えむえむっ! / 松野秋鳴
えむえむっ!
中学生のとき、とある女生徒に手のひらで叩かれたときに、俺は目覚めてしまった。思わず、その女性にすがり付いて、叫んでしまったのだ。もっと殴ってください― と。それからというもの、女性から冷たい目で見られたりすると興奮してしまう毎日。このままでは好きな人に告白することすらできない。
高校に入ってから、ひたすらに隠し続けているマゾ体質を直すため、俺は生徒たちの願いを叶えてくれるという第二ボランティア部の扉を叩いたが……
殴られたり、蔑まされる目で見られると、興奮してしまうという太郎君が、何とか体質を改善したいと願うお話です。いいのか、こんな変態な物語を世に出して!と思わず言いたくなりますね。
本当にマゾってのがこんな感じなのかわかりませんが、第二ボランティア部の部長が何気にサドで、相談役の先生が輪をかけてサドなので、体質を直すために向かった場所で、至福の時を過ごしてしまうという矛盾にニヤニヤさせられます。
二話構成で語られるお話は、第一話で友情を、第二話で恋愛(?)が描かれており、どちらもいい話でしたが、個人的には、二話目のほうが好きかな。似たもの同士のふたりが、動物園でデートするところは、いいですよね。定番といえば定番ですが、相手の知らなかった一面に気づいていくところの見せ方がうまいです。ああ、ウサギにふわふわしたい。
クラスメイトである嵐子の悩みは大きいものだけに、自分にできることなんてほとんどないとわかっていながら、それでもできることをやっていこうと、決意する太郎がカッコよかったです。
この二人の距離がどうなっていくのか楽しみ。
何気に、部長の石動美緒もいい味だしてましたよね。己を神様だと公言する高飛車な態度は何ですけど、空振りすることもあるんだけど、相手のことを真剣に考えて行動するところは好感でした。お礼を言われて照れるあたり、いい子だなあと思います。まあ、いい子なのは部長に限りませんけどね。
そうそう。さりげなく家庭内に笑いがあるのも、見逃せません。母も姉も太郎のことを大好きで、構ってほしくて構ってほしくてしかたない様子には、普通なら引きそうになるんですが、この家庭ではむしろ微笑ましく感じました。「ハハノヒックショーン」で読書が三分ほど中断し、笑い転げていたのは内緒。
本編が時にシリアスなだけに、こういったところで、気持ちを朗らかにしてくれるのは、嬉しいですね。
いやあ、面白かった。
あの変態的な始まりをした物語が、これほどまでに「ありがとう」という言葉を温かく感じさせてくれるお話になるとは、思いもしませんでした。これは続きがどんな話になるのか、とても楽しみですね。
えむえむっ! 2
太郎のドM体質を直すため、石動先輩は新たに考えた。コンプレックスを抱えた主人公が、恋人の支えによって克服していくドラマのように、愛の力で変体体質を直そうというのだ。さらに衝撃的な言葉が彼女の口から飛び出した。
「あんた、あたしと付き合いなさい」
そんな無茶なと思ったが、あれよあれよという間に、性格はともあれ容姿は美少女である先輩とデートをすることになってしまい……
殴られたり、蔑まされる目で見られると、興奮してしまうという太郎君の体質改善物語の第二弾ですが、ああ、楽しい。馬鹿らしくて面白くて、涙が出るぐらい笑いました。外で読んでたときは、笑いをこらえるのが大変で仕方なかったですね。
第一話では、治療のためってことで、先輩とデートをすることになったんですが、プランを考えたのがみちる先生だってのが運のつき。要所要所で恋愛ゲームのように選択肢を選ばされたり、無理やりな困難を乗り越えさせられたりと、バカバカしいことこの上ない。にもかかわらず、先輩の素敵さが伝わってくるんですよね~。観覧車イベントはすごすぎでしたが、その場では言えなかった先輩の言葉が一番心に残りました。
今回の件で、ひょっとしたら、太郎を?と匂わせてくれるところがありますが、先輩自身もちょっとした過去を抱えているみたいなので、そちらの話も読んでみたい。
石動先輩がデートしたなら、クラスメイトの結野嵐子にもいい目がなきゃねってことで、第二話は、砂戸家のお夕飯へ嵐子がお呼ばれするお話。なぜ嵐子が来たのかというところに、深く着目しないあたりに太郎の人の良さを感じますが、まあ、それよりもあの家族を見られるほうがきついか。
嵐子の話になるのかと思ったら、極度の子煩悩&ブラコンタッグが大活躍してくれて、ニタニタ笑いが止まりません。何といっても面白かったのは、自慢話が炸裂するところですね。「肩たたき券」最高でした。「ギャグマンガ」笑い死ぬかと思いました。フェイズ3やフェイズ4なんて、裏の作戦を考えてる家族がたまらなく好きです。
このふたりに対抗するのは、さすがの嵐子でも無理なようですが、極端であっても、そこに温かさを感じ取ってくれた彼女の言葉は、ほんとよかったなあ。うまい具合に家族公認になった感じがあるので、次のステップがどうなるのか楽しみですね。
いやあ、楽しかった。変態なところばかりが目に付きますが、実は真面目に恋愛とか悩みとかを考えてるところもあるんですよね。今後もこの三人で、いろいろなイベントを乗り越えながら、成長していってくれるとうれしいな。変態度もアップしてくれると、なお良し。
えむえむっ! 3
ひょんなことから、結野と映画を見に行くことになった。ふたりっきりということで、始めは緊張したが、彼女の笑顔に心安らぐものを感じていたら、突然、悪寒がした。間違いない。誰かが俺をとんでもない殺意を向けている。それも女性から!変態的なボディが反応する中、その視線の正体が発覚した。何と俺に殺意を向けていたのは、結野の親友であり、辰吉が以前に付き合っていたという間宮由美だったのだ……
殴られたり、蔑まされる目で見られると、興奮してしまうという太郎君のドM体質改善物語の第三弾は、第二ボランティア部のもうひとりの部員、結野嵐子の親友がやってきて、結野の男性恐怖症が直せないなら、自分のいる女子校へ転校させると言い出してくるお話です。
またまた、個性の強い人が出てきましたね。何ですか、間宮流マッサージって!あまりの気持ちよさに、あの石動先輩ですら、でろんでろんになっちゃうんだから笑えます。石動先輩のみならず、マッサージ受けた人の反応が、何気にエロイな。
そんな間宮由美が、結野を賭けて、第二ボランティア部に勝負をしかけてくるんですが、あっさり受けちゃう石動先輩……なんか以前よりもおバカになってませんか?っていうか、ふたりとも結野の気持ちを考えてあげてよとツッコミたくなる。
その結野が今回は勇気をだしてましたね。タローを映画に誘う姿には、がんばれ!と声をかけたくものがありました。鈍い太郎もさすがに意識しちゃったりして、初々しいデートシーンには、微笑ましいものがありました。こういった良い雰囲気が、長続きしないのが、えむえむだとは分かっているんですが、もっと見たかったなあ。
ともあれ、勝負はねー。男性恐怖症を治そうという動きはいいんですが、なまじ結野の気持ちが見えてるだけに、由美の暴走にしか見えなくて、ちょっとげんなり。結野のことを思ってというのはわからなくもないですが、超えちゃいけない一線を超えちゃってるのは、いかがかと思いました。いや、結野と太郎のジャマをしやがってとか、そういう感情もあったけど。
おかげで、結野の心が離れそうになっていましたが、取り戻したのが、太郎の熱き思いのおかげって言うところが良かったですね。
あとちょっとだったのに……というところは、お約束ではありますが、そのあとにちょっとしたイベントがあったからいいか。「ハァジメテーのー」って思わず一緒になって唄いそうになりましたよ。まあ、事故と言うかアレですけど、あの結野が……ってところにニヤニヤ。
ああ、楽しかった。
結野の気持ちはハッキリしただけに、今後太郎との距離がどうやって縮まっていくのか、興味心身。個人的には、辰吉と由美の関係も気になるかな。複雑な思いがあるかもしれませんが、このふたりもハッピーエンドを迎えて欲しいものです。さてさて、どうなることやら。
そうそう。初っ端に限らず、随所でお姉ちゃんや母親に言い寄られる太郎の描写には笑いまくりでしたが、逆に石動先輩に殴られて変態に悶えるところは、微妙になってきたかなあ。男の喘ぎが、そろそろきつくなってきたのかもしれない。
えむえむっ! 4
学園祭まであと十日。クラスで行う演劇の配役をクジで決めることになったが、太郎が引き当てたのは、貴族の少女に仕える使用人Aだった。だが、これは太郎にとって悲劇としかいいようがない。なんせ、わがままなお嬢様の罵倒を浴び続けねばならないのだ。もし本番の舞台の上で、ドM体質が発揮されてしまったら……。考えるだけで恐ろしい事態を感じた太郎は、何とかならないかと落ち込んでいたら、美緒先輩が、秘策を持ち寄ってきた。それは催眠術で、ドM体質を抑えてしまうというもので……
殴られたり、蔑まされる目で見られると、興奮してしまうという太郎君のドM体質改善物語の第四弾。今回は、学園祭の出し物で、女の子にいじめられる役を演じる羽目になった太郎の大ピンチと、学園祭の第二ボランティア部を描いた二編からなるお話です。
いやあ、笑った笑った。
朝から、パンツ食べるとかノーパンとか、姉と母の変態な溺愛っぷりに吹き出しましたが、それより何より、せっかくの学園祭で、いじめられ役に配役される運のなさに笑いました。台本の読みあわせで、はぁはぁ興奮しちゃうって、どれだけMなんですか、太郎くん。
全校生徒の前で、ドM体質がバレるぐらいなら、手当たりしだいなんでも試してみようってことで、やってみた催眠術が効いちゃうところが、またイカしてる。それも、無理やり抑えたおかげで、ドMからBLな人へと、別の方面に歪みが出るというオチっぷり。
これが最高に面白かった!
辰吉のさりげない仕草や、何気ない言葉に、ドキドキしてるタローが、超かわいい。なんだこの乙女モードは!わかっていても引いちゃう辰吉とか、ショックを受ける嵐子とか、周囲の反応に笑い転げました。
特に嵐子。何とか女の子に(というか自分に)興味を持たせようと、いじらしい作戦を立てるところに、ニヤニヤしちゃう。まったく。早く素直になっちゃえばいいのに。ニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。
とりあえず、劇本番では、聖闘士星矢ネタに、爆笑。
もうひとつは、第二ボランティア部を世に知らしめようと、学園祭の間、トラブルシューティングをすべく、美緒と太郎が学園内を駆け回るお話なんですが、ただただ騒動を起こしてるのかと思いきや、お化け屋敷に入ったら、手をつなぐお約束とかでにんまり。さらに、そういう場面に限って、遭遇してしまう嵐子のジェラジェラさに、またにんまり。
最後に来て、委員長が太郎に冷たく当たる理由とか見えて、ふむふむと思ったり。ただ、黒幕の思惑については、いまいちよくわからないなあ。本当に、MFCなのかもはっきりしないので、今後、どう絡んでくるか、興味深いですね。
それにしても、傷ついた美緒を見て、黒幕に訴えかけた太郎は格好よかったなあ。こういう姿を見せられるから、ヒロインふたりとも、太郎が気になる存在になっちゃうんでしょうね。
ああ、楽しかった。
えむえむっ! 5
「とにかく!」
結野は、ニヤニヤ気持ち悪い笑みを浮かべる俺にびしっと人差し指を突きつけ、
「あんたみたいなドブ臭いブタ犬にはもううんざりなのよっ!だから今日からわたしはあんたを徹底的にいじめちゃうわ!それはそれはサディスティックにいじめちゃうんだから!か、覚悟しなさいよね!」
殴られたり、蔑まされる目で見られると、興奮してしまうという太郎君のドM体質改善物語の第五弾。今回は、嵐子がドSを目指すお話と、太郎が記憶喪失になるお話と、太郎の変態エネルギーを使った人類変態化計画と、番外編的な辰吉が温泉に拉致られるお話の四編が収録されています。
嵐子が頑張ってるなあ。学園祭のときの美緒と太郎の様子に、ただならぬものを感じた嵐子が、自分も美緒のようになれば、太郎に興味を持ってもらえるかもと、ドSを目指すんですから、可愛いものです。方向性は……間違ってるんだかどうだかよくわからないけど、好きな人に振り向いてもらうために、ドSな修行をする心意気が素敵に乙女心。
嵐子の活躍は、次の太郎が記憶喪失になっちゃうところでも見ることができて、「結野さんは、僕とどういう関係だったのですか?」と聞かれたときに思わずついてしまう嘘ににんまり。こういうときじゃないと、言えないことってありますもんねぇ。
一方の美緒は、いつもどおり切れ味鋭い罵倒を見せてくれてましたが、いつもよりも理不尽な罵倒が多かったのが、印象的でしたね。理不尽になるのは、太郎と二人っきりになると間が持たないからで、だんだんと太郎に対する感情が見えてきたような気がします。
特に記憶喪失話のとき、嵐子がはっきりとした態度を見せたのは、美緒にとっては衝撃だったんじゃないかなあ。おそらくは自覚したであろう彼女が、今後どう動いてくるのか気になるところ。
お姉さん・お母さんの変態家族は、いつもながら突飛なことをしてくれますが、今回一番面白かったのは、姉ちゃんの妹化かな。
「今の時代、姉萌えよりも妹萌えのほうが優勢だから」
と言い出し、妹化して太郎に迫る姿に完敗。
それに対するお母さんの反論もすごくて、この家族の変態度を改めて痛感したしだいです。ええ。
人類変態化計画は、太郎がドラゴンボール化してましたけど(ヘンタイ波、変態玉など)、またひとり、太郎を気にする女性が出てきちゃいましたね。第二ボランティア部の二人とは違って、素直に好意を示しそうな気がするので、さあ、おふたりさん、どうする?
えむえむっ! 6
「ねえ、太郎おにいちゃん、知ってる?」
七葉ちゃんは俺を見つめると、言った。
「従兄妹どうしって、結婚できるんだよ?」
殴られたり、蔑まされる目で見られると、興奮してしまうという太郎君のドM体質改善物語の第六弾。今回は、発明少女・柊と嵐子が、太郎を巡って熾烈なおままごとをするお話と、第二ボランティア部のクリスマスのお話、かわいい従妹が、砂戸家に波乱を引き起こすお正月のお話の三編が集録されています。
うーん、つまらないわけじゃないんだけど、というか、読んでる間はクスクス笑ってたんだけど、いつもほどのインパクトがなかったように思えます。今回母姉が強烈過ぎるせいかしら。家の中ではいつものことですが、嵐子といい雰囲気になったとき必ず入る邪魔は、もはや怨念としか思えない。
とりあえず、太郎を落とす最大のライバルは家族だということを忘れてはいけませんね。嵐子、大丈夫かしら。
その嵐子さんは、やっぱり男性恐怖症はなくなっていないものの、太郎に対する思いは着々と積み上げているようで、柊相手に頑張ったり、クリスマスイブに太郎へプレゼントをあげたりと、想いを見せてくれますね。身体が反応しちゃうから、なかなか進展しないですが、この想いは大切にしてもらいたいところです。太郎も結構意識してるっぽい気がするけど……家族が最強なだけに、なかなか難しそうだ。
一方、ひょっとしたらと思っていた美緒は、それほど動かなかったのが残念。ま、別に美緒好きじゃないからいいんですが(ひどい)、彼女にとってクリスマスというのがどういう位置づけにあるのかといったところが見えてくるのは興味深いものがありました。それと、第二ボランティア部とそこに集まる人たちの位置づけも。
寂しいと素直にいえない美緒ですが、そんな彼女を取り巻くみんなの暖かさが伝わってくるラストが素敵でした。
ただなあ、なんか物足りないんだよなあ。毎回毎回大笑いさせてくれてたんだけど、今回はイマイチで……。話が短いのも理由のひとつかもしれませんが、そろそろネタ的にも限界なのかしら。
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