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ダークエルフの口づけ / 川人忠明

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ダークエルフの口づけ

ダークエルフの口づけ - 川人 忠明

幼いころ、アマデオの村は、ダークエルフの一味に襲われた。村人はみな殺され、逃げ出したアマデオも見つかってしまった。恐怖に震える中、彼を救ってくれたのは、美しきエルフのベラだった。
だが、ベラは魔法によりエルフに姿を変えたダークエルフだったのだ!
ベラの秘密を知らないアマデオは、彼女への恩を忘れられず、青年へと成長した後に、国の施設の保安主任を務めているベラの下で警備兵となったが……。

ソード・ワールドというのを知らなかったので手を出さなかったんですが、リッパーさんが「ソードワールドを読んだことない人でも面白い」と仰っていたので、手を出してみました。

ダークエルフのベラが、部下であるアマデオと共に事件に巻き込まれていくお話ですね。ダークヒーローものといったところでしょうか。盗賊ギルドや貿易商ギルドなどの裏の面々たちがいろいろ出てきてワクワクします。
中でも盗賊ギルドのラミアの存在感といったらとんでも無いですね。対立しながらも、表立っての抗争は避けるラミアとベラの駆け引きあふれる会話の緊張感に引き込まれました。

それにしても、ベラの雰囲気はいいなあ。ある種の神秘性を感じてしまいます。イラストの影響もあるかもしれませんが、冷静沈着で任務を非情にこなす姿に、さすが、死と恐怖を司る闇の住人であるダークエルフと言いたくなりますね。

そんな氷のようなベラが、唯一アマデオに対してだけは優しさを見せるところがとても印象的。叱責の中にも、どこか成長を願う心が見える感じがします。ベラを慕う純粋さに心が和らぐのか、それともひょっとしたらアマデオを利用するための演技なのでしょうか。
心の奥がまるで見えないため、推し量ることができませんが、たぶん、半々かなと思っています。ダークエルフの口づけは死の宣告と言うだけに、今後の二人の関係にドキドキです。

まだまだ序盤という感じで、これからいろいろありそうな匂いがぷんぷんします。過去に纏わる話なども出てくるかなあ。どうやらダークエルフものとしてシリーズ化されるようなので、次作が楽しみですね。

ダークエルフの口づけ - 川人 忠明

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ダークエルフの口づけ Ⅱ

ベラが保安主任を務める夜会にララサベル公爵公女のクララが訪れた。ちょっとした騒動から、すっかりベラを気に入ったクララは、妹のエビータ、友人のラミアと共に遊行する際の護衛として、ベラを借り受けたいと言い出した。
伯爵の影響力を考慮すると、おいそれと断ることはできないため、ベラは、アマデオのみを伴って、遊行へと同伴したが……

公爵公女の遊行なんていうと、華々しい印象ですが、とんでもないですね。敵か味方かなんて、そんな単純なものじゃなく、昨日までの敵が、今日は味方だけど、上品に笑いあいながら、裏では探り合いをしている。そんなやりとりにゾクゾクさせられるお話でした。
話としては全然違うんですが、雰囲気としては「抗いし者たちの系譜」みたいな魅力がありますね。

それにしても、罠のために遊行するという公爵公女の曲者っぷりがたまらないなあ。さりげない会話や行動、すべてに意味があり、自分の価値もきちっと計って罠を張る姿は、普段の雰囲気からはまるで感じられませんね。美しく上品であるには、あらゆる相手を退けなければならないということでしょうか。笑顔のまま、手を下すような恐ろしさにドキドキです。

まあ、それ以上に怪しさを持つのはラミアですけど。手を組んではいるものの、いつ寝首をかかれるかわからないという緊張感あふれるベラとの会話は、前作同様面白いです。何を考えているのかわからないベラですが、暗躍することにかけては、負けてませんね。

誰もが嘘を、いや、本当のことを言わないというやり取りは、誰が誰をだましているかわからないところがあるだけに、エビータ姫の真っ直ぐさが眩しいですね。苦労を知らないために、今回のことでいろいろ考えることがあったかもしれませんが、それでも優しさを忘れてほしくないですね。
アマデオとの関係もなかなかニヤニヤさせてくれて、ちょっと嬉しいですが、ひょっとしたら……、いや、そんなことはないか。ないと信じたい。

そのアマデオの過去話は、幼いころから一直線なところは変わらないんだなあ、と思えるものでしたが、共に過ごした人なら、惹かれるものがあるのはわかりますね。相手の恋心を考えると、切ないものがあります。
それでもアマデオは今の道を選んだわけですが、尊敬するベラに対して、初めて持った感情を、これからどう抱えていくのか気になるところですね。安易に逃げたりせず、きっちりと向き合って答えを出してほしいです。

今回はベラ側の話があまりありませんでしたが、ちらっと過去の亡霊がでてきましたね。このあたりについてはいつ語られるのかわかりませんが、お気に入りであろうアマデオとのこともあるし、続きがどうなるのかとても楽しみ。

ダークエルフの口づけ (2) - 川人 忠明

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ダークエルフの口づけⅢ

ダークエルフの口づけ 3  - 川人 忠明

先日の貸しのこともあり、ラミアからの依頼―十八年前にサンク・ベラスタに投獄された囚人フィゲロアの暗殺―を断ることが出来なかったベラは、さらに会館への侵入者を捕り損ねるという失態を重ねた。侵入者は、百人を越す警護兵を吸血鬼ララサベル公爵家の本邸から魔剣スパラグリアが盗み出したというダークエルフの吸血鬼で、エビータをかばったアマデオを連れ去っていき……

ラミアより依頼された殺人を受けたベラが、フィゲロアを殺しに行くお話になるのかと思ったら、ダークエルフの吸血鬼がアマデオを連れ去って……という展開に。序盤はいつもどおり、静かに駆け引きが行われているんですが、後半がすごかったですね。意外すぎる事実が明らかになってきて、驚愕の連続です。これだから、このシリーズは見過ごせない。

魔剣を盗まれる公爵ってどんな人かと思ったら、圧倒的な剣の力量を見せてくれましたね。これがエビータの父とは……。あ、でもクララの父でもあるのか。なら納得。娘の護衛を任せられるのか、アマデオを試すところには、実は子供に甘い親バカなのかしらと思ってしまいましたが、後から考えると、別の意味もあったんですよね。アマデオは、分を越えられないという公爵の言葉は、そのままの意味だったとは思わなかった。

肝心のアマデオは、今回かなり心揺れてましたね。先の事件のおかげで、ある意味、盲信していたベラから微妙に離れる、というよりは避ける視点となったところには、優しさというよりも、きれいなところしか見ようとしない弱さを感じました。いつもどおり表情を変えずに、それでいてアマデオを気にかけてるベラの様子が伝わってくるだけに、アマデオの態度を見てどう思ったかは気になりました。

そんな中、アマデオを拉致したのが、実は……ってところには、驚きましたね。十八年間放って置かれた囚人フィゲロアまでが絡んできて、その謎が見えたおかげで、急激に人間関係が複雑になってきましたよ。これはまたアマデオが揺れそうだなあ。誤解を与えたままにしているところが、こしゃくですが、さてどうなっていくのかしら。

アマデオ救出をめぐって、ベラとエビータが対立というか、ベラの立場を考慮できなかったエビータが、ベラに対して当たっていましたが、まあ、それだけエビータにとっては、アマデオの存在が大きくなってきてるんでしょうね。ふたりの何気ないやり取りが微笑ましく思えたんですが、これも、後から響いてくるから、油断できません。

最後のダークエルフによる戦いは、まさかと思っていましたが、そういう裏があったのか。まったくもってベラは素直じゃないんだからと思いつつ、誰にも明かさない心の内に何があるのか気になります。ま、僕としては、アマデオが彼女の心を真っ直ぐ見つめる事ができたので、ホッと一息ですけど。

ともあれ、アマデオにも新たな道が生まれたこともあって、どうなっていくのかさっぱり予想ができませんが、最後まで無事生き延びてほしいし、二人の関係も進んでほしいですね。続きが楽しみだ。

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ダークエルフの口づけ Ⅳ

ダークエルフの口づけ 4 (4) - 川人 忠明

アマデオが側にいるだけで心が弾む ― いつしかエビータより特別扱いを受けるようになったアマデオだが、護衛としての立場以上を望むものではなかった。だが、敵の手は、エビータの思いすら利用としていたのだ!
カラマサの策により、ララサベル公爵家の屋敷からビアンカが離れた直後、本来の「主」が帰還して……

ララサベル公爵家の起きた18年前の因縁から生まれた陰謀が終結を迎えるお話の最終巻です。

鈍い鈍いと思っていたアマデオですが、ここまで鈍いとは……。ビアンカならずとも苛立ちを覚えそうですが、まあ、こんなヤツにエビータ様をと思う輩はいてもおかしくないよなあ。アマデオに対する思いがとても微笑ましいだけに、エビータの心痛める様には、哀しさが漂って、ああ、辛い……と思ってたら、そんなものですまされませんでした。予想のはるか前をいかれました。

笑顔の裏で、刃を隠し持たない登場人物など、いないといってもいい陰謀劇だらけのこのシリーズの中で、警備兵アマデオとララサベル公爵の末姫エビータだけが、まっすぐな心を持っていたんですが、まさか敵の手が伸びてきて、エビータまでをも利用しようとするとは思わなかった。愛する人を天秤にかけさせるとは。どれほど思い悩んだろう。どれほど苦しんだだろう。しかもその思いですら……。
無垢の者が静かに追い詰められついく展開には、心苦しさとやるせなさでいっぱい。

エビータを護る、ただそれだけのために側にいたビアンカも辛いと思いますが、そんな彼女を慰めるクララの言葉にゾクゾクしました。必要であるならば、最愛の妹ですら「病気」とする貴族の流儀が、そら恐ろしいったらないです。

ただ、今回はわりとストレートにお話が進むので、ちょっと物足りないかなあ、と思っていたんですが、甘かった。誰が敵に回っているんだか、どこで手を繋いでいるのかが見えにくいだけに、すべてが見えたとき、やられた、と思いましたね。手のひらで踊らされていたことがわかると、あの強者すら小物に見えてしまいます。知謀とは、これほどのものなのかと驚愕しつつニヤリ。

それにしても、アマデオとベラが向かい合うシーンは素晴らしかったなあ。彼の言葉に対すて、死の宣告を与えるベラの思いに、何とも言えないものを感じました。切なくも美しい約束には、ほんと言葉にならない。

いやあ、面白かった。
アマデオとベラのみならず、最後はちょっと切ないものがあるんですが、それでも希望が見える終わり方だったのでよかったです。これで完結だなんて残念だなあと思っていたら、終わるのは「アマデオ編」だけの模様?
あとがきによると、このあと「ラミア編」「七年後編」なるものが予定されている……のが妄想なのかどうかわかりませんが、「ラミア様のく・ち・づ・け」は、是が非でも読んでみたいと思うので、期待して待っていたいと思います。

ダークエルフの口づけ 4 (4) - 川人 忠明

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