金色の明日 / 甲斐透
金色の明日
まるで太陽の光のように輝く美しい髪を持った騎士に、思わず見入っていた浮浪児のミオーニだが、スキをついて彼の財布を抜き出そうとしたら、その騎士に捕まってしまった。だが、騎士は彼女を警吏に突き出さず、そっと食料を与えてくれた。今までにない優しい言葉を掛けられたミオーニは、騎士ダニエルの様子が気になって……
ウィングス文庫COMP企画を遂行しているみりおんぐらむのt-snowさんからお勧めいただきました。こういうお話大好きなので、感謝の気持ちで一杯です。ウィングス文庫って、BLじゃ……と勘違いしていた自分を恥じる思い。
浮浪児の少女ミオーニが、貴族の騎士ダニエルに惹かれて、というお話なんですが、ミオーニが可愛いですよね。浮浪児としての引け目があっても、ダニエルのために、ちょっとでも役立とうと努力するところとか、ほんと健気です。一途な思いから、他人と係わり合うことも増えて、それが報われることがあったおかげで、反発することなく人の言葉を受け止められるようになっていくところもいいですね。
好きな人のために何かしたいという思いは共感できるし、一生懸命な様子が伝わってきましたね。戦火という危険な道を、迷わず抜けていった彼女の行動と、何よりも決して諦めずにいたという思いに、騎士としてのダニエルの心が震えたところで、思わず涙しました。
話の感じとしては、先日読んだ「舞姫恋風伝」と似ているんですが、「金色の明日」のほうが思われ人であるダニエルの魅力にあふれていますね。功績を受けて、ドレスで着飾ったミオーニが目の前にいても気づかない、ダニエル朴念仁さがスキです。
ミオーニが成長したらどうなるんだろうと、想像してニヤニヤしちゃいますね。
ちなみに「金色の明日」の続編「鈍色の記憶」という作品も収録されています。ちょっとした事故から怪我をしたダニエルとその従者ミオーニが、領主の館に招き入れられて、というお話です。亡くなった領主の娘がミオーニと同じ歳というところから、不穏なものを撒き散らしてくれて、なかなかにサスペンスでした。
相変わらず気の利かない返答しかできないダニエルと、そんなダニエルにぷんすかしながらも、新しいドレスとか着たら、いの一番に見せに行くミオーニの様子が微笑ましかったですね。
ああ、楽しい。いつまでもこんなふたりでいてほしいですが、ちょっとはミオーニのことも気に掛けてあげてね、ダニエル、なーんて思ったりもします。どうやら続編も出てるようなので、手を出していこうと思います。
オススメ。
瑠璃色の夜、金の朝 金色の明日 2
ミオーネが、ダニエルの従者となってから一年半の時が経とうとしていたとき、ふたりは、ダニエルの盟友だったラドリと出会った。懐かしむダニエルとは違い、嫌悪を露にするラドリに、ミオーニは腹が立ったが、ダニエルに諭されて、しぶしぶコブシを下げる。ところが、町を一人で歩いているときに、そんな不満な相手と出会ってしまい、さらには自分がダニエルの足手まといであることを気づかされて……
浮浪児だったミオーネが、騎士ダニエルの従者として旅をする物語の第二弾。「瑠璃色の夜、金の朝」は、かつて、ダニエルが盟友だったラドリが、二人の仲を揺さぶって、というお話。
いやあ、いいですね。ミオーネのダニエル大好きっぷりが、たまりません。ダニエルを馬鹿にすることを言ったら、友人だろうと頬を膨らますし、ダニエルにかつて婚約者がいたと知ったら大慌てするしと、豊かな感情表現が可愛いったらないです。
そんなミオーネの心情を理解しながら、騎士見習い時に盟友としてダニエルの側にいたラドリが、かつての後ろ暗い思いを胸に、亀裂を打ち込んでくるんですが、ミオーネが自分のせいでダニエルに迷惑をかけているかもしれないと思ってしまう様は、読んでて辛かったなあ。泣かない子が、我慢に我慢を重ねて、思わず泣いてしまうシーンに子供らしさを感じながらも、胸が痛くなりました。イラスト可愛かったけど。
いつもは、朴念仁っぷりを発揮してくれるダニエルですが、悲しんでるミオーネを見て、さらにラドリに隙を突かれたことで、今までにない感情に気づいていくところには、やっぱりダニエルも!と嬉しく思いました。なのに、間違った方向に騎士道精神を働かせるんだもんなあ。思わず、そうじゃないだろ!と全力でツッコミしましたよ。
不器用な優しさがすれ違いを生んでいくところは、やっちゃった感がありましたが、最後の最後、ダニエルが自分の思いも含ませた上で、これからどうするかということをきっちりと伝えたシーン。素敵でした。ミオーネからしたら、ほんと天国に上る思いだったでしょうね。今まで流した中で、これほど嬉しさが伝わってくる涙はなかったと思います。繋がれた手の温かさが、そのまま胸に届いてくるようでした。ほんと良かったです。
本作には「瑠璃色の夜、金の朝」の他に短編として「薄荷色の貴婦人」というダニエルの妹シャーロットが、お兄様とミオーネに会いにきたという話があるんですが、これも面白かったですね。「瑠璃色の夜、金の朝」で、妹の逸話がちょこっと出てて、とても好感が持てたので、シャーロット話は、嬉しく思いました。
兄すら手玉に取る政治的手腕の持ち主が、ミオーネにちょこっと意地悪して、でもお気に召して、最後には爆弾を置いていってと、もう最高です。ああ、もっとこの人のいたずらは読みたかった。あわてるダニエルが読みたかった。これでこのシリーズが終わりだなんて……、ほんと残念でなりませんが、甘い気持ちに浸りたくなったら、また読み返してみたいと思います。
この著者はちょっと気になるので、他の作品も読んでみようっと。
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