レンタルマギカ / 三田誠
レンタルマギカ 魔法使い、貸します!
幼いころの事件で、いつきは右目を失いかけた。代償として普通の光には耐えられないその目は、代わりに人外のものが見えるようになってしまっていた。それでも普通に暮らせていた。びくびくしながらも逃げ出すことが可能だったから。
だが、父が失踪してから 7年経ったある日。今まで知らなかったけれど、父は会社の社長をしていたらしい。会社の人から連絡があった。もはや記憶にない父の昔の姿が見れるかもと思い、浮かれていったのが間違いだった。
会社の名前は「アストラル」。それは魔法使い派遣会社だった……
右目で霊的なものが見えても、そういった力はまったくないいつき。
それを取り囲む社員は陰陽師やら魔法使いやら巫女やら、その手のもの。
気が弱く、押しにも弱いため、社長を辞めたくてもついつい流されてしまうけれど(表紙だけみると、かなりニヒルだけど)、やるときは一生懸命にやるいつきがいい感じ。
まあ、本作では登場人物のお披露目といった感じで、それほど突っ込んだ内容ではないけれど、いろいろな謎かけというか問いかけというか、伏線っぽいのが散りばめられているので、これからが楽しみですね。
個人的にはもうちょっと恋愛ものとして発展すると嬉しいかな。
レンタルマギカ 魔法使いVS錬金術師!
「先代社長の遺産があるので受け取りに来てほしい」
知らせを受け、「協会」からの乗り込んだ先で待ち受けていたのは、相続に異を唱えるもの。
それは先代社長の一番弟子として名高い錬金術師だった……。
見知らぬ登場人物があたりまえのように出てきたので、巻をとばして読んでるのかと焦った。前の事件とか知らないし。ひょっとしたら短編とかで何かあったのかもしれないけれど(あるいはまるでないのかもしれないけれど)、ちょっと不親切。簡単な説明ぐらいは入れてほしかった。まあ、さほど重要なポジションじゃないからいいけど。
それさえ除けば、導入の危機と謎かけ、そして中心となる敵役との戦い、と非常に引き込まれるストーリィ展開でした。うまい。
何よりアディリシアがものすごくかっこよかった。文句なしに惚れました。
自分探し(というか父親探し?)というテーマと並んで重要な展開を見せるイツキを巡る戦いですが、今作ではアディリシアがリードって感じ。
このあたりは今後も非常に注目していきたいですね。
レンタルマギカ 魔法使い、集う!
病院の休憩室でひとりだけが変な臭いを嗅ぐと翌日には病院から消えてしまう―
そんな噂のある病院での仕事と黒羽との出会いを描いた「魔法使い、貸します!」を含む四篇からなる短編集。
頼りないいつきだけれどど妖精眼を使うと……、というある意味ワンパターンになりがちなレンタルマギカですが、この短編集ではなんとなく頼りなかった猫屋敷や防御だけに思われたみかんなど、社員が個々の能力を発揮して事にあたるという展開。何か新鮮だ。
いつきが、腰がひけながら勇気を振り絞って参戦する姿はいつもどおり。
普段は頼りないのに責任感が強いところが皆に好かれる点でしょうね。
傷ついた心の抱擁や見え隠れする恋心など、短いながらも楽しめる「アストラル」の社員たちが繰り広げる物語。
ちなみに、あとがきに「時系列でいうと三巻は一巻と二巻の間になる」とのことでした。いろいろあったんでしょうね。前作を読んだときに感じたのは間違ってなかったらしい。大きな問題はないんだけど、これから読む場合は、一巻、三巻、二巻と読んだほうがいいかも。
レンタルマギカ 竜と魔法使い
伊庭いつきが禁忌を犯している疑いがかかっている―影崎の代わりに訪れた協会の担当者、フィンが持ち込んだ知らせは「アストラル」に衝撃を走らせた。先代社長である伊庭司は一体何をしたのか。
協会の手のものとはいえ、穂波の先輩でもあるフィンは深く探ろうとはしなかった。だが、いつの間にか街が眠りにつき、何かが目覚めようとしていた……。
相変わらずこのシリーズは物語の展開がうまいけれど、今回のメインは、何といっても、アディリシアと穂波が己の気持ちを明らかにしたということでしょう!(違うとかいうな!)。
身体も魂も、私はあの人に捧げられません。ですから、この胸の奥にあるものだけは、他の誰にも譲りません。
気高き女性の誇らしき言葉。
やっぱり……負い目なんかやあらへんもん
小さなことかもしれないけれど確かに前進した魔女のつぶやき。
本編の展開よりも、このふたりといつきの関係の展開のほうが気になるのは僕だけでしょうか。 自覚したふたりが、それぞれどんな攻勢をかけるのか楽しみです。
レンタルマギカ 魔法使いの宿命!
慰安旅行に出かけた「アストラル」が遭遇した事件を描く「魔法使いと夏の海」
穂波とアディリシアの魔術結社の入信儀礼を描く「魔法使いと学校の怪談」
猫屋敷の過去が垣間見れる「魔法使いと星祭り」(前編・後編)の三編(四編?)からなる短編集。
やっぱりこの中では穂波とアディリシアの物語が一番かなあ。まだ二人が幼きころ。魔術結社に入る際の儀式に取り組む話。なんせ、あの穂波が落ちこぼれだったというんだから!
何より、反発しあいながらもお互いを認め合う姿がいいよねぇ。なんかこう、宿敵と書いて、あるいはライバルと書いて友と呼ぶ関係。昔は魔法で、今は恋でも。いいなあ。いつまでもそんな関係でいてほしいですね。
実は猫屋敷ってすごかったんだ、ってことを知らしめてくれる「魔法使いと星祭り」も見ものだったりします。
っていうかすごすぎるんじゃない?アストラルメンバー。
レンタルマギカ 魔法使い、修行中!
ダフネは先日このようなことを尋ねられた。
「女の子というのは、どんなプレゼントを喜ぶものでしょうか」
その言葉がいつきの口から放たれたことが知れたとき、穂波と黒羽とアディリシア、魔女二人と幽霊の、ひそやかな追跡団が結成された。
そんなクリスマスイブ……
サブタイトルどおり、いつきが修行するお話から始まる四編の短編。修行といっても、魔法のではなく隻蓮が施す体術の修行です。隻蓮からすると体術を通して精神を鍛える、といったところでしょうか。
いつものように情けなさを表に出しながら、頑張るいつきに好感がもてます。
個人的には修行からちょっと離れたお話の「魔法使いとクリスマス」がとても楽しくて好きですね。
「女の子というのは、どんなプレゼントを喜ぶものでしょうか」という、いつきの発言を耳にした女性陣(穂波、アディリシア、黒羽)が、振り回されるお話。お互い、いつきを想っていることを知りながらも、隠しつつ行動する様が微笑ましいです。
オチはお約束ながら、アディリシアの要求する報酬に思わずにやけてしまいました。
この話もそうだけど「魔法使いとソロモンの血」でも、アディリシアがちょっとリードしたかもと思わせる描写があったなあ。飛び跳ねたいほど嬉しくても、自制するアディリシアが可愛くてしょうがない。
でも、可哀想なので、そろそろ穂波の話も入れてあげて欲しいかな。
レンタルマギカ 鬼の祭りと魔法使い 上
今日は実家に戻っていたみかんと付き添いの猫屋敷が帰ってくる予定の日だが、いつまで経ってもふたりが帰宅する様子がない。
何かあったのかと、みかんの実家へ電話をかけたが、相手の反応は予想外だった。
「みかんを <あすとらる> へお返しすることはできません」
ただし、と条件をつけられて、いつきと穂波はみかんの実家へと向かったが……。
実家から帰れなくなったみかんを、いつきたちが連れ戻すお話。
みかんの実家である葛城家について、いろいろ出てくるんですが、人よりも家を大事にするという代々続いた家らしい嫌らしさが伝わってきますね。逃げ出したくなるみかんの気持ちがわかります。
みかんの果たすべき役目というかお祭りの話は、お家のこともあるので一概に否定しきれないところもあるんだろうけれど、あまり気持ちのいいものじゃないですね。
個人的に好きなシーンは、いつきと辰巳の手合わせのところ。自分の力を感じ取ることができる喜びがとても伝わってきます。ああ、辰巳君、良いやつだ。隻蓮よりもよっぽど師匠になれそう。
さすがに香のことがあるからアストラルにくることはないだろうけれど、ちょっと期待しちゃう。
物語としては、それなりに話が進んでいるんだけど、まだまだ序盤って感じかな。黄金にも等しい価値のある情報や、アディリシアがどうからんでくるのかなど、気になる事が満載なので、下巻がとても楽しみです。
レンタルマギカ 鬼の祭りと魔法使い 下
葛城の祭りに<螺旋なる蛇>が関与している可能性がある。鬼を生む者、鬼に攫われた者、人柱にされる者、そこへさらに<螺旋なる蛇>とくれば協会も黙ってはいない。だが、協会が出てきたら、みかんのことなど考慮しないだろう。
みかんを助けるという誰よりも臆病な少年の決意に、三人の魔法使いたちは、異教の魔術の夜へと向かっていったが……
いやあ、すごい、すばらしい!鬼を生み出すという葛城の祭りに、これほどの意味があったとは思いませんでしたが、それを乗り越えていくアストラルの面々がとても良かった。全員が主役といっても言いぐらい、それぞれの見せ場がてんこ盛り。誰も彼も覚悟が違うだけに、言葉に重みを感じます。
個人的に一番好きなのは、黒羽の言葉ですね。いつきの考えをきっちりと受け取ってることもさることながら「魔法使いって―」から始まる魔法使いの存在についての言葉がとても素敵でした。
葛城当主の人柱という考え方には、アストラル側から読んでいる身としては勝手にしか思えませんでしたが、裏にはその子のためを思っての苦々しい決断があったことに、胸が苦しくなります。「力」を知っているからこそなんでしょうね。勝手に、と一概には言えないものがありました。
香やみかんのコンプレックスとも言える思いには、暗く重いものがありましたが、この件がみかんと姉の香の壁を取り払うことになったのは良かったです。
全員が力をあわせて、最後はお兄ちゃん社長が決めてくれて、と展開にも大満足。シリアスな物語をきっちりまとめてくれました。個人的には、レンタルマギカシリーズの中で、一番良かったですね。
とはいえ、力を抜いた話も大好きなので、次は、穂波やアディリシアがいつきに絡むような話が読みたいですね。
レンタルマギカ 魔法使いのクラスメイト
祖父の荷物に住所が書いてあったけれど、ほんとうにあったとは思わなかった。魔法使いを借してもらえるなんて、怪しいけれど。そう思っていた翔子の前に現れたのは、クラスメイトの伊庭くんだった。
どの道ほかに頼るところなどない。何より伊庭くんなら安心できると、神隠しにあった祖父を探してもらうよう依頼したが……
クラスメイトの委員長がレンタルマギカの依頼人になる「魔法使いと神隠し」を含む四篇からなる短編集です。いやあ、これ、かなりいいですね。禁忌に触れることの恐ろしさと、わかっていても禁忌に触れることを選んだ人の決意とが伝わってきます。委員長という肩書きぐらいしか印象に残らなかった翔子でしたが、最後の別れは、すっと心に沁みこんできますね。
今回の短編では、いつきとの関係という意味では今まで不遇を味わっていた(ってほどでもないけど)穂波が、楽しいことになっていました。過労で倒れた穂波をいつきが看病する「魔法使いのヤマイ」は、今までの穂波のイメージを一変させてくれるものがあります。思わずニタニタしちゃう。
からかいながらも親しみを感じられるアディの反応がとても良かったです。
クラスメイトが依頼人だったり、穂波の意外な一面が見れたり、いつきの過去が見れたりと、仕事でもあるんだけど、日常的な感じがとても良い雰囲気の物語でした。魅力満載。
書き下ろしとなる「魔法使いと水の都」では、敵側のフィンが主となる物語でしたが、捉えどころのない魅力が伝わってきますね。本編にも繋がる重要な事実なども匂わせてくれるだけに、この短編は見逃せないかもしれません。
いやあ、面白かった。このシリーズはホントいいですね。お勧めです。
レンタルマギカ 吸血鬼 VS 魔法使い!
いつきたちが二年生になった日の帰り道、いつきは分厚いコートを着た少年に襲われた。ルーン魔術を使う少年オルトヴィーンは、なんとアストラルの新入社員だったのだ。魔法結社として異質なアストラルを憎みながらも、今までとは違った角度で仕事を進める彼のおかげで、普段よりも入札は激増した。だが、そんな彼を追ってきたのは、人ならざるもので……
いつきのことを狙うほど憎みながらも、仕事は抜群にできる新入社員が来て、というお話です。頑固というか、規律正しい感じの少年ですね。今までアストラルにいた人は、どこか抜けてるといったら何ですが、お金に疎い人たちばかりだったので、こういう人がきてくれたのは嬉しいかも。
何からの過去があることが伝わってくるだけに、不安を誘われましたが、吸血鬼が出てくるとは。それもこういう出方をしてくるとは思いませんでしたね。敵に回すとこれほど嫌な相手はいないよなあ。残虐性が見事です。
アディリシアにしろ、穂波にしろ、あと一歩及ばず的な感じだと思ったら、そんな甘いもんじゃないところは、さすが伝説的吸血鬼。
ただ、そんな強大な敵を相手にしても、立ち向かうアディリシアや穂波の姿は、傷つけられながらも、感じたのは心の強さでした。ふたりともかっこよくて素敵。
いつきも相変わらず、仲間を思って決意してからはよくなりますね。敵を倒すのに、きっちりとオルトのけじめを持ってくるところに、優しさと仲間を信じる強さを感じました。一瞬の勝負でしたが、引き込まれましたね。
いやあ、面白かったです。今回から第二部とのことで、アストラルもいろいろ注目され始めてくるみたいだし、例のところが、またひとつ動き始めたみたいなので、結構苦労しそう。ただまあ、個人的には、そっちよりもアディと穂波のいつきを巡る争いのほうが気になりますが。
今回は二人して同じようなことしてるところに微笑んでしまいましたが、よく考えてみたら一歩も進んでいないような?いや、アディのときのあのシーンを考えると……かしらとか思ったりもします。ああ、どうなるんだろう。
いずれにせよ、今後も楽しみですね。
レンタルマギカ 妖都の魔法使い
最近の業績を評価し、アストラルについて、格付けの見直しを行うことになった。ついては審議を行うために、英国の協会本部まで来られたし―その言葉を受けて、いつきたちアストラルのメンバーは全員で、英国・ロンドンの地を踏んだ。初めての土地で、さらに重要な審議ということもあって、緊張していたいつきだが、事態は思わぬところから動き始めた。
最近、世間を騒がせている魔法使いばかりの連続殺人事件の犯人が、よりによってユーダイクスかもしれないと……
格付けCCCの魔法使い派遣会社アストラルが、ロンドンに足を踏み入れたら、協会に仕掛け始めた<螺旋なる蛇>の騒動に巻き込まれて……というお話。ロンドンへ行っても、みんなで集まれば、いつものアストラルの空気が見えるってのはいいですね。
そんないつきたちが来たことで、どこかざわめきを隠せないロンドンですが、まさか、いきなり現れたホムンクルスのラピスに、いつきが誘拐されるとは思わなかったです。ユーダイクスのことも気になるだけに、いったいどうなっていくのか、気になるばかりでしたよ。
審議と事件と誘拐とで、アストラルのメンバーが、三つに分かれて行動することになったわけですが、ここで、それぞれが自分のできることをやろうと決意するところが良かったなあ。
穂波がいるから任せられる、いっちゃんが帰ってくるまで守り通す。
この二人のみならず、猫屋敷だって、いつの間にか、いつきの影響を受けてるんですもんね。信頼の大きさに、心打たれるものがありました。
そうそう。誰よりも焦りながら、誰よりも冷静な穂波を見て、悔しくも自慢に思うアディの心境も素敵でしたね。恋だけじゃなく、ほかのことでも、いいライバルじゃないですか。がんばれ、ふたりとも。
ひとりひとりに焦点が当たっていた第一部とは異なり、大きなストーリィのワンエピソードという感じのある第二部ですが、今回は衝撃的な事実が明かされましたねぇ。まさかアディが協会とそんなつながりが……、というのもあったけど、それ以上にすごかったのが「魔法使いを裁く魔法使い」ですね。まさかこれほどだったとは……
正直、敵に回したくないと思いますが、守るべきものを守るために、いつきたちアストラルが、更なる成長を見せてくれることを期待したいです。
レンタルマギカ 魔法使いの記憶
「レンタルマギカに代理の授業をお願いしたい」
先日の事件で負傷したマクレガー教授の依頼を受けたアストラルだが、代理の依頼は、アディリシアにもいってたらしい。穂波とアディリシアが、どちらが優秀かで火花を散らす中、授業を最後列で受けていたいつきは、見知らぬ少年に声をかけられた。
ホナミやアディリシアをたらしこんでいいように使っているアストラル首領イツキ・イバに、魔法決闘を申し込む、と……
一年ぶりの短編集は、過去がテーマとなったお話でした。オルトヴィーンの厳しい査定に起こったみかんが、かつてアストラルが完遂できなかった仕事に手を伸ばす「魔法使いの査定!」、穂波とアディの恩師から頼まれた代理授業をしていたら、そこの生徒と魔術決闘することになった「魔法使いの代理授業」、穂波の故郷とも言うべき森で、いつきの右目が暴走する「魔法使いの約束」、猫屋敷がアストラルへ入社するきっかけとなった「魔法使いの出会い」の四篇からなる短編集です。
同じような言い合いしてるのに、はじめと終わりでは、みかんとオルトヴィーンの間にある雰囲気がぜんぜん違うところが、すっごいいいなあという「魔法使いの査定!」ににんまりしましたが、それ以上ににんまりさせられたのが「魔法使いの代理授業」。アディや穂波が、アストラルの社長にたらしこまれていると思って、いつきに決闘を持ちかけるなんて!たぶらかされてると言われたときのアディと穂波の様子が最高でした。ま、それ以上にいつきへの信頼を見せてくれるアディが良かったですけど。
それにしても、小さなころから小生意気というか、お嬢様な性格だったんですねぇ、アディ。
一方、アディだけじゃなくて、穂波のよさも見えてくるのが「魔法使いの約束」でした。普段厳しい事をいうけれど、いつきの頑張りを、成長を、誰よりも間近で見た彼女だからこその思いが見えるところが、とても印象的でした。こういう姿見ちゃうと、いつきと穂波で未来を見てほしいなと思ってしまいますね。
さて、いつまで、アストラルという素敵な空気が保たれるのか気になるところ。
最後のお話「魔法使いの出会い」は、あまりに驚いてどうしようかと思いました。いや、猫屋敷がやさぐれてて、あんなダークなことを、とかいうのは、わりとどうでも良かったんだけど(オイ)、例の人がかつてアストラルにいたなんて……。今まで出てなかったよね?
いったい何があって、袂を分かつことになったのか、今後の展開が大いに気になるところ。
レンタルマギカ ありし日の魔法使い
「これだけいろいろ見せられれば、それなりの予想はつくさ。禁忌を目指す魔法使いが、どういう考え方をするか。ああ、俺もそれなりには知っている」
ゆっくりとうなずき。そのまま、こう告げた。
「お前たちの目指す禁忌は ― 魔法使いが魔法になる方法、だ」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の物語。今回は「魔法を使わない魔法使い」こと、伊庭司が社長だった十二年前のお話です。
久しぶりに、というと語弊がありそうだけど、面白かったです。いや、いつも面白いんだけど、普通に面白いってぐらいで安定してたんだけど、今回はいつも以上でした。
なんせ登場人物が豪華ですからね。庭司、猫屋敷、ユーダイクス、隻蓮、穂波の祖母ヘイゼル、そして「魔法使いを裁く魔法使い」が社員って、どんだけすごいんだよ。そんなアストラルに、ゲーティアの儀式を邪魔したものを探してほしいという依頼が、アディの父・オズワルドから寄せられるんですが、まさか対象となった相手が、現代に繋がってくるとは思わなかった。因縁とはこういうことかと思うばかり。
今回のお話で一番印象に残ったのは、猫屋敷の心の移り変わりですね。今はあんなに昼行灯なのに、このころは、常に心に不満を持っているような刺々しい感じだったんですね。まあ、いつき父・司の、のほほんとしたからかいに苛立ちを覚えてるってこともあるんだろうけれど、それ以上に、自分の中にある衝動を抑えきれない感じが伝わってきました。
敵対した組織の禁忌に触れ、心揺れたときにはどうなるのかとドキドキでしたけど(いや、現在を考えればわかっているんだけど、それでも、ね)、気づかぬうちに生まれたアストラルへの思いに、ああ、こうしてアストラルに染まっていったんだなと、素敵な気持ちになりました。
そして、社長。
まさか、魔法が使えないただの人間が、これほどのものを見せてくれるとは思わなかった。普段はゆるゆるなだけに、ギャップにやられまくり。なんて格好いいことしてくれるんだ!
なるほど、こんな人だからこそ、まるで異なる形態の集団をまとめることができるんだろうなあと思いました。
いやあ、面白かった。
アストラルの過去に、これほどの事件が起きていたとは思いもしませんでしたよ。なるほど、この亀裂が、今に影響を及ぼしてるんだなあというところが見えて、とても興味深いものがありました。
十二年前はアストラルにいて、今は協会にいる例の人の話は、まだ語られてないところもあるかと思いますが、今のアストラルを見て、どう思うのかは、聞いてみたいところです。
レンタルマギカ 魔法使いの妹
「やっぱり、アディリシアさん、兄さんのことが好きなんですか?」
不意に、トンデモナイことを義妹が訊いた。
「なななななななななななななななっ!何が一体!そんなとととととととんでもないことを考えさせるんですか!いやその私はあなたはイツキのことなんてそれはもちろんいいえまったく好きだとかどうだとかそういうことがどうして分かりますの」
「そりゃ分かりますよ」
あっさり勇花は言い、さらに爆弾発言を投下した。
「あたしも兄さんが好きだもの」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の物語。今回は日常方面のアストラルを描いたお話が三編と、次のお話へと続くお話が一編収録されています。
- みかんの担任がアストラルへやってきた?「魔法使いと家庭訪問」
- 夏休みを利用して、いつきの義妹がアストラルを訪れて……「魔法使いの告白」
- 突然、穂波が夏休みをとると言い出して……「魔法使いの夏休み」
- <螺旋なる蛇>の求めてやまない赤い種のありかが明らかになる「魔法使いと盲目の蛇」
ドタバタで楽しかったのは「魔法使いと家庭訪問」ですが、いつきの義妹・勇花が嵐のように吹き荒れる「魔法使いの告白」も楽しかった。いつきと違ってしっかりものなので、みんながタジタジになっちゃうところが笑えますし、いつきの彼女チェックするところとかもいいですね。そっち方面鈍いいつきを差し置いて、すぐさま見分けちゃうところが、素晴らしい。
それにしても、勇花が持ってきたちょっとした依頼が、あんな結末を持ってくるとは思わなかった。妖精眼にはどこまでの力があるのか計り知れないだけに不安になりますね。思わず、抱きしめてしまったアディの気持ちが良くわかります。
こういう人を好きになってしまったアディは大変だなあと思うけど、同じように好きな気持ちを持ってる勇花もまた、妹の強さを見せてくれて。この二人が仲良くなるのは、ある意味当然か、とニヤニヤしました。
個人的に意外な気持ちになったのは、「魔法使いの夏休み」ですね。穂波って優等生なところがあるから、「目標」について迷うってことが意外だったんです。
でも、経験を積んでるとはいえ、まだ高校生ぐらいの年齢なんですよね。周囲の人が目標を定めて動いてる中、自分は?と迷うのは、ある意味当然なのかもしれません。
命の洗濯じゃないですが、仕事を離れて、自分を見つめなおした穂波が見つけた目標に、とっても温かいものを感じた自分がいました。このお話、好きだなあ。
さてさて、「魔法使いと盲目の蛇」で、アストラルというより、いつきに対して、なにやらきな臭いものを感じるものがありましたが、ここまできたら、<螺旋なる蛇>は、いつきを狙い始めますよねぇ。アストラルの平和が崩壊する日は近いようですが、がんばって切り抜けてほしいものです。
レンタルマギカ 旧き都の魔法使い
「十数年の時間を経て、猫屋敷蓮はさらに腕をあげました。円熟しつつあるといってもいいでしょう。アストラルの中で、ひとりの魔法使いとして最も完成に近いのは間違いなく彼です。ならば、ひとつの疑問が生まれます」
フィンは人差し指をあげた。
「今度こそ、猫屋敷蓮は御厨康申を殺そうとするでしょうか」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の物語。今回は猫屋敷が本来所属する「八葉」から貸し出し魔法使いの依頼があり、京都へ向かったら……というお話。
いやあ、おもしろい!
考えてみれば猫屋敷の話は初めてだったんですね。「アストラル」の面々で京都へ向かう旅路が、とても和やかで楽しかったですが、八葉へ足を踏み入れてからは、うってかわって不穏な雰囲気いっぱい。どうなるかと思ってましたが、まさかこんな……
「八葉」の依頼については、様々なしがらみからおいそれと断れない状況だったけど、それでも「アストラル」のみなの絆や、葛城などこれまで出会った人たちが、力を貸してくれるなら……と思っていだけに、こんな形で分断される展開が衝撃でした。
ある意味、協会がオピニオンの手助けをしてるといっても過言ではないよなあ、と思ってしまうのは、<アストラル>視点でみてしまうからでしょうね。協会からしたら、危険の芽があるなら摘みたいと思うのは妥当だと思うけど、こういう形で抑えられると、イツキの周りにいる人たちは、ほんと辛いと思います。
立場が立場なだけに、アディは動きづらくなりますが、かといって、穂波とて楽には動けないでしょう。ていうか、状況だけ見ると袋小路にしか思えないんですが、いったいどうするんだろう。
壮絶な過去を経験している猫屋敷とて、この場では冷静でいられるとは思えないだけに、どのような形で挽回していくのか、とても楽しみです。
レンタルマギカ 滅びし竜と魔法使い
「僕はそれでも……魔法使いを護りたい」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の物語。今回は、いつきが協会から追われる身となって……というところからはじまる第二部完結編です。
これは面白かった!
皆、いつきのことが好きだから、協会の要請に対して、どうするか苦悩するんですが、それぞれが苦悩しながらも、何とか抜け道を探し、戦いに向かっていく姿が良かった。力を使うだけが、反発するだけが、戦いじゃないことを見せてくれましたね。
中でもアディが格好良かった。背負うものが大きく重くのしかかる中、思いが張り裂けそうになっても、きっちり覚悟を決めて、愛する人のために戦う姿に痺れました。
さて、協会はなにを持っていつきを追い始めたのかというあたりで、禁忌の真実が見えてくるんですが、これは魔法使いたちからしたら、揺れるよなあ。<螺旋なる蛇>でなくても、手を貸したくなるものがあると思います。
犠牲になるのが、いつきじゃなかったら。
どんなときでも魔法使いたちを護りたいとするいつきの思いは、とても優しく、とても温かくて……
「護る」という言葉が、妖精眼を動かしたときの仲間たちの歓喜の魔法を打ち上げるシーンの感動は忘れられません。
いやあ、面白かった。
感動のあとに、いつきが護った人たちが、逆にいつきを護ってくれていたことが見えて、嬉しくも切なくなりましたが、みな心は<アストラル>にあることがわかったのでいいか。
これで第二部は終了とのことですが、第三部は……結構波乱になりそうですね。<アストラル>は人手のことがあるし、それよりもアディがなあ……。悩ましいのはわかりますが、うーん、どうなってくんだろ。ドキドキですね。続きを楽しみに待っていたいと思います。
レンタルマギカ 銀の騎士と魔法使い
「じゃあ……ラピスは<銀の騎士団>については、なにか知ってるの?」
「知ってるのは、首領にあたる騎士総長ジェラール・ド・モレーの噂だけ。それも一言、昔あにさまの言ってたのを覚えてるだけ」
「……それでもいいから、教えてくれる?」
みかんの言葉に、ラピスは小さくうなずいた。
「あにさまいわく ― 狂乱の騎士」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の活躍を描くシリーズ。今回は「アストラル」のメンバーに大きな変化が訪れ、それでも、いつきは想いを胸に自分の力で前へ進んでいこうとする第三部開始の物語です。
いつきが強くなったなあ。猫屋敷や穂波が、人質として協会の仕事につき、アディリシアもまたその立場から、アストラルを離れざるを得なくなり、戦力ダウンは否めないんですが、かつてほどの力はなくとも妖精眼を使い、残ったメンバーたちそれぞれが力を強めていって、何とかアストラルを立てなおそうとする彼の姿勢に、無茶しやがってと思いつつも、応援したくなるものがあります。
きっと傍にいる人たちよりも、遠くはなれてしまった人たちの方が、いつきの想いが感じられて、心打たれたんじゃないかなあ。どんなときでも、支えがあると、人って強く慣れますよね。
しかも、力だけじゃなく、したたかさも学んで行くあたりが、何とも成長した姿を感じます。弱気なんだけど、なんでしょうね、この微妙なところで強気になるのは。
以前、業務提携を断った「銀の騎士団」と連絡を取り合い、その上でやってのけたことは、あまりの痛快さに拍手したくなりましたよ。
もちろん、賭けの部分が多かったと思うけれど、やり遂げたことに、そして勝ち負けではなく、信を置くためのものである戦いであったことにしびれました。こうやって仲間が増えて行くのは、嬉しい限りです。
まだ、いつきの道は始まったばかりで、長い道のりがあると思うけれど、それでもこの一歩が、いつかの一歩に繋がると思えば……ね、アディ。彼女の境遇は重いものがあると思うけれど、いつきの言葉を聞いたいまなら……そう思いたくなりました。
続きがとても楽しみです。
レンタルマギカ 白の魔法使い
「ダリウスには気を付けろ」
「ダリウス・レヴィ……ですか」
<教会>の副代表。いつきも、何度か出会ったことがある。
「伊庭司は魔法を使わない魔法使いだった。だが、私の知る限り……最も魔法使いらしくない魔法使いは、あの男だ」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の活躍を描くシリーズの第三部第二弾。銀の騎士団と友好関係を築いたアストラルが、<螺旋なる蛇>対策に向けて動き出すお話しです。
やばい、何この面白さ。いつきが次に何をするのかが予想が付かないから、引き込まれます。協会の副代表を前にして、足をがくがく震わせながらも、アストラル代表としての要求はきちっと行い、利用されることをわかっていながら、それを上回る手を打つ手腕にしびれました。弱い立場だからこそ、切り札になる。すばらしい。
それにしても、今回は息をつかせぬ展開でした。逆転につぐ逆転の連続で、燃えるばかり。少数とはいえ精鋭の<螺旋なる蛇>に対して、互角以上に渡り合うアストラルや、協会へレンタルマギカされたふたりなど、成長著しい姿は、別の意味でも熱くさせられる。
そして<螺旋なる蛇>もまた大きな手を見せてきたから、もうどうなるんだ!?状態。敵対する勢力なのに見せられて困りました。九人中、七人の幹部が集まっただけでもすごいのに、「王冠」だもんなあ。
利用できるものは磨り潰すまで使うといわんばかりのダリウスの罠もすごかったけど、それ以上にすごかったのが、いつきでした。最強の勢力を相手に……あのラストでゾクゾクしないわけがない!
守りたいもののために、誰よりも先を見て、誰よりも考えて、その結果がこれだったんだなと思うと、きゅんとさせられるものがありました。これで惚れないわけがない。アディといつきがなんかいい感じではありますが、恋に決着がついたわけではないので、このあたりも気になるところですね。
いったいどんな戦いになるのか、本当に予想がつかないので楽しみです。
レンタルマギカ 魔法使いの妹、再び
「無理を、しても……」
声が、押し出された。
「私は……私こそが……どれだけ無理をしても……イツキのそばにいたいんです……」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の活躍を描くシリーズの第三部第三弾。今回は中短編集。いつきの妹がアディリシアとデートする「魔法使いの妹、再び」、穂波と猫屋敷が教会から奇妙な指令を受ける「魔法使いの罰」、隻蓮がアディの父・オズワルドと出会った頃の話を描く「魔法使いの思い出」が収録されています。
これはよかった。教会とオピニオンという二大組織の魔術決闘を控えて、アストラル、教会、銀の騎士団、旧アストラルの人たちを描く物語は、いろいろな思いを描きつつ、着々と進む準備とモチベーションが感じられます。
一番良かったのは、やっぱり表題作かな。「魔法使いの妹、再び」。夏休みだからと突然やってきたいつきの妹・勇花の強引なペースに、アストラルだけでなく、アディシリアもたじたじになって振り回されていましたが、そこで見えるのは、無理をしている人たちへの優しさで……抑え込んでいた気持ちを口にして、はっきりと自覚してしまったアディの思いは、とてもきゅんとなりました。悔やむことはないというその想いは、いつか届いて欲しいなと思うばかりです。
「魔法使いの罰」は魔術決闘に向けてって感じのお話しで、穂波と猫屋敷の戦いの幅が広がりそうだなと思いましたが、それよりも教会の代表の存在がアレかもしれない。
そして「魔法使いの思い出」。これは魔法使いの業ともいうべきものが見えるお話しでした。オズワルドと隻蓮の気が合うというのは、意外な気がしましたが、それも読むと分かりました。なるほどオズワルドがあんな性格になったのは……。魔法を極めることの代償は、あまりにも大きく、あまりにも取り返しがつかなくて。もう彼はこの道を進むしかないという思いがやるせない。
そんな思い出話を語ってくれた隻蓮ですが、彼は旧アストラルの人として、何やら伊庭司と共に動き出しそうなので、さて何をしてくるのかしら。次から始まるであろう大魔術決闘がどうなるのか、とても楽しみです。
レンタルマギカ 争乱の魔法使いたち
「魔術決闘の両者に対して、あまりにも<アストラル>は小さすぎる」 老婆が、言う。 「大魔術決闘だったか。果たしてこの魔術決闘が終わるまで、<アストラル>はもちろん、あの少年も無事でいられるかな」
魔女、陰陽師、錬金術師などなど、複数の魔術系統を集めた魔法使い派遣会社「アストラル」の活躍を描くシリーズの第三部第四弾。アストラルが仕切る協会とオピニオンの魔術決闘が、ついに始まります。
面白かった!テンション上がりまくりでした。特にいつきが提示した魔術決闘の形式にはもう!決闘に向けてのいつきの行動がいろいろ不安だっただけに、やられました。なるほど、この手できたか。まさに先制パンチだなあ。
両陣営とも、いつきの目的が何かわかっていながら飲み込んだのは、余裕のように思えたけれど、その実、思考を制限されてるようにも見えるから、なるほどと思ってしまう。ただの人であるという最弱の立場が、逆に牽制となる展開に思わず興奮。
とはいえ、いつきの提示した条件は、あまりにも彼にとって過酷で、いつ命を落としてもおかしくない状況となるから、いったいどうするのかと思ったら……彼がこれまで培ってきた「力」が、こういう形で発揮されるとは!これはもう間違いなくいつきのペースでしたね。
と思っていたのに、ここで介入してくるか、「アストラル」が。いや、出てくるとは思っていたけれど、こんなにも早いとは予想していなかった。しかも、いつきの弱いところを的確についてくるから、どうなるかとドキドキ。
そこで歩みを止めなかったのは、人の支えを、信頼を、感じていたからだと思います。自分なりの方法で、魔法使いを守ろうとする彼と、独自に動く魔法使いたちの思惑と、さて、どういう決着がつくのかしら。
まだ序盤でありながら、熱い展開が見えている魔術決闘の続きが楽しみでなりません。
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