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霧の日にはラノンが視える / 甲斐透

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霧の日にはラノンが視える

霧の日にはラノンが視える - 縞田 理理

田舎からロンドンに出てきたラムジーが不良たちに絡まれているところを助けてくれたのは、淡いブルーの瞳をしたジャックだった。一文無しになったラムジーのために、雨風をしのげる場所を提供してくれたジャックだが、そこでジャックのことを王子と呼ぶ人がいるのを聞いたり、心を閉ざした美しきカディルをつれていたりと、何かを隠している様子で……

七番目の子は、呪いで気が狂うという言い伝えにおびえたラムジーが、同じ境遇だった叔父の残してくれた手がかりを元にロンドンを訪れたら、そこで異世界から通報された人たちと出会って、という「霧の日にはラノンが視える」と「晴れた日は魔法日和」の二編が収録されているお話です。一編目の続きが二編目という感じですね。現代のロンドンを舞台にしているんですが、霧の都という響きの幻想さがこの物語の雰囲気にとても合ってる気がします。

弟の暗殺未遂話や得体の知れない刺青男の訪問など、ジャックの周りには、何かとキナ臭い話があるのに、それでも信じるラムジーの真っ直ぐさがいいですよね。放っておけない弟みたいな感じでラムジーと接しているジャックや、ジャックを敵視していたレノックスの気持ちが、なんかわかります。

異世界にある「ラノン」という国を通報された人々の魔法やら故郷への渇望が、そこここで伝わってきますが、見える範囲が狭くなった者の手段によって、ラムジーに危機が迫るところには、悪意とは言い切れないものがあるだけに、何とも言いがたいものがありました。

最後のジャックの決断は、つらいものがありましたね。尊い友の犠牲や郷愁に駆られることもあるだろうに、それでも理性を働かせたのは、王族としての思いがあったからだと思います。想像するに心痛むところがありましたが、いつの間にやらレノックスがジャックの心境を思ったりしてて、希望というと大げさですが、明るい未来を思わせるラストが素敵でした。

ただ、個人的にはもう一編の「晴れた日は魔法日和」のほうが好みです。ラムジーが故郷であるクリップフォード村に、ジャックを連れて行くというお話なんですが、何がいいって、幼いころからラムジーにちょっかいを出していたという女の子、アグネスが可愛いんですよ。好きな子だからいじめちゃうという典型的な要素がツボでした。

しかもラムジーの村には、ひょっとしたら……という思惑から、レノックスまでついてきての何ていうか宝探し的な雰囲気は、面白かったですね。時林檎の謎や罠などが、すべて周到に用意されたものであるところには、感心してしまいました。

最後にアグネスは、ラムジーになんと言ったのだろう。想像するだに、微笑ましくなってしまいます。ああ、彼女にはまた登場してほしいなあ。なかなか素直になれないかもしれないけれど、ラムジーの側で、仲睦まじく喧嘩してほしいものです。

霧の日にはラノンが視える - 縞田 理理

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霧の日にはラノンが視える 2

霧の日にはラノンが視える (2) - 縞田 理理

「同盟」の準会員となったラムジーが働いている生花店で、ジャックは盟主ランダルと出合った。そこでのやり取りなどを経て、ジャックを危険視したランダルは、レノックスに指示をした。ジャックを「同盟」帰順させるか、さもなくば……と。
そんなとき、「同盟」の傘下にある葬儀屋から、死体が盗まれるという事件がおきて……

異世界からロンドンへ通報された人たちの物語。今回は「妖精たちの午後」と「ネッシーと<<風の魔女>>」「キス&ゴー」の三編から収録されています。前作よりも断然面白くなってますね。

「妖精たちの午後」で、なんと言っても楽しかったのは、ランダルとジャックの間に挟まれて、苦労するレノックスの姿ですね。がさつに見えるけれど、面倒見が良いので、何かと気苦労が耐えない姿が楽しいです。しかも、詩を愛するなんて!意外な一面も見えて、好感度アップしまくりです。

まあ、レノックスもいいけれど、僕が好きなのはアグネスなのです。後半の二編「ネッシーと<<風の魔女>>」「キス&ゴー」は、彼女の魅力がたっぷり描かれて最高でした。
ラノンでは恐れられていた風の魔女シールシャと、おのぼりさんのアグネスのロンドン観光は、楽しくて楽しくて。いつしか二人の間に友情が芽生えていくところは、ほんと良かったですよねぇ。ラムジー(というかアグネスの思い人)について話すときの二人は、どこにでもいる女の子って感じで、微笑ましい限り。シールシャとは、今後も仲良くやっていってほしいな。

キス&ゴー」で、アグネスがラムジーと念願の二人っきりになったわけですが、そこまでわかっておきながら、ラムジー……君は朴念仁すぎるよ。恋する女の子アグネスとしては、なかなか苦労しそうですが、頑張れ!と応援したいと思います。

とまあ、甘い話ばかりだけではないから、また面白いわけですが。

今回「同盟」やジャックに対して、強敵が出てきましたね。ラノン屈指の魔術師でありながら、大罪を犯したフィアカラの嫌らしさったらないです。ランダルが手を汚す決意をするわけだ。今回のフィアカラは、顔見せ程度でしたが、何かと同盟に手を出してきそうな感じがあるので、今後どんな展開が待ち受けているのか楽しみです。

霧の日にはラノンが視える (2) - 縞田 理理

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霧の日にはラノンが視える 3

霧の日にはラノンが視える〈3〉 - 縞田 理理

レノックスが、クリップフォード村で騒ぎとなった妖精騒動を調査しにいったころ、「同盟」の「総会」が行なわれていた。司会者が盟主再任の信を問おうとしたその時、現れたのは魔術者フィアカラだった。しかもフィアカラは、盟主の不審を言い立て、さらには、自分に着いてくればラノンに還れると言い出して……

フィアカラの口車に乗らされて、同盟が崩壊していくという「ミソサザイの歌」。疑うよりも信じることを重んじる妖精ならではですね。鉄牢に入れられたほどの罪を犯している人だってのはわかっているだろうに、それでも信じてしまいたくなるほど、ラノンに戻れるかもしれないという思いは大きいんですね。いやあ、まさかまさかの展開です。

今回最も印象的だったのは、ジャックが積極的に動こうとしてるところですね。今までも何かと「同盟」に手を貸していましたが、「僕が、何とかする」と言うとは思いませんでした。こういうところは、王族たる血筋を感じるなあ。「同盟」があってくれたほうがということもあるんでしょうけれど。
個人的には、本屋のお姉さんトマシーナがこっちサイドに、それもジャックの側に来てくれたのは嬉しかったりする。

嬉しかったといえば、アグネスの行動も良かったです。ラムジーが危険な目にあってるかもと思ったら、なりふり構わず、ロンドンを目指す姿は、もう可愛くて可愛くて。きっとラムジーを真剣に思ってることが伝わったから、ラムジーのお父さんも力を貸してくれたんだろうなあ。ロンドンでも活躍してくれたので大いに満足。

パラパラだった面子が一堂に会してくるところは、わかっていても気分が盛り上がってくるものです。いやあ、面白い。これは続きが楽しみでなりませんね。

それにしても、フィアカラのイラストがいい具合にイヤらしく思ったのは僕だけかしら。どうも口ひげな人 イコール イヤらしいという式が僕の中にあったりするのかもしれない。

ちなみにサイドストーリー的な感じで「この街にて」という短編が収録されています。ジャックとカディルが、こちらに来た当初のお話。文字通り、右も左もわからないときに、良い人に出会えるのは、運だとは思いますが、誠実な人であったからこそ、その後もいい付き合いができたんだと思います。

カフェの屋台アーニー。ジャックを雇ったエマ。

このふたりと出会えたのは、ジャックにとって大きなことだったでしょうね。さりげなくトマシーナとの出会いもあって、うふふ。

カディルが少しずつ変わっていく様は、行く末を知っているものとしてはちょっと辛かったですが、レノックスの涙もろさに、気持ちが和らぎました。レノックスみたいな人っていいですよね。

霧の日にはラノンが視える〈3〉 - 縞田 理理

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霧の日にはラノンが視える 4

霧の日にはラノンが視える〈4〉 - 縞田 理理

あとちょっとでラノンに帰れるんだ。フィアカラの言葉に浮かれる妖精たちだが、少しずつ、様子がおかしいことに気づいていった。その間、フィアカラはクリップフォード村で、着々と準備を進めていく。
一方、かつての同盟のメンバーたちを助けるために、ジャックたちは村へやってきたが、フィアカラはさらなる企みを企てていて……

ネオ・フェアリーテール物語の最終巻です。この面子ならフィアカラでもと、期待に高ぶっていましたが、楽天的になれないというランダルの言葉どおりでした。さすが冷静です。

ラノンへの帰還を餌にされた妖精たちが、少しずつ冷静になっていくところが、切ないですね。けっしてこっちの世界が悪いわけじゃなくて、ただ、ラノンにも還りたい。こちらで家族を持った人たちの板ばさみな感情が伝わってきます。

フィアカラの企みを阻止する為に、クリップフォード村へと訪れたジャックたちでしたが、まだまだ新たなことが出てくるんですねぇ。プロローグ的なところで、ラムジーのお母さんも?と思ってましたが、大活躍じゃないですか。アグネスのお父さんの頑固ものっぷりと、でも心を許した相手には力強く思えるところは、やっぱり親子だなあと思いましたね。

ギリギリだったとはいえ、せっかくフィアカラを追い詰められそうだったのに、逃がしてしまうなんてジャックは優しすぎるよと思っていたんですが、まさかまさか、こんな展開が待ち受けているとは思いもしませんでした。壮大な望みが作り出したモノが、実は……と、あまりにも綺麗にピースがハマっていくので、ゾクゾクさせられましたね。円環の素敵さにやられました。

いやあ、面白かったですね。
最後に「花の名は<<風>>」という登場人物全員集合の後日談みたいな短編が収められているんですが、もう嬉しくて嬉しくて。会う人会う人から温かさを感じて、ああいいなあと思いましたが、何と言っても楽しかったのは、レノックスの奮闘ですね。淡い恋に焦る姿とショックに落ち込む姿は、可哀想なのに笑いました。
ま、そんなときでもしっかり世話好きっぷりを見せてくれるから嬉しいんですけど。ジャックの自身の気づかぬ思いをくみ上げるランダルの手腕にグッジョブ!と言いたくなりました。

この人たちのお話がこれで終わってしまうのは、残念ですが(まだまだ読みたかったよ!)、とても楽しませてもらったので、他の作品も追ってみたいと思います。どんな物語が待ち受けているか楽しみですね。

P.S.
それにしても、シーシャルは微妙な男にひっかかるタイプなんでしょうか。いや、大道芸が悪いとは言わないですけど、なんていうか、こう、ね。

霧の日にはラノンが視える〈4〉 - 縞田 理理

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