舞姫恋風伝 / 深山くのえ
舞姫恋風伝
そうしなければ生きていけないのはわかっていても、宮妓として売られて、家族と離れることになったのは寂しかった。そんなとき、愛鈴は一人の男性と出会った。それが、太子の慧俊様だと知ったときは驚いたけれど、みせてくれた優しさが嬉しかった。いつか、この人のために、立派な舞を踊りたい。その思いを胸に、愛鈴は舞を学び、三年の月日が流れ……
貧しさから売られた娘の愛鈴が、お忍びの太子と出会って、惹かれあっていくといういわゆるシンデレラストーリィですね。身分違いの恋という言葉から連想するそのものというぐらいストレートな物語でしたが、こういうの嫌いじゃないなあ。
慧俊との約束があったからこそ頑張ってこれた愛鈴が、三年ぶりに逢ったことで、周りが見えなくなるぐらい想いを募らせていくのがすごい伝わってくるんですよね。
逢いたいがために誰もなしえなかった舞を完成させるべく努力したり、何ができることは無いかと無謀な行動をとったりと、幼き少女の一途なまでの思いには、邪推してしまう自分が恥ずかしく思えるほどでした。
あまりにも真っ直ぐな思いだったので、騙されるんじゃないか、他の権力者に目をつけられるんじゃないかと、ハラハラさせられたので、佳葉という頼りになるお姉さんが側にいてくれたのは、ほんと心強いですよね。愛鈴が無茶をしすぎないよう押しとどめ、でも思いは育んであげる姐御肌なところが素敵でした。いや、ほんと惚れそうになりましたよ。
愛鈴による一途な思いはたっぷり描写されてるんですが、ラブラブな場面ってそれほどないんだよなあ。思いつめて、思わず胸に飛び込んで、正気に返ってドキドキドキドキなんて場面とかには、ニヤニヤしてますが、もっとあってくれたら嬉しいのに。
落としどころというか、権力闘争の決着の付け方は、何か物足りないものがあったりしましたが、まあそっち方面の話じゃないからいいか。最後には、愛鈴も佳葉も幸せになってくれてよかったですね。
甘っちょろいところがいろいろあっても、こういうお話大好き。
舞姫恋風伝 ~廃城の反乱~
慧俊は国帝に即位し、慧俊を慕っていた愛鈴は、宮技から后となった。貴族の交流に戸惑いながらも、慧俊の側にいられることを幸せに思っていた。
そんなある日、愛鈴の弟の修安が、国試を受けに華安へやってきた。久しぶりに会う弟に、思わずはしゃいでしまった愛鈴だが、慧俊のことを快く思っていない修安は、自分よりも夫である慧俊の話しかしない愛鈴に不満を募らせて……
貧しさから売られた娘の愛鈴が、お忍びの太子と出会って、惹かれあっていくといったシンデレラストーリィの第二弾。即位した慧俊と后となった愛鈴の元に、愛鈴の弟の修安が訪れて、というお話。
もうね、はじめの三ページ読んだだけで、ニヤニヤどころか、クーとか言いたくなりましたよ。夫婦になっても、初々しい反応を示す愛鈴のかわいさがたまりません。彼女が何をしたいのか、気づいているのに、わざと言い出さないで、反応を試す慧俊の気持ちがよくわかります。まあそんな慧俊も、外から見たら、惚気まくりの愛鈴大好きっ子なんですけどね。
前作よりも、より面白く、より、甘くなっててたまりませんね。脳がとろけそうになるぐらい、甘いお話が読みたかったらぜひ。といきなりお勧めしてみたりする。
そんなふたりの仲の良さを羨んだのが、愛鈴の弟の修安で。
まあ、大好きな姉ちゃんが、自分に構ってくれないので拗ねてしまうのはわかりますが、相手に対して嫉妬だけならまだしも、自分に対して、無駄に高いプライドを持ってるあたりは、ちょっと痛かったなあ。さらには、慧俊の覚えが悪い連中たちが、后の弟である修安に対して、いろいろ吹き込むところは、都会に来てキャッチセールスにひっかかった、みたいな展開で、もう見てられなかったです。
姉さんがどれだけ苦労したかも想像せずに、自分の都合のいいように物事を取り上げてしまうところには、幼さですむところもなくはなかったですが、手を出してしまったら、それはもはや愚かとしか言いようがなくて。この程度のことが想像できないとは思えませんが、欲や恋に惑わされるとは、こういうことなのかもしれませんね。
自らの身と弟のことで、心を痛める羽目になった愛鈴でしたが、苦しみながらも、ひたすら慧俊のことを思い、そして、最後に決意をするところは、今までと違った強さを見ることができました。普段は弱々しくあっても、慧俊についていくときに、后としての覚悟は決めていたんでしょうね。脅しに屈せず、敵味方関係なく、魅了させた覚悟の舞が神秘的でした。
愛鈴を助けるために、多くの人が動いてましたが、中でも佳葉の言葉と行動には、胸を熱くさせられました。同じ道を歩んで、同じような境遇であるからこそ、どのような思いをしているかが、想像に難くなかったからでしょう。愛鈴の戻るべき場所を守る姿をみたら、彼女の熱意に動かされる人たちの気持ちもわかります。
いろいろとおかしなところがないわけじゃないですが、帰るべき場所に帰り、愛する人の側にいられる喜びを感じさせてくれる最後に、心温まるものがあったのでいいかな。
いやあ、よかったです。愛鈴をお姫様抱っこしたり、膝枕してもらったりと、大切にしながら、甘える慧俊と、そんな彼の態度に心から照れながら、それでいて嬉しく思っている愛鈴の姿が見れるラストに満足です。あー、いいなー、ちくしょーと思ったかどうかは内緒。
ここまできたら、愛鈴の「望み」がかなうまで、ぜひ続いてほしいですね。期待して待ってます
第一話のドラマCD付きの初回特典版はこちら。
舞姫恋風伝 ~花街の迷走~
新しい庭師が愛鈴の故郷の村からやってきた。顔見知りを懐かしく思う男は、何かと馴れ馴れしい言葉を愛鈴にかけようとしたが、そのことを知った慧俊は、愛鈴が相手にしていないことを知っていても、どこか面白くない。
そんなちょっとした騒動が起こった最中、妓女から帝の后となった愛鈴を気に食わない貴族の奥方様たちが、なにやら悪巧みをたくらんでいて……
貧しさから売られた娘の愛鈴が、お忍びの太子と出会って、惹かれあっていくといったシンデレラストーリィの第三弾。愛鈴の同郷の男・子維が庭師としてやってきたことで、貴族の奥方たちが、愛鈴を陥れようとするお話。
ああ、もう初めから最後まで、ニヤニヤが止まらん。慧俊と愛鈴のやり取りは、どこをどう取ってもラブラブで、ちょっと男の名前が出ようものなら、ムスっとしてしまう慧俊に笑ってしまいます。面白くないという気持ちよりも、慌てて機嫌を取ろうとする愛鈴が可愛いから、という理由で機嫌を悪く見せかけるんだから、はいはいご馳走様と言いたくなりますね。読んでるこっちが照れちゃう。
そんな二人の仲を切り崩そうとするなんて、どうあがいても無理だろうに、今まで何を見てたんだと、悪巧みを行なう奥方様たちにツッコミたくなる。利用された子維は、ちょっとイタいものがありましたけど、まあ、自業自得という事で。
慧俊のみならず、佳葉や香泉など、悪巧みにハマってしまった愛鈴を心配する人たちの思いは、ほんとに真っ直ぐで、心痛むものがありましたけど、愛鈴を匿ってくれた優しき女性と出会えたことや、愛鈴の念願が叶うところとか、最後の最後はたっぷりハッピーエンドで、ほんと良かったですね。
いやあ、面白かった。主役の二人のみならず、愛し合う者たちのやり取りは、クーと悶えながら、読んでて嬉しくなるものがあります。このお話に出てくる人たちは、みんな幸せに、ラブラブになってほしいと、そう思いますね。
これで最終巻だなんて、とても寂しい限りですが、最後まで超ラブラブをありがとう、と言いたいです。
なお、本編はこれで終わりらしいですが、番外編となる短編集がでるらしいです。主役の二人のラブラブはもちろん、佳葉と慈雲の甘い話とか、毎回愛鈴と巻き込まれて大変な目に合ってる香泉の話とか、ぜひとも読んでみたいですね。
舞姫恋風伝 ~花片小話~
「……です、から……」
「……」
「やっぱり……月真さんが、好き、ですから……」
貧しさから売られた娘の愛鈴が、お忍びの太子と出会って、惹かれあっていくといったシンデレラストーリィのシリーズの番外編。主役カップル意外と、脇役カップルにも焦点を当てたラブストーリィ短編集です。
ああ、いいなあ。慧俊と愛鈴のいつまでも初々しい様子は、顔がにやけてしょうがないですが、ま、それはおいといて、何といっても良かったのは、佳葉と慈雲の婚礼の日の模様を描いた「愛しき日々」です。
好きなのに意地を張ってしまって、言葉や態度に出せない二人が、いつから好きになったんだろうと、幼いころを振り返ところがあるんですが、お互い相手の思い出を大切にしてる様子が伝わってきて、ああ、こういう関係いいなあと思っちゃいました。
婚礼の儀を終えて、でも相手の気持ちが分からないから不安で。そんな佳葉に対して、不器用ながら、まっすぐな言葉をかけた慈雲に、もうニヤニヤがとまらないです。どの口で「口が上手くない」と仰りやがるんですか!ああ、気障がここにいる!
その後の話として、「温家の休日」という別短編で、新婚直後の佳葉と慈雲の様子が見れるんですが、ここでも楽しくなれちゃうこと間違いなしです。
そしてもうひとり気になっていたのは、毎回愛鈴と巻き込まれて大変な目に合ってる香泉ですが、御史である月真との恋が「いつか扉の開く日」で描かれてました。
好意を寄せられていることに気づきながら、過去に引け目を感じて、距離をとっていた月真が、とある任務で、同じような立場の男女と出会い、香泉を意識していくところが王道ながら良かったです。月真の気持ちを知り、諦めようと思いながら、諦め切れなかった香泉の健気な姿も印象的でした。
笑顔が見たい、そんなふたりの思いが通じたシーンは、きゅんとしちゃいましたね。
個人的に好きなお話は「宮妓の矜持」だなあ。宮妓となった没落貴族の娘の明艶が、なぜ一番の実力を持っている自分ではなく、愛鈴が幻と言われた『雪月梅花』を舞いを教わることができたのか、ということを考えていくお話です。これは珍しく恋愛ものじゃなかったですね。
貴族という地位がないから、舞を習えなかった。そんな言い訳を自分にしていたことに気づいて恥じる姿を見ていると、自分にも当てはまるものがあるような気がして、耳が痛いものがありましたが、迷いを覚えていたときに、后となった愛鈴の変わってない様子を見て、舞が自分にとってどういうものであったかということを思い出していくところが良かったです。
明艶だけでなく、教坊で舞を教えていた貞琴の凛とした姿も素敵でした。
いやあ、面白かった。
カップル話はラブラブで、それ以外でも、前を向く者のお話ばかりで、とても楽しかったです。もっと読みたかったなあ。完結してしまったことは残念でなりませんが、次なるお話を作ってるとのことなので、期待して待っていたいと思います。
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