待ってて、藤森くん! / 壱乗寺かるた
待ってて、藤森くん!
十年前、再会を約束した初恋の少女との待ち合わせ場所に、相手は来なかった。
待ちぼうけをくらい、風邪をこじらせ、一ヶ月遅れで高校に入学することになった里見は、朝礼の場で初恋の人の面影を持つ女性に出会った。相手は「三月の姫君」と呼ばれる生徒会長だったのだ。
思わず駆け寄ったことで、生徒会執行部から目をつけられることになったが、何としても彼女に確かめたい里見は……。
約束の相手が生徒会長かもしれないと確かめるために会長に近づこうとして、いつも邪魔をされるというパターンものかと思ったけれど、微妙に違う展開でしたね。一癖あるけれど、何となく憎めない人たちばかり出てきます。
はじめは幼馴染の吉野が落ち着きのなさに眉をひそめてしまいましたが、それをふんわりと包み込む里見との関係でうまく中和されていました。里見くんはまっすぐでいい感じだなあ。
黒幕らしき者たちが、黒くなりきれないところに、若さを感じますが、まあ、里見の周りにいたら、そうなっちゃうのかもしれない。
結局、約束の相手の話がうやむやになってしまったのがなんだかなあといった感じ。何のために戦ったのかといったら、吉野のためでもあったけど、大元は会長と会うためだったのでは……。まあ、これに限らず、その他の伏線もほとんど回収されなかったので、次巻以降を待てというところなんでしょうね。
なかなか生徒会長には近づけないでしょうけれど、最後の様子を見る限り三角関係とかあり得そうなんで、続きが楽しみだったりします。
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待ってて、藤森くん! 2
男装した女性たちが、花嫁として女装した男性の心を奪い合う学校行事「六月の花嫁」。その花嫁役を引き受けてほしいと会長補佐である真行寺に、里見は話を持ちかけられた。人の役に立てるならと引き受けたが、以前、吉野に生徒会には関わらないでと言われたこともあって、なんとなく後ろめたい。
しかもそのことが吉野に知られてから、今までずっと一緒だった二人の間に溝ができて……
男装の女子生徒が、心・技・体を競うという人気コンテストに参加した会長や幼馴染などが、花嫁役である里見(男)を狙って争うというお話です。いやあ、幼馴染の吉野がいいですよ。普段から好意はあふれてましたが、どちらかというと世話好きっぽいように思えただけに、中のいい姉弟みたいな感じだったんですよね。
それがどうですか。里見が生徒会に関わってるとわかったら、里見は絶対に渡さないんだからと、闘士むき出しになるんですからね。これほどまでにストレートな好意ってなかなかないです。「好き」という言葉を連呼する彼女の思いにやられました。
和美のがんばる姿も良かったけれど、今回はもう間違いなく吉野がヒロインでしたね。
まあ、里見としても、十年来の思い出なだけに、今さら知り合いに打ち明けるのは気恥ずかしいものもあったんだろうと思いますが、言葉が足りないところからすれ違い、亀裂が大きくなっていくあたりは、切ないものがありましたね。
今まで、当たり前のように傍にいた人が、いったん離れたことで、お互いの大切さを知るというのは、ありふれているお話かもしれませんが、無事元に戻ったときは、良かったと胸をなでおろす思いでした。家族的愛から、恋人的愛へ変わっていく、気づいていくところが素敵でしたね。
イベント中は、いろいろドタバタありましたが、個人的に笑いまくったのが、花嫁(里見)を制限時間内にどれだけきゅんきゅんさせることができるかという「心」の審査ですね。キザったらしい甘い言葉を投げかける男装の女性たちにニヤニヤです。僕としては、お気に入りの天然キャラである常盤さんが活躍したので良かった良かった。
ま、ともあれお疲れ様と思っていたら、何ですか、あのイベントの締めくくりの一言は。それで里見の姉ちゃんの言葉が出てきたのか。和美の思いもまた大きなものがあることはわかってきましたが、これはちょっと複雑な人間関係になってきましたね。真行寺の立場もいまいちよくわからないため、いったいどうなっていくのか、予測がつきません。これは続きが楽しみだなあ。
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待ってて、藤森くん! 3 藤森くんは奮闘中
海沿いにある西海中学の敷地内の南の橋には、その男子寮があった。廃墟のようなボロさから、いつの間にか「くずれ寮」と呼ばれている葛葉寮が、夏休みを持って廃寮になるかもしれない―その通知を知った藤森里見たち男子寮の面々は、なんとしても廃寮を阻止するべく、寮の行く末の決定権の一勢力、女子寮寮長の協力を得ようとしたが……
廃寮の危機に迫られた男子寮を救うべく、藤森君と寮長の川島が、女子寮を味方につけようと奮闘する物語集……って、何でいきなり番外編というか、本編のプレストーリーが始まるんだろ。単なる回想シーンかなと思っていたら、一冊丸々寮ものだったので、本編を楽しみにしていた身としてはがっくし。
女子寮に盗撮問題が持ち上がったら、犯人をおびき寄せるべく女装したり、好きな男の子にアタックする勇気が出ない女の子のために、練習台としてデートさせられたりと、男子寮のために体を張る藤森君の努力は涙ぐましいものがありますが…くすりと笑えるときもあるんだけど、全体的に空回りな感じで、微妙でした。
特に、空気を読まない寮長に毎回ぶち壊される展開は、ちょっとね。悪気は無いし、いい人だというのもわからなくもないんですが、毎回毎回、猪突猛進っぷりと、同じような展開が繰り返されるので、さすがに飽きてくる。
こんな男に惚れてしまってる女子寮寮長の浅越友香が不憫でなりませんが、それでも、恋心が見えてくるところは、良かったなあ。
恋心といえば、寮に入ったことで、久しぶりに会うことになった吉野に対して、里見が家族以上の気持ちに芽生えていくところは、くすぐったくなったなあ。こういう反応は好きです。
といいつつ、里見をぎゅっとした吉野の「大きくなったね」という言葉を誤解した自分の貧の無さに、落ち込むわけですが。
藤森君が寮に固執するのは、吉野のことがあったからと思ってたんですが、仲間と離れ難いってのもあったんですね。寮にいることの楽しさが伝わってくるやり取りが素敵でした。毎回寮長を出すぐらいだったら、もうちょっと寮内の他の人にスポットを当ててくれればよかったのにと思わなくも無い。
エピソードは良くとも、話としては微妙なものが多くかったので、うーんと思いましたが、エピローグは、ほんのり笑いつつ、心があったかくなるものがありました。
次が最終巻とのことなので、一応、追いかけてみたいと思います。
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待ってて、藤森くん!4
「七月の英雄」と呼ばれる生徒会長選挙は、現職である和美が当選するだろうと誰もが思っていた。だが、そこへ切り込んできたのが、和美の腹心ともいうべき、真行寺だった。現生徒会の仲間に何一つ言わずに立候補したのだ。
いったい何が彼を動かしたのか。自分たちはどうすべきか。悩む和美と、そんな彼女を応援していた里見たちだったが、あるとき、真行寺は里見にとんでもないお願いをしてきて……
内気なところがあるけれど、傍で支えてくれるお姉さんっぽい黒川和美と、元気いっぱいで愛情を真っ直ぐに伝えてくれる幼なじみ……のような間柄の犬塚吉野と、藤森里見が、三角関係ラブストーリィの完結編です。
これは素敵なラブストーリィだったなあ。主に吉野との間だけですけど、この巻を読んで、吉野に惚れない人がいるでしょうか。真っ直ぐな気持ちを前面に押し出し、困難があっても前向きに乗り越えていき、ライバルを蹴落とすのではなく、むしろ同じ土俵に引き上げてから戦おうとする姿に惚れ惚れする。
おかげで、和美も逃げ出すことなく、里見を思うようになってくれて、生徒会選挙という学校行事を通して、三人が思いを明らかにしていくという展開が、とても素敵でした。
黒幕のような真行寺の思い人が、意外や意外な人だったところにニヤリとさせられて、結果を分かっていながら、それでも思いを告げたかった女の子の勇気に拍手を贈りたくなり、そんな女の子を慰める少女たちの友情にホッとさせられてと、エピローグがとてもいい感じでした。何より、自分の思いを臆することなく告げあった二人の幸せなラストが、とても良かったです。
ただ、吉野の話ばかりで、和美方面や突如として和美の傍から離れた真行寺とかの話が、ほとんど描かれなかったのは、物足りないかなあ。話を引き伸ばすような選挙の前座とか書くぐらいなら、そのあたりにもっと踏み込んでくれればよかったのに。
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