紅いバラシリーズ / 田中芳樹 岡崎裕信
ウェディング・ドレスに紅いバラ
この夏以来、聖陵女子大学の構内で、咽喉に傷のある失血死の怪死者がすでに6人。間違いなく吸血鬼の仕業だが、このままでは、吸血鬼存在が隠しおおせなくなってしまう。吸血鬼を狩る国際的組織「深紅の薔薇結社」の新米結社員となった女子大生の雅香は、コーチである淳司と共に、事件の解決に乗り込んだが……
徳間ノベルズ時代に読んでますが、シリーズ続編も出るってことで(作者は岡崎さんですが)、記念購入して読んでみました。
先天的吸血鬼の結社「深紅の薔薇結社」― 略称CRSの日本支部にいる元気いっぱいの女子大生雅香と、雅香を指導するコーチの淳司、CRS日本支部支部長の淳司の伯父さんが、吸血ウィルスに感染した後天的吸血鬼の悪事を解決するというお話です。
ちょっとしたサスペンスと、吸血モノにらしからぬ、のんびりした空気がいい感じですよね。名前こそかっこいいものの貧乏結社ってことで、慎ましく生きているCRSの人たちがおいたわしいです。
何かと仕事を若い者に押し付ける伯父さんの手腕の見事さと、文句を言いながらきっちし仕事をこなす淳司のユーモアあふれるやり取りが魅力のひとつですよね。雅香と淳司の間に恋愛要素がもっと出てきてくれれば、完璧なんですが……。このあたりは、岡崎さんに望みをつないでみよう。
収録されているのは「ウェディング・ドレスに紅いバラ」「星降る夜にダンシング」という二編の短編と「ブラッディ・ティーを一杯」の中編というか長編というか、その三作品。表題作はちょっと説明が多くて、物足りないところがありますが、雅香がウェデイング・ドレスを着て、機関銃をぶっぱなしてるイラストは最高でした。
個人的に好きなのは「星降る夜にダンシング」かな。伯父さんの誘導に乗せられて、危険な仕事をせざるを得なくなり、最後は伯父さんに手柄を掠め取られていく展開が、一番綺麗に決まってると思いました。いやあ、いい短編です。
さてさて、続編である「夜空の双子座に紅バラ」は、どんな感じになっているんでしょう。田中さんも岡崎さんも大好きな僕としては、ほんと楽しみでなりません。
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夜空の双子座に紅いバラ
先天的吸血鬼の結社「深紅の薔薇結社」に双子の少女が尋ねてきた。礼儀正しい妹の倫理と活発な姉の真理の二人は、とある病院からここを案内されたのだという。妹さんは吸血鬼になってしまったという雅香の言葉に、倫理は思い当たることがあったが、怒った真里は絶対に認めようとせず、治療方法を探して、病院を転々としていくうちに、治癒が可能かもしれないという病院に行き当たったが……
田中芳樹さんの「ウェディング・ドレスに紅いバラ」の続編を岡崎裕信さんが手がけたお話です。「深紅の薔薇結社」―略称CRSの日本支部に、中学生の新人さんが来たけど、ただの人間であるお姉さんが反発して、というお話。
いきなりあなたは吸血鬼ですと言われても、自覚症状がある妹さんはともかくとして、ただの人である姉からしたら、大事な妹に対して、何てことを言うんだと反発するのはわかりますよね。ちょっと過保護なところがあるけれど、妹さんを大事に思う真理の気持ちが伝わってきます。
ただ、始めはCRSに反発していた真理が、吸血鬼の血を狙う科学者たちから助けられたら、とことん懐いてくるところが、なんかいいんですよね。真理は淳司に、倫理は雅香にという懐き方が可愛かったりします。
別の場所では、吸血ウィルスを研究してるところがあったりして、その人たちの野望をつぶすべくCRSが、というか雅香と淳司が奮闘してました。相変わらず、伯父さんにこき使われててニヤリです。
雅香が吸血鬼として新たな段階を踏もうとしつつ、なかなか踏み込めないところに、ちょっとした恋心を感じちゃったりしますが、ああ、もう!なかなか進まないなあ、とイライラしてたんですが、コーチもちょっと動揺みせてくれたりして、満足もしてたり。うふふ。
研究所のバックにいた人たちは、そうか、そっち方面できましたか。まあ、国とかそういったものよりも、わかりやすいですね。敵対する必要があるのかといったら、微妙なところですが、手段が異なるのであれば、道も自ずと異なるってことかな。
個人的に印象的なシーンは、妹が吸血鬼になったことを受けて、姉である真理が自分も吸血鬼になれるのだろうかと問うたところです。常に同じところにいたい、護ってあげたい存在であるという姉の気持ちがわかるだけに、この問いには切ない思いがしました。
そんな彼女に伯父さんがかけた言葉が、とても素敵で、ああ、やっぱりCRSにいてよかったんだろうなと思いました。
いやあ、いいですね。期待したとおり、期待した以上の作品になってました。田中芳樹節とも言うべき薀蓄こそないものの、世界観やキャラクタはばっちり引き継いでますね。「ウェディング・ドレスに紅いバラ」の後に読んでも、さほど違和感なく楽しめました。
しかも、これだけで終わらず、どうやら続く模様です。これは楽しみでなりません。
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