身代わり伯爵 / 清家未森
身代わり伯爵の冒険
パン屋の看板娘であるミレーユが、ある日、見惚れてしまうようなリヒャルトと名乗る男の人(父の部下)に拉致されてしまった!何でも他家へ養子にいったミレーユの双子の兄ベルンハルト伯爵に、ちょっとした疑いがかけられているので、その疑いを晴らすために、ミレーユに変装して宮廷に姿を見せにいってほしいとのこと。いくら顔が似ているからって、庶民が陛下の前にいけるわけが……
うら若き少女が、兄の身代わり宮廷に行ったら、あんなことやこんなことに遭遇して、というお話です。いきなり明かされる生い立ちからして、ありえなーいと言いたくなるんですが、やることの困難さがわかっていても、一度引き受けたら、どんな状況に陥ろうと、何とかしようと頑張るミレーユの元気のよさがとてもいいです。やっぱり女の子が、元気に動き回る話って、読んでて楽しいですね。
初めて王様に会うときの緊張っぷりや、男同士の熱い(汗臭い)お話に逃げたくなるところや、猥談に顔を赤くしたりする様子を見ていると、僕までからかいたくなります。ああ、かわいい。
男臭い連中に囲まれるミレーユが哀れでなりませんが、同時ににやにや笑いが止まらないです。
笑えるといえば、王女さまのセシリアもいい味出してるなあ。高飛車でプライド高いのに、実は照れ屋さんで、ちょっと図星くらうと、手当たり次第にモノを投げつけてくるさまは、良いツンデレ……と反応しちゃう自分が悲しいけれど、長椅子やらテーブルやらまで、手に取る姿には、思わずビビリまくり。あのイラストがすごい映えてて笑えます。ああ、このシーンだけなんてもったいない。もっとセシリアには出てほしかった。
貴族らしい足の引っ張り合いやら何やらに、嫌気が差しつつも、宮廷にいられたのは、リヒャルトにが護衛として側にいたからでしょうけれど、それ故に彼の心が読めなくなると、不安になるところが、何とも乙女でいいですね。16年間モテたことなしという経験のなさと、一度思いつめたら突っ走ってしまうところで、すれ違いが生まれるところは、ベタベタですがそれがいい。
途中で事件の片鱗が見えてきて、怪しい怪しいと思っていたけれど、まさかそこまでの人が関わっていたとは思いませんでした。自分がミレーユの立場だったら、何も言わずに兄へ殴りかかりそうな気がするんですけど、そこはさすが家族だなあ。操縦の仕方がうまい。
ミレーユの恋心に気づき、友人の恋心に気づき、さりげない演出をする辺り、軽薄だけど、人気が出るのはわかる気がしますね。最後はお約束ってことで。
ああ、楽しかった。
ビーンズ小説大賞なんてチェックしてなかったけど、月季さんの「ラブコメと変人好きな人にはおススメ」と t-snowさんの「ベ タ で 何 が 悪 い !」という力強い言葉に惹かれて、大正解でした。お二方に感謝感謝です。
これはもう続くしかないよね。っていうか、続けてほしいです。ベタでも楽しいお話をお待ちしております。
第4回ビーンズ小説大賞読者賞受賞作。
身代わり伯爵の結婚
双子の兄の身代わりとして、王宮へあがった騒動も一先ず決着がつき、さあ、パン職人の道へ進むぞとミレーユが決意した矢先に、再び兄から手紙が舞い込んできた。傷心旅行に出るので、身代わりよろしく、と。
問答無用でお迎えがきて、またもや兄の身代わりとして伯爵をやることになったが、今度はなんと、隣国の女伯爵シルフレイヤとの結婚話が持ち上がっていて……
貧乏パン屋の娘ミレーユが、伯爵家の養子にいった双子の兄フレッドの身代わりとなって、王宮へ行くお話ですが、今回は隣国の女公爵シルフレイアとの結婚話が持ち上がって、というお話ですが、いやあ、楽しい楽しい。
怪談大好きで、特技は呪詛返しな女の子のシルフレイアのおかげで、肝試しやらなにやらをやらされて、ビクビク怖がりながら、でも他人の目があるところでは、平気だもんねと強がる姿が面白いったらないです。結局リヒャルトにはバレてしまうんですが、暗闇でのお約束なシーンの連発にニヤニヤ。
はじめから最後まで、恋を恋と気づかない二人のやり取りには、クーとさせられるんですが、個人的にヒットしたシーンは、女嫌いなんじゃないかという噂を聞き及んだミレーユが、リヒャルトに対して練習台になってあげるというところですね。善意から来てる言葉であることに間違いはないですが、真っ直ぐな視線からそんな言葉を告げられたら、もう……!!必死に抑えながら、彼女を諭すリヒャルトの心が窺えます。
まあ、リヒャルトはリヒャルトで、さりげなくミレーユがのぼせる様なこと言ってるんですけどね。どっちもどっちな天然対決に、頬の緩みが止まらない。
そんな二人の関係は満足でしたが、ストーリィ展開はちょっと物足りなかったかな。シルフレイアの別の目的については、まあいいとして、彼女と例の人の恋物語は、もっと、こう、盛り上げてくれたら、と思わずにいられない。二人ともいいキャラなだけに、もったいない。ほんと、もったいない。
個人的にうれしかったのは、前回同様、セシリアが出てきたことですね。この激しいツンデレは可愛いったらないですよ。自分で怪我させた相手に薬を渡しながら、怒鳴り散らす姿は絶品でした。このワンシーンだけでも、ツンデレスキーなら見る価値はある。超お気に入りキャラです。感情が爆発すると迷惑この上ないですが、たぶん、お付の人たちは、彼女の優しい面も知ってるだろうから、苦笑しつつも、側にいたがるんじゃないかなとか勝手に妄想中。
ともあれ、事件もひと段落着いたけど、むしろ、ミレーユからしたら、ここからが一番きつかったろうなあ。自分が取った行動から、リヒャルトとの間に溝ができてしまったことを悔やむ姿は、わかるだけに可哀想になりましたね。ただ、そんなときでも、相手の心に言葉を届けるところは、さすがです、ミレーユ。彼女の素直さや真っ直ぐさは、リヒャルトにとって自分を正す指針にもなってるでしょうね。
二人をめぐって、王子たちや白百合騎士団の面子が賭けをしていましたが、どんな結果が待ち受けていたかは、読んでからのお楽しみってことで。
いやあ、楽しかった。本物の「伯爵」よりも、偽者の「伯爵」であるミレーユの人気が上昇してる気がしますが、だんだんと正体を知る人が増えてきちゃってますね。シルフレイアぐらいだったらまだしも、彼が疑問を持ち始めたのは、今後まずいような気がするんだけどなあ。
王子とフレッドの狙いが狙いだけに、今後も身代わりとして「伯爵」せざるをえないと思いますが、リヒャルト以外の男が横槍指してこないか、心配ですね。ニヤニヤ。
身代わり伯爵の冒険
老舗パン屋「オールセン」で行われた後継者争いの勝負に、ミレーユは負けた。失意でうちひしがれていたが、考えてみたら、今までまずいパンをみんなに食べさせてしまっていたのだ。お詫びをせねばとお城へと向かったら、王太子の婚約者の話し相手にさせられ、ようやく抜け出したら、今度はセシリア王女に捕まってしまった。しかも、ひょんなことから彼女の日記を見てしまったが故に、王女の宮へ拉致されて……
貧乏パン屋の娘ミレーユと、伯爵家の養子にいった双子の兄フレッドの親友である騎士リヒャルトの恋愛未満の恋物語。今回は、兄の身代わりとなって王宮へ登城する役目が終わったと思ったら、激しくツンデレな王女様のポエットな日記を見てしまったが故に、王女の監視下に置かれてしまって……というお話。
バラだの妖精だの、まるで童話のような日記の断片を読んだときには、思わず吹き出してしまいました。あー、楽しい。また、そういうのを見つけちゃうミレーユの運のなさが、可哀想で笑えます。「……見たわね……?」という絶対零度なセシリア王女の言葉と、その後の急展開に、ニヤニヤニヤしまくり。おかげで、外で読むのが大変でした。
ミレーユとリヒャルトの仲がどうなっていくのか、興味津々だったんですが、肝心のミレーユが自分の気持ちに気づいてないので、進みそうで進まないじれったさがたまりません。婿を採るかもと言ったミレーユに、全力で反応するほど、心を見せてるリヒャルトの姿をみて、にんまりしてましたが、それすら気づかれないところには、哀れさを覚えるものもあります。笑っちゃうけど。
とまあ、このふたりは、ずっといちゃいちゃしてるからいいとして、今回一番目立ったのは、なんと言ってもセシリアですよね。激しいツンばかり見せていましたが、王道たる「べ、別に」というやりとりを連発してくれたり、時に素直に心情を見せてくれるところは、なんと可愛いことか。
怒ってばかりいる印象が強かったけど、照れていてもなお、周囲のものへの気配りを感じられるところには、なるほど、侍女たちが親愛を見せるわけだと思いましたね。
ふざけているようにみえるけれど、実はまじめに彼女のことを考えているフレッドの姿がよかったです。
それにしても、もうひとりの王女が現れてというところで、王宮の陰謀が見え隠れしてたわけですが、まさかこちら側でも、隠されていたことがあったとは思ってもいませんでした。妹についても、そうきたかと、ちょっと切ないものがありましたが、聖誕祭でのまじないで、ミレーユが相手のことを思って願った言葉が、温かさを持って心にとどまってくれました。うん、やっぱり、彼女は素敵だなあ。
義賊の動きや更なる陰謀が気になりますが、今後も楽しく吹き飛ばして欲しいですね。
あー、楽しかった。
身代わり伯爵の決闘
「フレッドの身代わりとして活躍されているそうですわね。素敵だわ。でもそれって、周りに知られたらとってもまずいことなのではないかしら。秘密をばらされたくなければ、もちろん王宮まで案内してくださるわよね?嫌だとおっしゃるなら、ボコボコにしてさしあげますわよ?」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第四弾。
今回は、ミレーユの存在を知られてはならないと言われたグレンデル伯爵の、よりによってその娘であるシャルロットに、身代わりの件を知られてしまい、笑顔で脅迫されながら、彼女のお手伝いをさせられるお話です。
超楽しかった!
なんせ、またまたすごい人が出てきてくれましたからね。可愛らしい笑顔を振りまきながら、ヤキを入れるだのボコるだの過激な発言が飛び出たかと思いきや、手にしてるぬいぐるみに鉄拳をぶち込むんだから驚き。しかも、そんな姿を他の人には見せないんだから、いやはやミレーユも大変だ。
おかげで、シャルロット、リディエンヌが立ち上げる乙女のための劇団に、座長として参加させられちゃうわけですが、ここでのやり取りが、すっごい面白い。
慣れない演技に戸惑うミレーユを、シャルロットがスパルタ教育していくところの雰囲気がいいなあ。恐る恐るシャルロットに接していたミレーユだけど、だんだんと彼女の心のうちが見えてきて、いつしか彼女の恋を応援しようと思える仲になるところが素敵です。
ミレーユが同年代の女の子たちと、いろいろやってるおかげで、やや放っておかれることになったリヒャルトは、ちょっとつまんなそうでしたけど、それでもミレーユとふたりっきりになると、天然なことしてくれて、クーとなります。ドキドキするミレーユが可愛いですが、ミレーユもミレーユで、無意識のうちにリヒャルトをドキドキさせてるから、にやりです。この二人は鈍いくせに、無意識にアピールしまくる似た者同士ですね。
それでも、まだミレーユは、自分の心の内に気づいてないから平気なんだろうけど、だいぶ自分の気持ちがはっきりして、しかも直前までいきながら何度もお預けさせられてるリヒャルトは大変だ。早く、ちゅっ、とやっちゃえばいいのに、とイライラしながらニヤニヤ。
で、劇。
まさか、脚本をあの人に頼むとは思わなかったけど、たしかにあれほど乙女心満載の日記を書いてる人ならできるかも、とは思いつくことではありますね。その彼女が書き上げた物語の素敵なこと。
いや、恋愛もので、主役を演じるのが、男装するミレーユといわれたら、そりゃ男をフレッドに、お相手に自分を投影するのは、わりと自然ですよね。脚本に、さりげなく自分の特徴を入れたり、思い出のシーンを付け加えたりするセシリアの乙女心に、きゅんきゅん。
誰が脚本を書いたのか知っていながら、さりげなくアプローチするフレッドも良かったです。
シャルロットの恋と、セシリアの恋と。どちらもうまくいきそうなだけに、とても良かったなあと思ったんですが、肝心のミレーユとリヒャルトの雲行きが怪しくなってきましたねぇ。いや、どちらもというか、リヒャルトはほぼ確定なんですけど、彼の素性がどうやら、想いを許さないみたい。うーん。
個人的には、ミレーユの言葉どおり、まず言ってみればいいのにと思わなくもないけど、最後の一歩が踏み出せないリヒャルトの気持ちに、はたしてミレーユは気づけるのか。裏でキナ臭い動きが感じられるだけに、気になるばかりです。
身代わり伯爵の脱走
「残念なお知らせだ、ミレーユ。きみの存在が内外に知られてしまった」
ジークはじっとミレーユを見つめて口を開いた。
「きみはこれから、ベルンハルト公爵令嬢としてシアラン大公に嫁いでもらう」
室内が静まり返る。
「それが嫌なら、私の後宮に入れ。今すぐにだ」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第五弾。今回は、ミレーユの存在が公になってしまい、ジークから「政略結婚をするか、それを断る理由として後宮に入るか」を迫られて、というお話。
つい先日のリヒャルトとのやり取りから、妄想が暴走してるミレーユの様子には、笑いが止まりませんでしたが、今回はちょっとシリアスな展開でしたね。他国が目をつけてきたことで、一躍ミレーユの存在が危うくなるところが、何ともやるせない。
守ろうとするものと、仕方ないと言い出すものといろいろでしたが、そんな連中がいつの間にか、雪合戦する展開にもって行くミレーユが好きです。シリアスなんだけど、この子が頑張ると、なんか笑えますよね。こういう人だから、みんなから好かれるんだろうなあ。
ジークが「後宮へ」なんて言いだした理由はすぐわかりますが、そこまで焚きつけても、リヒャルトが動かないのは、これからが辛いと自分で思ってるからなんでしょうね。強情な男だ。
後ろ盾になってくれると伸ばしてくれた手を断り、一人戦いに向かおうとするリヒャルトの覚悟には、愛しい人だからこそ、という思いが見えて、何とも切なくなってくる。
中でも一番キタのは、セシリアとのやり取りでした。あのツン度高いお嬢様が、あれほどまでに……。やさしい兄の視線を見せるリヒャルトが忘れられません。
いろいろ切なくやるせない展開ばかりでしたが、でもでも、あのミレーユが、ただおいていかれるわけがない!いまだ本格的に自覚することない思いだけど、その思いに突き動かされて、リヒャルトを追いかけようとする姿に、頑張れ!と応援したくなりました。
再会できたときの夜、リヒャルトの思いが温かくてたまりませんでした。
今回は完全に続きなので、まだまだ脱走劇は続きそうですね。っていうか、身代わりしてませんが、そのあたりは気にしないことにしておく。リヒャルトとの関係はいまだ進んでいませんが、このまま彼を見過ごすはずがないであろうミレーユが、どんな感じで殴りこみにいってくれるのか、とても楽しみです。
続編が出るという十月がとても待ち遠しい。
身代わり伯爵の潜入
彼はどうやら嫌われたいようだが、乙女がやられっぱなしで引き下がれるわけがないのだ。これはもう、復讐するしかない。
(誰が嫌いになんかなるかってのよ。あんなことしといて逃げられると思うんじゃないわよ。乙女の純潔を踏みにじったらどんな仕打ちを受けるのか、目にもの見せてくれるわ!)
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第六弾。今回は、ヒースの手から逃げ出したミレーユが、目を覚ました場所は、敵国の騎士団駐屯地で……というお話。
相変わらず素敵な思考回路してるなあ、ミレーユ。いくらリヒャルトのためだからって、男装して敵国の騎士団に潜入するか?しかもはじめは、何か情報を得られたら……と思っていたはずなのに、団員たちと衝突していくうちに、気づけば団の中で独特な位置を占めちゃうんですからすごいよ。
肝心の情報収集はうまくいかないのに、男装しているときほど男に好かれるミレーユの才能と、とある人の思惑のおかげで、みるみる地位を上げていく展開が楽しいったらない。
そんな奮闘をみせるミレーユとは別の意味で奮闘してるのが、お兄ちゃんのフレッド。ダークだ。こういう輩は怒らしちゃいかんとツクヅク思う。セシリアに向ける顔とはまるで違う陰鬱さにゾクゾク。と思いきや、女装していろいろ駆け巡るんだから、どこまで本気なんだかよくわからん。いや、お兄ちゃんとして頑張ってるんだと思おう。
ここまできたのにリヒャルトは、一歩下がろうとするんだから、まったくもって意気地のないやつです。ああいうことは、自棄になってやっちゃダメじゃん。あ、でもおかげで、猪突猛進な乙女心に火をつけることには成功しましたね。
っていうか、あれだけ直接的な言葉を投げかけられて、ドキドキしてたのに、その思いを恋と思わないミレーユは、どんな教育を受けてきたのか不思議に思います。お兄ちゃんがいろいろ邪魔したのかしら。
ともあれ、彼女が復讐を誓ったなら、きっと目にものをみせてくれるでしょう。ミレーユに振り回されれば、さすがのリヒャルトの目を覚ましてくれるかな。特に「一番大切な人」なら……、どういう展開で、ミレーユと対峙することになるのかわかりませんが、すっごい楽しみになってきました。甘い展開が待ち受けてくれると嬉しいなあ。
身代わり伯爵の求婚
「けど、あなたが苦しい目に遭ったり、悲しい思いをしたりするのはどうしても嫌なの」
もし自分がそうなったら、彼も同じ思いを抱いてくれるのだろうか。
「だから……あなたがどう思おうが、どこにだってついて行って、あなたに何かしようとするやつはあたしが全部ぶっ飛ばしてやりたいのよ!」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第七弾。今回は、リヒャルトの行動に動揺して機構を繰り返すミレーユが、団長に正体を疑われ始めて……というお話。
あー、もうニヤニヤが止まらん!
前作のラストで乙女心に衝撃を受けたミレーユが、いつになくハイテンションだったり、ぼんやりしたりする様子をみてると、頬がゆるんで仕方ないです。自分が恋してるってのが、どうにもわからないんだろうなあ。
そのせいで、団の人たちに、自分の素性を隠してることを忘れて、恋の悩みを持ちかけたりするから、正体をわかってる読者からすると笑い転げるしかありませんでした。ちょー頬がにやける!
密偵がいるかもしれないと怪しんでた団長たちからしたら、怪しいことこの上ないのに、こんな感情見せまくる人物が密偵なわけは……って感じで、どうにも手を出す気になれないってのがいいですね。もちろん、ミレーユのことを気に入ってるってこともあるんでしょうけど。
楽しくて楽しくてしょうがなかった。
自分の思いに振り回されてるミレーユの青春の疾走も楽しいけれど、お相手であるリヒャルトもやってくれました。これまで、彼女に辛い思いをさせるならいっそのこと、と距離を置いてたのに、あんな真っ直ぐな目で追いかけられて、さらには男だらけの騎士団に潜り込んだりされたら、目が離せるわけがないですよねー。リヒャルト、苦労してるね……。
でも、どうせ放っておけないならと、ふっきってからのリヒャルトの行動力は半端じゃありませんでした。今までとはひと味違う積極性に、ミレーユがたじたじになって、真っ赤になるシーンの連続に、読んでるこっちがゴロゴロしたくなりました。いいぞ、もっとやれ!
お互い好きな人のために一生懸命になる姿は、すごいよかったですね。甘いリヒャルトと、熱いミレーユに乾杯。
団長やらウォルター伯爵が動く中、身代わりになってるフレッドも暗躍してるみたいで、いったいどうなるかわからないけど、この二人がお互い向き合ったなら大丈夫だ……と思ってたら、ラストでやってくれました。うわー、どうなるんだろう。
ここからリヒャルト勢力は、どうやって逆転していくのか楽しみですね。
身代わり伯爵と伝説の勇者
「許せないな……。困ってる人の弱みにつけ込んで小銭を稼ごうだなんて、正義に反する。それにその魔物とやらも小物すぎだ。強敵を倒してこそ勝利の価値もあるというのに。ぼくの浪漫に対する裏切り行為だよ、これは」
拳をふるわせ憤然とぶちまけたフレッドは、やがて使命感に燃える目をして一同を力強く見回した。
「皆さん、この件はぼくに任せていただけませんか。この美貌に誓って、古城の魔物を退治してみせましょう」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第八弾。今回は短編集。
真夜中に映った人は運命の人であると噂される鏡を巡る騒動の「身代わり伯爵と運命の鏡」、酒と食べ物と女を要求する古城に住む魔物退治にフレッド一行が向かう「身代わり伯爵と伝説の勇者」、ヴィルが男とのデートに喜ぶ「」、ジークとリディの出会いが語られる「身代わり伯爵と薔薇園の迷い子」が収録されています。
おもしろかった!
どの話もフレッドの変わった行動(良くいって)に笑いが止まりません。自分の顔を鏡で眺めないと禁断症状が起きるとかどうよ!周囲の人もそれを普通に認めてるあたり、憎めない人なんだろうなあと思って、楽しくなってしまう。
出番は少ないけど、さりげなくミレーユのそばにいるリヒャルトの甘い言葉には、ゴロゴロしまくったり、ドキドキするミレーユが可愛かったりと、楽しさ満載ですが、中でも一番良かったのは、ジークとリディの出会いが語られる「身代わり伯爵と薔薇園の迷い子」でしょう。
生まれが生まれだけに、好きな人と結ばれるなんて無理だと思っていたジークが、とある政略結婚の場に向かう途中に出会った少女と逢瀬を重ねていく内に……とあらすじだけ聞くと良くある話のように思えますが、どう考えても逢瀬じゃないから楽しいんです。
ジークが正体を隠して会いに行くと、とても迷惑そうな顔をして追い払おうとするリディ、それがまた新鮮でついつい追いかけて……というやりとりは、リディのつれなさが本気でひどいので笑いが止まらないったらないです。ある意味マゾですね、ジーク。
それにしても、リディはことあるごとにミレーユに後宮ハーレム話を持ちかけていましたが、理由がようやくわかりました。なるほど、嫉妬しないのは尊敬する人のお話があるからか。ま、当初はともかく、今はどこまで本気かはわかりませんけどね。なんせ、拗ねるジークが可愛いからといって、冷たい態度を見せる人ですから。
とてもお似合いな二人だなと思いながら、読み終わって思いました。
あー、おもしろかった。
身代わり伯爵の失恋
「見当違いなこと言っても、笑わないでくれる?」
「笑いませんよ」
そう言いながらもすでに微笑んでいる彼に、ミレーユは散々躊躇ってから、思い切って質問をぶつけた。
「リヒャルトは……、……もしかして、あたしのことが好きなの?」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第九弾。今回は、ミレーユはリヒャルトのために、リヒャルトはミレーユのために、突き進んでいくお話しです。
これは面白かった。とてもゴロゴロさせられた!
リヒャルトのためなら、敵のいるところだろうが、炎上する城の中だろうが、飛び込むミレーユのなんと男前なことか。守られるだけの存在になるより、守ってあげたいとして、決して曲げない思いが、とてもよかった。
そんな中、リヒャルトもまた動き始めて、王宮内のうさんくさい出来事の詳細がアカされていき、時に衝撃的な事実などもありましたが、それはそれとして(おい)、今回一番心を持っていかれたのは、恋愛要素でしょう。
ミレーユに危険が迫ったことで、いつになく必死なリヒャルトをみられて、きゃーきゃー思ってましたが、一度開き直ったら、もっとすごかった。なんだ、あの甘さ全開の押しっぷりは!
ああいう言葉と照れもなく言えるあたりが、素晴らしいです。
一方のミレーユは落ち着かないことこの上ないようですが、逆に思いを自覚したようですね。ひとりドキドキする様子がとても可愛いったらないです。……でもね、なんでそこで、そういう考え方をするかな。素直に飛び込んでしまえばいいのに。まあ、これが身分云々ってことなのかもしれない。
好きという思いがあればこそ、彼のために頑張ろうとするミレーユは、ちょっと痛々しいものを感じたりもしますが、二言なく進む姿には痺れました。でも、リヒャルト、ちゃんと追いかけてあげてよ!
ところで、フレッドって人は怒らせると怖いなと思いましたが、ああもあっさり不意を突かれる様を見ると、何か企んでるようにしか思えませんね。彼の思惑はどのあたりにあるのか気になるところです。
ちなみに、気になると言えば、今回一番気になったのは、第五師団団長の勘違いっぷりでしょう。まだ気づいてなかったのかよ!と、ニヤニヤが止まらなかった。最後の最後まで笑わせてくれましたが、いずれ知ったときどういう反応するのか、楽しみでしょうがない。
身代わり伯爵の告白
「アンジェリカ」
「はい」
「……早くあいつらやっつけて、リヒャルトが戻ってこられるように、あたし死ぬ気で頑張るわ」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第十弾。今回は、ウォルター伯爵の企みを阻止するために、宮殿に潜り込んだミレーユが、フレッドの身代わりとしてミレーユ姫を演じるお話です(微妙にややこしいな)。
面白かったー!
好きな人を思い出しては会いたくなったり、見知らぬ人にヤキモチを焼いたりと、乙女心全開なミレーユが可愛いなあとニヤニヤさせられるシーンが多かったですが、それより何より、好きな人のために、体を張って立ち向かう格好良さにしびれました。なんて男前なんだろう。その前向きさには、いつだって救われるから、彼女を応援したくなる。
とはいえ、特別な力があるわけでもない女の子だから、宮殿に忍び込むぐらいならまだしも、「ミレーユ姫」の振りして敵陣に踏み込んでいく姿は、ほんとドキドキさせられます。
こういう頑張り見せられちゃうと、どうしても相対的にリヒャルトがヘタれに見えてしまうんですが、こっちはこっちで変に楽しいことになってるから困ります。いまだ勘違いが是正されていなかったのか……言えよ、ロジオン!と全力で突っ込みたくなったのは僕だけじゃないはず。
それでも、ミレーユの覚悟を知ってからのリヒャルトはホント格好よくて。
よしこれからってときだったので、ミレーユを襲ったラストの展開は正直きつかったです。あまりにもきつい出来事だけど、でも、これを救わなきゃ男じゃないぞ。苦難の道のりになるかもしれないけれど、決して諦めず頑張れリヒャルト!
それにしても、今のミレーユを知ってしまったら、フレッドが最強に怖くなりそうな予感……今回さりげなく見せ場はあったけど、まだ暴れ足りなそうなので、次巻でぜひとも大活躍してほしいところ。
身代わり伯爵の誓約
「いや……。相変わらずめちゃくちゃだと思って」
「何よ、嫌味ね」
「嫌味じゃなくて、惚れ直してるんです」
「……!? き、急に何、こんな時に変なこと言わないでよっ」
「あなたを守る剣は俺が持ってるから。俺を守るだとか可愛いことは言わないで、今日は大人しく守られていてください」
貧乏パン屋の娘であるミレーユが、伯爵家の養子となった双子の兄フレッドの身代わりとして王宮へあがったら、事情を知ってる騎士リヒャルトと共に、いろいろ騒動に巻き込まれるお話の第十一弾。今回は、リヒャルトの王位奪還のために単身宮殿へと向かったミレーユが囚われの身になり、しかも記憶を上書きされて……というシアラン編の完結となる物語です
あー、もう!なんというゴロゴロ本なんだ!
シアラン大公の手によって、記憶を失い、花嫁衣裳まで着させられたミレーユでしたが、心配してたら、どんなときでも彼女は彼女だったりして、その型破りっぷりにニッコリ。
で、ミレーユを取り戻しにいったリヒャルトの全開っぷりが、素晴らしかった。嫉妬光線を出しまくりだし、近づいたら……という積極的行動に、こんちくしょうと頬の緩みが止まらなかったです。そりゃミレーユもぼうっとしてしまうよ。逃亡劇を繰り広げてる最中でも、甘いやり取りを忘れない様にニヤリニヤリ。
いろんな意味で、野獣と呼ばれたリヒャルトの本領も見せてもらいましたが、それより何より、これまで我慢して、言いたいのに言えなかった、たった一言を告げることができたミレーユに……良かったねと頷きたくなりました。彼女はどこか男女平等の距離を持っているから、大切な人を作れるのか不安ではあったから、こうして想いを告げることができて、ほんと良かったです。
そんな二人の様子もさることながら、シアラン大公の手をくぐり抜けて、でも多勢に無勢だったりするところで大活躍してくれたのが、我らがフレッドだったところが嬉しかったなあ。やっぱり、この人の明るい腹黒っぷりはいいですよね。
計算高く、利用できるモノは何でも利用して、妹を傷つけようとする輩は、決して許さないその強さに、拍手したくなりました。
妹が離れて行ってしまうのは可哀相だけど、彼を思ってる人もいるんだし、そんな寂しがらないでほしいな。
いやあ、面白かった。
リヒャルトに嫌疑をかけられてから八年の歳月が経ち、その間、苦労も多かったと思うけれど、再び故郷に戻ることができて、しかも愛する人が傍にいてくれるんだから、こんな嬉しいことはないだろうなあ……まあ、ミレーユの父とはいろいろ大変そうだけど、それは乗り越えていってほしいものです。
さて、これで一段落付きましたが、まだ話は続くそうです。次からは新章となるとか。ミレーユの花嫁修業とかが見られるようになるみたいですね。またコミカル展開になるのかな。今回のお話の最後で、何やら不穏な言葉を残した人もいたので、そちらの動きも気になるところです。
身代わり伯爵の花嫁修業(1) 消えた結婚契約書
「!?な、なな何すんのっっ」
予想外のことに目をむいて見上げると、リヒャルトはその体制のまま目を合わせて微笑した。
「失礼、口がすべりました」
「どんなすべり方!?」
双子の兄フレッドと入れ替わりで王宮へあがったパン屋の娘・ミレーユが、すったもんだのあげく、当時騎士(現大公)のリヒャルトと婚約することになったところから始まる身代わり伯爵シリーズの新章第一弾。かつてミレーユがリヒャルトを助けるために書いた他の男との結婚契約書の行方がわからなくなって……というお話。
ちょーーーーーーーーー楽しかった!ほんとやばいです。始まりからリヒャルトが前回で甘いことを囁いて、クーとさせてくれて、照れ照れなミレーユをみて、リヒャルトに殺意を抱くミレーユ父の舅っぷりがたまらない。キス禁止令とか婚約中の二人(特にリヒャルト)にはきついよねー。いやまあ、周囲で見てる人からしたら、二人の甘さのほうがきついんですけどね。「甘すぎるぞあの空気!耐えられん……」と呟いた団長の思いは、皆同じだと思いました。
さて、大公妃になるべく勉強を始めるミレーユは、頑張るのはいいけど、いろいろ天然なことしてくれるおかげで、リヒャルトからしたら大変だなーと思うことも結構ありました。好きな女の人からそういうアプローチをされたら……ねぇ?生殺しのような生活を、彼があと一年もの間、耐えて行く生活は、フレッドならずとも見てるのは楽しいんじゃないかしら。
いや、それはそれとして、消えた結婚契約書事件。太后殿下の密命を受けて、動き回るミレーユはやっぱり魅力的だなあ。オチについては読めていたけれど、慣れない場所で頑張る彼女のために、いろんな人が協力してくれるのは、読んでて嬉しかった。これまでとは違った形の妃として、国に貢献してくれるんじゃないかな。
まだまだ宮廷内にはリヒャルトを芳しく思わない人も多いので、いろんな事件が起きるだろうから、どういうトラブルが起きていくのか楽しみですね。あと、個人的には、セシリアの恋を何とかして欲しいなと思うんだけど、どうなるんだろう。
身代わり伯爵の花嫁修業(2) 嵐を呼ぶ花嫁合宿
「なるほど、新妻攻撃か。これは確かにきついかもなぁ、彼」
双子の兄フレッドと入れ替わりで王宮へあがったパン屋の娘・ミレーユが、すったもんだのあげく、当時騎士(現大公)のリヒャルトと婚約することになったところから始まる身代わり伯爵シリーズの新章第二弾。今回の花嫁修業は、交流会に集まった選ばれた令嬢の中から、信頼できる側近を選ぶお話です。
いやー楽しい。ミレーユはリヒャルトといるときホント可愛くて、でもリヒャルトと離れるとたくましくて格好いいから、そりゃファンが増えるわけですよ。ヤローからはアニキと親しまれ、令嬢からは……うん、よくぞリヒャルトという彼女を好きになってくれる人を見つけ出したものだと感心してしまう。
それにしても、ミレーユパパとあんな約束したリヒャルトは、今回自分の自制心を試されるなんてもんじゃなかったですね。何かとミレーユに甘い言葉を掛けつつも(お付きの人たちの間で塩瓶大活躍)、煩悩から逃れるため、ちょっと距離を取ろうとしたら、ミレーユがもっと可愛いことしてくれるんだから。主導権を握っているようで振り回されるリヒャルトの苦悩にニヤニヤでした。フレッドもいいアシストしてるんだけど、それがまたリヒャルトの苦悩を広げて……って、たぶん、あれは楽しんでるに違いない。
そんなニヤニヤ夫婦(まだ婚約式もあげてないけど)模様を見つつ、ミレーユが交流会に参加していくのを見ていくんですが、これがまた楽しい。元々ご令嬢たちは、リヒャルトの妻の座を狙う人たちというお話だったので構えてたら、たしかにそういう人もいて、ちょっとした嫌がらせを受けたりもするんだけれど、そんな人たちの些細な悪意が吹き飛ぶぐらい、個性的なご令嬢が集まるから楽しいんだ。宝石マニア、影の薄い少女、超近視美女などなど、ミレーユもびっくりするような人たちは、ある意味、自分を持っている人といってもいいと思います。ミレーユに引っ張られる形で、個性豊かなご令嬢たちの力を借りることによって、権力を動かそうとする者たちの陰謀を乗り切っていくという展開が良かった。それにしてもピンチのときほど、彼女は輝くなあ。とても格好よくて、ご令嬢たちも惚れたんじゃないかしらと思う次第。
あと、今回はミレーユのやきもちが見られたのも良かったですね。これまでやきもきするのはどちらかといえば、リヒャルトばかりでしたが、キリルの告白や完璧美人の令嬢・レルシンスカの登場によって動揺しまくり、ついリヒャルトから逃げ……頭突きはどうかと思うんだけど、お互いやきもきした思いを抱えたけれど、最後には甘い甘い言葉を掛け合うようになって、ええ、よござんした。
まだ陰謀はあるっぽいけど、頼もしい側近もできたことだし、どうやって乗り切っていくのか楽しみですね。
身代わり伯爵の花嫁修業(3) 禁断の恋の手記
「忘れましたか?」
忘れさせてあげるとはこういう意味だったのかと、その時初めて気がついた。
「う……ん、忘れた気がする……」
双子の兄フレッドと入れ替わりで王宮へあがったパン屋の娘・ミレーユが、すったもんだのあげく、当時騎士(現大公)のリヒャルトと婚約することになったところから始まる身代わり伯爵シリーズの新章第三弾。巷で流行している禁断の恋の手記。そこに書かれている恋の相手は、まるでミレーユのことのよう。このままでは風聞が……ということで、今回の花嫁修業は、手記の作者を捜し出すというお話です。
今回も楽しかった。ミレーユの元気いっぱいな行動力は、出会う人たちを幸せにしてくれますが、中でもリヒャルトは……彼女の真っ直ぐな思いにどれほど支えられているかがよくわかります。余裕の無さや嫉妬から、ミレーユを閉じ込めたくなりつつ、直接会うと気持ちがほぐされていって。甘い言葉は彼女を思う気持ちのほんの一端なんだろうなと思うと、何とも温かくなりますね。近くで見てる人たちからしたら、アレでしょうけど。ふたりが一緒にいるときに欠かせない塩は、今回も大活躍してました。
さて、第三試験のお話。はたして手記の著者は誰かと探し回るうちに見えてくるのは、王宮内の人間関係で。普段とは違う姿を見せる人、かつての仇敵が故に収まりきらない思いがある人など、いろいろ見えましたが、ミレーユを面白く思わない人がいても、ただ反発するのではなく、認められるべく頑張ろうとするミレーユの行動力は、とても素敵なものがあります。なんだかんだいいながら、みんなも認めてきたよなーと思ったり。
それにしても、今回はいろんなところでニヤニヤしたなー。リヒャルトの好きなものは大抵好きになると言う従兄弟のフィデリオの勘違いとかも、えっと思いながらニヤリでしたが、一番はレルシンスカです。弟に対してのお姉ちゃんっぷりと、恋する人への思いは……これはおヤバい。ドキドキの意味が違うんじゃ、と思ったりもしたけど、この恋がどうなっていくのか楽しみです。
さてさて、この三冊目にて花嫁修業編は終わりのようです。といっても、まだ花嫁修業は続く見たいですけどね。次から始まる里帰り編(仮)がどういうお話しになって進んでいくのか楽しみに待っていたいと思います。
身代わり伯爵と白薔薇の王子様
「俺はわかってるからいいけど――あまりいじめると本気で嫌われるぞ」
「嫌われたいんだよ」
「は?」
「だって殿下が一番お好きなのはきみだろ?ぼくだって一番になりたいのに、このままじゃ絶対無理だもん」
「だから一番嫌われようって?」
双子の兄フレッドと入れ替わりで王宮へあがったパン屋の娘・ミレーユが引き起こす騒動を描く身代わり伯爵シリーズの短編集。リヒャルト節が炸裂するお話や、セシリアとフレッドの出会いなど、六編の物語が収録されています。
いやー、面白かった。甘い話は大好物ですが、楽しく甘いから、後味がいいですね。二人が婚約する前の話では、リヒャルトの好意に気づいてないミレーユは、あまりにも無防備でニヤニヤしちゃう。時々、リヒャルトの言葉に塩をくれ!と言いたくなることもありましたけど。単なるお茶会であっても楽しくてたまらない。
揉め事を解決すべく、街中を走り回る姿にハラハラしたり、突拍子も無いアイデアでリヒャルトを癒そうとするミレーユの行動力は、とても愛らしいものがあって、リヒャルトならずとも心温まるものがありました。
が、やはり一番良いおはなしだったのは、セシリア様の物語です。一編は、セシリアが、恋人同士しか入れない集会にこっそり潜入したら、フレッドが仮面をつけた女性と一緒にいて、というお話。嫉妬するさまがとても可愛くて、彼女の勘違いに気づいているのに、いじるだけいじって何も言わないフレッドの意地悪に、ニヤニヤしまくりでした。
それ以上に良かったのは、セシリアがフレッドと初めて会ったときのお話「身代わり伯爵と白薔薇の王子様」です。
周囲に話し相手がおらず、声が出なくなってしまった九歳のお姫様の前に、薔薇の精かと重ような素敵な人が現れて……という始まり。この出会いは印象にのこるよなあ。そのあと、意地悪な性格を知ったら、そりゃ可愛さ余って、になるわ。
王子様だと思っていたのに、これまで近くにいた人たちとは違って、気を使わずにズケズケと入ってくるフレッドを天敵とみなして、ぎゃふんと言わせたいと、あれこれ頑張るのに、さわやかにかわされていく様が楽しい。もちろん、フレッドがそんなことをするのには理由があって……いや、楽しいってこともあるんだろうけれど、それ以上に憎まれ役を勝手でた彼の姿が素敵だった。
意地悪なフレッドのことなんて嫌いと思いながら、いなくなると心にぽっかり穴が開いて寂しくなるんだから、どれだけ大きな存在になっているか推して知るべし、ですね。彼女の前に再び彼が現れたときの出来事で、お姫様が本当に恋に落ちるシーンに、きゅんとなった。
良い雰囲気になると、ついついからかってしまうから、なかなか進展しないけれど、この二人の恋は、成就して欲しいと思うものがありました。大変楽しかったです。
身代わり伯爵の婚前旅行(1) すれ違いの蜜月
「……なんだ、あの二人が仲良しでいらっしゃるかぎり、すべては平和なような気がしてきました」
双子の兄フレッドと入れ替わりで王宮へあがったパン屋の娘・ミレーユが引き起こす騒動を描く身代わり伯爵シリーズの第十六弾。正式に大公の婚約者となったミレーユが、リヒャルトと一緒に隣国アルテマリスの王太子ジークの結婚式に向かうという、婚前旅行模様を描いた物語です。
ミレーユはいいな。彼女の頑張る姿には、元気をもらえる。
先日捕らえたオズワルドの護送といったこともあり、せっかくの婚前旅行だけど問題が起きないわけがない状況で、大公の旅程とは思えないような出来事が起きたりしてましたが(いくら襲撃されたからって、大公とその婚約者ふたりだけになるというのはどうかと)、ともあれ、のっぴきならないはずなのに、ちょっとずれた、でもまっすぐな彼女の姿を見ていると、心が明るくなります。
危険と隣り合わせなだけに、ついつい暗いことを考えがちなリヒャルトが、前を向く元気をもらうというのはいいですね。まあ、元気になったらなったで、すぐイチャつこうとするのが彼ですが。結婚するまでは、という制約があるからギリギリ抑えているけれど、ミレーユがあまり意識しないのをいいことに、ひざに乗せたり、添い寝したり……このリヒャルトが大変お甘かったです。
この旅は、それぞれの過去を見つめなおすような意味もあったことが印象深かったかな。かつてリヒャルトが傷つきながら通った道を逆に進む行為は、苦しくも受け止めなければならないことだったと思います。ミレーユもまた地元を通ることで、母や祖父に結婚の話をすることとなり……賑やかだったなあ。お母さんの迫力に笑いつつ、家族の温かさを感じました。ただまあ、ロイは……元気出せよ、うん。
ミレーユにしろリヒャルトにしろ、お互いが相手のことを思っての行動であることが随所に見えて、微笑ましくなる旅路でした。不穏な空気はまだ残っているというか、よりによってフィデリオが……何をしでかすか分からないのは、軽い感じがあるからかしら。不気味さを感じるだけに、姿をくらました彼の動向が気になります。
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