ROOM NO.1301 / 新井輝
ROOM NO.1301 おとなりさんはアーティスティック!?
そのマンションは 12階建てのはずだった。だがなぜか 13階の鍵があり、階段を上っていくと 13階にたどり着ける。そこに住んでいる芸術家の綾。
クラスの女の子に初めて告白された日に、倒れていた綾を 13階まで連れて行ったのが始まり。まさか女性に襲われるとは!
いつしか自身も 13階の鍵を持つことになった健一とその13階の住人が繰り広げる物語。
透き通るぐらい素直な恋愛感情をぶつけられたかと思いきや、急にエロエロな展開になったりと、電車の中で読んでたら恥ずかしくてたまらなかったりするわけですが、いつしかそんなことすら気にならなくなるぐらい物語に引きずり込まれてしまいました。
やはりこの人はミステリィよりもこっち方面のほうがいい。
以前に読んだタイムループの短編集「寝起きの悪い定休日」を読んだときから思っていたことを、改めて感じましたね。
自分は恋愛に向かない。そんな主人公・健一の恋愛探求の物語。
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ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック?
クラスメイトである冴子の評判は悪かった。いわく「ヤリ魔サセ子の女」。そんな彼女は13階の鍵を持っていた。それも健一と同じ部屋の鍵を。
噂を信じてはいなかった健一だが、彼女は言う。
「わたし、しないと眠れないの」
付き合っている彼女とはプラトニックな関係を続けながら、冴子と体の関係を続ける健一。
やはり自分はどこかおかしいのだろうか……。
自分がそんな状況に陥ったらどうなるか。
目の前にいる女性が辛そうにしていたらやはり助けてあげたくなるだろうか
だが、精神的に耐えられる自信はない。
もちろんそんな経験は全くありませんし、想像することすら難しいですが。
読んでるときは楽しく、クスクス笑ったり、クーってもだえたりしてしまいますが、読み終わったあと、妙に悲しくなるシリーズ第二弾。
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ROOM NO.1301 #3 同居人はロマンティック?
彼女と海に行くことになった健一。楽しいはずの旅行中にふと思い出す。しないと眠れないといい、事実やらないときはフラフラしている冴子。自分が旅行している間、彼女はどうするのだろうか。そんなことを思う自分に嫌気が差す。
そんな二人を見ていた姉のホタルは言う。「おまえと彼女の関係はバランスが悪い」と。だが、決して彼女が嫌いではない健一。二人の距離ははたして縮まっているのだろうか……。
彼女の千夜子の頑張りが微笑ましく思える落ち着いた展開。
それに比べて健一はある意味スーパマンですか。結構何でもできちゃうんだもんな。
それにしても、徐々に二人の距離が縮まってると思って微笑ましく見守っていたら、いきなりラストのどんでん返しはなんですか?あんなのありですか?
この状態であんな横槍が入ったらいったいどうなるのか……。
やばい展開まっしぐらのシリーズ第三弾。
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ROOM NO.1301 #4 お姉さまはヒステリック!
まさか姉が自分を思っているとは思わなかった。だが、いつだって自分のことを考えてくれていたのは間違いなかった。そんなふたりが同じ家に住んでいれば、こうなることは時間の問題だった。
だが、そこへ現実が待ち受ける。もう家には帰れない。
そんなとき、13階の鍵を持つ少女が現れる。しかしシーナと名乗った少女は、自分は男だと言い張る。そんなシーナは女性にモテルためにストリートライブを決行する。健一を連れて。
はじめは嫌がったが、ホタルのことを忘れるには何かに没頭したほうが良い。そう思った健一はせめて顔だけでも隠せるようにとバケツをかぶる。そして今夜「シーナ & バケッツ」のライブが始まる……。
個人的には姉となんちゃらという話は気持ち悪いのでアレですが(自分にもいるからでしょう)、好きな人と離されてしまうのは苦しいだろうなと。
とはいえ、周りに自分を思ってくれる人がいるだけ、痛みも早く治りそうなものですが、それはちょと人と異なるところとお持ちの主人公。見てて嫌になるぐらい鈍感。
それとまた新たな仲間が誕生。これは健一とはどうにもならないような気がするけど、さてさて。
後半に入って今までとはちょっと違った感じに進んでいるのが興味深い。
さて、これはどうなるのか。困った展開のシリーズ第四弾。
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ROOM NO.1301 #5 妹さんはヒロイック?
彼女と夏祭りに行くことになった健一。そんなふたりの(特に彼女である千夜子のことが)気になってしょうがないツバメ。そんなツバメと佳菜が出会ったら、ケンカが始まるのは当然のこと。
そこへ現れるシーナこと日菜。彼女が好きな女性っててひょっとして……?
なんかようやくまともになってきたような気がする。
途中ちょっと変な人がいたけど(錦織ね)、それはそれ。
冴子との関係も落ち着いてるようだし、このまま無事に行ってくれるんでしょうか。
それともまだ波乱はあるのか。
だいぶ、千夜子もはっきりしてきたみたいで、ふたりの関係を読むのが楽しくなってきました。
シリーズの第二弾、第三弾を読んだときの健一に対する哀しさってのが、ちょっと薄れてきたシリーズ第五弾。
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ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん
目の前に倒れている女性。どうやら綾さんのようだ。
特に大事はないようだと思いきや、いつもと違う雰囲気。
え?記憶喪失に? - 「僕と綾さんの素敵な思い出」
健一と離れた生活を送る毎日。
そんなとき高校の同級生だった宇美からスパリゾート(銭湯)へ誘われた。
日常会話からなんだか話が妙な方向に…… - 「私と宇美と豪華なお風呂」
何で女性の私が皿洗いなのに、刻也君がウェイターなの?
会える時間なんてそんな無いのだから、刻也君にも裏方をやってほしかったのに。
ちょっとしたすれ違いによる気まずい雰囲気。
そんなとき、風邪を引いた私は…… - 「私と刻也君と素敵なタイミング」
刻也君の彼女の話は初読。なんか新鮮だ。
いつものようなエロエロな展開は一切無いせいか、物足りなくも感じましたが、
そこはいつものメンバのキャラでカバー。やっぱり 13階のメンバはいいよ。
小粒だけど味のある、三編(「僕と綾さんの素敵な思い出」は前後編だったから四編?)からなる短編集。
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ROOM NO.1301 #6 お姉さまはストイック!
その夜、シーナは酔っていた。家に帰さないとまずいと思った健一は、歩けないシーナを背負い、夜道を歩く。「バレバレでした?」道ならぬ恋に悩むシーナ、いや日菜。
「でも好きなんです。特別なんです」
その想いははたして届くのだろうか。そんな状況を佳菜に見つかってしまった健一は……。
今回はいつもと違い、そういったシーンは無し。
純粋な恋するものたちの悩み事。
千夜子とのシーンがわりと多かったのは個人的に良かった。
それにしてもいったい佳菜は何をしたいのか。
わからなくはないけれども、いまいちわかりにくい。
シーナとの突然の別れも気になるところだけど、これは後々語られることかな。
そして届けられた荷物。
健一の不安が少しずつ明確になり、更なる新たな展開と不安を呼び寄せるその荷物は、
今後においてどういう働きをもつのか。興味津々。
入り乱れた人間関係から恋を愛を探し出す物語のシリーズ第 6 巻。
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ROOM No.1301 #7 シーナはサーカスティック?
姉の蛍に呼び出されて向かった先はホテル。嬉しさが先立ったが、姉の様子がいつもと違った。
「結婚することにした」
その言葉を聴いたとき、自分の感情が驚くほど沸騰していることに気づいた。だが、自分たちは結婚することはできない。そして母もまたふたりのせいで……、故に恵一は反対することができなかった。
そして蛍はただひとつの願いを口にした……。
いきなりきたか、このパターン!
ただ、そう喜んでもいられないのは、ホタルの決意のせいでしょう。珍しく落ち込む健一が見れる。
千夜子だけではなく多くの女性に囲まれる健一だけど、羨ましさよりも哀れみというか切ない感情
が先立つ。
それでも冴子や千夜子とのやり取りで、救われているはずだと思いたい。
出だしこそそんな感じであるものの、今回は日奈/シーナと佳奈の関係がメイン。
そんなふたりの関係は、冷静に考えて見るまでもなく冴子の指摘どおり、不自然極まりない。
それでも楽しいときが少しでも続くのであれば、それは悪いことじゃないと思う。
悲しみは先に延ばしてもいい。
本編を読んだあとに、もう一度プロローグを読み返すとちょっと違った印象を受けますね。
ところで普段の日奈ってあんなにポンポンと卑猥な言葉を発してたっけ?
ちなみに本作で千夜子が可愛く思えたセリフ。
「……そんなことされたら死にます」
あー、もう!
もう一回言ってやれ!
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ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・つー
もうね。表紙をめくったときからやばいと思ったんですよ。
※他人に見られないように注意しましょう
そんな予感どおりの四編からなる短編集。
「そのいち 僕と綾さんと雪辱の痴漢プレイ」
カラーイラスト一枚目と題名そのままのお話です。
これを人助けといっていいのだろうか。本人がいいといったらいいのか?
間違いなく四編の中で一番エロエロ。
「そのに 僕と綾さんと身代わりの暗闇プレイ」
三ヶ月で三百回って……
触れ合っているから情が移るというのはわかるけど、千夜子がかわいそうな気が。
そういう意識があったせいか、微妙に楽しめなかった。
といいつつ、最後の挿絵がかわいすぎてどうしようかと。
「そのさん 私と佳奈ちゃんと豪華なお風呂」
日奈視点による女の子同士でプールと温泉が混ざったようなリゾートへ行くというお話。
水着着用とはいえ、恋する相手が目の前で……という妄想に浸る日奈の変態さが素敵。
ある意味平和な物語(ROOM NO.1031にしては)。
「そのよん 僕と冴子ちゃんと趣味のお仕事」
冴子のバイト先である喫茶店の店長、小西早苗視点による物語。
意外なところで意外な繋がりが判明する。これはひょっとして本編の伏線も兼ねているのかしら。
一番好みの雰囲気でした。
個人的には千夜子の出番が少なかったのでちょっと物足りない気がしましたが、それは本編を待つということで。
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ROOM No.1301 #8 妹さんはオプティミスティック!
佳奈と付き合い始めたと言って浮かれるシーナだが、周りはそれなりに見ているようだ。冴子の様子がいつもと違うことに気づいていたのだから。
「あれは、恋だな」
きっとバイト先に相手がいるに違いないと言って、シーナは冴子のバイト先を突き止めるために後をつけ始め、健一はそれを阻止しようと追いかけたが……
シーナ&バケッツの活動を通じて、自分を見つめなおす健一といったところかな。いつもと雰囲気がちょっと違いますね。珍しく肌を合わせることが無いので、そっち方面を期待していると拍子抜けするかもしれない。いえ、僕のことじゃないですよ。
シーナがちょっと暴走気味でしたが、いつまで続くかわからないという不安と、騙しているという罪悪感の裏返しでもあるんだろうなあ。
そんなシーナが気づいたように、どこか閉鎖的だった冴子が少し変わってきた感じがします。そんなに登場しているわけじゃないんだけど、さりげない会話とか雰囲気が違うかなと。人とのつながりがいい方面にでているんだろうなあ。
シーナが想像していたみたいに、鏡の前で、こうかな、それともこうかな、ってやってる冴子を目撃したら可愛すぎてやられますね、間違いなく。
登場人物それぞれがちょっとずつ変わってきてるのが感じられる本作でしたが、一番印象的だったのが健一でした。無気力だった健一が、少しずつではあるけれど、変わってきたことを実感させられるラストのライブといったら!
少しずつ高まる気持ちに、こちらの胸まで熱くなり、がむしゃらな行動へと走った健一の心情を想像したら、思わず涙腺が緩みましたよ。圧巻でした。
ここまで力を出して、ここまでの決意をしたのに、少し未来のことが語られるプロローグでは、まるで別な話になってるんですよね。こんなに気持ちが通じ合ったのに、このあと何があったんだろう。
すごい気になります。
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ROOM No.1301 しょーとすとーりーず・すりー
彼氏を作るための一番の近道。それは合コンだと鍵原は言う。とはいえ、いきなり合コンをするのは、さすがに不安があるらしく、リハーサルとして、各自それほど女に飢えてない男を連れてきて、合コンっぽいものをしようと計画しているらしい。それで、鍵原は俺を連れて行くことにしたらしい。リハーサルだというのに、気合の入った格好で……
という「俺と鍵原とお試しの合コンプレイ」を含む四篇からなる短編集です。
いろんな人の視点で語られるお話ですが、初っ端は、鈴璃の視点からの「私と綾さんと不埒な男」。ひょんなことから知り合った綾さんという女性から聞いた、嫌らしい男についての話にプリプリ起こっていたら、刻也が現れて……というお話。
鈴璃の好きな人=綾がむっつりだと思っている人という構図がたまらなく面白い。二人とも同じ人について話をしているのに、こうも印象が変わるものなんですね。話を聞いた刻也は、複雑な心境だろうなあ。まさか自分ですとは言えないだろうし。
とはいえ、好きな人が元気になれたのだったら、道化になっても幸せでしょうね。話の終わりがすごく印象に残ってます。素敵でした。
「俺と鍵原とお試しの合コンプレイ」は上に書いたあらすじどおりで、まあ、合コン話の鍵原の思考回路はちょっとアレですけど、パンツ見せようとする姿勢に惚れました。っていうか、鍵原は健一が気になるのかしら。普段は千夜子が意識にあるから、ブレーキが利くのかもしれないけれど、お酒を飲んだら、思わず本音が出ちゃうのかなと思ったり。
まあ、僕としては、鍵原とのやり取りよりも、ほんの数ページしかない千夜子ちゃんとのやり取りのほうが印象に残りましたが。微笑ましいやり取りなんだけど、だからこそ健一が手を出せないってのは、皮肉ですね。何とも切ないです。
っていうか、今回イラストがなかなかにエチーです。表紙からして、見えてますが、この話でも見えてますし、次の「私と皆と一人の夜」では、履いてないどころか、着てないですから大変(でもニーソあり)。
未来が決まってしまってるため、どうにもやる気が出てこないという狭霧のお話ですが、目標となるものが見当たらないというのは、辛いですよね。ひとりで慰めてしまう気持ちになるのはわかりますが、それを周囲の人に聞くのはやめてあげてください。千夜子ちゃんが大変じゃないですか。
それはともかくとして、今まで考えすぎていたことを、流輝とのやり取りを通じて吹っ切っていくところは良かったですね。あの意地悪な勝負を考え付くところが素敵でした。ちょっとは明るくなってくれるかなと思える終わり方にが良かったです。
小説家である今西先生の担当として、薫沢歌織が仕事の依頼をしにいくという「私と今西先生の本気のお仕事」は、何か妙にリアルな話ですね。実際に小説家と担当の人ってこういうやり取りをしているのかなと想像してしまいますね。
担当の薫沢の言い分はわかりますが、それをひとつひとつつぶして行く今西は容赦ないですね。ただ、どこかからかう雰囲気があって、あまり悪い気分にさせられないところがうまいです。思わずニヤリとしてしまうところもありました。
頼りにならないようで、でも作家のことを一番に考えているという編集者と、実は頼りにしてるんだよという作家の繋がりの深さがわかるようなラストは、ちょっとジーンときてしまいました。いやあ、やってくれますね。
っていうか、刻也くんは BL な人からみるとそんな素敵だったとは思わなかったのは内緒。
というわけで、いろいろな人の視点から描かれた短編集でした。
そうそう。あとがきによると、ROOM NO.1301 ドラマCD「おとなりさんはドラマティック?」が出るらしいです。声優さんってあまり知らないんですけど、千夜子ちゃんがどんな感じになるのか聞いてみたいかも。
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ROOM No.1301 #9 シーナはヒロイック!
ライブの疲れが残りながらも冴子と寝たのは、ひょっとしたら興奮が冷めることを恐れた自分のわがままだったのだろうか。冴子との会話から、再び恋愛について考え始めた健一は、綾とのやり取りを経て、ひとまず落ち着きを取り戻した。今、できないからといって焦る必要はないのだ。
お礼というわけではないけれど、ちょうどいいきっかけだったので、健一は綾と先日約束した中華街へ行く事にしたが……。
マンションに存在しないはずの13階に足を踏み入れることができた人たちの恋愛物語。
今までは恋愛について考えながらも、周囲の状況に流されたままでしたが、今回はちょっとだけ変わったかな。一歩踏み込むというか、広がったというか、そういう考え方をするようになってきたような気がします。やっぱりライブで気力を使い果たしたという影響は、大きいものがあったんだろうなあ。
ただまあ、考え方がチラッと変わったところで、流されるところは流されるわけですが。
綾さんとの話は、ちょっと以外でしたが、彼女の不安と勇気を分かってしまったら、振り払う事なんてできませんよね。個人的には、綾さんに良かったねと言いたくなります。ただ、千夜子ちゃんがいるから素直に喜べない……うーん。
その千夜子ちゃんは、とても素敵だったなあ。何を本当に望んでいたのかを思いださせる千夜子の言葉は、健一を見ていた人だからこその思いが伝わってきました。千夜子ちゃんが側にいてくれるからこそ、健一はこちら側にいられるんじゃないかと、蛍を思い出して危うい揺れ方をする健一を見て思いました。
いろいろ不安を思わせる描写がありますが、頼むから彼女の手は離さないで……と願いたくなります。
前作ではライブシーンで涙させられたんですが、ライブのTV放送が流れた今作でも、同じように泣かされました。シーナの歌もさることながら、バケッツとしての演奏を客観的に聞いた健一の心境にやられました。未体験ゾーンだから理解できるとは言えないけれど、感動が伝わってくる演奏に痺れます。鍵原の真面目な応援にも不意をつかれてグッとさせられたり。
ここでの盛り上がりがあったから、日奈の決意には、ひょっとしてと期待させられるものがありましたね。いや、プロローグで既に結果を知っているんですが、それでも、いい意味というか、しかたないかと思えるような方向にいくのかと思っていたんですが、まさか思いを届けることすらできないとは……。ない思いを重ねてきただけに、この結末には苦しくなるばかり。
絶望に浸る日奈の手を取ってくれる人がいたことは良かったと思うんですが、よりによって相手が……。こうなると、次はシーナではなく、日奈を相手としての話になるんでしょうか。どうなるかまるでわからないだけに、気になるばかりですね。続きが待ち遠しいです。
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ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・ふぉー
催眠術のテレビを見て、おおーって思った綾さんが、本を買ってきた。本を読んだぐらいじゃ……と思いながら、綾に頼まれて、練習台となった健一だが、なんと驚いたことに、あっさりと掛かってしまった。しかも寝ている間に、綾さんが掛けた暗示とは、周囲の人が好きな人に見えるようになるといったもので……
- 催眠術によって、会う人会う人が千夜子ちゃんに見えてしまうという「僕と綾さんと千人の千夜子ちゃん」
- 考えなしの発言で人を怒らせてしまう咲良が、八雲狭霧と仲良くなる「私とお嬢様とメガネなお仕事」
- 蛍が夫となる圭一郎と遊園地にいく「私と圭一郎と恐怖の館」
- 友人たちとプールにいった鈴璃が、エリと出会った「私とエリさんと嫌でも目立つ自分」
- 刻也が入院した母親のお見舞いに行く「私と有馬君と病院での出会い」
という五編からなる短編集です。
ああ、いいなあ。どの話も、淡々と会話をしているだけなのに、とても惹かれるんですよね。のほほんとした空気に浸っているとき、ふいに見せられる心情の変化が、ハッとするほど印象に残ります。この妙が魅力のひとつなんだろうなあ。
一編目の「僕と綾さんと千人の千夜子ちゃん」はいいなあ。周囲の人が全員自分の好きな人に見えるという暗示をかけられたとき、それが千夜子ちゃんだったことに嬉しくなりました。っていうか、本人の自信のなさには、どうかと思ったけど、繋がれた手の温かさが伝わってくるような千夜子ちゃんとのやり取りが良かったです。
面白かったのは「私と圭一郎と恐怖の館」でしょうか。実は怖がりだった蛍が、そのことを言えずにお化け屋敷に入って、というところに、蛍の意外な姿を見た気がして、ニヤニヤ。でもこの強気っぷりがいいですね。
夫となる圭一郎は、なんともつかみ所のない人だなあ。あらゆることをソツなくこなす余裕っぷりが、いっそ気持ちいいぐらいですが、なんとなくこの人の雰囲気は健一に似てる気がする。素敵なカップルになりそうな予感を思わせるラストが素敵でした。
一番好きなお話は「私と有馬君と病院での出会い」かな。お見舞いにいった先でのやり取りに、息子を思う母親の気持ちが伝わってきて……。リンゴひとつで、こんなに感情を揺さぶられるとは思わなかった。でも、それに気づかないから、刻也は刻也なんですよね。昔に比べれば、良くなってると思うし、友人話を聞いたお母さんもそのことはわかってるでしょうから、これからもきっと、温かくみ守ってくれるんだろうなあ。
刻也と冴子の過去のお話にも、ちょっと触れられてましたね。いろいろと重そうなものを感じさせてくれますが、このあたりは、いずれ語られるのかしら。
ただ、一編目をのぞくと、ほとんど同じテンポなので、さすがにちょっと物足りなくはあったかな。一日一編ずつ読めばよかったかもしれない。とはいえ、普段は見えない脇役たちの複雑な内面が見えるお話は、とても興味深かったので、このあたりが本編にどう繋がってくるのか、気になるところです。
それにしても、あとがきの面白さは異常。
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ROOM NO.1301 #10 管理人はシステマティック?
「日奈はいつか、昨日のこと、ちゃんと受け止められるようになるんでしょうか?」
どんなに悲しいことであっても、時間がそれを解決してくれるかもしれない。健一は今回ばかりはそれを信じたいと思う。
「わたしは窪塚さんじゃないから、わからないけれど……」
冴子はその質問に悲しい顔をしてから、口を開いた。
「そうであって欲しいと思ってる」
マンションに存在しないはずの13階に足を踏み入れることができた人たちの恋愛物語。今回は、佳奈へ思いを告げた日奈が、新たな道を歩む決意をするお話です。
ああ、終わりが近づいてるんだなあ。読んでるときから何となくそんな印象がありましたが、13階から立ち去る人の姿を見ると、一抹の寂しさを覚えます。居心地のいい雰囲気だから、それが崩れてしまうのは……ね。
でも、日奈について言えば、逃げではなく、前に進むための決意だったから、良かったと思いました。
それにしても健一の変化には驚いたなあ。日奈の気持ちを思って、こんなにも感情をあらわにするとは思わなかった。シーナとのコンビを組んでいたからこそなのかもしれないけれど、友のために怒れる姿が、素直に胸に響きました。
久しぶりに登場した父親との話は、意外なんてもんじゃないものがありましたけど……、個人的には今さらなものを感じたりする。でも、落ち着いて話ができるほど、心の整理ができた今だからこそってことでもあるのかな。このあたりは、ちょっともやもやしましたが、ひとつ決着がついた感じで良かった。
寂しさを覚えた健一が、他の人も13階から出て行ってしまうのではないかと不安に思う中、ちょっとした騒動を起こしてくれたのは、ようやく主人公と遭遇することができた刻也くんの彼女・鈴璃さん。健一との初コンタクトで、ああまで派手なことをしてくれるとは……なんか可哀想になってきた。あのあと、刻也くんと鈴璃さんがどういう会話をしたのかとても気になります。
さて、次で最終巻とのことですが、すんごい引きで終わってますね。いったいどうなってしまうんだろう。っていうか、今回、彼女である千夜子ちゃんがほとんど出てませんでしたが、何となく健一の心が、冴子に寄ってる気がして不安でなりません。がんばれ、千夜子ちゃん……
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ROOM NO.1301#11 彼女はファンタスティック!
「私のこと、今でも好きですか?」
マンションに存在しないはずの13階に足を踏み入れることができた人たちの恋愛物語の最終巻です。
冴子の出来事がこんなにも健一の心を動かすとは思わなかったなあ。違和感というと語弊があるけれど、健一について大きく印象が変わった出来事でした。それだけ13階での生活に依存していたということなんでしょうね。
今までの生活を失っていくことに対して、健一が揺れ動く姿はとても痛々しくて、綾や刻也との間にさえも溝を生み出していくところには見ていられないものがありました。
あのときの彼は間違いなく自暴自棄だったと思います。それでも、立ち直ることができたのは、千夜子ちゃんのおかげですよね。彼女の強さは、支えるための強さで、ほんと素敵でした。
ああ、やっぱりヒロインは千夜子ちゃんだったんだなあ。それだけで満足です。
またエピローグが素敵なんだ。あれから少し時が経ち……集まったみんなが、健一に声をかけていく。ただそれだけなのに、温かさを感じてしまいました。心憎い演出をありがとうと千夜子ちゃんに言いたいです。
最後はちょっと蛇足な感じがしないでもないけど、ま、これもROOM NO.1301っぽいかな。
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