くじびき勇者さま / 清水文化
くじびき勇者さま 1番札 誰が小娘よ!?
メイベルはくじびきで運命を決めるというソルティス教の見習い修道女だけれど、くじびきが大嫌い。それでも、研究や魔法の訓練は面白く、いろいろな事に首を突っ込んでは成果をあげていた。
ある日、晩餐の料理を作るために町へ同じ見習い修道女のパセラと買出しに出かけたら、異教徒によるテロに巻き込まれて……。
どこに買出しに行くかということまでくじびきで決めようとしていたので、思考放棄モノだとしたらハズレだなあと思いましたが、実際のところくじびきをしたシーンってそれほどありませんでした。はじめと最後ぐらいかな。それこそ「運命」を決めるぐらい大きなときに使うのが一般的みたい。
登場人物たちはそれぞれ自分の考えを持ち動くので一安心。その上、きっちりとした世界が作られているファンタジーだったので、読み終わった今は手にとって良かったと思いました。面白いです。
何と言ってもメイベルがいいですね。博識でやや理屈っぽいけれど、頭でっかちというわけでもなく、普通の女の子らしいところもあります。「これは吊り橋効果」だと自分に言い聞かせるぐらい動揺するメイベルがかわいくてしょうがないです。ちょっと万能すぎるきらいもあるけれど、彼女が関わる話は読んでいて楽しいですね。
ナバルが結構朴念仁なだけに、どうなることやらと思わなくもないですが、直線的なところもあるので、結構いいコンビかもしれない。
話の重要な要素であるテロについては、結構シリアスな気がします。オブラートに包んではいますが、自分たちにだけ通じる理屈により、理不尽な行動を取る者の怖さが伝わってきました。
テロ側の動機もわからなくはないですが、だからといって、無差別に力を使うことが許されるわけではないですよね。このあたりは分かり合えることってないんだろうなあ。自分が正義だから。
このような対立は、現実でも同じような事があるだけにリアリティを感じますね。
今後はこのテロとの戦いと、もうひとつの使命を受けた勇者と従者の旅が展開されるようですね。なるほど、だから「くじびき勇者さま」なのかとニンマリ。この二人の組み合わせによる道中に何が起こるのか、とても楽しみです。
個人的にはパセラも好きなんですが、今後どうなるのかなあ。
クウラあたりが父親に頼んで、無理やりもう一組参加とかないのかな、と悶々。
くじびき勇者さま 2番札 誰がお荷物よ!?
大切に育てられているのはわかるけれど、自由な時間がない。まるで籠の中の鳥のよう。そんな生活をしている静花は、ある日、オレンジ色の髪をしたティルと出会った。bioクラフトではあるけれど、静花にとって初めての友だち。
一方、bioクラフトを悪用している人物が、次々と襲われている事件が相次いでいた。どうやら、せーラ服を着た女子高生らしいが……
bioクラフトと呼ばれる宇宙人と地球人の交流を描いた物語。相変わらずコミカルなドタバタが楽しい。
今回は広大とパートナーを組んだティセの妹たちが登場するんですが、なんといっても、妹のひとりである天真爛漫なティルがカワイイです。箱入り娘の静花とのあどけないやり取りには、思わず見守りたくなる微笑ましさがあります。ああ、それなのにそれなのに。
裏から伸びてくる手が、害をなすわけではないところに、いやらしさを感じますね。相手の弱みに付け込んだ効果的な示唆に、釣られてしまうティルに、そっちに行くなー、と声をかけたくなります。
もうひとりの妹のティオは、パートナーである桜子の印象が強くて、それほど印象に残っていないんですが、妙にティルが恐れていたのが印象的でした。まだまだ隠している何かがあるのかな。曲がったことが嫌いそうな感じのふたりですが、手段を選ばないところに何かありそうですね。
ほかにもティセの友人(というか仕える人)なども出てきましたが、キャラの濃さでは王子な先生が一番ですね。すげー、バカっぽいと思いきや、さりげなく裏を感じさせてくれるところがいいです。UNbAR も一枚岩でないのか、それともほかの思惑があるのか。bioクラフト側にも、画策している連中がいるものの、思惑の全容が見えないので、気になります。
いろいろありましたが、今回の話はまだ前振りといったところですね。妹との話はひとつぐらい終わるかと思ったんだけど、捩れそうだなあ。あまり、ティルと静花の関係は壊してほしくないんですが……。
力関係では、ティセに仕える友人のアイシャと恵子がお約束になったことだし、大丈夫かな?
くじびき勇者さま3番札 誰が聖女よ!?
伝染病の調査として順調に進んでいた旅路だが、ここ数日、同じところを行ったりきたりになっている。いったいいつ竜の山脈にたどり着けるのかと、不安に思っていたメイベルだが、おかげでドラゴンと人が争ったと言い伝えられる遺跡を見学することができた。
そこで、人間とドラゴンの間にある溝を取り除くことができるかもしれない発見があり……
くじびきで選ばれた勇者と従者の旅物語の三作目です。いやあ、メイベルがいいなあ。ただの薀蓄屋さんという印象が強かったですが、今回はどちらかというと探究心いっぱいな感じでした。未知のものに対する好奇心がとても伝わってきます。
頭でっかちだったのに、ナバルと旅をすることで、いろんなものを吸収してますよね。成長する姿が素敵です。
それに比べたら、まるで成長してないナバルでしたが、そんな男に対するメイベルの気持ちがどんどん見えてきて、思わずニヤリです。嫉妬したり、役得にあやかったり、呼び方ひとつで赤くなったりするところが可愛くて可愛くて。ナバルが朴念仁過ぎて、まるで進展しませんが、メイベルが尽きるまで力を使ってしまうところは、信頼から着てるんだろうなあ。
二人仲良く草原で昼寝しているイラストは、今回のマイベストです。雰囲気素敵すぎ。
今回は、ドラゴンが敵というより仲間として見えてきました。やっぱり仲良くなる基本は、同じ釜の飯を食うことですね。お互いの文化に触れて、相違点を指摘しあいながら食事をするシーンは、とても楽しく読めました。
一部の人間の暴走と、認識の違いから始まったドラゴンとの確執ですが、話し合えば分かり合えるし、共存もできる。そのことを象徴するシャーマという植物におけるやり取りが印象的でした。
後半ちょっと急ピッチに感じたのは、ドラゴンたちとのやり取りをもっと読みたかったからかしら。
伝染病の発生源を推察して取り除き、ドラゴン教徒との確執を取り除きと、大活躍なふたり(というよりほぼひとり)の旅がこれで終わりだなんて残念だなあ、と思っていたら、そんなオチを持ってきますか。
まあ、これはアレだろうけれど、そのあたりは既に構想があるという第二部で語られるんでしょうか。
いろいろと楽しいことになりそうなだけに、続きがとても楽しみです。
くじびき勇者さま 4番札 誰が女神さまよ!?
世界を救い、英雄となったはずのナバルとメイベルだが、命を狙われていることに気づき、逃亡生活をはじめた。追っ手を気にしつつ、隠れられる先を求めながら旅を続けていたとき、野盗に襲われている商人を助けた。気前のいい頭領の商隊に甘えて、用心棒としてともに旅をすることになったが……
一方、教会では、メイベルたちの行動の理由を知ったものの、どういう対応をとるべきか、結論が出ず……
というわけで、第二部スタート。逃亡者となったナバルとメイベルのお話です。メイベルたちが逃げた理由は、教会側もすぐに気づいたのに、威信やら権威やらに縛られているおかげで、さっさと誤解を解けないのは、何とももどかしいですね。犯人が誰だかわかっていても、野放し状態になってしまうんだから、権力ってのはイヤラシイもんです。
それはともかく、逃亡の旅ってことで、これまでと違って一般の人たちと行動を共にすることになるんですが、聖女というイメージからお堅いものを感じていた人たちが、メイベルの気さくな態度に好感を持って打ち解けていくところは、いいですね。
メイベルたちを亡き者にしようと暗躍する人たち手立てがあっても、メイベルに出会った人がみな協力してくれるのは、世界を救ったという事実もあるけれど、人柄に好意を持ってくれたからなんでしょうね。
今回はナバルの意識が変わってきたのが、ちょっと注目かも。メイベルを意識してなのかどうかは微妙なところですが、逃亡生活となると、お荷物となってしまうのが、栄えある騎士として情けなく感じるのもわかります。何か役に立とうと、手に職をつけるじゃないですけど、そういう目的を持とうと思ったのは、成長なんだろうなあ。うんうん。
メイベルは、相変わらずたくましくて素敵ですね。やってることはいつもと変わらない気がしますが、生きていくうえで必要な知恵が詰まってたりして、多くの人に感謝される立場になるんだから、なるほど聖女さまなわけです。本人そんな意識ないみたいですけど。
たしかに感謝の気持ちは嬉しいだろうけれど、それより何より、好きな人の一言のほうが胸に来るんだろうなあ。ナバルの発言を受けて、メイベルが喜ぶシーンが、今まで以上に喜びを隠さなくなってる気がして、ちょっと嬉しかったりします。間接キスでドキドキしてるところとかニヤニヤでした。
教会からの救済者というか使者とは、惜しいところですれ違っていましたが、こうなると旅の終わりはどこになるんでしょうねぇ。今回の悪事の発端となった人を倒すとかになるのかしら。
メイベルたちだけでなく、さりげなくパメラとクラウの関係もいい感じになってるし、今後どういう展開になっていくのか楽しみですね。
くじびき勇者さま 5番札 誰が守り神よ!?
聖ラクス協会を目指していたメイベルとナバルは、いきなり衝撃的なものと出会った。なんとここでは、「グライダー」なるものが、人を乗せて、空を飛んでいるのだ!いったいどうやって、空を飛んでいるのか気になるメイベルと、実際に空を飛んでみたいナバルは、民衆からの大歓迎を受けたあと、すぐさま、行動に移って……
ラクスを訪れた二人の前に、空飛ぶ機械という楽しいおもちゃが転がってきたお話といっていいかしら。いつもは、メイベルが薀蓄ずらずら並べることが多いけど、今回は帝国では見たこともない機械や技術、考え方をメイベルが学んでいく感じですね。文化や技術の違いや出会いという、旅の面白さが伝わってきます。
物珍しさから、大興奮するメイベルが見れるんですが、これがまた可愛いんだと思ったのは、僕だけじゃないと思うんだけど、さてさて。
一方のナバルは、あまり目立つところがなかったなあ。あ、でも、帳簿管理を手伝って、横領犯を見つけたところには笑いましたけど。勇者というイメージからは、あまり想像できないヂミさですが、すっきりしないナバルを一生懸命メイベルが褒めてあげたところが、健気だなあと思いました。
ひょっとしたら、このまま、ラクス観光で一冊終わってしまうのかと思ってしまうほど、のんびりとした物語でしたが(それはそれで面白いけど)、戦争が始まってきてから、俄然面白くなってきましたね。今まで新たな技術を教えられるばかりだったメイベルが、知を持って防衛をはかり、空を飛ぶことを学んでいたナバルと力をあわせて、敵を倒すところなど、頼れる聖女と勇者らしい戦いっぷりが素敵でした。
できればもっと、メイベル×ナバルのシーンを見たかったなあ。いや、ナバルにのしかかられて、真っ赤になるところとかすっごい好きなんだけど、もうちょっといろいろあってくれたらなと思う次第。
ともあれ、南方と帝国との間の架け橋まで渡すようになってきて、(性格はともかく)ほんとに聖女だなって存在になってきたじゃないですか。いい仕事してるなあ、と思ったら、南方でさらなるきな臭い動きが見え始めてきたので、次作は、ナバルが活躍するのかしら。今回のようなのんびり空気じゃ無さそうな気がするだけに、楽しみですね。
くじびき勇者さま 6番札 誰が初代大統領よ!?
休戦協定が結ばれてから、南アルテースは大いに賑わっていた。もともと高い技術を持っていただけあって、メイベルのちょっとしたアイデアから、次々と新たなものが生み出されていったのだ。だが、そんな平和な時間もつかの間、西アルテース軍が、南アルテースへと進行し始めてきて、しかもそれが連合憲章にぎりぎり違反しないところをついてきているのだ。これを切り抜けるには、南アルテースをひとつにまとめるしかない、ということで、ソルティス教の聖女でありとドラゴン教の聖者でもあるメイベルを大統領にしようという動きが生まれて……
くじびきで選ばれた聖女メイベルと勇者ナバルの冒険を描いたシリーズの第六弾。今回は、休戦協定が結ばれた南アルテースでの技術革新と、西アルテース陰謀が迷い込んでくるお話です。
いやあ、面白かったなあ。目新しいものを見つけると、すぐに興味を持ち、どんどん吸収し、新たなアイデアを生み出していくメイベルの生き生きとした姿が、素敵ですね。思わず、置いてけぼり感を食らってしまうナバルの気持ちもわかる気がします。ま、ナバルはナバルで、資金の運用というところで、活躍してたりするんですが。
本人たちの努力とあいまって、いつの間にやら、その国・地域に、なくてはならない存在になるあたりが、さすが勇者・聖女ですね。
それにしても、メイベルがナバルに思いっきりラブラブ光線を仕掛けてるあたりが楽しいなあ。見つめられたらポッとなって、どさくさにまぎれて結婚話を持ちかけて、抱きかかえられたらピンチの場でもふにゃふにゃになってと、恋する乙女の視線が可愛い。特に、帝都に戻れるかもしれないという話が持ち上がってきたとき、ナバルに護衛を持ちかけるところなんてもう!あれじゃ、南アルテースから離れようって気になれないだろうなあとニヤニヤ。
その南アルテースでの技術革新の速度がすごかった。ひとつのアイデアが、思いもよらなかった道を生み出していく勢いが気持ちいい。相変わらず薀蓄多いですが、わかるところだけを繋いでいくだけで、あー、なるほどと思える。
だが、逆に思いもよらなかったことを生み出していく過程で、兵器としての力も大きくなっていくあたりは、心痛むものがありますね。
その間に、西アルテースが侵略してくるんですが、政治的理由から、帝都や南アルテースが動けないというのが、なんとももどかしい。ただ助けたいだけじゃ動けないってのは、仕方ないところではあるけれど、打開策が傑作でした。聖女を大統領とはナイスアイデア。
尻込みしていたメイベルが、引き受ける決意を固めたのは、戦争の悲劇を目の当たりにしたからですが、やっぱり、ああいった出来事を繰り返してはいけませんよね。ぐじゃぐじゃになっていたメイベルに対して、思わずとったナバルの行動に、きゃーと思いましたが、凛とした佇まいを見せるメイベルに更なる成長を感じて、格好いいと思いました。
そして、何より素晴らしかったのは最後のシーン。望まれて壇上に立つメイベルの言葉が、周囲の人たちの視線が、とても素敵で、あー、これ、ここでお話は終わりだなと、そう思えるほどでした。まさか続くとは思わなかったけど、ま、陰謀はまだ終わってないって事ですね。
可能であれば、悲劇が繰り返されないことを望みたいですが、よりによってアレが敵の手に渡ってしまったことだし、どうなって行くのか気になりますね。
くじびき勇者さま 7番札 誰がくじびき女王よ!?
「将軍さん。わたしはこれまで南アルテースの兵士たちが、できるだけ安全に戦える方法を考えてきたわ。それで、それがだいたい完成したみたいだから、今度は西アルテースの兵士たちから無傷で武器を取り上げて、家に帰ってもらう方法を考える番だと思うの」
くじびきで選ばれた聖女メイベルと勇者ナバルの冒険を描いたシリーズの第七弾。今回は、南アルテースと西アルテースの戦争が始まって……という南アルテース編の完結話です。
まあいつもどおりという感じですね。発明やら探求ばっかりしてたメイベルが、政治の世界に足を踏み入れたから、何か変わるかと思ったら、ぜんぜん変わってませんでした。甘いといわれそうな判断をしながら、犠牲を出さないよう、技術とアイデアで乗り切っていくところが痛快です。
途中、勢いあまって、危険なものを生み出しちゃったりしたときにはどうなるかと思ったんですが、ひどいことにならないあたりが、このシリーズのいいところかな。危険なのは道具ではなく、人だということがわかりますね。
ようやくパセラたちと会うこともできて、さらにはメイベルの家族まで登場してと、いろいろ動きがあったけど、やっぱりくじびきに運命を翻弄されることは変わってないところに、にやりです。
なんせ最後は……って、ここまでシリーズ読んだ人なら、副題をみればわかりますよね、うん。
ただ、残念なのは、ナバルとの話が全然進まなかったことですね。っていうか、「勇者さま」はどこいったってぐらいナバルの存在が薄くて、まいりました。ときどき思い出したように、ナバルが出てくるけど、会話してるだけでメイベルが勝手に顔を赤らめるぐらいだったし。
ポンポンとテンポがいいのはいいんだけど、展開が速すぎて、かみ締めるものがないのは、ちょっと物足りなかったりもします。
うーん、続きはどうしようかなあ。つまらないわけじゃないんだけど……、一区切りついたし、そろそろ追うのやめようかしら。
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