姫宮さんの中の人 / 月見草平
姫宮さんの中の人
高校に入ったら、何か刺激的なことがあるかと思ったけれど、運動はできないし、成績も良くないし、部活にも入ってないから、やることがない。そんなさえない星野純人は、ある日、才色兼備な生徒会長、姫宮ちとせの落し物を拾った。ひょっとしたら、これを機に彼女とお近づきになれるかもと追いかけていったら、とんでもないものを見てしまった。なんと生徒会長の体が割れて、中に女の子が入っていたのだ……
まさか、タイトルそのままだとは予想だにしてませんでした。幼いころから、姉の研究を手伝っていて、『外の人スーツ』を着ていたら、いつの間にか対人恐怖症になってしまった姫宮さんの『中の人』のお話です。『外の人スーツ』を着ていると才色兼備なのに『中の人』は可愛くもちっこいドジっ子という一人二役的ギャップが楽しいですね。
見知らぬ新入生に、自分の一番の秘密を告白するという理由については、ちょっと弱いかなあと思わなくもなかったですが、終わってみれば、それが正解だったわけで。勘とは侮れないもんだ。
生徒会長の秘密を知ってしまった純人が、スーツを脱いでも会長が普通に暮らせるよう(対人恐怖症を治す)お手伝いをするってことで、生徒会長とのつながりができたことを喜ぶ純人でしたが、憧れの人の側にいることのできる嬉しさと、でもその憧れはいわば人形とも言うべき外側だけだったことに気づいて、自分は本当に『中の人』の手伝いをしたいのかと葛藤するところは、青い春な悩みでしたね。真剣に悩んで悩んで、拙いながらも、流されることなく結論を出したところに、好感を持ちました。
時に道化を演じることもあるけれど、頑張ってる女の子のために、真摯な態度で接し続ける純人が素敵ですね。
幼馴染の結衣が、時々、ちとせと純人の間を勘ぐって、口を挟んできて、これがまた楽しい。結衣の純人への好意を感じているだろうに、ちとせがからかう様がいいですね。ま、からかい半分、本音も半分でしょうけれど。端々に、純人へ信頼を見せるちとせがいいなあ。
個人的には、結衣の絡みがもうちょっとあってくれると嬉しかったけど。
各人の心の動きとかは非常に良くて、うまいなあと思いましたが、もうちょっと何か欲しかったな。どこがと聞かれると言葉にしにくいんですが、物足りなく感じるところがあったので。
とはいえ、まだ明かされてないこともありましたし、人間関係のみならず盛り上がっていくと思うので、これから楽しみにしたいと思います。
姫宮さんの中の人 2 夏盛りオレンジシャンプー
夏休み明けにも図書室の引越しがあるということで、オレたちは図書委員である浦乃さんの手伝いをすることになったが、その流れで、季節外れの転校生である浦乃さんの買い物に付き合うことに。たまたまそれを聞きつけたちとせ先輩は、自分だけ一緒に行けないことを悔しがり、こっそりと後をつけ始めてきた。バレバレな尾行に、どう声をかけていいかわからない純人だが、突然先輩の「外の人スーツ」が暴走し始めて……
『外の人スーツ』を着ると才色兼備、でも中の人は対人恐怖症である生徒会長のちとせ先輩と、彼女の秘密を知る唯一の生徒・純人が繰り広げるラブコメ。今回は、何者かが「外の人スーツ」へ妨害を仕掛けてきて……というお話です。
ちょっとずつ、中の人であるちとせ先輩とも打ち解けてきたことが見えてくる序盤が楽しいですが、それにも増して、他の女の子と仲良くしている純人を見ては、プチプチとつつく、ちとせ先輩を見るのが楽しいですね。特に買い物の尾行シーンで、誰かに気づいてもらいたがって、姑息な手段をとる姿は、ベタだけど楽しくて楽しくて。
ひょっとしたら、だんだんと中の人の性格が、外に現れてきたのかなとか思ってしまいますね。
今回は、ちとせ先輩(というか外の人スーツ)が狙われる羽目になったんですが、先輩がピンチのときは、恥ずかしくも身体を張って頑張る純人がいいなあ。ちょっとドンくさい(といったら可哀想だけど)ところもあるけど、一生懸命な姿は、好感が持てますね。まあ、そのドンくさいところのおかげで、結衣に誤解されることになっちゃったわけですが。
結衣がぷんすかしている間に、無口キャラ浦乃さんが、超積極的に動いてきてという、まさかまさかの行動には、驚きました。それぞれの思いに拍車がかかったりと、誰も彼もが興奮する最中、もっとも冷静だったのが、純人の妹の雪ちゃんでしたね。短編でもいいんで、ぜひとも怪傑雪ちゃんの物語を読んでみたいと思いました。って、話ずれすぎた。
浦乃さんの行動が、今までのほほんと過ごしていた純人に、自分の気持ちを見つめ直すきっかけとなったのは、良かったと思います。
最後にいきなりバトルになったところでは、なんか純人の情けなさが目立ったような気がしないでもありませんでしたが(純人じゃ誰にも勝てない……)、ちなつの衝撃事実による強制的収束のおかげで、微妙にもやもや。まあ、でも、純人らしいまとめ方だとは思いましたけど。
ちとせ先輩の中の人と純人は、だいぶ、いい感じになってきましたが、ここにきて、結衣が動き始めようとしてるっぽい?ので、なかなか油断できませんね。きっと次は結衣が……と思ったら、あとがきで「要垣内が大活躍する」って、あれ?そっちいくの?
姫宮さんの中の人 3 秋空ミックスアップ
対人恐怖症を治すためとはいえ、いきなり同学年の人たちと話をするというのはハードルが高いだろうということで、純人は「外の人」スーツを脱いだちとせ先輩を連れて、公園へと向かった。小学生の子供たちとの交流ならばと思ったけれど、なかなかうまくいかない。そんな時、中の人を連れているところをクラスメイトの要垣内に知られてしまった。しかも、彼は、中のちとせ先輩に惚れてしまったと言い出して……?
『外の人スーツ』を着ると才色兼備、でも中の人は対人恐怖症である生徒会長のちとせ先輩と、彼女の秘密を知る唯一の生徒・純人が繰り広げるラブコメシリーズの第三弾。今回は、中の人であるちとせ先輩を見かけたクラスメイトが、彼女に一目ぼれして、というお話です。
小学生に混じって遊んでも、違和感がないってどれほど中の人は幼いんだと思いながらも、その光景が目に浮かぶと、とても微笑ましく思える時点で、僕はやられてるのかもしれない。
で、そんなちとせ先輩(中)に一目ぼれした要垣内が、いろいろアプローチしてくるんですが、ひとり人が入ってくるだけで、今まで見えてなかった感情が、チラチラ見えて楽しくなってしまいます。鈍いと思ってた純人の嫉妬が見えるのもいいけど、純人が嫉妬してくれてるかも?と、喜ぶちとせ先輩(外)の姿にニヤリ。
そんな三角(?)だけでなく、ちとせ先輩の推薦を受けて、生徒会選挙に立候補することになった純人の前に、もうひとりの立候補予定者である現副会長の早見が出てきたのは、面白くもあり、物足りなくもあり。ちとせ先輩をかばおうとする純人の言葉が、伝わってこないからかなあ。
まあ、純人が自身の気持ちに迷いを持ってるのも原因なんだろうけれど、なんか、こう、もったいないようなもどかしさを覚えました。
ただ、まだはっきりしない中にありながらも、心に育まれたものが伝わってくるシーンはいいですね。
「ありがとう」
その言葉がどれほど純人の心を動かしたかが見えて、温かい気持ちになりました。
いやあ、いいですね。ちょっとずつ、中の人との距離が縮まってきて、そろそろ次のステップに……と思ってたら、まさかそっち方面から手が伸びてくるとは思ってもいませんでした。
本格的な三角関係を期待できそうですが、生徒会選挙もあるし、さてさて、どうなるのかな。
姫宮さんの中の人 4 学園祭ぶれーぶはーと
「たぶん、生徒会長の対人恐怖症が治らないと、星野くんは次の選択できないんじゃないかな」― そう言い出した幼馴染の結衣は、ちとせ先輩の対人恐怖症を直す手伝いをすると言い出した。先日の件で恩があるから、強いことが言えないちとせ先輩はしぶしぶ引き受けた。
いろいろありながらも、これなら「外の人スーツ」を脱ぐ日も近いかもと思っていた雰囲気が一変したのは、結衣から告白されたことをちとせ先輩が知ってしまったからで……
『外の人スーツ』を着ると才色兼備、でも中の人は対人恐怖症である生徒会長のちとせ先輩と、彼女の秘密を知る唯一の生徒・純人が繰り広げるラブコメシリーズの第四弾。今回は、文化祭と生徒会選挙のお話です。
今回はよかったなあ。前作で思いを告げた結衣が、今までより積極的に、純人へ関わろうとする姿がとても可愛いくて、それがまた彼女の魅力をあげてくれて。個人的には、ちとせ先輩を応援してたんだけど、今回の学園祭を一緒に回ったときのシーンとかを見て、なんで、おまえは、結衣を選ぶのに躊躇するんだ?と言いたくなりました。
如何に自分が、相手に大切に思われていたかが伝わってくるラブラブ度チェックのイベントが、すっごい良かったです。
でまあ、そっち側といい感じになっちゃうと、ちとせ先輩との関係に溝が……というのはお約束ですが、後ろめたい思いがあったから、売り言葉に買い言葉ってなってしまって、というのは、なかなかやるせないものがありました。ああいうとき、素直にはなれないよなあ。
後悔から、ちとせ先輩に謝ろうとした純人の思い切った行動と言葉が、そして、ちとせ先輩のために道化となることをいとわなかった勇気が、とても格好よかったです。なるほど、「正義の味方」なんだなあ。
いやあ、面白かった。良くある三角関係のようで、でも、結衣とちとせの間が険悪でないのはいいですね。っていうか、中の人のことを知った結衣が、意地悪しながらもちとせのために動く姿を見て、ああ、やっぱり結衣はいい子だと思った次第。
純人がどちらを選ぶのかはわかりませんが、どちらを選んでも、少女二人の関係は、そのままいってほしいものですね。
次あたりで結論がでるのかなと思いますが、楽しみに待っていたいと思います。
姫宮さんの中の人 5 卒業・オラトリオ
(やっちまったーーーーーーーーーーーーーー)
この日……。
姫宮ちとせ先輩の正体は、クレマチス高校全体に知れ渡った。
『外の人スーツ』を着ると才色兼備、でも中の人は対人恐怖症である生徒会長のちとせ先輩と、彼女の秘密を知る唯一の生徒・純人が繰り広げるラブコメシリーズの第五弾。ついに、『外の人スーツ』を脱ぐぞと決意したのに、ちょっとしたハプニングから、中の人のことがバレてしまい……というお話。
結衣が考えた『外の人スーツ』を脱げるかどうかの卒業試験とか、とても微笑ましいけど、純人のみならず、いろいろな人の支えがあったから、ちとせ先輩も決断できたんだよなあということが伝わってくるところが、良かったです。まあ、明かされた人がどれだけの衝撃を受けるかというあたりの見込みが甘いんだけど、それでもみんながいれば乗り越えられると信じているところに、絆の強さを感じますね。
決行は終業式の日に、ということだったのに、ちょっとしたハプニングが待ち受けていて……というあたりは、ドキドキでしたけど、予想した方向じゃないところから、話が入ってたのはちょっと拍子抜けかなあ。
いや、もっと、こう、反発の大きさから、ドロドロになるかと思ってたので、横槍方面が大きくなってしまったのは、物足りなく思いました。そういう話じゃないとはわかってるんだけど、学園ものとしてのお話を中心としてほしかったかなと思った次第。
個人的に一番印象に残ってるのは、『外の人スーツ』をきたちとせ先輩が涙を流したところですね。今まで「強き人」と描かれてた人が泣くところに、衝撃の大きさを感じますが、それ以上に、泣くちとせ先輩に対して、しっかりと怒ってあげた結衣が、ほんと良かったです。
純人をめぐるライバルなのに、ちとせ先輩を放っておけない結衣はいい人だよなあ。
最後、純人はどちらを選ぶのかとワクワクしてたんですが、なるほど、この終わり方はむしろとても純人らしく思えますね。甘いかもしれないけれど、ハッピーエンドだったのは、個人的に良かったです。むしろ、これからの物語のほうが面白そうだよなあ、と思うだけに、これが最終巻というのは残念ですね。
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