モノケロスの魔杖は穿つ / 伊都工平
モノケロスの魔杖は穿つ
襲われていた麻奈を助けようとしたが、倒したのは彼女が使った魔法だった。魔法なんてと思ったけれど、目の前で使われては、さすがにヒロも信じるしかない。いったい彼女は何者なんだろう。
口止めをされたものの気になったヒロは、彼女の所属する部に入部した。
だが、すでに歯車は動き始めていたのだ。ヒロがあの少女と出会ったときから……
「国」や「魔法」などの概念がなかなかつかめなかったので、はじめはなかなかノレませんでした。ときおり展開や会話がブツ切りされてたのもあって、ちょっと読み辛かったですね。
ただ、各々が役割を持っていることに気づき始める中盤以降は面白くなってくるので、もう少し、ゆっくりと話が進んでくれれば良かったのかも。
誰を信じていいのかという謎めいた展開もいいですが、日常的な描写がとてもいいです。学園もの的な要素と、どこかズレている会話がたまらなく魅力的。
女性陣もなかなか魅力的な人たちが勢ぞろい。
強力なデコビンを放つ姉さんや活発な女の子の律もいいですが、やはりお気に入りは麻奈ですね。どこか気だるさを感じさせつつ、何かと世話を焼く姿が素敵。会議の「合一」の話はもうひとつ説得力が足りない気がしたけど、何かと理詰めで説得する姿は面白いと思いました。
今回は設定を網羅して終わってしまった感があるので、本格的に面白くなるのは次の巻からかなと思います。国の話もさることながら、恋愛要素もあるので、いろいろなことが起こりそう。
続きが楽しみです。
モノケロスの魔杖は穿つ 2
麻奈の買い物に立木ヒロが付き合っていたら、いつの間にか見たこともない町に入り込んでしまった。魔術師の麻奈すら存在を知らない町の広場には、巨大な大剣が地面につき刺さっており、抜こうとしても抜くことができない。
そこへ現れたのは、ヒロの国の民である律だった。どうやら、この町はその剣を抜くために鍛錬を続ける者たちが集う道場街だという。ためしにと一日体験していたヒロたちだが、その場へ天球儀会からの使者が訪れてきて……
引き抜けたものは勇者の称号と鎧が与えられるという、地面に突き刺さった神剣アレイオンを巡るお話ですが、いやあ、面白いじゃないですか。相変わらず設定とかいろいろあるんだけど、細々したものを吹き飛ばすようなスケールの大きさに魅了されました。
神器を保有していることで、一躍脚光を浴びることになったヒロたちだけに、いろいろなところから目をつけられてるんですが、妙に緊張感を感じない日常が楽しいですね。微妙にズレる会話の妙ってのは、クセになりそう。
変な人だった麻奈がわりと普通に見えるのは、こっち側の話だからかな。
逆に、まともだと思っていた律が、あれほどのものを内面に抱えていたとは思いませんでした。怒りに我を忘れるところは、狂気を思わせるところがありましたが、それ自体が心の闇なんですね。
何が正義で何が悪かということについて、己の葛藤に振り回されながらも、剣を手にして戦う律が良かったです。
それにしても、戦闘シーンのスピード感や、巨人たちの舞をも思わせるような戦いはすごかったですね。読んでいて爽快なものがありました。ものすごく引き込まれます。それだけに最後の美しき崩壊には、何とも言えない切ないものがありました。これを演出したヒロがすごいと思いましたよ。強引にも思えますが、ヒロの発想は何とも魅力的でした。いつの間に、こんなに懐が大きくなったんだろう。
国作りとは、ただ人を集めるのではなく、他の国との交渉も重要だなと思わせる最後のやり取りが、ちょっと微笑ましかったりします。
今回は律の話が中心だっただけに、麻奈やセシリアの活躍があまり見られなかったのが残念ですが、このあたりは今後いろいろ見せてほしいですね。次は学校が舞台だということなので、とても楽しみです。
モノケロスの魔杖は穿つ 3
高校入学して一ヶ月。早くもクラス替えが行われる事になったが、よりによって、各地から集まった異能転校生達が、ヒロや麻奈たちと同じクラスへとまとめられてしまうことに。いったい何が起こるやらとのん気に構えていたヒロは、いつの間にか実力重視の「委員長決定戦」に巻き込まれて……
ヒロを意識し始める律やら、復活した霜夜がいろいろヒロにまとわりついて、麻奈が間に入れず、でもヒロも麻奈を意識するようになってちょっとした嫉妬とか見せて、……なんて具合に、それぞれの関係に変化が見えて、これは面白くなりそうだと思える序盤ににんまり。カゲキな愛情を示す霜夜と、彼女と同化したセシリアの動揺が個人的ヒットだったりする。出番あんまなかったけど。
学級委員長を選ぶという勢力争いになっていくところは、他の国の人たちのやる気と、ヒロたち(というより麻奈)のやる気の温度差を感じましたが、どう考えても律が一番だろと思ったら、どうしてどうして、強いものが勝つとは限らない意外な展開に、引き込まれましたね。カドゥケスがそういうものだとは思わなかった。喜連川かっけー。
という感じで、普通に面白いなと思っていたんですが……なんですか、後半の怒涛の展開は!
麻奈の思い人の「彼」、ヒロにかけられていた幻術、霜夜の行動などなど、どことなくギクシャクしていたお話が、たったひとつのピースを与えられただけで、繋がってくるとは思いませんでした。言われてみればと思い当たるところに、すごいと興奮せずにいられません。中盤までと後半はまるで別の顔ですね。油断してるとやられる怒涛の展開には、文句なしで引き込まれました。ああ、素晴らしい面白さ。読んでて良かったとツクヅク思う。
これだけでも凄かったのに、さらに最後の強烈な引きといったら!あの状態では、トリンキュローの勝算が見当たらないんですが、いったいどうするんだろう。彼はどうなるんだろう。まるで先が読めない展開なだけに、気になるなんてもんじゃないです。あー、もう!早いところ続きが読みたくてしかたないですね。
大絶賛オススメ。
モノケロスの魔杖は穿つ 4
空中要塞都市を襲っていた竜たちが、「最も古き竜」の罠に捕らわれていたころ、水星はヒロを刺した玲子に手を貸し、ヒロだった全てのものを消滅させた。
「立木ヒロは失敗した。その現実に合わせて、私も動こうというだけのことだ」
滅びへと向かう王国を前に、麻奈とセシリアがやつれていく中、竜の開放を目的とした作戦「アイスアウト」が動き始めて……
うーん、つまらないわけじゃないけれど、前作のあの強烈な引きから期待したほどではなかったなあ。何が起きているのか理解できないまま衝動的に動くところや、喪失感に駆られる女性陣の描写が切ないだけに、復活のところで、もうちょっと盛り上がってくれるかと思っただけに、拍子抜けするものがある。
それでも、ヒロと麻奈の関係は良かったですね。いろいろ匂わせながらも、最後まではっきりしたものは見せませんでしたが、距離感は好ましいものでした。セシリアのいう「家族」な雰囲気も温かかったです。律がもうちょっとなあ……とか言い出すと、際限ないんで止めとく。
そんな具合に、キャラクタはとても魅力的だったんですが、早すぎる展開には、ちょっとなあ。「ラタトスク」を手にしたヒロが戻ってきてからは、情報量が多い上に、どんどん話が進んでいくので、なぞって行くのがやっとでした。 前作までは魅力的だった細かな設定が、逆に足を引っ張った感じがする。って、単に僕がついていけてないだけかもしれないけど。
スケールがどんどん広がっていき、まさかのラスボスに対しては、どう足掻いても勝てこないだろうと思ったら、やってくれるぜ、麻奈さん。やっぱりあなたは最高だ。
一周して終わるようなラストはとてもきれいでしたが、その後の彼らの姿も見たかったという気持ちもありました。いろいろ詰め込んだおかげで、このあたりが物足りなくもありましたが、シリーズをとおしてみたら、面白かったですね。
次にどんなシリーズで物語を展開してくれるのか、楽しみで仕方ない。
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