限時間や情報不足やらで、あまり前に出てこれなかったのも、いい具合に謎を引っ張ってくれましたよね。
そんな状況でしたが、今回は志乃ちゃんよりも、鴻池キララ先輩が目立ってたなあ。ドレスで着飾ると目を見張るような美人になったり、おうちの事情が明かされたり、自宅を初公開してくれたり、ガタイのいい男を引きつれてきたかと思いきや、幼いころの夢を今なお追っていく姿など、今まで以上に魅力を見せてくれました。あー、なんかいいなー。
シノシノとくっつくよりも、先輩とくっついて、シノシノが二人の子供になるというシチュエーションが一番いいかもしれないという妄想が生まれてきた。
ともあれ、志乃ちゃんが犯人を追い詰めていくわけですが……、このあたりはちょっとスカされた感じでしたね。いや、志乃ちゃんの快刀乱麻な活躍を期待してたら、ハッタリみたいなもんだったので、物足りなかった。せっかくいい具合に盛り上がってたのになあ。
ただ、最後に正しくも、残酷な手段で、犯人を追い詰めていく志乃ちゃんは、素敵に恐ろしかった。それまでは、どこか僕方面に寄りそってきたんじゃないかなと感じられてただけに、ザクっと突き刺す言葉が、心に痛かったです。
こういうのを見ちゃうと、志乃ちゃんはどこへ向かおうとしてるんだろうなあと考えてしまいますが、いまいちわかりませんね。あとがきによると、そろそろ物語りも佳境を迎えているらしいので(どのあたりがなんだろ?)、どうなっていくのか期待して待っていたいと思います。
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SHI-NO ―シノ― 空色の未来図
「で、話ってなんだ?正月の一日目に呼び出したんだから、よっぽどの事だろ」
「詩葉かあの年賀状について」
雄一郎の表情から、人懐っこい笑みが消えた。
「そうか、そりゃそうだよな。お前のところに届いてないはずがない」
「なんでそう言いきれるんだよ」
「俺のところに来たんだ。なら、お前のところにも届いてる。これは絶対だ」
大学生の「僕」と小学生の志乃ちゃんが繰り広げるミステリーテイストな恋愛物語。今回は、故郷に戻った僕の元に、亡くなったはずの高校時代の彼女から年賀状が届いて、というお話です。
いつもなら、志乃ちゃんに振り回される形で、事件にかかわっていく「僕」が、物語の中心となるのは、なんとも新鮮ですね。故郷に戻ったってこともあって、志乃ちゃんが側にいないんですが、彼は志乃ちゃんがいないほうが、頭がしっかりするのかもしれないと思ったのは、僕だけじゃないはず。
死者からの手紙なんてあるわけがなく、ならば誰がこの手紙を出したのかと、当時の友人や関係者たちを年賀ついでに回っていき、懐かしさを覚えつつ、亡くなった彼女のことで胸を痛める描写がとてもよくて、切ない雰囲気に浸ってたら……、志乃ちゃん、君は時々とってもびっくりさせてくれるよね。
いつもと違う「僕」の様子に、何となく違うものを感じたのは、女の勘ってやつでしょうか。表情こそ変わらないものの、どこか、こう、嫉妬というかなんというか、そういうものを感じて、ちょっとうふふとなってしまいました。
「僕」は過去にかかわる人たちを追い、志乃ちゃんたちは過去の人からの挑戦を受けてと、二手に分かれて、謎を追いかけていくうちに、時にすれ違うところには、もどかしいものを感じたりするんだけれど、「家族」としての温かさを取り戻すために動いた「僕」の姿が、その結果、手を取り合うことができた家族の姿が、とても印象的でした。
「僕」のパートと志乃ちゃんのパートが、雰囲気違いすぎて、いまいちしっくりこなかったのが、個人的には残念ですが、まあ、志乃ちゃんの意外な一面が見えたのでいっか。
とりあえず、志乃ちゃんのくしゃみは、反則級にかわいいことを記しておく。
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